立春大吉

さて今日は立春、暦の最初のスタートに戻りました。
今までこのささやかなブログに来ていただいた皆様、
ありがとうございました。
時には翼が生えているというのは西洋の諺ですが、
一年の長さがこの年になると年々貴重になって来ました。
限られた時間で、あれもこれもするべき事が増えて来て、
残念ながらここでお別れを言わなければなりません。
皆様の今年が良き年となりますように!

 画 鈴木其一 

七十二候 鶏始めてとやにつく (にわとり はじめてとやにつく)

春の気配を感じて、鶏が卵を産み始める時期だそうです。
卵と言えばスーパーで売っているパック入りの卵しか見た事がない
人も多いかと思いますが、田舎では鶏を飼っていた家も、昔は多か
ったのでしょうか。
もう随分昔の話になりますが、京都の藤ノ森にある科学センターに
鶏の卵が孵化する瞬間が見れるような展示がありました。
一定の湿度と温度に保たれたガラスの小さなドームの中に数個、
孵化間際の卵が入れられていて、運が良ければ卵から雛が出てくる
様子を見る事が出来るのですが、グッドタイミングに巡り会う事が
難しくて、ヒビの入った卵を子供達と眺めながら、雛が殻から出る
には時間がかかるという事を知りました。
ちなみに、センターで生まれた雛を貰って自宅で飼ってみたのですが
成鳥になると、朝、大きな声で時を告げるようになり、ご近所の手前
しかたなく小学校の鶏舎で飼ってもらった思い出があります。
動物はちゃんと後の事を考えて飼うべきだと反省したことでした。



鶏 曽我直庵

七十一候 水沢氷つめる(さわみずこおりつめる)

沢に氷が厚く張り詰める季節という、一年の内で一番寒い
頃ですね。
京都市内では厚い氷が張ることは殆どありませんが、数年
前のちょうど今頃、洛北の源光庵に行った時は、手水鉢に
2cm程の氷が張っていました。
冬のお寺は本当に凍えるような寒さですが、お蔭でメジャ
ーな所でなければ、訪れる人も少なく、凛とした空気の中
で、ゆっくりとお参りする事が出来ます。
暖かいダッフルコートにマフラー、ニットキャップ、ブーツ、
マスクという冬の完全武装で歩いていると、なんとか寒さは
凌げますが、靴を脱いで、板敷のお堂に上がると、足元から
深々と冷気が上がって来ます。
特に、禅宗のお坊さんの墨染めの衣は本当に寒そうです。
冬は修行も大変でしょうね。


薄く張った氷 北区 深泥池

七十候 蕗の華さく (ふきのはなさく)

朝、雨戸を開けると雪景色でした。
昨日はいつもと違う底冷えの寒さでしたので、普段なら
すぐに部屋の暖まるペレットストーブを焚いていても
なかなか室温が20度に届きませんでした。
一年で一番寒い時期、地中の中からは気の早い植物達が
地表に顔を見せ始めている頃でしょう。
蕗の花であるフキノトウも暖かい陽だまりなどではもう
出ているかもわかりませんが、いつも芽を出すお目当て
の場所はまだ気配もなく、雪に覆われていました。
春の七草と同じく、早春から出始める山菜や野の恵みは
その滋養で、長かった冬から体を目覚めさせる大切な役割
を持っていると言われています。
フキノトウの独特なほろ苦さを私は簡単な天ぷらや味噌汁
で味わいますが、もう少し手をかけて、フキノトウの味噌
を作ったりする人もいるでしょうね。
発想を転換して、洋風料理に使うとしたら何がいいでしょう。
グラタンやパスタなんかもおいしそうです。
まだ摘んでもいないフキノトウなのに、食いしん坊の妄想が
止まりません。

六十九候 雉始めてなく

ちょっと待って、こんな寒い時にはまだ雉は鳴かないのでは?
あの独特のケーンケーンという大きな声は以前に住んでいた
比叡山の麓では春によく耳にしました。
何年か前、修学院離宮の横を流れる音羽川の川岸から急に雉
が飛び立ち、塀を越えて離宮内に飛び込んで行った光景は忘れ
られません。あんなによく飛ぶとは予想外でした。
そういえば天然記念物に指定されている深泥池の浮島の中で、
雉の声が聞こえた事もあります。
どちらも一般の人は入れない所なので、文字通りサンクチュアリ
ですね。
今の季節、雉を見つけられないので、日本画の中の雉を探して
みましたが、鷲や鷹、孔雀や水鳥、小鳥等はよく画材にされて
いるのに、雉を描いた絵が少ないのは意外でした。

桜に雉 緒方乾山

六十八候 泉水温をふくむ (しみず あたたかをふくむ)

湧き出る水が暖かさを増すという季節。
実際には、地下水はほぼ一年中同じ水温だという
突っ込みはさて置いて、水が暖かく感じるというのは
確かですね。
京都盆地の下には琵琶湖に匹敵する程の地下水脈
があるという話を聞いても、そんなアホな!と、俄か
には信じがたい話ですが、実際、市内の至る所に
井戸があるのは事実です。
烏丸通りのビルの谷間にも、京都御所の中にも、
今宮神社の門前の炙り餅屋さんにもあります。
湯葉やお豆腐や麩を作るのに井戸水を使っている
お店も多く、京都の水が味の決め手だと言われて
います。
お店以外にも、お茶やコーヒーに名水を求めて、
ポリタンクに汲みに来る人をよく見かけます。
私自身は味覚音痴なので、水を目の前に並べられ
ても、きっとどれが名水なのか判らないでしょう。
けれども、今までで一番美味しかった水は?と聞
かれたら、京都の北山の峠近くの岩の間から滴り
落ちていた水を思い出します。
きっと、疲れていて、絶好の眺めだった事も影響
していると思いますが。

上賀茂神社

六十七候 芹乃ち栄う(せりすなわちさかう)

七草粥にも入っている芹ですが、野生の芹は京都市内ではもう
ほとんど見つけられないのではと思っていました。
が、京都御所の中を流れる出水の小川に芹が生えていました。
子供の頃の西京区の祖母の家の傍には田圃が広がり、横を流
れる小川には芹が茂っていた記憶があります。今は住宅地です
が、ドジョウや小鮒を捕まえて遊びました。
今、私の住む町には比較的自然の残った川が流れていて、夏に
は蛍も飛ぶのですが、川岸には芹の姿はなく、セイヨウカラシナ
などが増えて、日本の在来種は随分少なくなった様です。
今、市場に出回っている京野菜としての芹は南部の伏見辺りで
作られているものが多いとのこと。
この辺りは宇治川の遊水地として、大昔から昭和の初めまで
巨椋池おぐらいけ)という池というよりも湖といったような大きな
池があったらしいのですが、埋め立てで農地となっています。
ちなみにバードウォッチングの名所として有名で、チョウゲンボウ
小型のタカ類などにも会えることが多い場所です。
もう何年も前にコクマルガラスを探しに出かけたことがありますが、
先日、洋画を見ていたら、普通にコクマルガラスが沢山出演!?
していて、見慣れない白と黒のカラスについつい目が行ってしまい
ました。
芹の話からカラスの話に脱線ですね。


芹 出水の小川 京都御所