ドゥニ・ディドロ

世紀を経るにしたがって本の数は増え続けるであろうし、本から何かを学ぼうとすることが宇宙全体を直接学ぶのと同じくらい困難になると予測する人もいる。自然界から真実のかけらを探し出すことは、膨大な数の書籍に隠されていることを発見するのとほとんど変わりない。

『百科全書』(1755年)

 

参照:情報オーバーロード - Wikipedia

マレー・シャナハン

フェルミは質問する。「みんなはどこにいる?」と。

 

フェルミパラドックスにはたくさんの解答が可能であり、ここで取り上げられないぐらいほど考えられる。そのうちの一つは、われわれがいまだに地球外知的生命体に出会っていない理由は、すべての高度文明は、その技術がある程度に達すると、自己消滅してしまうからだとするものである。真実であれば、この答えは穏やかではない。なぜなら、それは、経済学者のロビン・ハンソンがグレートフィルターと呼ぶような大異変がわれわれの未来に横たわっていることを暗示しているからだ。しかし、このグレートフィルターとはどんなものとなりうるだろうか? 核戦争だろうか? バイオテクノロジーの濫用もしくはナノテクノロジ-の事故だろうか? あるいは、敵対的な人工知能の製造だろうか?

 

おそらく、銀河のどこであろうとも、あらゆる文明のテクノロジーの発達は常に同じ道を辿るのかもしれない。ある文明のテクノロジーが一定のレベルに達すると、自己改善する汎用人工知能の製作が容易になる。ただ、その時点で、それを安全にする試みは克服しがたい障害に直面する。その危険が広く理解されていたとしても、この地球上のどこかの誰か(ドジな個人または組織)がいずれはそれを作ってしまうだろう。そこから、すべてはペーパークリップになり、すべては終わる。

『シンギュラリティ──人工知能から超知能へ』(p.249-250)


参照:http://clnmn.tumblr.com/post/143057539752/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%81%AF%E8%B3%AA%E5%95%8F%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%BF%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%AB%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%A8

関連:http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2016/01/31/234902

寺田寅彦

人類が進歩するに従って愛国心大和魂もやはり進化すべきではないかと思う。砲煙弾雨の中に身命を賭して敵の陣営に突撃するのもたしかに貴い日本魂であるが、○国や△国よりも強い天然の強敵に対して平生から国民一致協力して適当な科学的対策を講ずるのもまた現代にふさわしい大和魂の進化の一相として期待してしかるべきことではないかと思われる。天災の起こった時に始めて大急ぎでそうした愛国心を発揮するのも結構であるが、昆虫や鳥獣でない二十世紀の科学的文明国民の愛国心の発露にはもう少しちがった、もう少し合理的な様式があってしかるべきではないかと思う次第である。

「天災と国防」

 

関連:http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/05/25/171820

異種協調型災害情報支援システム実現に向けた基盤技術の構築(CHIDRI)

荻上チキ『災害支援手帖』

ダニエル・カーネマン

企業の成功あるいは失敗の物語が読者の心を捉えて離さないのは、脳が欲しているものを与えてくれるからだ。それは、勝利にも敗北にも明らかな原因がありますよ、運だの必然的な平均回帰だのは無視してかまいませんよ、というメッセージである。こうした物語は「わかったような気になる」錯覚を誘発し、あっという間に価値のなくなる教訓を読者に垂れる。そして読者の方は、みなそれを信じたがっているのである。

『ファスト&スロー(上)』(p.364-365)

 

関連:https://twitter.com/hideKoba_bot/status/708790933467181057

ナシム・ニコラス・タレブ

憶測を真理だといって掲げるのが楽しいのかもしれない。私たち生まれつきそんなふうにできている。私たちの頭は確率を扱える仕組みになっていない。専門家でもそんな欠陥を抱えているし、専門家だからこそそうだということもある。
(中略)
不確実性を相手に仕事をする者として、科学者の皮をかぶったインチキセールスマンを山ほど見てきた。とくに経済の分野でごそごそやっている連中だ。ランダム性が一番わかっていない連中というのはそういうところで見つかる。(p.10)

科学は言うほど額面どおりに受け止めるものではない、というのがポパーの考えだ。
(中略)
理論のあり方は二つしかない。

 

1.検証が行われ、適切な形で否定(ポパーは反証と呼ぶ)されて、間違っていることがすでにわかっている理論
2.まだ反証が成功していないので、間違っているかどうかはわからないけれど、間違っていることが証明される可能性がある理論

 

理論が正しいことがないのはなぜだろう? 白鳥はすべて白いとわかることは決してないからだ。(p.161)

『まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』

 

参照:http://diamond.jp/articles/-/77377

関連:http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/02/05/180319
http://d.hatena.ne.jp/masudako/20110914/1316012144

ダンカン・ワッツ

企業や文化、市場、国民国家、世界規模の組織がからむ「状況」は、日々の状況とはまったくちがう複雑性を呈する。このとき常識は数々の誤りを犯し、われわれは否応なく惑わされる。だが、常識に基づく推論の欠陥にはめったに気づかない。むしろ、「そのときは知らなかったが、あとから考えれば自明のこと」であるかのようにわれわれの目には映る。
このように、常識の矛盾とは、世界に意味づけをするのに役立つにもかかわらず、世界を理解する力を弱めてしまうことだ。読者のみなさんがこの話にあまり納得できなくても問題ない。その意味を説明するのが本書の役目だからだ。
だがその前に、関係のあることを言っておきたい。本書について友人や同僚と話したとき、興味深いパターンが見られるのにわたしは気づいた。論旨を抽象的に説明したときは、みなうなずいて盛んに同意してくれる。「そのとおり」。そしてこんなふうに言う。「ぼくも前から思っていたんだが、実は何ひとつわかっていないのにわかっている気分になるために、人々はありとあらゆるばかげたことを信じている」
しかし、まったく同じ論旨で相手の特定の信念に疑いを挟むと、決まって態度が変わる。「常識や直観の落とし穴についてきみの言っていることは、まあ正しいのかもしれないけど……」。だいたいこんな調子の答が返ってくる。「ぼくの信念に対する自信がそれで揺らぐことはないよ」。まるで常識に基づく推論の失敗が、自分にかぎっては起こらないかのような口ぶりだ。

『偶然の科学』

強調原文


関連:http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2016/03/29/184835
http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/05/18/015548

西行

世中を夢と見る見るはかなくも猶おどろかぬわがこころ哉(かな)

世の中が夢のようにはかないものだとよくよく知っていながら、それでもどうしてわが心は目覚めないのだろう。*1

『山家集』

*1:現代語訳は竹内整一『「はかなさ」と日本人』(p.89)より引用

深沢七郎

人間として生きるという言葉を信じません。ただわけもなく生きているのが人間です。

『人間滅亡的人生案内』

 

関連:http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2013/10/07/013427
http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2014/02/20/182252
http://hideasasu.hatenablog.com/entry/20110910/p1

 

アンソニー・アトキンソン

前章で述べた通り、再分配では得をする人だけでなく損をする人もいる、というのは再分配に反対するまともな反論ではない。政府が本気で不平等を減らしたければ、どうしてもトレードオフは生じる。これは容易なことではない。トーニーが論説『平等論』で述べたように「不平等は流れに身を任せる以上のことを要求しないので簡単だが、平等は流れに逆らうことなのでむずかしい。(中略)それには代償と負担が伴うのだ」。

 

そのむずかしさは二つの形をとる。個人のレベルでは、それは「一部の人には物質的な犠牲」をもたらす。税金が引き上げられることを受け入れてもらわねばならない。社会のレベルでは、難しい問題に取り組まねばならないということだ。市場プロセスの結果をあっさり受け入れるのではなく、「公平な」分配というのはどういう意味かを検討しなくてはならないのだ。

『21世紀の不平等』

 

参照:『21世紀の不平等』――グローバル化のせいで何もできないか? / アンソニー・アトキンソン / 経済学 | SYNODOS -シノドス- | ページ 2

 

関連:「市場で再分配が可能」という前提を疑え
格差問題の議論を通じて見えた市場の限界/安田洋祐

http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2014/05/16/230456