氷室冴子 ざ・ちぇんじ! 新釈とりかえばや物語

時は平安後期。権大納言の藤原顕通は2人の子どもに恵まれた。しかし、男勝りで活発な姉は男の子として、内気で気絶癖のある弟は女の子として育ってしまった。15才になった綺羅姫は元服し宮中で仕えることに。帝が気にする女性は、家で泣いている弟の綺羅君!?

とりかえばや物語氷室冴子がドタバタコメディに仕上げる。主人公たちの喜びと悲しみは読者の感情となり、終いには敵さえ愛おしい。氷室冴子の上手さに押し倒されるようだった。姉弟それぞれ成長する姿にハラハラしっぱなしで終盤まで飽きがこない。綺羅姫、綺羅君、大好きだ。源氏物語女三宮の心境がわかったのも大きな収穫だった。もしも氷室冴子ピカレスクロマンの源氏物語を書いていれば……。

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石崎洋司 阿倍野ちゃこ JC紫式部 1 転校先は、”姫”ばかり!?

アメリカから京都に転向してきた中1の一ノ瀬彩羽は、イケメン高校生の藤原道長さんに助けられた。注目を浴びてしまい、おとなしく過ごそうと思った学園生活は大ピンチ! お世話役の藤原紫さんは面倒見はいいけど、強気でマイペース。クラスの中心人物、清原清菜さんとは合わなくて、もしかして孤立しちゃう?

源氏物語の懐の大きさを感じさせる紫式部転生×学園もの。「方違え」「庚申待ち」「百鬼夜行」など平安時代のリアルが年間行事に取り入れられ、賑やかな学園生活が書かれる。ライバルキャラ清原清菜ちゃんのアイドル衣装が可愛い! と喜んでいると、終盤からエンディングにかけてシリアスな空気に展示て驚く。

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遅塚忠躬 フランス革命 歴史における劇薬

「自由・平等・友愛」を合言葉に,歴史に大きな転換をもたらしたフランス革命とはなんだったのか。しかしそれは社会構造を変える薬であり、多くの死者を出した劇薬でもあった。当時の資料から人びとの苦悩と、革命そのものの意味を考える。

歴史の出来事には、起こるための理由・原因・流れがある。フランス革命は裕福なブルジョワと、貧しい民衆や農民による衝突であり、右にも左にも大きく振れた。そのエネルギーは、世界への薬にもなり劇薬にもなった。すなわち、社会的デモクラシーの効果と同時に、独裁と恐怖政治の痛みを生んだ。本書は歴史をまとめたものではなく、革命とは何かを解説したと著者は記す。

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