『おとなの週末』
最新号が発売になっております。
こちらの雑誌で私は、『死なないレシピ』という連載をやらせていただいてます。食と健康は強く結びつくもの。日々の三食が体におよぼす影響とは実に大きい…という思いから企画しました。
糖尿、痛風、肝臓疲労など、さまざまな病気をテーマに、予防によいとされる食材、そしてレシピを紹介してきました。
今回は「うつ」がテーマです。
やっぱり精神も食と結びついている部分があるのだと思います。「これを食べたからうつが治る!」というような内容ではありません。こういう要素、食生活が心をよい良い状態にするのに役立っている…ということを書きました。
お手に取っていただければ幸いです。
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/03/14
- メディア: 雑誌
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桂米朝さんの訃報
あのひとには、徳があった。品があるというのだけではなく、もっとあたたかで、大きくて。「高雅で俗で」ということを成したひとだと思う。
私は落語というものの楽しさを、このかたによって知った。今頃は「『地獄八景亡者戯』のほんまはどないなもんやろか」なんて仰っているだろうか。
パソコンに入れてあるCDをちょっとかけてみたら、胸がいっぱいになって涙が出てきた。著作はほぼ読んでいる。私は冗談ではなく、あのひとの書生になりたかった。二十代前半の頃に出会っていたら本気で頼み込んでいたと思う。事務所の雑用でもいいので、側においていただきたかった。
米朝さんは、あの世にいったらまず真っ先に誰のところに行くのだろう。探求心旺盛な米朝さんのこと、三遊亭圓朝のところに駆け寄っていって「ずうーーっと訊きたいと思ってたことがありますのや」なんて質問するのじゃないだろうか。そして先に逝かれた絹子夫人が「あたしには目もくれず!」なんて笑って怒ってるような気がする。
しばらくは聴けないなあ…。
合掌。
上田勝彦さんのインタビュー記事
発売中の『栄養と料理』に、企画した記事が載っています。
(雑誌のサイトは→こちら)
テレビでもおなじみ、水産庁職員・上田勝彦さんのインタビュー記事を執筆しました。日本の魚食のこれから、福島の漁業復興にかける思いなどを伺っています。
日本の外食産業ではお刺身やら、魚料理がたくさん。回転寿司も大人気です。しかし日本の魚食文化は失われつつある…と語る上田さん。
私のブログをのぞいてくださる方は、少なからず食に興味のある方が多いと思います。そこでお聞きしたい。皆さんは最近、魚を調理されました?
食べること、料理に興味のある方ならぜひ読んでほしい内容です。
どうぞよろしくお願いします!
- 出版社/メーカー: 女子栄養大学出版部
- 発売日: 2015/03/09
- メディア: 雑誌
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2015年 3月7日『サワコの朝』ゲスト:坂東玉三郎
きょうの玉三郎さんの言葉は、非常に印象深いものでした。
ユーモアを交えて楽しくお話されているんですが、その来し方、女形芸、後輩に対する思い、今の歌舞伎界に対する思い…などなどが、強く浮かび上がってくるようで。30分もない番組でしたが、凝縮されていました。
収録のすべてではないのですが、心に残った言葉を起こしてみました。一部、言葉を補ったり、順序を変えて意味が通りやすくしている部分があることを、おことわりしておきます。また「おんながた」は「女形・女方」両方の表記がありますが、私は前者をとっております。
白央篤司
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
玉三郎 年になると、声って落ちてきちゃんですね。
50歳ぐらいのときに、一番、楽に出る声が出なくなるんです。
筋肉がね、副鼻腔というか、声帯を支えている器官のうしろが衰えてきてしまう。それをトレーニングで上げるようにしないといけない。厳密にいえば、副鼻腔の中に在る「天井を持ち上げる筋トレ」なんです。
肺の収縮が…だんだん年とって、肺の粘膜を広げて、酸素をよくとれるようにする、真っ直ぐ息が出るようにして、声帯にあまり斜めに息があたらないようにする。それしかないんです。セリフって音程があるでしょう。だからセリフだけやってるとダメなので、歌も歌ったり、喋ったりしながら。
阿川佐和子 歌舞伎俳優さんにもいろんなタイプがいますよね、女形、立役、両方なさる方もいるし。
玉三郎 父は立役でした。ふたり芸養子になりまして、ひとりは自分のうちを継げるように立役に、ひとりは相手役として女形ができるように。ということで「お前は女形、お前は立役」って決められたんです。
――ご自身はそれ言われた時、どう思われたんですか?
あ、よかったって思いました。立役なんて…。
――立役はあまり興味はなかったですか。
そうですね。
――きれいなほうが好きだった?
やっぱりそうでしたね。
――衣装がきれいとかそういう…
そうですね、存在がきれいという…はい。
――女らしさを出す上での苦労というのは…
簡単には申し上げられないです。というのは、時間がかかっちゃうんですね。
先輩の言う、細かい…「こういう声は出しちゃいけない」「こういうメイクしちゃいけない」とか…。
――メイクのことも言われるんですか。
(当然でしょうという表情で)そうですよ…?「腰元はこういう顏」「お姫様は
こういう顔」って…。たとえば、姫なんかでも、好きなひとを見るときに(横目で)こうは見ないですね。人を横に見るってことを知らないの。だからまっすぐ見たい、まっすぐ見るの。
――盗み見たりはしないんですか。
そういう商売の女は、盗み見るというか、流し目で男を見るというか。
また、年とった役以外は、手を前に出してはいけない。必ず手をつくときは膝より手前のところにつく、そうすると若く見えるでしょ?
そういう一個ずつの…細かい、細部の積み上げの、組み合わせですので、(女らしさを表現する上での)これっていう決め手はないんです。
――たとえば絵を観たり、写真をみたりっていうことは…
(即答で)あ、もちろんします。それも数限りなく見る中での取材ですから。
※ここで、鳥文斎栄之「青楼美人六花仙 越前屋唐土」と、篠山紀信撮影による玉三郎『稲舟』の遊女写真が並べられた画面になる
たとえば、こういうこと。まったく同じではないけれども、雰囲気をとるというか。この絵の描いた人のイメージを。だってさ、絵のとおりの形なんて、出来ないじゃないですか。絵描きさんも、人間の形のとおりは描いてない。そこを「翻訳」していくわけね。絵の観方を覚えていく。それが専門家ということなんでしょうか。
――(花魁のときの衣装は相当重いという話から)どんなことが大変ですか。
(首の後ろに手をやりながら)頭をまっすぐ伸ばしていることが大変なんです。カツラの重さで引っ張られますから。
――でもあれだけのソプラノを出すって言うのは…
(ちょっとツッコミっぽく)一応……専門家ですのでね。
――あっどうも…いや…稚拙な質問ですいません。
あっはっはっはっは…冗談ですよ…。
――そういった積み重ねを、これからは後輩にも教えていくのがお役目で…
教えていかなきゃいけない。それはもう使命として。
――女形の後輩としては、七之助君とか、
たくさんいます、菊之助君とか。でもふたりとも(立役・女形)両方やりますからね。純女形というのは…非常に難しいですね。
いまね、両方やりすぎるのね。祖父(※と言ってるように聞こえるが守田勘彌のことか。もしくは十三代目からの口伝?)の教えは、「兼ねるというのは、男がちゃんとできて女をやる、または女がちゃんとできて男をやるというのが、兼ねるということ」なんです。どっちもやるんだけど、どっちも片っぽの味がしちゃう…「それはオンナオトコだよ」って。
――七之助さんや、菊之助さんはいかがですか。
もう30歳ですから、やってきちゃったわけですからね。
――両方とも?
はい。
――今から、ちゃんと(片方を)やりなさいと仰りたいですか?
当人に任せます。舞台のこと、芸道のことは、当人の志の問題ですから、他人から言って、なるものではない。でもわたくしは、そっと何度かは言っております。そっと何度か言ってるうちに理解しない人には言わないです。
(ここで少しスタジオがシーンとなる)
――あっ…そうですか…。
風のように…「片っぽのほうがいいんじゃないの」「父はこういってたけど」って。
僕たちの時代って、すれ違いざまに大先輩が「お前、その襟の合わせ方じゃダメだよ」って言って、次に直ってなかったら、もう言ってくれませんよ二度と。
――すぐ捨てられちゃうんだ。
そうよ、すごい厳しい時代です。僕はもう本当に、真面目に聞きました。「あ、言ってくれた」って…。そして忘れなかったです、僕。
たとえば、父がよくないと思った役者の演技を見るでしょ、「よくないね、兼ねるとは言わないよ」これで終わりですからね。その言葉の中で理解できなければ、繊細な、微妙なことは理解できないです。だから、「若いうちから大役がついたからって、その気になっちゃいけないよ」って。これはもう朝・昼・晩と言われました。
――あ、一回じゃなくて
(佐和子を凝視して)朝・昼・晩っ…!
「そのお茶の置き方はなんだい、人様が観たらどう思うだろうか」って。「(玉三郎の着ている)衣装が大きいときは、もし先輩が歩いてきたときは、どうしたらいいか?」考えなさいって。すれ違うときには「お前が先輩だと思いなさい。もしも後輩がよい衣装を着て歩いてきたとして、後輩はどこをどう歩いたら、先輩は気持ちがいいだろうか、考えなさい」って。
――逆の立場に立って考えれば分かるだろうと。
だって、役者って「君いい声だね」って、一日に三回ささやいたらダメになるって。その役者をダメするには一日に三回ささやけ、三回褒めろって。
――でも、褒められまくってませんか?
だから、父に「褒められたことは疑え」って。みんな社交辞令なんだよって。
父と僕が楽屋で鏡台に向かってますね、父のお客さんが来て「玉三郎さんこの頃よくなられましたね」っておっしゃると、「玉三郎をよくしたかったら褒めないでください」って。本当にお前のことを思ってくれる人だったら、ちゃんと言ってくれるだろうって…。
6月歌舞伎座夜の部
25日、久々に歌舞伎座へ。『名月八幡祭』が観たかったのです。かなり長いですが、観劇メモを。
1:『蘭平物狂』三代目左近 初舞台
豪華な配役が楽しい一幕。
尾上松緑さん、何度か立派な大凧絵を見るような思いに。しかしこの芝居、何度見ても「ああ…刀を見ると僕…ふはははは!(別人格)」という展開にちょっと笑ってしまう。私が殿さまだったら多分何度も遊んでると思う。
さて息子さんの三代目左近、可愛らしくも立派で、なんとも行儀の良い芝居。精神力強いなと思いました。会場も沸いてたなー。お友達なのか、客席にお子さんがちらほら。こちらもおとなしく左近くんに見入ってたのが印象的。
そして尾上菊五郎さんの在原行平……うーん…いいなあ。こういう役は完全にこのひとのものだ(『二十四孝』の勝頼とかね)。菊之助さんの水無瀬も格があって「ごちそう感」たっぷり、旬の美貌。
そしてこの芝居の眼目である立回り、あれって坂東八重之助さんがつけたものを踏襲しているのでしょうか。それともちょこちょこ変わっているのかな。会場は大盛り上がり。「とんぼ」もフィギュアスケートと一緒で後半になればなるほど大変だと思う。あの長い時間を集中力切らさずやり終える…「からみ連中」にあらためて拍手。
あ、芝居のハナに立師でもある尾上松太郎さんが登場。松緑家4代を見てきた人だ。どんな思いだろうなあ。
そうそう、蘭平の衣装で立回りのぶっ返る前、紅白の市松模様になってるのって、金の縁取りがしてあるんだね。あれが赤のきわをぼうっと霞んでる感じに見せて、さながら蘭平の血が滲んでいるように見える。毎度あの衣裳なのか分からないけど、見事な視覚効果だと思った。
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『エリソ・ヴィルサラーゼ リサイタル』
3日、すみだトリフォニーホール、大ホールにて。
まずもう、「行って、良かった……」です。ホントに。久々だなあ、こういう充足感。
クラシック・ピアノにおける古典派、そしてロマン派両方の真髄を感じさせてくれる、素晴らしいリサイタルだったと思う。
エリソ・ヴィルサラーゼ。
グルジア人のピアニストで、「ベレゾフスキーの先生」ということで知り、ショパン・リサイタルのアルバムで大好きになったんだよなあ。
彼女の弾くホ短調のノクターンの音、なんともやるせない音でね。幽愁ってのはこういう情感だろうか、なんて思ったり。
ざっとプログラムの感想をつけておこうと思います。