氷室冴子 峯村良子 少女小説家は死なない!

北海道から東京にやってきた大学生、朝倉米子の下宿に売れない小説家(志望)火村彩子先生が転がりこんできた。この世界で生きていくためには、同じ掲載誌を狙うライバル作家を蹴落とすしかない!

ファンタジーやキラキラした学園もの、耽美小説など、それぞれのジャンルを得意とする作家たちがくり広げる掲載バトルロワイヤル。ただただ純粋な敵意は山田風太郎忍法帖を彷彿とさせる。権力者である編集者を圧倒的弱者として書きながら、一般読者を被害者に設定し物語の軸にする。美味しんぼの栗田さんのようなポジションが笑いを生むのか。続編「少女小説家を殺せ!」が感情のコンゲームで最高。

室橋裕和 カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」

バターチキンカレーに甘めのナン。オレンジのドレッシングがかかったサラダとラッシーがセットの安価なランチ。各所で見かけるインドカレー店の多くはネパール人によって経営されているが、インネパと呼ばれるほどカレー移民が増えた背景を追う。

近所にネパール人経営のカレー屋ができて、ピリヤニが実に美味しい。タンドリー窯で就労ビザが複数出るのかと思っていたら、本書であっさりと否定されていた。隣国インドへの出稼ぎから日本に繋がった背景をヒアリングし、斡旋業者のいるネパールまで行くルポタージュ。海外にある日本食風レストランで働く日本人も同じ構図ではないだろうか……。草分けとなったカレー店を紹介していて、日本に本格的な高級インドカレーを持ち込んだ六本木のモティに行ってみた。トマトの酸味とスパイス、塩味が絶妙で、こんな味があるのかと感動した。

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小野不由美 東の海神 西の滄海 十二国記 3

雁国に新王が即位して20年。延王・尚隆と延麒・六太が誓約を交わしてから、先王の圧政で荒廃した国土は平穏を取り戻しつつあった。しかし道半ばには達していなかった。延王に異を唱える者たちが、延麒を誘拐し謀反を起こそうとしていた。国の安泰と玉座を賭けて、2人の理想が衝突する。

人々の生活に紛れ込んで声を聞き、玉座に帰れば政治を仕切る。20年前は、そんな王を格好いいと思っていた……。現場を取り仕切り決裁を待つ役人たちのストレスを見ていると、全く感情移入できなくなっていた。

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