kiiiiiii「strike Vol.3」@吉祥寺Star Pine's Cafe

↓左がu.t. 、右がLakin'

↓ドラマーの子が描いたイラスト。Goodでしょ。

18:30開演だと思って急いで行ったのだが、着いて開場時間と開演時間を間違えていたことに気付く。つまり1時間も早く着いてしまったので、すぐ近くの大戸屋で食事を先に済ます。いつもの黒酢****定食ごはん大盛りで(そうすると値段が777円になる)。7時すぎに会場に入るとライブ料を払った先でドリンク代を取られるのだが、普通だと500円なのがここは違った。メニュー表があって600〜1000円ぐらい。最低の600円はちょっと恥ずかしくて選べず700円のエビスビールにした。ライブが¥2300だったので、結局計3000円。中に入ると二階建ての面白い構造とおしゃれな雰囲気。隠れ家的な間接照明と適度にタイトなスペース。名前がカフェとあるだけに、後方に20人程度のテーブル席やイスがあったりしてライブハウスよりも少し落ち着いた感じ。イスに座ってゆっくりとドリンク飲んだり軽食を楽しみながら見れるってのがなかなかいいね。吹き抜けになっているので二階にある席からも見る事が出来る。カフェ+ライブハウス÷2ってところか?
kiiiiiii(iが7つ)という女性二人のバンド。きぃー?きい?きー?発音した感じをどう書けばいいのかちょっと迷うけど、”きぃ”がニュアンス的に近いかな。前半は最近発売されたDVDの鑑賞会。2人の簡単な説明を交えながら、前面に降ろされたかなり大きなスクリーンで見る。CDは発売されてないからこのDVDがデビュー盤みたいなもんなのかな。これがなかなかいい出来。凝った内容といい感じの遊び具合。映像にいろいろと面白いエフェクトがかけてあったりする。ドラムセットが何もない所で、素手でドラムを叩く動きをすると、そこにスティックやドラムが現れて音が出たりとか。幼稚でポップな感じのグラフィックセンスもツボにはまった。過去のライブ映像も結構あって、アングルなんかがかっこいい。ライブとは関係ない笑わせるような映像も合間に入ってたりしてこれはオススメ。
後半スクリーンが上にあがり、ステージに現れたのは、だらだらと動く熊っぽい着ぐるみ二体。中に彼女達が入ってるのかと思ってたらそうでもなくて、後から現れた二人。長い丈のかわいいワンピースがかわいくて、パンクバンドには見えない。若い女性二人のバンド、それもパンクだから男性客多いかなと思ったけど、そうでもなく女性客の方が多かった。予備知識なしに見に行ったんだけど、衝撃的だったのが、楽器がなんとドラムだけ!(たまに子供のおもちゃみたいなキーボードや笛を使ったりはするけど)。そんなのあり? メロディーなし、ドラム&ヴォーカルという初めて体験するスタイル。慣れてくると音数の少なさなんて関係なくこれがなかなかいける。ヴォーカルの子(u.t.こと タヤマ ウタコ)は山田優をすっきりさせた感じ。途中から着替えた衣装が鮮烈。水色のTシャツ、黄色のランニングパンツ、ショッキングピンクのロングソックス。ちょっと想像してみてよ。インパクトあるよ。もちろん、かわいいからこそ許される配色かも。フォウ・ムラサメっぽい髪型もいい感じ。ドラムの子は誰に似てるか思いつかなかったけど、簡素なドラムセットで、シンプルにまっすぐに、リズムを刻むのではなくハートを刻み込む。譜面通りに叩くのではなく、気持ちや勢いをドラムにぶつけてる感じがすごくした。要するにかっこいい。女性がドラム叩いてるだけでかっこいいけど、彼女(Lakin'こと、タダ レイコ)の場合はよくあるドラマーの枠に収まってないところがいい。見てて何となく、XのYOSHIKIを思い出してしまった。テクニック云々ではなく、勢いが何となくね、、、。
ほとんど英語歌詞でハイテンション・ハイトーン・ノンストップなボーカル。時にヒステリックなスクリーム。歌詞のない部分では、存在しないメロディを埋めるかのように擬音のようなボイスが入ったり、叫びが入ったり。中でも、しめに「き・い・い・い・い!」って歌詞が入る曲が一番好きになった。あと、サビのような勢いのあるフレーズを何度かだけのあっというまに終わる曲もかっこ良かった。ほとんどアカペラで歌ったりもする。アカペラでパンクって、新鮮でしょ? 普段あまりパンクなんて聞かないけど、思わず”パンクいいぞー”と、心で叫ぶ。面白くて、かわいくて、かっこよくて、はじけ具合がハンパじゃない。どこに飛んで行くのかまるで予想のつかないはらはら感。不安定で、張り裂けてしまいそうなエネルギー。ドラムいっちょでバンドやっちゃう所とか、シンプルな曲の造りとか、とにかく新鮮で面白かった。純粋にミュージックというより、音楽半分パフォーマンス半分って感じ。だからCDで聞いたりするようなバンドではなく、曲とパフォーマンス含め生でライブで一緒に楽しむバンド。 どんなパフォーマンスがあったかというと、、、手を入れて口がぱくぱく動かせる人形みたいなやつをカスタネットのようにぱくぱくさせてリズム楽器として使ったり、客席の奥まで割って入って行って笑えるようなパフォーマンスしたり、マイクスタンドを斜めに持ちエアギターをやったり、声でギターの音を真似るように出してみたり、弾き終ってピックを客席に投げるふりをやったり、マイクコードでなわとびしたり、見てて飽きない。マイクをバットのように持ち、客に向かってバッターの様に構える。ん、何?と思ってると、ボールの飛んで来る効果音をドラムの子が鳴らす。一球目インコースに来たビーンボールを思いっきりのけぞってかわす。二球目を見事にとらえホームラン。すると最前列にいた客と喜びのハイタッチ!、ハイタッチ!(あぁハイタッチしたかったなあ)。1時間半ぐらいのライブだったと思うけど、遊び心満天。お客を楽しませる事を一生懸命考えてると思った。それと同じぐらい自分達も楽しんでるんだろうけど。
あと気に入ったのが、赤・青・黄色、ポップなカラーでミニサイズの子供のおもちゃみたいなキーボード。侮るなかれ、音色がいくつか変えられるみたいでちょこちょこいじって調整してるのを見て欲しくなった。今時のおもちゃはよく出来てるからなあ。デザインもGood。棒を伸ばしたり縮めたりして無段階に音が変化するおもちゃの笛も面白かった。真剣に探してみようかな。 翌日HPの日記をチェックしてみると、突然片耳が聞こえなくなり病院で見てもらったところ重度の聴覚障害を患ってることが判明したとのこと(鼓膜ではなくその中にある蝸牛という箇所に損傷があり非常に治りにくく重傷であるとのこと)。そういうわけで治るまで絶対安静、つまり当分の間ライブはキャンセルとの事。残念だけど、きちんと治して復活して欲しい。7/7七夕に下北沢 Club QUEでやるライブまでには治るかな、、、、。年齢が気になったのでHPで質問してみたけど、うまくはぐらかされた。見た感じでは、20代半ば〜後半ぐらいだと思う。


kiiiiiii  http://www.kiiiiiii.com/
   ↑のブログ(写真いっぱいあります)  http://kiiiiiii.exblog.jp/
●この日のライブの写真  http://www.kiiiiiii.com/photos/photos1.html
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●DVD「GOLD & SILVER」  http://www.kiiiiiii.com/dvd/dvd.html
●吉祥寺Star Pine's Cafe  http://www.mandala.gr.jp/spc.html



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劇団・本谷有希子(アウェー)「密室彼女」@ザ・スズナリ


乙一の原作を本谷が脚本化し演出するという、コラボレート番外企画。現役小説家とコラボして演劇って、ありそうであまりない企画かも。面白い事考えたな。チラシのクオリティも良ければ、本谷の付けたタイトルのセンスもいい。さすが若き演劇界の旗手。オーソドックスなお芝居もいいけど、こういう新しい事これからもどんどんやって欲しい。この先ますます目が離せそうにない。開演前には、本谷嬢の声でアナウンス。「入場時に渡しましたミニブックレットの裏側には乙一氏の原稿が掲載されていますが、ネタバレになりますので絶対に終わるまでは開かないで下さい。もし開いたら係りの者が止めに参ります、、、」なんて言って地味に笑いとってた。
ビルとビルの狭間に出来た5m四方ほどのスペース。タイヤ、ロッカー、ガラクタなどが散らばっている。天井部分のセットの造りがいつものごとくいい感じ。人が抜けられるほどの隙間も無く、たまたま出来た密室のようなこの空間に彼女は落ちてしまったらしい。それも何故かママチャリとともに。落ちてきたママチャリで頭をケガした男と2人の密室生活が、かるーくゆるーい感じで始まる。何故かたまに空から降ってくるお菓子(かきもち)で飢えをしのいでいたりする。ビルの狭間だからなのか、エコーのかかった叫び声の演出が面白い。 まずびっくりしたのが、吉本菜穂子。今までは、ちょっとバカっぽくてヒステリックなノリの役が多かったけど、今日は”別人!”。服装、髪型、メイク、演技、声質、立ち姿。ここまでかわいくなっちゃうんだ、と感心し、うっとりする。今までの彼女を知ってるだけにその落差が見事。黒いキャミソールの上に白いホルターネック!、その上に黄緑色のカーディガン、下は黒のバミューダパンツの上に膝上ぐらいの黒スカートを重ね、膝下から伸びる生足に目がいく(カーディガン脱いで、ホルターネック姿見せてほしかったなぁ)。ヒステリックな声は鳴りをひそめ、どことなく弱々しい。ほぼ劇団専属&看板女優の吉本が新しく見せた乙女チックな一面。彼女を軸に話は展開していく。
時間が移り、場面が変る。同棲していた女を殺してしまった男2人、死体を運んでいる所を目撃し2人に監禁される通りすがりの女。逃げてる時に自転車で派手に転倒し捕まってしまうのだが、頭を打ったのをいいことに記憶喪失の振りをして危険から逃れようとする。好きだった女性の幻影を彼女に見る片方の優しい男。もう片方の疑い深い男は彼女の記憶喪失を疑っている。名前も覚えていなかったので殺した女性の名前で呼ばれるようになると、次第に(2人に聞いた話などから)その女性を演じるようになっていく。Sな彼女を演じてやるSMごっこが面白かった。男は昔同棲していた女性が蘇ってきたような感覚を覚え、女は優しい方の男に錯覚したような恋愛感情が生じていく。 大事なものをなくしてしまった事で気付く感情、自分を消しさる事で見えてくる本当の気持ち。すれちがう感情と軽い苛立ちを軽いタッチで描く。中でも、自転車に二人乗りするシーンがとても印象的だった。吉本が後ろに女の子座りなんかして腰に手をまわし頭をもたれかけ、こっそり口紅を塗り直すところがかわいい。文学的でもあり、映画的でもあり、今までの作品にはないものを見た感じ。 最後は男2人仲違いをしたかのような芝居を打ち、まんまとだまされたように見えた女が逆に相手の心を読んで隙を見て逃げる。 すんなり逃げたは良かったが、この自転車でそのまま帰るのはまずいと重い自転車をビルの隙間に投げ捨てる。自転車だけ投げ捨てるはずが、誤って自分も一緒に落ちてしまう。つまり冒頭のシーンへとつながっていくわけだ。時間軸をずらしたりするのは特に目新しいわけでもないけど、わけわからなくなるほど前後行ったり来たりするわけでもなく最後にするっと冒頭にリンクして終わるのは意外とすっきりいい終わり方だなと思った。
他に気が付いた点を箇条書きにすると、
・最後のセリフが、おしゃれ。「世界がこんだけ歪んでんだからさ、あんたの性格なんて歪んでないのといっしょだよ。」 小説書いてるだけあって、文学チック。
・人との関わりのわずらわしさを語るセリフが、いかにも本谷有希子らしかった(本音?)。「いっそ、みんなが演技してると割り切れた方が全然ましです。」
・だいたい本谷有希子のお芝居にはセクシャルなシーンがあるけど、今回は直球でSMシーンがズバーンと来た。
・役名に”しょうこ”とつけて、新ブログの女王中川翔子(ショコタン)を思いっきり揶揄するようなセリフを豪速球で投げちゃうし。
今回は彼女が書いた脚本ではないので、いつものどろどろ血液な愛憎劇ではなく、変な重たさのないサラっとした感覚が新鮮だった。乙一原作そのままでは流れに面白みがないのでやったであろう1ひねり入れた展開が少し話をわかりにくくしてたのと、いつもに比べ笑いの要素が中途半端だったのが残念なところ(わざと抑えた? でも、かきもちネタはしつこかった気がする)。乙一による巧妙な設定のシチュエーション、本谷による軽さと切なさが絶妙なバランスのキャラクター。原作を他人に任せ、演出に専念するという”アウェー”公演はいつもの濃い味を知ってる人からすれば何か物足りない感じがしなくもないが、これはこれで軽めの短編小説でも読んでる感じで悪くない。無理して年2本自作の公演を打ち、結果中途半端なものを作るぐらいなら、間にこういうのを挟んで1本1本のクオリティが上がるなら大歓迎だ。そういえば、今気が付いたけど演劇界でこういうのってあまり見ないよね。有名な小説から脚本をおこすというのはあるけど、作家に書き下ろしで書いてもらいそこからお芝居にするというのは新しいやり方のような気がする。同世代の人同士でコラボレートするというのもいい感じ。本谷にとっては、製作過程で作家とコミュニケートする事により作家から何かを吸収し、より作家としての自分を高めるいい機会にもなってそう。1石2鳥というわけか、、、。これから先もどんなアイデアがこぼれ出てくるのか楽しみな存在だ。


●劇団・本谷有希子  http://www.motoyayukiko.com/index.shtml
  ↑のブログ  http://blog.eplus.co.jp/motoyayukiko/
拙者ムニエル  http://www.sessya.com/
吉本菜穂子JALのCMに出演  http://www.jal.co.jp/jaltv/cm/
     (JALカード「カードで払いたい篇」)


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Nibrollニブロール プレミーティング「making of Nibroll」@代官山17(ディセ)


普段行く事のない、代官山にてNibrollの新作プレミーティング1回目。ちょっと早く着いたので周囲を軽く歩いて回ったけど、GW中という事もあってか気持ち悪いぐらい人が多かった。ここ数年で知名度上がったから、遠くからも来てるんだろうな。どのぐらい見に来てる人がいるのかなぁと思いながらディセの中に入ってみると、結構いた。40人ぐらいかな。ガラス張りで明るいスペースに大きなTV1つ、円卓1つ(ここにNibrollのメンバーと司会役の人が座る)。そのすぐ後ろにベンチのような席が5〜6列あってここが客席。予約の人から座っていって、立見もいた。
来年?の本公演に向け徐々にスタートしてるといった感じの今日のミーティング。まず、最近発売したみたいのNibroll映像集DVD(「林ん家に行こう」から、「ドライフラワー」までダイジェストで収録。¥3000)を大きなTVで見ながらこれまでの公演を振り返る。「ノート」をドイツでやってすごいスタンディングオベーションを受けた時の事とか、あまりダンステクニックを使わない事をよく指摘されるから「ドライフラワー」では意識的に使ったとか(この作品は嫌いという姉・矢内原美邦(振付)と、俺は気に入ってるんだけどという弟・矢内原充志(衣装)との意見のぶつかりあいが面白かった)、それぞれの作品の根底にあるテーマとか、いろいろと面白かった。時間はだいたい約90分ぐらい。まだ新作についての具体的な話がないのは残念だったけど、全てのメンバーの顔や声、会話が見れて親近感が湧いた。今日の美邦さんはなんか大人っぽくてかっこよかったなぁ。ブログで見せる面白い一面や、アフタートークなんかでのまとまりのないトークとは違い、真剣な感じが伝わってきた。最後、世界を1つと捉えるかどうかで、司会の人と矢内原姉弟で対立。この対立トークが熱かった。そこで聞いた伊藤剛さんのロシアとアフリカの面積の違いの話に感心した。よく見るメルカトル図法の地図ではアフリカよりもロシアが1.5倍ぐらい大きく見えるのだが、実際の面積はロシアの方がアフリカの2/3しかないのだそうだ。メルカトル図法の錯覚。TVなんかの影響も大きいかもしれないけど人間って無意識的に変な固定観念に縛られたり捉われたりしてるんだなとあらためて思った。本公演はまだまだ先だけど、それまでに準備公演(6月末@横浜STスポット)やワーク・イン・プログレス(8月@妻有トリエンナーレ)があり楽しみはたくさん。変化の過程を楽しみつつ、たどりつく最終形つまり本公演がますます楽しみになってきた。
終わった後、即売会の方へ。Nibroll about streetの洋服がたくさんと、あとはDVD3点を販売してた。服はTシャツ以外ほとんど女性ものなので見てもしかたなく、DVDの方を2点購入。さっきのミーティングで使ってたこれまでの作品の映像集と昨年吉祥寺シアターでやった「3年2組」のDVDを買った。「3年2組」は特別に脚本付き。おまけにその場で、矢内原美邦さんがサインまでしてくれた。嬉しい。会場を後にして、ちょっと後悔したのは、サインの後に握手もしてもらえば良かったなぁと。それと、ああいう時に自分の事を覚えてくれるような気のきいた一言が言えればなぁとも思った。本人前にするとなかなか言えないんだよね。


Nibroll  http://www.nibroll.com/
矢内原美邦の毎日が万歳ブログ  http://www.nyyg.com/mikuni/
●妻有トリエンナーレ  http://www.echigo-tsumari.jp/



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明日図鑑「岸辺の亀とクラゲ」@THEATER/TOPS

ワンルームマンションの202号室が舞台。半同棲の女教師とサラリーマンのカップル。近所のスーパーで目が合った万引きおばさん。部屋を間違え入り込んで来た酔っぱらいのおやじ。一つ上の階に住むそのおやじと同棲していたキャバクラ嬢は女教師の10年前の教え子だった。単なる偶然かと思いきや、そこからゆっくりと忍び寄る復讐劇。段々とあらわになるそれぞれの関係と過去。人に迷惑をかけている事をなんとも思わない、、というよりも気付いてない女教師の勘違いと被害妄想。
昨年の夏、三鷹市芸術文化センターでやった前作品「爛漫」は人情味のあるさびしくも暖かい話で笑いの壺にもはまって楽しく見たのだが、今回はなんかコンパクト&クールで、しーん、、、と見入る事の多いお芝居だった。笑いの部分も少なく、やっても上滑りしててあまり笑えず、正直睡魔に襲われた。時間は100分ぐらい? 短め。急展開する後半、カタルシスを感じる事無く「え、何?」突き放された感じで終わる。落ちもピンと来る事なく消化不良。小品に終わってしまった感は否めない。時間不足で本来の完成度に到達しないまま公演を迎えてしまったのではとかんぐりを感じるような脚本だった。やはり牧田明宏さんには地味で人情的で悲しい中にもちょっとした幸せを見出すようなそんな話が一番だなぁと思った。主宰の牧田さんが、ワンポイントで自分のお芝居に出演するのはいつもの通り。今回はどもりがちに話すどことなく怪しい教師役。うまいんだけどリアルに気持ち悪かった。山口奈緒子さんは、利用出来るものは利用するみたいな現代を象徴するような醒めた女性の役をさらっとこなす。前回の天然ぼけな役も良かったけど、今日のクールな役も決して悪くない。独特の低音ノイズ混じりの声も今日の役に底気味悪い迫力を付加していた。谷川昭一朗はもう見飽きた。同じに見える。芝居がだいたい予想の範囲内。うまいとは思うけどやはり芝居臭さが鼻についた。サラリーマンの人、なんか見た事あるけどずっと思い出せず、終わってからパンフの”SHAMPOO HAT”の文字見て思い出した。野中隆光さん。前に「事件」で硬派な刑事役やってた人だ。先に帰宅した彼が、顔に似合わずていねいに彼女の洗濯物(ブラジャーなんかも)をたたむ姿が笑えた。
演出で面白いと思った点が1つ。姿が見えない玄関での訪問者とのちょっと長めの会話(声だけが聞こえてくる)。体が少し隠れるベランダでのやりとり。こちらに背中向けた男と向き合っている彼女(背が彼より低いから顔が見えない)との会話。壁際でこちらに顔見せずに携帯でひそひそ話したり。つまり、わざと表情や身振りを見せないような演出を意識的にやっていた。どんな顔をしているのか客に想像を働かせる為なのか、それとも顔を見せない事で、やる方も見てる方も声に集中させようとしていたのだろうか(声で細やかなニュアンスを表現する、声から気持ちや表情を読み取る)。見てる方としてはちょっともどかしいが、見えない事によって見ようという強い力が働いていたかも。


●明日図鑑  http://www.ashitazukan.com/
The SHAMPOO HAT  http://www33.ocn.ne.jp/~shampoohat/main-2.html



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Dance Colloquium#4「処女作 virgin 」、振付:山崎広太@アサヒ・アートスクエア


アサヒアートスクエアという悪くない会場、かなり有名な振付家の作品、そして1ドリンク付きで、たったの¥1500。リーズナブル! チラシのデザインとかもかなりカッコ良くて、この企画気に入ってるんだけど、いつも2回ぐらいしか公演打たないのはそれほど客が入んないって事なのかなぁ。あまり告知に金かけてないみたいだし、見に来るのは身内や知人や関係者ばかりって感じ。ホームページはなかなか更新しないし、相変わらず商売っ気ないよなぁ。ちゃんと一般の客を呼ぶ気あるのだろうか(ないのだろう、、)。
真っ暗な中、悲鳴?金切り声?、、で幕をあける。最初の10分くらい、少しだけ照明をともした薄暗い中でダンスが始まる。ワンポイントで赤いラインが入った黒ワンピースを着た女性7人。若手から30代ぐらいのベテランっぽい人まで幅広いキャスティングという印象。7人とも同じ衣装というのが少し味気ない。薄暗い上に黒い衣装だから動きがよくわからない。次第に照明も明るくなり、動きを把握出来るようになる。山崎さんのダンスを見た事ないけど、ちらほら情報は耳に入っている。アフリカ、プリミティブというのがなんとなく思い浮かぶイメージ。そのイメージに大きく外れる事なく、特に前半怪しい不恰好な動きが目立つ。途中数回悲鳴があがったり、7人揃っての少し抑えたような笑い声が何とも言えず不気味。結構高さのある赤いハイヒールを履いてのダンス(ちょっときつそう)を挟んだりしつつ、後半はバレエっぽいなめらかで柔らかい動きの振りつけが多かった。6人や3人でユニゾンしたり、両脇の壁を使ったり、外周(客席の後ろ側)を使ったり、どこに焦点を合わせたらいいのかあちらこちらで縦横無人に繰り広げられていく。 一旦控え室に全員消えたと思うと、少ししてバスタオルだけを体に巻いた女性が1人外周をのらりくらりふらふらと歩き出す。その後ダンスはクライマックスを迎える。手や足が血まみれになった人が一人また一人苦しそうにふらふら歩いて来ては床に倒れていく。息絶え絶えの彼女達。良く見るとスカートの奥つまりあそこから血が流れているみたい。処女を失ったって事か。そして照明が落ちる。うーん、最後は芝居じみててちょっとひいた。
1つ気に入らなかったのがBGM。どういう人の曲かわからないが、緩急があまりなく少し早いかなと感じるぐらいのリズムでずっと続く感じなのだ。言葉でうまく伝えられないけど聞いてて非常に疲れた。あとは、30代以上のベテランっぽい人が4人もいたのがちょっとね。若者より技術のあるベテランを選んだって事? この企画ってどっちかというと、かなりキャリアのある年輩の舞踏家が、まだ若くてフレッシュな今時のダンサーに振付をするっていう企画だと思っていたから、ちょっとずるいような気がした。 あ、でも主催者がダンサー選んでるかもしれないな。振付師とダンサーのぶつかりあいみたいな感じの事を謳ってる企画だからね。 奇抜な演出ばかりが記憶に残って肝心のダンスがあまり記憶に残らず。かなりダンスに見慣れてきて免疫出来ちゃったってのもあるんだろうけど、今日のはあまりビビっとくるものが少なかった。一つ一のダンスの振りで面白い所はあったけど、総合的に何かを印象づける事なく終わった。変に芝居じみた部分があったからなおさらダンスとしては印象が弱い。


●ダンス・コロキウム  http://www.luftzug.net/dc/



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MCR EXPO 06S「シナトラと猫」@下北沢駅前シアター

昨日とセットは同じ。多少リンクする違う3つの話をそれぞれ1日限りって凄いよなぁ。脚本書くのも、やるほうも大変だし、稽古やって本番1回きりかい?って。元々1つだった話を収まりが悪くて三分割したとか?いやぁ、普通に考えて見合わないよな。好きな事を好きでやってるって事でしょ。うらやましい。今日は昨日に比べストーリー色はかなり弱く、笑い全開で突っ走る。昨日だってかなり笑ったが、今日は腹をかかえて笑うというか、上半身がおもいっきり反応しちゃうみたいな感じ。バカ笑いを何度かした。お芝居のように見せかけておもいっきり本気ビンタされたり、ありがちだけど話の流れで、いきなりものまねやってよって振られたり(いきなり振られて、素でうろたえる姿に爆笑)、あと、脚本がきちんとあったうえでやってるのかアドリブや即興でやってるのかわからないけど稽古の段階では知らされてなかった展開をいきなり本番で振られちゃったみたいな感じの部分が何度かあった。お芝居という括りの中ではあまりありえないアドリブや即興的要素。驚きの反応と、なんとかくぐり抜けていく対応が見てて面白い。あと未来や過去を見る事の出来る子がいるのだが、頭抱えてうめきながら、「未来が見える、、、あ何かが見える、、、」とか言いながら6人ぐらいいる役者の実際にあった笑い話を暴露していったりしたのにも笑えた。顔赤くして「えっ、それ言っちゃうの?」ってかなり恥ずかしい思いしてるような笑い話連発。そういえば、「シナトラと猫」っていうタイトルの意味がわかった。1話目の主役が椎名、2話目が虎雄、今日が猫。3つつなげると、椎名・虎雄・猫、、しいな・とらお・ねこ、、、しなとらとねこ。多少無理はあるけど、まぁ”☆よくできました☆”ぐらいかな。
空き地に居付いてる野良猫(男の人がそのまま普通に服着て猫の役をやってる。男がやってるけど実はメス猫。)。客にぺこぺこする事に嫌気がさし、仕事や家庭を捨てその猫をかわいがっている男。空き地に遊びにくる子供達。いつも一人取り残されるカギっ子の宮本。猫とおじさんとカギっ子。さびしいようで、そうでもない3人のへんてこな関係。自由ってこういう事かと、ふと思う。猫がおもいっきり醒めているのもよかった。のどをごろごろやられて、別に気持ちよくなんかないんだけど、とりあえず少しは喜んだ顔もしてやるかみたいな感じで。人間関係でもそういうの良くあるもんなぁ。猫の方がよっぽど達観してて、反発してもいい事ないだろうから甘んじて受けてやるかみたいな優しさというかあきらめというか。男は男で、それほどなついてもない猫をただただ面倒を見ていたりする。結局人間なんて勝手なもんだけど、見返りなんて求めない一方通行みたいな3人の関係を自分とだぶらせながら見ていた。
天然の伊達香苗、醒め醒めな黒岩三佳、気の強い上田楓子、ぶりっこな山田奈々子。4人の女優、それぞれに持ち味がはっきりと分かれてて、ピンでも面白いが絡みがまた面白かった。今日もまたガンダムネタあり。さりげない昨日と違って今日は炸裂。というかやりすぎ。かなりメジャーなジェットストリームアタックねた。面白いけどちょっと長くて間延びしてた。でも「ガンダムは僕が一番うまく動かせるんだ、、、」って名セリフをアムロさながらに言うのには思いっきり笑った。次は、6/21に中野スタジオあくとれで番外的なドリルチョコレートの公演。いつもとどう違うのか、この目で確かめよう。


●MCR  http://www.mc-r.com/index.html



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MCR EXPO 06S「シナトラと猫」@下北沢駅前シアター

3日連続企画の2日目。多少リンクはするけれど3本全く違うお芝居を1日ずつ日替わりというのが凄い。たった1本の為にどれぐらい練習をするのだろうか?普通に1週間ぐらいの公演やったってたいした収入にはならないだろうに、ここまでやられると潔い。お金じゃないんだろうなぁ、、、。本当は黒岩三佳さんが主役の初日が一番見たかったんだけど、チャットモンチーと重なった為断念。これだけたくさん見に行ってると、どうしても予定重なることが多い。最初の内は、ダブルブッキングも時々あったけど、Yahooカレンダーで管理するようになってからは問題なし。後から重要なのが重なって来た時が問題だけどね。優先度低い方のチケット代ドブに捨てる場合もあるけど、オークションで多少安くなっても捌いたりもできるからね。いい時代になったもんだよ。
カラーコーン(工事現場によくある三角錐のやつ)で埋め尽くされた壁。つまり、ハリネズミみたいな感じね。青を基調としながら中に赤色がぽつぽつと。レゴっぽいPOPさが新鮮な舞台美術。シーン切替えの暗転時には中に電球が仕込んであってピカピカ光る芸の細かさ。前に見た時もそうだけど、この劇団は舞台セット、衣装などの目に見える部分、つまりデザインに関する部分のセンスが良くて大好き。シンプル&ポップ。セットがポップなら、今日の衣装はこれまたシンプル。ただの真っ白なTシャツのお腹と背の部分に大きく黒い文字で名前が書かれていた。衣装ってただ役に合ったのを着るだけなのが普通だけど、こういうふうにアプローチ出来るってのはなかなか面白い(笑い寄りの芝居だから出来る事かもしれないけど)。
ヤクザな荒っぽい親父と、脳天気なちょっと抜けた天然な母親。その家の庭に置いてあったダンボール箱に捨てられた捨て子。家族同然に同居している父の子分・オガワ。その後、2人の間に産まれた次男。捨て子は虎雄と名付けられ、家族同然に育てられる。捨て子だという事を隠す事なく。 虎雄の友達に、「虎雄は捨て子なの?」と聞かれ、父はあっけらかんと「捨て子だよ」という。それを見て、とまどう虎雄。「だから、なんなんだよ。捨て子は捨て子だよ。」と父。 生まれがどうだろうと、血がつながっていようとなかろうと、そんなのは関係ない。1人の人間としてどう生きるかが大事なんだと、そう感じた。学校で捨て子だといっていじめられる虎雄。そんな兄を見て捨て子であることを否定する優しい弟も、大きくなるにつれてだんだんと不良になり、優しいだけの弱っちょろい兄の事をけなすようななる。高校生になり家にもよりつかず父ともケンカする始末。そんな中で父の吐くセリフが突き放すようで実は暖かかったりする。 はっきりとは説明はなかったけど、孤児だったことを知ってオガワのことを親身にしてくれるようになったらしいから、実は彼も孤児だったのではないだろうか? だから、逆にあんな強い事が言えるのでは。そういえば、前回の公演でも、どうしようもない失恋の後拾われた女性の話をやってたなぁ。もしかして書いている脚本の人自身も?まあそんな事詮索してもどうしようもないんだけど。
気持ちよく見れて、素直にたくさん笑えて、最後にはほろっとさせる。骨太なストーリーというわけではなく軽いテイストではあるけれど、笑いとストーリーのバランスがいい。というか、むしろ軽くストーリーのついたお笑いを見てるのに近いかも。変にブラックユーモアとかシュールな笑いとかではなく、敢えて言えば吉本とか王道のお笑いに近いような気もする。全然お芝居見た事ない友達を迷わず誘える数少ない劇団。ストーリー重視の人には勧めないが、笑いを求めている人、軽いエンターテイメントな感じで見る人にはほんとオススメです。そういえば今回も出てきた”ガンダム”ネタ。お芝居に合わせて、いかにもガンダムな効果音が1回鳴っただけ。この前の公演に比べてかなりさりげないネタだったけど、やはり30代が多いのか反応鋭く、男性客は爆笑。わからない人には、「えっ、何で爆笑してんの?」となってるんだろうな。今後も是非ガンダムネタ続けていって欲しい。
あひるなんちゃら・黒岩美佳(あひるなんちゃら←劇団名です、一応)の醒めた表情が相変わらずクール。今日は主役じゃないのでかなりセリフも少なく残念だったけど、あの表情見れただけでも充分だったりする。カーテンコールの時も、普通ならやり終わって安堵した表情とか拍手聞いて少しは笑顔とかになりそうなもんだけど、そんな表情はまるで無く、なんか機嫌でも悪いの?とか思ってもおかしくないような表情だった。達観したような目と、隙のない表情、セクシーなほくろがクールビューティー。シリアスもいけて、ブラックな笑いの取れる女優。いそうでなかなかいないキャラだと思う。脚本・演出の櫻井智也さんはほとんど素じゃないかというぐらいのジャストフィットなキャラクター。思いっきり、はじけてたなぁ。伊達香苗(通称:ダテカナ)は、この前と同じくお決まりのように超天然ぼけキャラ。顔からして天然系だもんな。いやそれともああいうキャラがこういう天然顔を作り出すのか?、、、。今日も思いっきりボケかましてくれて、たくさん笑わせてもらいました。いい空気持ってる。


●MCR  http://www.mc-r.com/index.html



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