中央公論で「古本生活入門」を読む

furuizo2007-10-29

 中央公論10月号に「古本生活入門」特集が載っているとの新聞広告を見て早速買って読んでみた。いつも感じることですが、自分の仕事に関わる記事を読むのは嬉しくてドキドキする反面、ちょっと面はゆいところもあります。よくぞここまで取り上げてくれたモンだと感じるところと、書き手の方との年代的な差によるものか違和感のある部分もあります。(うちのやり方はだいたい古くさい部分に分類されております)
 デモでも十二分に古本屋の私も楽しんで読めました。36頁の特集ですが、タイトルの「古本生活入門」のように「入門」編としては意を尽くしているように思いました。
 最初の「古本屋を十倍楽しむ方法」では、ここまで知っていたらもう入門を超えて「中級」として充分通ずるのではと思えるほどの内容でしょう。アトはただ場数だけですよね。
 次に総論に続いて各論イヤ応用編として「一日古書店散歩東京編」「一日古書店散歩京都編」がある。実に古本屋はお客様に見られているんですねー。オー恥ずかしイー。早速明日から店の片づけに精を出さなくちゃ。(と多くの同業者は思ったはず)
 最終編は総仕上げとして(かどうか分かりませんが)、「稀覯本からエロ本までー業界今昔物語ー人生が詰まっているからおもしろい」と続きます。今昔の「昔」を語るにはエラくお若い方のような気がしますが、当今はこんなものなのでしょう。私の感覚では少なくとも戦前生まれでないと扱うもの(本)が古く感じないので困ったものです。
 デモでもこの対談は最近の業界情報の固まりのように感じられ、エラくお得な気分を持ちました。
 秋の夜長の一晩を過ごす伴侶にはなり得ると思いますよ。

「最新和本相場全集」を見る

furuizo2007-10-03

 和本の相場について網羅的に載っている本、その参考になるかもしれない本として「最新和本相場全集」(古典社編纂部編集刊昭和14年発行)です。
 246頁に渡り小さい活字で和本の相場を載せています。この本で定義している掲載の和本は(煩雑ですがわかりやすいので引き写しますと)「和本、漢籍、或いは唐本と呼ばれるもの、古写本、古文書、絵巻、絵本、地図、一枚刷(版画も含む)等、すべて明治維新以前の広義の書物」です。
 これは実にわかりやすい。時代区分も平安期からずばっと明治維新以前までのものを和本、と言っている。その種類も、細かく言うとまだありますが大雑把にこれらで大体網羅しています。
 その範囲の和本に大胆に一々価格をつけているのです。その正否は、妥当か否かは分かりませんしどうでも良いのですが、このご努力は嬉しい。
 まして1冊1冊の本を知っていて(内容とその価値と希少性などを)、ようようその価格を云々することが出来る、という手順からしてとても何も述べることはありませんが、
ただただこの膨大な量の値付けに対し、おそれつつ、面白く思います。
 この価格を参考にするよりも、こんな本がこの当時市場に出回っていたのかと、はるけく、うっとりしてしまうだけです。そんな意味でたいそう参考になります。(よき時代であったのでしょうナーと。)

「古本年鑑」を見る

「古本年鑑」を見る

 戦前の古本を取り巻く事々を知るにはこの本。「古本年鑑」(古典社編集発行、昭和8年)の1933年版1935年版1936/37年版です。
 沼津にあった出版社です。
 そんな呼び名が世間でまかり通っていたかは、しかとは分かりませんが、この本では「古本界」と呼び、その業界の森羅万象といえるほどに広くデーターを載せている。この頃の古本屋のことを知りたければまずこの本といえよう。
 まず年譜があり全国の市会一覧があり、名簿見切本売立古書市、そして肝心の古本時価表が出ている。更に興味深いのが「古本関係雑誌記事紹介」です。
 個人的にそんなに面白いのは当然で、本のそこここに見知っている先輩諸氏、はたまた先輩のお店が読み取れるからです。その延長線上に我が店もあるかのごとく夢想し得るからです。
 ただただ個人的にうれしさに浸りつつぱらぱらと頁をめくれるからです。
 このなかで「売り立て」の一節がありそこにはいくつもの大蔵書家の売り立ての落札記録が各年度ごとに出ています。が、近年は当業界で聞かなくなったことの一つに入るのがこの売り立てです。それは蔵書家が少なくなってきているからということでしょうか。それならとても寂しいです。

「江戸時代古地図総覧」を見る

furuizo2007-09-09

 旅行でも地元の歴史を調べるのでも地図は便利なものです。今新刊で手に入る地図ももちろんですが、ちょっと歴史をさかのぼって少し前の、ウーンと以前の地図もじっくり見ると面白いものです。
 でもそんなとき少し手助けがあると理解が早まります。「江戸時代古地図総覧」(別冊歴史読本事典シリーズ・新人物往来社発行1997年刊)です。
 ”江戸時代の「古地図」をジャンル別の100点選び、その魅力と役割を探る!”と表紙にあります。428頁のこの本の全部に目を通すのはしんどいですが、私はいつものように必要なところでだけ、もしくは興味のあるとこだけを拾い読みします。
 「古地図を手に東京を歩く」など楽しそうですね。へーここは元お大名屋敷だっあのかーとか、エーここは以前は川だったノーなど、1枚の地図からタイムスリップまで出来ちゃいます。
 私は「西洋の日本古地図」とか「伊能忠敬の全国測量」「国絵図について」などに興味を引かれますが、ほとんど仕事がらみですねー。
 興味を推し進めるのに、その対象についてほんの少しの知識とかルールを知ればグンと近づけます。ごく簡単な入門書の目次から、気になったところだけを拾い読みするだけでよいのですから。私もそうやっています。続かなかった分野も多々ありましたが。
 

「活字中毒者読本」を読む

furuizo2007-09-03

 本屋というより、活字の周辺のほとんどを網羅している変な本がこれです。「活字中毒者読本」(別冊本の雑誌6、本の雑誌社編集発行1984刊)です。
 本全般ー出版から流通(取り次ぎ販売ー新刊書店、古本屋)、読者、そして本の読み方から書棚まで、の森羅万象を取り上げている。とくにタイトルが面白い。
 「読書は怠惰な快楽である」「歩きながら本を読むと人間は謙虚になるか」「立ち読みに向く本向かない本」「現代紙々人列伝」「われら活中派宣言」(活字中毒の意)などなど。
 とくに「古書価のメカニズム」は関係があるので興味津々でした。それはどのような根拠で一冊一冊の値付けをするかについてではなく、古本屋ではないお客様や利用者が我々を値付けをどのように見ているかが何となく伺えるからでした。へーそうゆーふーに見られているんだと。
 ちょっとくすぐったいような感じです。
 でも活字好きでちょっと中毒気味の人が自分自身を再確認するのにもってこいの本の一つでしょう。売る側の私にとっても。
 

明治時代の出版事情を垣間見る

furuizo2007-08-16

 意外と知られていない、いやわからない【解明されていない)ことの一つに地方の出版や本の流通とその周辺のこと(もちろん最近のことではなく)があります。
 特に手がかりとなる参考資料は簡単に得られません。そんな時にこの本。
 「大盛堂発売 図書目録」(北海道図書発行所 小島大盛堂 明治42年1月調査第二号 B6判 100頁)です。
 函館に在った有名な地元出版の会社ですが、このような刊行案内があったとは知らず、そくさくと頁をめくるとさにあらず、本文100頁の前に別の10頁の色刷りがありそれがここの出版目録になっています。本文の分は新刊の卸のカタログでした。
 よく見るとその中に大盛堂の出版物も入っていましたが。と、初見の際は予想と違い以外でしたが、商売柄見れば見るほど面白い。どんな本が、いやこんな本がこの明治42年にここを通じて全北海道に流通していたのかと。へーこんな小説が、教科書が、地図が、詩集がと興味は尽きずわくわくするほどです。
 自分の営業意欲の促進剤として、参考書として捨てがた1冊です。

「世界印刷文化史年表」を見る

furuizo2007-06-08

 印刷の歴史のような題名だが、どっこい、出版の歴であり、本の、それも詳細な歴史の本である。それが「世界印刷文化史年表」(庄司浅水編昭和11年ブックドム社刊)です。
 225頁の本文のウチ「グーテンベルグ以前」は30頁ですから、印刷発明以後が主ですが、それぞれの項目に具体的な出版物の名前が出てきますから、充分に参考になります。
 もちろん体裁は年表ですから順に読むわけではありませんが、必要なところを見てから、ついついその前後を拾い読みしてしまいします。もちろんですが、この本に登場する30頁以後の国は西洋の数カ国と日本です。
 一番自分に必要な147頁以降の「本邦活版移入以後」は実はまだきちんと読んでいません。