雑記2024-02-18

そんなわけで。

  • リハビリがてらちょいちょいこのブログも動かしていきたいと思う。オールドスタイルで。
    • はてな記法とか久しぶりに使うのでかなり忘れてしまっているけど、さすがに箇条書きメソッドくらいは覚えている。
    • なんだかんだ言って箇条書きリスト形式は文章の枝葉構造がわかりやすいし便利なんだよね。
    • アナログのメモもこの形式で書くことが多く、思考がそのまま打ち出しやすいし後から見返したときに足し引きするのも容易とメリットが多いように思う。
  • ブログを書くにしても、PCを用いてモニタに向かって書くという環境にこだわりはなく、むしろ別のスタイルは常々模索していたので、今回はタブレットBluetoothキーボードを用いることにした。
    • 場所は自宅だが、このスタイルならPCデスクから離れてキッチン等で気分を変えて執筆できるし、もちろん外出先でもできる。
    • 2023夏にタブレットを新規購入したのが本当によくて、数年前に買ったすっとろい動作のFireHDタブレットは完全に役目を終えた感がある。1回PCが壊れたときにはスマホ以外のインターネット接続端末として多少役に立ったけどさ……
  • なんで今更とりとめもないことを書く場としてブログを使っているのか。端的にはTwitterが終わってるからに他ならない。
    • 2023年のTwitterに対する失望は本当にひどく、もちろんそれ以前から終わってるSNSとしておなじみだったわけだが、はっきり言って鍵なしの公開アカウントで何かを書くことにかなりのデメリットが生じる場に変質してしまったと感じている。
    • Youtubeもそうなんだけど、殺とか死とかの漢字すら気軽に使えない文字狩りメディアってめちゃくちゃストレスなんだよね。
      • インプレゾンビ問題等も無論よくないし、2020年代コンプラがどうのこうのもアレだし、とにかく短文投稿メディアが投稿を気後れさせてる時点でだいぶ終わりです。
    • さすがにbluesky等の移行先を真剣に考え始めたし、実際アカウントも作成している。
      • blueskyの運用方針をいまだ厳密には決めていないため、フォローされてもリフォローするとは限りませんのであしからず。Twitter初期のように知らない人とどんどん交流していくSNSというよりは、飲んだ紅茶の記録とかを書いていく地味な場という方向性かなあ。
    • 外部サービスもTwilogがギリギリ身請けで生存してるだけで後の有用サービスはほぼ死滅というのがかなり痛かった。
    • クライアントに関しては、Tweenが死んだ時点で僕のTLの俯瞰的な把握というものは事実上失われたし、Tweetdeckも仕様変更(某拡張機能でなんとかはなる)、公式Webもアレ(某拡張機能で旧仕様にしてやっと見られるレベル)という悲しい環境。
    • というかクライアントに関わらず、1アカウントの1日閲覧上限数がマジで終わってて、これがある限り何使ってても一緒という話はある。
    • 10年スパンでリストを作成してこなかったツケが来ており、身内とカウントしているアカウント以外のフォローしている人のツイートを見る機会が激減した。
    • それにしても閲覧上限とか言って「自分のアカウント」のツイートも見られなくなるのは本当に、本当にWebサービスとして終わっており、自分の書いたものを自分が自由に取り扱えるものとしてもらえないのであればそんなサービス怖くて使ってられませんわ、となる。
      • 仮に自分のツイートが炎上してても閲覧上限状態だと削除もできないわけでしょ? パーマネントURL叩いてもプロフィール叩いても非表示なわけだから。ヤバすぎる。
    • Twitter、スクショ4枚で端的なゲーム(ブルアカ)攻略情報が探せるメディアとしてはまだ有用だと思います。
  • とりあえず1500字くらいはここまでで書いてるので、あとは近年の興味関心を持っているテーマをいくつか書いておいて次回以降に繋げたいと思う。
    • 紅茶。2023年から趣味として始めた。
    • スト6。ご存知ストリートファイターシリーズ最新作。
    • Steam中心の最近やってよかったゲーム。
    • 2023年つーか近年購入してよかったもの。
    • Vtuber
    • ハイパーリンク
    • 最近マジでやってない美少女ゲーム
    • Notion等メモアプリ。
    • 手帳とライフログ
    • 京都の風景
    • 冬の寒さ
    • 星の煌き
    • 引き出しの中にしまいこんだトモチケ

風、風、風。

君は #にじストV部 を見たか

はじめに

そんなわけで。

バーチャルライバーグループ・にじさんじにおいて、現在とある一つのムーブメントが起こっている。

格闘ゲーム略して格ゲー、中でも最もメジャーな2D格ゲーと言っていい「ストリートファイター」シリーズ、その最新作「ストリートファイターV」(以下スト5)をプレイする有志たちの活動、その名も「#にじストV部」である。

にじストV部 - にじさんじ Wiki*

概要はにじさんじWiki等で掴んでもらうとして、ここではにじさんじ勢かつスト5勢の自分が#にじストV部を観てどのへんを楽しめたか、を中心に書いていこうと思う。

ちょっと長くなるのでスト5界隈、にじさんじ界隈に伝えたいことだけ先に記しておくと、

にじさんじ勢はせっかくなんでこれを機にスト5や格ゲーを触ってみてくれーい

・スト5勢はビギナーのにじさんじ勢を温かく見守ってくれーい

にじさんじmeetsスト5の機会を作ってくれたーライバー諸氏ありがとー!

ということに尽きる。

1:部活動第1回

5月21日、全世界160万*1のスト5勢が見守ったり見守らなかったりする中、安土桃さんのチャンネルでにじストV部初回の配信が開始された。案件でもないのにストリートファイター公式アカウントも反応していたのがなにげにすごい。

参加者は安土桃、えま★おうがすと、神田笑一、社築、イブラヒム、葛葉。配信の都合により、19分程度でチャンネルは神田さんの方へ移ることになった。

6人によるラウンジ戦、開始当初はまさかこの枠が6時間にも及ぶ長時間配信になるとは予想だにしていなかった。

配信前に桃さんが各プレイヤーの使用キャラ予想を募っていたので、自分も一応全員分考えて投稿した。蓋を開けてみると、桃:かりん、えま:ジュリ、神田:キャミィ、社:さくら、イブ:ケン、葛葉:影ナル者、といった感じに定まっていった。僕の予想で当たっていたのは社さんが途中で使ったガイルとイブさんのケン。

こちらの6人、多少の格ゲー経験差はあれど、スト5をプレイするスタートラインとしてはほぼ同一線上にいたと言ってよい。そのおかげで誰か一人が大勝しすぎることなく、同レベル格ゲー初心者同士のわちゃわちゃ感、数時間のうちにそれぞれがプレイ感覚を研ぎ澄ませた末に見せる圧倒的成長、それによってどんどん深化して回っていく読み合い、と非常に楽しく見どころの多い配信となっている。

僕も格ゲー始めたばかりの頃を思い出して懐かしい気持ちになりつつ、笑ったり熱くなったりしながら面白く拝見させてもらった。特定のゲームのプレイが上達すると、基本的には「初心者だった頃のようにプレイす」ることは困難なので、そういう意味でもこの配信は一回性があってよかった。

見どころ

スト5勢としての個人的ハイライトを挙げるなら、一つは0:02:13~、桃さんと社さんの対戦ラウンド1開幕3秒。

youtu.be

!?

f:id:highcampus:20210601221218p:plain

桃かりん、天狐>天狐

桃さんのかりんが天狐>天狐の2hitコンボをやっている! これ、画面の前でベガ立ちしてたスト5勢は皆「こいつ……できる!」と思ったんじゃないだろうか。

なんで驚いたかというと、ここで披露された天狐からの天狐の繋ぎ、これ適当にレバーとボタン押すガチャプレイでは絶対発生しないし繋がらないコンボなのね。

一応説明すると、236K(波動拳コマンド+キックボタン)入力で刹歩という前方移動技が発生し、刹歩中に追加入力でP(パンチ)を押すことで天狐という攻撃技が発生する(KからPをずらし押しのように押すとうまくいきやすい)。つまり天狐>天狐のコマンドは236K追加入力P>236K追加入力Pなんだけど……これ初心者が初配信の開幕でやるコンボじゃないんよ。お手本を見て学習してトレモで反復して、というステップを踏まないとまず成功しない。それをいきなりぶっこんできたってことは……

「桃さん、あんた"""やってる"""ね」とスト5勢は彼女の事前練習に思いを馳せて感心してたわけやね。僕もこの時点で本当に真剣に観戦しようと視聴者としての気合を入れ直したからね。にじストV部部長の努力が垣間見えた一瞬の連撃だった。 

もう一つは1:52:28~、えまさんと葛葉さんの対戦2ラウンド目の中、豪鬼の大足(しゃがみ強キック)でジュリがダウンしてからの流れ。

これね…………葛葉さん……………………………………"""終わってる"""んですよね。今日始めたようなマジモンの初心者が起き上がり下段ガードできないと察知するや、一生大足振り続けて相手を一生こかして疑似ループハメを行う。そこに一切躊躇がないその精神性、実に格ゲーマー適性があっていいっすね。相手に通りやすい行動を見つけたらそれを多めに行うことでリターンをがっぽり稼いでいく、これが自然にできるってことはマジでワンチャン葛葉さんが勝ちたがり素質全一まである。

他にも様々な見どころがあり、それらは本編で発見してもいいし、#にじストV部でYoutube検索したら切り抜き動画も上がってたりするのでぜひ見ていただきたい。

この日の#にじストV部における初心者同士の熱い対戦会は、視聴者約2万人、アーカイブ再生回数40万回を超える大成功で幕を閉じた。

以降、にじストV部の合同練習対戦活動とは別に、各々のプレイヤーが自分の配信等でコッソリ練習をやりこみ、部活動でコソ練の成果を見せるという流れになっていく。2021-06-06時点で配信数が多いので追い切れていないところもあるが、ざっくり紹介していこう。

2:コソ練と部活動

5月23日、イブさんと葛葉さんが2人でコソ練していた配信がこちら。6時間のコソ練とは……?

全体的には、ものすごい速さでコンボを覚えてワンチャン火力が大幅に上昇した葛葉カゲと、着実に上達していくイブケン・イブララがお互いに譲らぬ戦いを繰り広げるのが面白かった。イブさん、ケンを使っててもドラゴンダンス(昇竜拳連発)等の荒らし行動に頼らず(まだ知らないのもあるだろうけど)ちゃんと対空する・ちゃんと地上戦することでうまくなっていこうという意志があってめちゃくちゃ偉いんよね。

見どころはエドのサイコフリッカー(ワンツースリー)がワンパク技だということに気付いてしまった2人と「あーあ、出会っちまったか」という雰囲気のコメント欄が笑える、2:36:06~頃かな。

フリッカーはクソ技というほどじゃないんだけど、初狩り力高くてヤバいよね。でもイブさんが自力で対応策考えて「技発生前のエドを中足で止める」という暫定解を発見したのは観戦しててマジで偉いと思ったよ。最後の方は葛葉さんもカゲに戻して連戦してて、ほんとめちゃくちゃいい勝負で見応えがあった。

スト5やってくれてありがとーとばかりに、プロゲーマーの立川さん・どぐらさん・ナウマンさんがスパチャを飛ばしてくれる一幕もあった。

5月24日、叶さんの練習配信。

叶さんはトライアルでコンボ確認・練習してるのが偉い。今作はゲーム内のチュートリアルやトライアル等である程度は基礎的な技の使い方や動きが学べるので、初心者は利用しない手はない。

5月26日の部活動第2回では、新規メンバーとして叶さんと渋谷ハジメさんが参戦した。

社さんの葛葉さんに対する煽り性能、あまりにも高くて口プレイで7:3くらいある。

みんなが見やすいように配信画面操作をめっちゃがんばってくれる桃さん、マージで部長の風格なんだよなあ……。

7人ラウンジの騒がしさが本当に楽しい配信だった。

3.世はまさに大トレーニング時代

ここから、各自のスト5練習は一層熱を帯びていく。

5月27日、葛葉さんと叶さんのクロノワールユニット配信。

ヒット確認は「「無理だよ!!」」とハモるくらい仲がいい2人、最初はキャラをいろいろ変えて確認しつつ、叶ジュリVS葛葉カゲを繰り返していく。なんだかんだでこの2人がふざけ合いじゃれ合いしつつゲームしてるのを見るのは好きっすねー。FPS勢じゃない僕ですらAPEX配信とか時々観戦するしね。

5月29日の叶さんのコソ練。ここでプロゲーマー立川さんも参戦。叶さんにジュリを教えるために同キャラ戦を行う。勉強するためにボコボコにされたいという叶さんの向学心、ゲーマーという感じでよい。

 

5月31日、部活動第3回として女子部練習会が開催され、新メンバーとして笹木咲さんも参戦、立川さんを講師としてビギナー向け教練が行われた。

コマンドができなくても強攻撃・投げ・飛び等のイージーな行動だけで(同レベルなら)対戦は成立することを教えてもらったのはよかったんじゃないだろうか。やっぱりコマンド入力を始めとする「難しいことができなくて辛い。やめたくなってきた」という方向へビギナーが向かうのは絶対防ぐ必要があるからね。

初心者の脳がパンクしないように教えるのはとても難しいので、内容を絞ったトレーニングはよかったと思う。最後にそれぞれの宿題も与えられ、今後の女子たちの活躍に期待できると思える内容だった。

 女子が「打倒男子がんばるぞー、おー!」くらいのノリで練習していた一方……6月1日、ヒットボックスを購入し、「もいもいももーいもいももいもい」と唱えながらエドのトリガー1表裏セットプレイを練習する男の姿がそこにはあった。というか神田さんだった。

強攻撃を振って「イヤーッ!」「グワーッ!」と戯れているレベル帯にサイコ兵器を持ち込むがごとき所業、「平和な格ゲー村 おわり(製作・著作 NHK)」になってしまうのか……?

6月1日の葛葉さんの配信、途中からスト5を開始。豪鬼を練習中、プロゲーマーのナウマンさんがサポートセンターとして登場。プロゲーマーから教えてもらえるの普通にうらやましい環境ですわね……。

ここでゲームパッドをヒットボックスに変更して練習し始めた葛葉さん、最初は慣れないので操作が辛そうだったけど、どうせヒトボにするなら早い方がいいからね。次回以降の動きの変化が楽しみ。

6月3日、渋谷ハジメさんのコソ練。アビゲイルで気持ちよくなってめちゃくちゃ悪い笑い方してる2:44:31~、まーたアビ堕ちマンが増えてしまったか……。ちゃんとベガの練習もしていて偉い。

youtu.be

さらにおかわりの練習配信、やる気勢すぎんか? 1日9時間プレイは情熱溢れててすごい。この初期衝動でトレモしっかりやるのは絶対成果になるんで今後もがんばっていただきたい。

6月3日、部活動第4回。上記の女子練習会と個人練習の成果を発揮する配信。神田さんもさすがにセットプレイの闇までは見せず、真面目な部活という雰囲気で、桃さんとえまさんの成長を実感する内容となった。

部活動は週1~2回のペースもちょうどいいんですわ。次回以降も、ヒットボックス新規勢の動き、女子の成長、それぞれが持って帰った宿題の成果の披露と見どころはたくさんあるのでとても楽しみにしている。

4.おわりに

くぅ~疲れましたw いや、ほんとは部活動第1回の時点でめちゃくちゃ感動して、これ絶対感想書いて#にじストV部支援するわって思ってたのよ。ところが思いの外、最近の仕事の固めがひどくて、疲労で延々不利フレーム取られてなんもできん日が多かったんよね……そうこうしてる間に部活動とコソ練の配信はどんどん増えるし、配信1つで数時間あって内容チェックするのも大変だし、スト5トレモして配信の要点を下書きしてスト5ランクマやってにじさんじの配信見てスト5トレモしてソシャゲやってスト5身内ラウンジ対戦して……というキッツい作業の積み重ねでこの記事は書かれているよ(ゲームを控えろ)。さすがに次週Vリバ(有給)使って休息します。

しかし、ほんと#にじストV部が結成されたのが嬉しくて、がんばって書いてしまったよね。格ゲーってマジでこんなに楽しいもんある?ってくらい楽しいゲームジャンルの一つんなんで、今まで触れてこなかった人たちもぜひこれを機にストファイのみならずギルティギアメルブラ・鉄拳・バーチャなどなどを興味本位でやってみてほしい。個人的には人口が多いゲームがなんつってもおすすめです。

既存のスト5・格ゲー勢は初心者のおぼつかない操作にも優しくコメントしてくれてありがたいし、そのまま温かい眼差しでベガ立ちして応援してくれたら嬉しいっすね。もしにじさんじに初めて触れた人がいたら、部長の安土桃さんのチャンネル登録をお願いします。もうすぐ登録者10万人になる顔面と声がいいバーチャルライバーで、僕もこっそり推してます。

部活参加してくれた各ライバーさんについては感謝しかなく、これからの活動にもめちゃくちゃ期待してます。にじさんじ内大会とかも見てみたいし、もし今後視聴者参加型対戦会とかあったら戦ってみたいですね。ライバーさんにも既にランクマやってる方はいるけど、今後全体のレベルが上がったらガンガンにじさんじ外の対戦もやってみてほしい。対人戦やってなんぼのゲームだし、人と戦るのは本当に楽しいので。

と考えると、部活動第1回のタイトルが「戦いたい人たち」っていうのはほんと本質ついたいいセンスしてるよなあ、と改めて感じいっちゃったよね(イマジナリーフレンドに語りかける)。

それではどちらの方も、どこかで会ったら対戦よろしくお願いします。

 

*1:ランクマのLP0の順位が160万位なので雑に計算してこれくらいはいるっぽい。

漫画「終末の貞子さん」感想

毎回、拙作が言葉であたらしく形どられているのをみて、こういう話だったんだなあと、ようやくわかります。

https://twitter.com/ntmcm/status/1030089729356615686

 いいこと言うなあ。

* * *

「終われない」って辛いことなのだな、と思った。

自分で始めたはずの営為でも、あるいは誰かに投げ出されたような状況でも、いつの間にか前に進んでいる実感がなくなって、かといって後ろに戻ることもできなくて、時の過ぎるままどうしようもなく立ち尽くしてしまうようなことが、人の生には確かにある。

そんな、自分からは終わらせることができない業のようなものを終わらせてくれる者がいるとしたら、例えその者の本質が呪いだとしても、その行いは救いであるのかもしれない。

本作においても貞子の存在が呪いであり、人を殺すモノであることには変わりがない。にもかかわらず、舞台を終わってしまった世界に、登場人物を終われない人たちにすることで、ある種の救済者としての新しい彼女の像を立ち上げている。呪いーにでーきることーはまーだあーるかーい。

皿屋敷のお菊さん回では呪いには呪いをぶつけんだよ展開になることなく、アイとひーちゃんが優しく彼女の終わりに手を添えてくれる。生者と亡者の相互補完。アイーにでーきるこ(略)。

旅を共にするアイとひーちゃんは健気で可愛らしく、それだけに旅の終点が近づくにつれて貞子の中に募る想いを考えると胸が痛い。

ついには、貞子が全ての「人」(つまり――――)を終わらせることで物語は幕を閉じる。そして、それ自体が貞子の「終わり/救い」になった……のかどうかは巻末の特別おまけ漫画を御覧になって確かめていただきたい。

余談として、補助線を引くなら「アトラク=ナクア」がわかりやすいだろうか。*1あの作品には自分の生の扱いについて"途方に暮れた者"を語るくだりがある。初音が言うには、"途方に暮れた者"の生には命・心・時という三つの終わりがある。いずれが尽きるかはその者の天命次第であろう。

本作における登場人物たちはまさにここで言う"途方に暮れた者"であり、「時」はまさに終末である。そして貞子は、彼らの「命」を奪ってしまうことで同時に彼らの「心」が尽きることを防いでいる。

こう考えることで、呪殺と安らぎという、ともすれば相反する二つの要素を一つに結ぶことができる。

* * *

そんなわけで。夏見こまさんの漫画「終末の貞子」を読んだので感想を書いた。

「リング」の貞子、といえばもはや本邦では説明不要のホラー・ヒロインだ。そんな彼女が終末世界で幼女たちと旅をするという本作は、Twitter発のWeb漫画である。Twitterで楽しく読んでいたらあっという間に角川から公式に書籍化され店頭に出たのが6月、速攻買って読了したけど感想書くタスクが実行できず4ヶ月放置。「終わり」について閃いて「あ、これ記事1つ書けるな」ってなったのは1,2ヶ月前だけども、もう少し早くブログを書いていきたいね(2年ぶり更新並感)。

夏見さんは艦これ同人で知った作家で、鳳翔さん本をはじめとした同人誌は幾つも購入している。例えば「しんしんと」については、"流れる空気がとても清浄だから、画面の内で呼吸するように読んでいくだけで胸中とても爽やかになった心地です"と以前評したことがある。*2

そのような美質は本作にも備わっており、「終末」と「貞子」というネガティブにネガティブを掛けたような組み合わせから期待されるおどろおどろしさを見せながらも、清涼な読後感を演出している。貞子関連は小説「リング」をちらっと読んだのと「貞子VS伽椰子」を観ただけの自分でも面白く読むことができた。

以上、僕にとっては、こういうお話でした。

 

リンク

終末の貞子さん (@terminal_sadako) | Twitter

⛩夏見こま⛩ (@ntmcm) | Twitter

終末の貞子さん - 漫画|夏見こま 監修|鈴木 光司

 

終末の貞子さん (MFコミックス ジーンシリーズ)

終末の貞子さん (MFコミックス ジーンシリーズ)

 

 

15練乳/瀬野部屋/トリプルチーズバーガー「朧採集」 感想

はじめに

そんなわけで。15練乳・瀬野部屋・トリプルチーズバーガー主催の艦これ非公式ファンブック・朧合同誌「朧採集」を読みました。感想を書いていきます。

書誌情報については告知サイトをご覧ください。
朧合同誌「朧採集」告知サイト
本書は、どの作品にも駆逐艦・朧が2人以上登場するという珍しい趣向で作られた合同誌であります。17名の作家により執筆された朧たちは合計すると47名、都道府県や赤穂浪士いろは歌のかな文字数に等しい数の彼女たちが、入れ替わり立ち替わり紙面を賑やかしています。実際、最初から最後まで全ての作品ページに朧が絵か文字で描/書かれているという、その筋の方々にとっては嬉しさ極まる多幸感仕様になっています。

まずはなんといっても装丁がよいですね。
告知サイトの書影を見ればわかるとおり、表紙は各作家の朧たちが郵便切手となって散りばめられており(カニさんもいます)、左下にはタイトル「朧採集」の月偏をピンセットで抓む手が描かれています。絆創膏からしてこの手もまたどこかの朧の手でしょうか。*1
15練乳の前回の合同誌「お腹いっぱいになりました」から引き続き、夏見こまさんがデザイン協力されているとのことです。実際の書籍にはタイトル箔押しや色柄の遊び紙といった僕が好きな加工もされていて、ずっしりとした重さもあり、いっそう豪華さが感じられます。イチゴさんの内職によってメロンブックス通販版にも栞が付属するという仕様がありがたかったです。

「朧採集」という書名について。「採集」という言葉の選定に、手ずから朧にまつわるお話を集めていこうという主催者(それぞれが作家として本書に参加されています)の意気込みを感じます。*2なんというか「よーし、パパ張り切って朧のエピソード集めちゃうぞ」というエネルギッシュで欲深なタイトルだと思いました。

ところで、表紙の切手は本来「採集」ではなく「収集」という語を用いるものですから、書名とはややズレがあります。しかしこれは単に書名と表紙が乖離しているということではなく、「集(める)」あるいは「(艦隊)これくしょん」という言葉の連想から喚び出された切手が、「ここではないどこかへ運ぶための手形」という本来の役割を果たし、コレクションした朧たちのお話に触れるためのフォーマットとして機能している、ということであるように思います。目次ページでは各作品の題名の横に置かれた切手に消印が押されるという意匠があり、ここにおいて切手はそれぞれの作品世界へ飛ぶためのいわばチケットとして働いているわけですね。

唐突ですが、創作は扉の性質を持つ、ということを僕はここ二年ほど*3考えています。
かいつまんで書くと、創作、特に二次創作には、原典の作品世界やキャラクターに対して二次創作者が想像する作品世界やキャラクターを新しく繋げて開くものという一面があり、それはイメージとしては扉として捉えられるのではないかな、ということです。*4
先ほど”作品世界へ飛ぶ”と書きました。それはこの扉をくぐるということと同義であります。既述のような切手の意匠は、こういった僕の考え事とリンクしているところがあって面白く感じました。

この本には17の、あるいは47の扉があります。それぞれの扉の先で、それぞれの朧が呼吸をしています。ここからは、僕が切手を通して扉をくぐった先で見たこと、感じたことを述べていきます。採集行為になぞらえて、フィールドノートのようなものとしてお気軽にお読みください。

えび味噌汁「たとえ相手が朧でも。」

何事も初めが肝心です。本書のレセプションは、三人の大小混じえた朧たちの交流から始まります。タイトルは原作の着任時台詞の「誰にも負けない」にかかっているわけですが、
とある艦隊の中心的存在である朧、そんな朧を目標として「負けない」と言う小さな朧ちゃんたちが健気でよいです。初手から直球が気持ちよく投げ込まれたという感じの爽やかなスタートです。

かず「いつか来た道」

続く本作は、ある朧が艦娘になるきっかけとなった出来事と、そこで出会った先輩の朧にまつわるお話です。敷波ちゃん出てくるとテンション上がりますねテンションが! 振り返る過去の出来事は過酷なものでありますが、フェードインとフェードアウトの式波ちゃんとの会話がそれを確かな今に封じているように感じます。

砂上はりま「朧が朧に至るまで」(挿絵:せのん)

題名どおりに、一人の女の子が駆逐艦・朧になるまでのお話です。多くのバリエーション豊かな朧が出てきますが、こちらの鎮守府の艦娘運用の仕組みはかなり辛いものがありますね……実家・造船所・演習・出撃、長い戦いを経て朧へと至った彼女の日記は、閉じられた後までビターな物語として続いていくのでしょうか。朧だけでなく漣も二人出てくるところに妙味があります。

fuzino「新しい仲間?」

ドロップ着任の小さな朧を七駆があれこれと気遣いしていくお話。曙が絵本を読ませようとし、潮がシールをちらつかせ、漣が抱擁を提案する、この鎮守府固有の色が出た七駆の様態が面白いです。言われてみれば彼女らはそういうことをする娘さんであるような気もしてきます。この「自分では想像しなかったが、示されてみれば納得感がある」という感覚が同人の楽しいところですね。最後に朧と小さな朧のシンクロによって落着するところも好ましいです。

そこつ「唯幸せであれかしと」

海だけではなく、世界そのものが朧を苛む時、もう一人の朧には何ができるでしょうか。ひととき同じラムネを飲み、語られた夢を聴き、約束を胸にしまう……そういった交わりの中で、"魔法"という言葉には身を寄せたくなる温かな響きがあります。文章のリズムが心地よく、傍点やルビの振りといった技芸も冴えていて、執筆者の練度を感じさせる読み物でした。

ショーコ「生前、もしくは死後の話」

ファーストインプレッションとしては、本書の中で一番心掴まれたお話です。アイデアを短編漫画にまとめる構成力がたいへん素晴らしいです。喋るカニさんがいい役をしていますね。うちの朧付きのカニさんもこういう風に話してくれると嬉しいんですが、未だその兆しはありません……。

ななさん「模倣-イミテイト-」

こちらも心惹かれた作品です。短いページで感情を駆動させていくスロットルの上げ方が小気味良く感じました。ななさんは美少女の作画にあたって唇をはっきりと描かれるので、艦娘さんのお顔立ちに上品な艶があるところがよいです。

あざらく「オボロズ・ジャム」(挿絵:せのん)

同一艦娘は1つの艦隊内に同時に2人以上編成することはできないというゲーム上の仕様に対して「でも編成したいよね」という欲望のもと突き進んでいくスタイルは率直で好感を持ちます。この作品もかなり多くの朧が出てきて鉄火場もあり、たいへん賑やかになっております。世界よ、これがオボロンジャーズだ……

とだかづき「バックトゥザ朧!」

本書では唯一の四コマ漫画作品でした。タイムマシンで未来からやってきた朧、ありそうでないネタで面白かったです。二人の朧がわいわい楽しくお話した後にオチまでしっかり決まっていて、時間を絡めた話はやっぱり鉄板で強いと思いました。

せのん「刹那の間にて」

せのんさんの描く艦娘さんのお顔から、個人的には「sense off」の頃のゆうろさんに似た和やかさを感じます。安心感を覚えるというか……そのため、お話の内容は朧の危険が危ないものであるにも関わらず、作品全体にはゆとりのようなものがあってよいです。

さぶ「カノンがきこえる」

「艦これ」ゲームシステムの一つ・近代化改修をどのように捉えて表現するかは作家さんによってかなり幅があります。ここでのそれは切ないものとして描かれていますが、強化された朧の中で赤・青・橙・黄のポリフォニーが唄われる、そんなこともあるかもしれないと信じさせる確かさのある一作でした。

AMANAGI「98と、ぷらす1」(挿絵:かず)

このタイトルの作品が99ページに配置されている、というのは作り手の遊び心でしょうか。朧と小さな朧"ちぼろ"、女性提督の三人の絆を描きつつ百合要素もあるという小説です。主機の出力調整のくだりなど、艦娘の日常業務のディティールがよいですね。登場人物も皆優しい人たちばかりで微笑ましかったです。

猿渡ごしき「Island Memories」

観測範囲では朧(に限らないかもしれませんが)の史実にまつわるエピソードを描かれる方はそう多くはなく、今作は貴重な一本であります。艤装を纏わない素足の朧というビジュアルもまた珍しいものでありました。鉄は時間とともに朽ちていくのに対して、艦の魂と記憶は今なお「あの頃」を保ち続けている、それは確かに彼女からすれば嬉しいことなのでしょう。淡いトーンが作品全体に優しい風を吹かせているような印象の作品でした。

米屋ぺち「セピア色の記憶と」(挿絵:かず)

夢の世界で朧はもう一人の自分の声を聴く、というところから始まるお話です。怖気を伴う緊張感がだんだんと温かく解きほぐされていく、その過程はゆらゆらと波に運ばれるような読書体験でした。グッドです。

ソウタマエ「七駆っぽい朧」

素敵な七駆順列が展開されるお話です。画面づくりが丁寧で、四人の朧それぞれで異なる台詞のフォント、デフォルメの可愛らしさ、手書き文字のくだけ方など各所に楽しみがあります。ソウタマエさんのライトサイドが前面に出た快作でした。

うみどり「おぼろがさんにん!」

ポップでキュートな絵柄でお菓子作りする朧さんたちがかわいいお話でした。浜風や七駆のみんなも出てきてくれて嬉しいです。「誰にも負けないクッキー」、是非とも食べてみたいものですね。

苺6480「終の棲家」

去りゆくオリジナルの朧と、後を継ぐコピーの朧、二人の朧のお話です。提督*5とのお別れも、去りゆく朧から後を継ぐ朧への優しく確かな言葉も、後を継ぐ朧から去りゆく朧へのまっすぐな告白も、笑顔とともにあるということが有り難いと感じます。作中には本当によい笑顔が幾つも花開いていて、胸にじわじわと沁み入ります。ラストシーンも、原作台詞のアレンジが綺麗に決まっていて素晴らしかったです。
登場人物では去りゆく朧が好きですね。悲しみや苦しみが身体に刻まれ続けていても今はそれを遠いものにしてしまえた強さ、がんばってるうちに周りの人のことを考えられるようになった柔らかさを持つ彼女は、なんというか生のステージを一つ上がった人に特有の魅力があります。語りも軽やかで、それでいてしっかりとした裏打ちを感じさせるのでついつい聞き入ってしまいます。
また、イチゴさんの描く明石さんはどこをとってもかわいく温かくて素敵ですね。口では「工作艦が許すとでも?」って言いながらも高速修復材入りのお風呂入れてるのは艦種というよりは多分に本人のパーソナリティに因ってそうで貴いです。

まとめ

「朧が2人以上出る」というはっきりしたテーマがあるため、各作品アプローチは様々ながらも全体に統一感があり、綺麗にまとまったよい本でした。扉の向こうからいろいろとお土産をいただいた気分です。ありがとうございます。

同じ艦娘が2人といえば、まきえもんさんの「叢雲ちゃんと秘書艦叢雲改二」という漫画があり、*6これは同じ艦娘が2人いることの善さだけをハートフルに描ききった名作として僕の心に刻まれた作品です。*7そういったことから、自分の中で艦娘二人のお話は興味のあるテーマとなっていたため、今回の本も楽しみにしていました。*8

朧が二人以上いるという時、ほとんどの場合その朧たちには身体的・精神的な成長度の差、練度の差、性格的な個体差・鎮守府ごとの文化差など、何らかの差異があります。その差異が形作る、朧の微妙な輪郭の揺らぎについて考えを巡らすことは、本書の読後の楽しみの一つでありましょう。そして、差異を考えることはどこまでが同一かを考えることに近しく、それはまた駆逐艦・朧そのもの、輪郭の内側について考えることにも繋がってきます。

このテーマに果敢に取り組んだ17の作品を読み進めることは、自分にとって朧はどんな艦娘であるかということを見つめ直す旅のようでもありました。幾人もの朧と朧を繋ぐ線をなぞるようにページを手繰り、2人以上の朧たちを起点として、三角測量のように彼女たちが生きるそれぞれの艦これ世界の手触りまでをも得られることができました。

それでも、僕にとって朧はまだ、途方に暮れるくらいわからないことだらけの艦娘であり続けています。*9当方は他人のことをわからないままわからないなりに絆を深めるということを是とする気風の鎮守府ですので特に問題があるわけではありませんが、朧のことをわかっていくにはまだまだ時間がかかりそうですね。*10

では、そろそろ結びとしましょう。

本書は、より深く朧を識るための彼女たちの採集<<コレクション>>であり、2017年最新の彼女たちの記憶<<リコレクション>>であります。この本を手にしている限り、読者は17の新しい艦これ世界・47の新しい朧へと向かう、ささやかで絶対的な旅行権を持ちます。せっかくなので、この感想を読まれた艦これファン・朧ファンの方にも是非その権利を手にして気軽に旅してみてほしいと思います。どんなに輝かしく美しいものがその先に待っているとしても、自らの手で扉を開かないことにはそこへ辿り着くことはできないのですから。

そして、本書をきっかけとして18番目の、あるいは48番目の扉がこの世界に生まれたなら、それはとても豊かなことだと思うのです。

(BGM:newsong / tacica

*1:朧はバレンタインの季節限定グラフィックで右手人差し指・中指・薬指に絆創膏を巻いています。

*2:ほら、「採」の字に「手」偏入ってますし……

*3:つまり15練乳の艦これ同人誌を初めて読んだ時から今日に至るまでのことです。

*4:あるいは窓や門といった比喩でもいいかもしれません。

*5:今回はいつものシリーズのちいさな提督とは違う提督さんです。

*6:https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=62362949

*7:自分が艦娘2人ネタで創作するとしたら何らかのネガティブ要素をつい入れたくなってしまうのですが、この漫画は叢雲が二人いることのポジティブなところだけを描いていて、自分の中からは出てこない貴いものに触れたという感動がありました。

*8:同じ駆逐艦でも叢雲と朧は色々な点で異なった艦娘です。特に大きく違うのはゲーム内で改二が実装されているかどうかというところですね。「叢雲ちゃんと秘書艦叢雲改二」が新規着任した叢雲から先輩の叢雲改二を見る話であったのに対して、今回の本では先輩の朧がいる鎮守府に新しく小さい朧が入ってくるお話がいくつかありました。改二がないため、オルタナティブな朧を考えると小さい朧に寄りがちということはあるかもしれません。

*9:というかもう4年もゲームやって二次創作に触れてきているにも関わらず艦娘のことがよくわかりません……俺たちは雰囲気で艦娘と触れ合っている……うごご

*10:ちなみにうちの朧はLv120、不知火とともに駆逐艦のツートップになりました。期待を寄せれば寄せただけ応えてくれるよい子です。

15練乳「おぼろちゃんといっしょ」〜「おもいでの殻」(朧ちゃんとちいさな提督)感想

はじめに

そんなわけで。いちご(苺6480)さんのサークル:15練乳による「艦隊これくしょん(艦これ)」非公式二次創作ファンブック「おぼろちゃんといっしょ」「ほしのふるよるは」「タメイキツミキ」「おもいでの殻」をコミケC88で購入して読み終えたので、感想を書くよ。
これらの同人誌は全て、とある鎮守府の"朧ちゃんとちいさな提督のおはなし"*1を描いた漫画作品だ。加えて、「ほしのふるよるは」「おもいでの殻」にはゲストイラスト・漫画・小説も収録されている。
著者のいちごさんは、日頃からpixivTwitterなどで数多くのイラスト・漫画を公開されている。僕が最初に目にしたのも、氏の艦これワンドロ*2イラストのツイートであったと思う。*3
簡潔にいちごさんの作品の魅力を述べるならば、それは柔らかい線画であり、鮮やかな彩色であり、かわいいキャラクターであり、彼らに寄り添ったきれいな言葉である。そして何より、それら全てが優しい視座から見据えられ描かれていることだろう。愛らしく微笑ましい絵の数々を鑑賞していると、僕はしばしば心に火が灯ったような暖かい気持ちになる。
そんないちごさんの艦これ二次創作の中心となっているのが、駆逐艦・"朧(ちゃん)"と彼女たち艦娘の司令官である"ちいさな提督"だ。いわゆる「創作提督」系作品の一つと考えて差し支えないだろう。未読の方は、まず朧ちゃんとちいさな提督がケッコンカッコカリするに至る一編、「朧ちゃんとケッコンカッコカリ」をご覧頂きたい。さらに、「朧ちゃんと提督つめあわせ」を見てもらえれば、およそ二人の関係や雰囲気がわかってくるはずだ。

朧ちゃんとケッコンカッコカリ by 苺6480 on pixiv

"朧ちゃんとちいさな提督のおはなし"はどうやら全体としては"長い長いおはなし"*4であり、一連のイラストや漫画はその思い出のうちのあるひとときを短く切り抜いたものであるようだ。これから感想を綴る四冊の本の中で語られているのも、そういった切り抜きの思い出たちである。一つ一つ、辿っていこう。

vol.1 おぼろちゃんといっしょ

ファンブックvol.1「おぼろちゃんといっしょ」は、2人がケッコンカッコカリと新婚旅行を終えた後の2日間のお話。
表紙、手を繋いで歩く朧ちゃんと提督。提督が書いたと思しきおぼつかない字に頬が緩む。
よその鎮守府にお伺いする時は、そこの艦娘さんたちがどんな艦娘さんであるのか(もちろん自分の鎮守府の艦娘たちとは違う艦であるので)楽しみでもあり怖くもあるわけだけど、そこのところは最初にみなさんの紹介ページがあるので人見知り提督の読者も安心だ。提督・朧ちゃん・漣ちゃん・霧島さん・比叡さん・谷風のキャラ紹介、どれも短い文章ながら精確に人柄が伝わってきて楽しい。本編開始前の時点で漣ちゃんの印象が最高に(初期秘書艦で、縁の下の力持ちを悟られないように明るく元気に振る舞うって最高でしょう)。
本編。比叡さん・霧島さんによって朧ちゃんと提督の元に届けられた煎餅布団、これを機に二人は寝室を一緒にすることになった。冒頭の「さっすがですね〜!」から顕著なんだけど、このシリーズはゲーム版の台詞の流用がめちゃくちゃ上手いんだよね。それぞれの艦娘の身の丈にあった自然な用法で最大の効果(主にお笑い的な意味で)を発揮してくる。
明くる朝からはかわいいの波状攻撃。寝起きで頭が爆発してる二人、髪を結う朧ちゃんと結われる提督に和む。部屋着おひろめ会で眠さのあまりよくわからないことになっている二人、"からあげなどたべたい気持ち。"は本書の中でも一番可笑しい。執務室ピクニックで食事を行うみなさん、台詞と手描き文字が満載さればたばた賑やかでよろしいかと。
後のシリーズでたびたび出てくる、この鎮守府にはびこる二大悪癖「ドアを開けてからノック」「人の話を盗み聞き」もvol.1から登場している。こういう独自の「ならわし」みたいなものがあると、よその鎮守府に来たんだなあという感じがしていいね。安心感すら覚える(行為自体はおすすめできない……)。
アイスを食べる二人、お風呂あがりでタオルをごしごししながら食べたその味をいつまでも覚えていてほしいと差し出がましく思う。そして、寝る前に一日の良き思い出を振り返る提督の健気さ、楽しいのは朧ちゃんといっしょだからだと告げる純真さに胸を打たれる。提督の勝利によって思い出は閉じられる。いつまでもその"楽しい"が続くことを願わずにはいられなかった。

vol.2 ほしのふるよるは

ファンブックvol.2「ほしのふるよるは」は、クリスマスにまつわるお話。背中合わせでプレゼントを見つめる朧ちゃんと提督が嬉しそうでよい。なにげに身長差もあらわになっているし。
みなさんの紹介ページは、前作からそれぞれのレベルが上がっていたり、新しい顔が見えていたり。今回から登場した明石さんはこのシリーズの中でも大好きな艦娘さんの一隻だ。
さて本編。とある再会の後、霧島さんたちが持ち帰ったツリーに伴って、鎮守府はクリスマスムードに突入する。ご馳走の質は演習の戦果で決まる(!)ということで気合!入れて!戦いに臨む朧ちゃんと愉快な仲間たち"さいきょうのふじん"だった。
とにかく比叡と谷風の「おまかせ艦隊」*5がうい奴らすぎてね……今作を読んでから自分の艦隊の谷風ももうちょっと厚遇してあげようと思った。あと、紹介にはいなかったけど最上さん・龍驤さんもいい味出している。
さいきょうのふじんの戦果は上々、無事にクリスマスパーティを行える運びとなった。漣ちゃんがね、ほんとに気の回るいい子なんだわ……谷風をいじる手練手管も冴え渡ってるし。
シャンパンのジョッキ飲み……そういうのもあるのか……などど感心しつつ、提督からみんなへのプレゼントが行き渡る。そして朧ちゃんへのプレゼント、朧ちゃんから提督へのプレゼントも。「プレゼント」が何かすらわかっていなかった提督が温かい気持ちでクリスマスを好きになってくれたことが嬉しい。そして"……朧は"から"えっと朧も"へと助詞を掛け直す朧ちゃん、しびれるねえ……
クリスマスを題材にしたゲスト作品、コメントも含めて余すところなく楽しませていただいた。今後ゆっくりこっそり参加者さんたちのpixiv等をフォローしようと思う。

  • ミッタニウムさん:赤面ヴェールヌイがとってもいじらしい。
  • ジョイさん:朧と提督の隙間や、二人の身体の折り曲げ具合に惹かれる。
  • よりかさん:漣の善性は七つの海を覆って余りあるのでは?
  • そこつさん:愛宕の内側にそっと入り込むような小説は貴重でありがたい。
  • フジノキさん:靴下かわいいなあ。カニさんが物欲しそう……
  • いずみやみそのさん:漣の悪性は七つの海を覆って余りあるのでは?
  • かとうさん:また奥深い提督を一人(?)知っちまったな……
  • fuzinoさん:加賀さんと長陸奥の表情がかわいい。
  • だんちょうさん:何度お気に入りの艦娘をクリックしても普段と変わらなかった時の悲しみ。ほんとこればっかりは運営のさじ加減次第なんだよね……
  • 19さん:そこに☆を付ける発想はなかった。提督と雪風のノリもこれだけ軽いとむしろ清々しくていいっすね。
  • 鮭田まもしろうさん:ゆっくりと噛みしめるような朧ちゃんの表情の移ろい。
  • みほさん:やめてくれ朧、そのモノローグはオレに効く。

――そして時間はパーティ前の夕刻に遡り、明石さんは泣きながら"提督"に語りかけ、思い出は閉じられる。最後の1ページで明石さんにガツンとやられてしまった。この二人のお話が読みたいなあ。

vol.3 タメイキツミキ

ファンブックvol.3「タメイキツミキ」は、艦これの2015春アップデートによって実装された「能動分岐」のお話。
表紙は寒色が目立ち、糸電話を持つ朧ちゃんと提督の表情も少し物憂げだ。裏表紙を周って糸が鮮やかな色彩とともに伝っている意匠を優美に感じる。
まえがきにもある通り、いざ羅針盤によらず完全に望んだ進路を選べるとなると選ぶことに伴う責任が提督にのしかかってくる(少なくともそういう意識が生まれる余地がある)。それを思う時の不安と、そんな暗い想いを打ち払って応えようとしてくれる艦娘たちを描いたストーリーになっている。
鎮守府のみなさん、今回は新顔が多くて賑やかだ。綾波ちゃん・もがみん・敷波ちゃん・センダイサン・バリサン……お気に入りは綾波ちゃんかな。後述。
本編。うん、いっそ進路を艦娘に決めてもらいたい、なんつってな気分になることあるよね。とはいえ本当はもう提督の算段は済んでいるわけで、でも"えらんだほうでみんながつらかったら…"って思っちゃうわけで……。そこで艦娘さんたちに励ましてもらえるっていうことは本当にありがたいと思う。そして、朧ちゃんの言葉に後押しされ、ついに決断を下す提督の貴い表情に胸が熱くなる。
もちろん、ここで読者はこんなにも健気でちいさな提督に重い決断を迫る世界に怒りを表明したっていい。艦娘と呼ばれる者たちが戦いに身を投じる事の悲愴さについても(今に始まったことではないけれど)怒りたいだけ怒ればいいだろう。ただ、僕は「提督」があり「艦娘」があり「深海棲艦」があるこの世界――それらは「そうある」ものとして定まっているように見える――を呪う前に、「朧ちゃん」と「ちいさな提督」がどこへ向かっていくのか、もう少し見守っていきたいと感じた。「そうある」ことを認めながら受け入れず、「そうあれかし」と望みながら囚われず、思い出を手繰る旅はできないものだろうか。
――そして時間は第十一号作戦終了後へと進み、綾波ちゃんを中心としたいくつかのお喋りが繰り広げられる。提督、朧ちゃん、敷波ちゃん、もがみん……綾波ちゃんの言葉に赤面して飛びかかる朧ちゃんと迎え撃つ綾波ちゃんのいきいきとした顔・身体、非常によい。朧ちゃんのすらっとした左腕の先、左手に指輪も見えるいいコマなんだよなあ。
煙草を吸う艦娘たち、いいねー。*6綾波ちゃんともがみん、いつからライターを手にしていたのか、いつから煙草を吸っていたのか、もう覚えてないという言葉がどことなく悲しく響く。
そして、こちらの鎮守府おなじみの悪癖・盗み聞きから続く不穏な会話、"希望的観測"・"意思"・"生"・"執着"……ぞっとするような言葉の数々にめまいがした。思い出は燻る煙とともに閉じられる。

vol.4 おもいでの殻

ファンブックvol.4「おもいでの殻」は、サマーシーズン到来!なお話。
表紙、かばんやバケツにはたくさんの楽しいが入っているに違いない。裏表紙、指輪ケースに始まってこれまでのエピソードに登場した小道具(煎餅布団に付いてる本、耳あて、マフラー、靴下、海図?など)が流れるように配置されていて……ほんとそういうの弱いんすよ……。
みなさんの紹介、今回はおなじみの面子がそれぞれサマーバケーションな格好をしている。谷風のレベリングが捗ってるなー。
鎮守府は夏季休暇の気配に浮き立つけれど、提督は自分が休んだら代わりがいないので休まないなんて言う。その時の提督の顔が虚ろで怖くて、「提督」であることがこの子をどれだけ……いや、なんも言えねー……。今回はわくわくしつつもずきずき仕様なんだよね。谷風の"趣味を持つなんて考えた事もなかったな…"もわりとずっしりくる。
明石さんの提案で、近所に住んでいる「藤代さん」に提督を代行してもらい、アウトドアに繰り出す朧ちゃんと提督といつもの面々。藤代さんは漣ちゃん・霧島さん・明石さんとは知り合いということで、特に明石さんとの優しい会話が印象深い。綾波ちゃん・敷波ちゃん・最上さん・龍驤さん・浜風さん・木曾さんといった居残り組も描かれている。今回新登場の浜風さんと木曾さんもほんといい子らで嬉しい。
朧ちゃんらは川で水着披露の後、バーベキューに勤しむ。明石さんの水着カワイイヤッター! 花火もやって星空も見て、外で過ごす夏の休日を満喫した提督、楽しそうでよかった。
自身の提督と嫁艦で水着をテーマにしたゲスト作品は、今回14名参加で実際豪華。分厚く読み応えありありで、ページをめくるごとに晴れやかな夏が手元に届いた。ちいさな提督とのクロスオーバー的な作品もあって、世界が豊かに開けた感じがした。それってほんとにいいことだと思うんだよね……。

  • ジョイさん(朧):つまり朧に朧をかけてカワイイが2万倍だ。わかるか?この算数が。エエッ?
  • ぴかるんさん(朧):カニ島さん、ガンダムアシュタロンめいているので比叡がヴァザーゴになって合体すればよいのでは?
  • fuzinoさん(加賀):空母心を掴むのは並大抵のことではない……。むっちゃんもかわいい。
  • そこつさん(愛宕):こういった形の提督・艦娘の絆もまた好ましい。愛宕さんの幸せな未来を祈る。
  • だんちょうさん(電):あ、あれおかしいな、朧の蟹が種類レベルで変わってるような(目をごしごしする)。
  • みどるんさん(漣):ずきゅーん(ときめきで残機が1つ減る音)。この後ボールが流されて二人で慌てて追いかけたりするとよいなあと思った。
  • 恵太さん(時雨):方言入った提督に親しみを覚える。あらゆる時雨ちゃんの手つきが庇護欲をかきたてる。
  • 夏見こまさん(鳳翔):シチュエーションも提督の手の取り方も鳳翔さんとしおいちゃんの表情も素晴らしい。
  • いずみやみそのさん(漣):(ニーズを生み出すお客様は)いるさっここにひとりな!!
  • ちょっと剛毛さん(朧):ラムネ持ち夏の名を呼ぶ子どもたち。たいへんラブい。
  • よりかさん(漣):こちらでもキラキラしてる明石さん。漣ちゃんの優しさが五臓六腑に染みわたる。
  • よいろさん(若葉):微笑みに至るシークエンスisナイス。
  • 19さん(雪風):別にフェティッシュで手の話ばかりしてるわけではないんだけど、この雪風の提督に対する手の取り方もほんといいんだよ。
  • さぶさん(曙):側に居ながら何も言わないということができる、自分もそんな提督でありたいと思った。

――そして三つのエピソードが入れ替わり立ち代り。"「朧はこの季節が一番好きなんです」"、なので約束を持ちかける朧ちゃんと、ふるふるして(かわいい)それに応える提督。綾波ちゃんの穏やかでない話アンド極上辛辣スマイル。漣ちゃんの独白――独白? 本当に?――をもって、ひと夏の思い出は閉じられる。
朧ちゃんとちいさな提督のお話は続いていく。四冊の本を通して語られた思い出たちを辿っていくにつれ、いつか彼女たちの身に悲しいことが起こっていた/起こるんじゃないかという怖気が走る。辛い兆しを抱えた胸はもう破壊されそうになっている。けれど、思い出の一つ一つには確かに嬉しい楽しい喜ばしいがあるから、それらを装備して次の思い出へ向かうことができる。
藤色の遊び紙をめくり、本を閉じる。

おわりに

語り続けられている途中のお話について感想を書くということはわりと苦手な質で、それには落ち着かなさとか自分の予断に引っ張られる恐れとかいろいろ理由がある。けれども、この「朧ちゃんとちいさな提督」については克己してでも何か書いておきたいという想いがあった。
出来上がったこの文章は物語へのラブレターwith紹介&おすすめfeat.信仰告白みたいなものになってしまったけど、読まれた方が興味を持たれてこの作品を手に取ってくれることがあれば、1人のファンとしてこれ以上の喜びはない。
今後発行されるであろう続刊も楽しみにしている。東京圏のイベントにはあまり参加できないけれど、ありがたいことに委託があるからね。
8月14日から3週間と少し、自分の艦隊と共に艦これ夏イベントに向き合う傍ら、いつもこの物語が側にあった。幸福な夏だった。
 
――――季節はアップデートする。
 

「夏が終わっちまったねえ。なんだか、寂しいねえ。……ん、まあ、いいか! 夏はまた、来年もくるしねー。な!」
 
(「艦隊これくしょん」、谷風2015年秋ボイス)

*1:とらのあな紹介ページより

*2:1時間ドローイング=お絵描き60分一本勝負。艦これの場合はTwitterハッシュタグ「艦これ版深夜の真剣お絵かき60分一本勝負」が代表的。その他に特定艦娘やカップリング・艦隊ごとのワンドロも存在する。

*3:自分のFavologに記録されていた最古のFavは2015年5月。え、まだ初めて拝見してから半年経っていなかったのか?

*4:「ほしのふるよるは」あとがきより

*5:「まっかせてー」「谷風におまかせだよ」というおまかせ台詞を発する二人組。

*6:最近は長岡建蔵さんの煙草艦娘イラストなどもあって自分のタイムラインではけっこうトレンドっぽい。家具の設定から駆逐艦もお酒を呑むらしいことが明らかになったし、お酒を呑むなら煙草を呑んでもおかしくないだろうってことで艦これ界隈の煙草への抵抗感もあんまりないんじゃないかなという私見。煙草を吸う綾波の例としては、ソウタマエさんの「(仮)【カッコカリ 3話】」がある。

【告知】元長柾木ファンブック「WORLD SHIFTER」にコラムを寄稿

そんなわけで。告知です。*1
2015年夏コミC88に発行された、litfさん(@litf_tw/サークル:Lost in the Frontline)による同人誌・元長柾木ファンブック「WORLD SHIFTER」に文章を寄稿しました。
本そのものについては以下の告知記事をご覧ください。
元長柾木ファンブック『WORLD SHIFTER』C88にて頒布します - Lost in the Frontline
この本は、作家・シナリオライターとして活躍されている元長柾木氏のファンブックであります。内容は、共にお仕事をなされたうつろあくた氏へのインタビュー、ゲストを招いてのコラム集、litfさんによる論考集、元長氏が関わった全仕事データベースなど多岐に渡っており、充実した一冊になっています。疏水太郎さんによる表紙も素敵ですね。成瀬……
僕は今回、コラム集「わたしのすきなもとながまさき」に文章を寄せました。「Like a wind, in the worlds.」と題しまして、自分が思う元長柾木作品の魅力を読者の方々へお伝えしています。約1千字程度の文章です。第一段落をサンプルとしてここに公開しておきます。

"個性というのは、何を作ったか、ではなく、どう作ったか、というところから出てくるものだと思います"、とは他ならぬ元長柾木自身の言葉である。ともすると彼の作品は、取り扱った主題や要素というWhatの部分が稀有なものとして捉えられがちだ。しかし、実はその取り扱いの作法、Howの部分にこそ交換不可能性があるのではないだろうか。筆者が好ましく想う元長柾木という作家の像もまた、何を語ったかではなくどう語ったかという視座から結ばれる。

こういうテイストです。興味を持たれたら購入をご検討いただけると幸いです。litfさんや他の方の文章も素晴らしいですから。今後の委託予定やイベント頒布予定はlitfさんのサイト・Twitterをご覧になって下さい。

追記 2015-09-08

COMIC ZINでの委託が始まりました。よろしくお願いします。
COMIC ZIN 通信販売/商品詳細 元長柾木ファンブック『WORLD SHIFTER』

*1:本来なら夏コミ前にこういう記事を出しておきたかったんですが、Twitterの告知ツイートRTくらいしかできませんでした。申し訳ありません。

コミケC88・東京遠征記

そんなわけで。今年の夏コミケのために、そしてそれを機に全国から集まるごきげんなインターネッターたちとオフで会うために、お盆休みは東京へ旅行することとなった。日付を追って振り返っていこう。

8月13日

「うう……行きたいけど行きたくない……準備面倒だ……もう行かなくていいんじゃないかな……?」とイベントの直前に陥るよくある心理状態になり支度が捗らない。
結局夕方に京都を発ち、わりと空いていた新幹線で無事東京入り。宿にチェックインして遅めの夕食を取る。22時台に夜の街をぶらぶらして、ちょっと上等なハンバーガー屋さんで2000円くらい使ってハンバーガー・ポテトフライ・ビールを食しているとすごく悪いことをしているような気分になった。
翌朝の食事としてコンビニおにぎりを購入して宿に帰りターンエンド。

8月14日 C88・1日目

1

サークルチェック不足というか今回あまり乗り気でなかったので元々しっかりやるつもりはなかったんだけど、とりあえずコミケへ出発。東京は電車網が発達していて羨ましい。昨年みたく会場でポカリスエット買えばいいかなと思いつつ、一応当てにせず道中でポカリスエット900mlを購入。900はけっこう重かった。500を買って切れたらもう1回買った方がよかった。
10時30分頃に国際展示場着、列に並んで東館に入れたのが11時過ぎくらいだったかな。45分くらいだったのでそこまで列待機で消耗はしなかった。「艦これ」系の同人誌等をいくつか購入。a-parkさんのサークル宇古木亭へアイサツし、店番のpetrovichさんやminkaiさんともアイサツ。ぶらぶらと全く知らないジャンルを歩いたりしてコミケの雰囲気を楽しんだ。閉場前に宿へ帰還。

2

都内某所で疏水太郎さん・litfさんと食事をご一緒させてもらった。今回litfさんの元長柾木ファンブック「WORLD SHIFTER」が無事発行の運びとなり、表紙を描かれた疏水さんと寄稿者の僕を含めた軽い打ち上げのテイストも含んだオフ会みたいなもの。元長柾木作品についての話、その他アニメやゲームの話などでとても楽しい時間を過ごすことができた。
前期アニメの「響け!ユーフォニアム」がよかったねという繋がりで、僕からは作品の舞台となった宇治にちなんだお土産を二人にお渡しした。疏水さんからはthen-dさんが以前発行した「永遠の現在」を一冊いただいた。貴重な御本をありがとうございます。
少女魔法学リトルウィッチロマネスク」などをいつかプレイするリストに再登録しつつ宿に戻る。

3

お風呂で汗を流したあと、コミケで買った同人誌をベッドでゆったり読んでいた。明石本・朧本・コスプレイヤー榛名小説本などの艦これ本(厳密には最後のは艦これ本ではない)。

なかでも15練乳「おぼろちゃんといっしょ」シリーズが素晴らしかった。朧ちゃんとちいさい提督を中心とした鎮守府のお話で、読み終わる頃には頭を揺さぶられて胸を締めつけられて心がぐちゃぐちゃになってもうわけがわからなくなってしまった(危険な読み物だと誤解されぬよう。朧ちゃんとちいさい提督の心温まる交感がメインだよ)。美少女ゲームで例えるなら共通ルート終盤から個別ルート序盤のアトモスフィア、未だ閉じられない物語世界の中で二人にはこれまでとこれからがあって貴いいまを生きている、そういう感じだ(伝われ)(伝わらないと思うので別に感想書くと思う)。

8月15日 C88・2日目

1

2日目はコミケ不参加。なのでゆっくり過ごしてしまったが、築地市場で鯨を食べるというミッションを思い出し慌てて出発。かつてススミハジメさんにTwitterで教えてもらったうちの一つ、登美粋というお店で人生初の鯨を食した。食べたのは鯨串カツ丼、赤身の部分なので鯖などに近い味だったかな。夜の飲み会のお土産に鯨畝須ベーコンというものを買って帰る。途中秋葉原で買い出し。好青年オーラが出ていたためか外国人観光客に電器屋の前で写真撮影を頼まれた。いろいろやりつつバ会会場へ。

2

参加者各位とバ会会場で準備。夕夜には無事開催できた。闇の宴もとい和やかで楽しい飲み会だったね◎
皆が持ち寄ったお酒やおつまみを存分に味わった。僕から出したのは玉乃光酒造・純米大吟醸・こころの京。これは以前試飲会で美味しいと思ったお酒で、京都限定品なので他の人ともかぶらないだろうということで。あと昼に買った畝須ベーコン。好評だったようで何より。
メロン日本酒、呑むのは3回目だったのでわりと慣れた感じに楽しむことができた。みなさんもぜひご自宅で試してみてくださいね。
話題としては*******実演講座や、とある写真の撮影場所を特定する遊びに興じつつ参加者たちと楽しくお話できた。
毎度のことながらコミケ3日目を控えてる人がいるので(というかほぼみんなそうだった)、各自適当に散会。

8月16日 C88・3日目

1

サークル入場してlitfさんのお手伝い。若干睡眠不足による二日酔いできつかったので今後は前日の休息をしっかり取ろう。litfさんの元長ファンブック「WORLD SHIFTER」はなかなかの売れ行きでよかった。lanigramさんの来訪にも立ち会えた。
買い物、一部の艦これの壁サークルは列の長さが尋常ではなかった。並ぶのを諦め、この日はサークルチェックをわりとしていたのでけっこうな数の同人誌、CDを購入。催眠音声も購入した。せっかくだから細かい催眠音声のことを尋ねてもよかったなあ。ココ山さんにスケブも描いていただいた。素敵な大和さんをありがとうございます。
撤収からの宿帰り即荷物まとめ引き払いからの打ち上げ参加。東京で偶然入ったお店で京風の料理が食べられたのはすごい縁を感じた。とにかく頼む品頼む品全部美味しくていいお店だった。ここでも楽しく話せてよかった。
新幹線に乗って東京を発ち帰宅。

以上が今回のC88に合わせた東京旅行の記録。主に自分があとで振り返る用のエントリなので、エンターテイメント性を考えて文章打ってないけど、旅の楽しさが伝われば幸い。
今回の反省点としては、コミケの参加度(ガチかゆるふわか)をあらかじめ決めておこう、特にサークルチェックは当日しておけばよかったなーと思うくらいならしっかりしようという話。まあそこまで後悔とかはなかったけど。3日目エロゲ島巡りが完全に意識の外だったからみなとそふと系同人誌は確認できてないのが少々気がかりではある。旅行用の小さいノートPC・タブレットはあればいいけどまあなくてもなんとかなった。宿のネット環境にもよる。ああ、一番思ったのはキャリーカート・スーツケースの類いは車輪2輪じゃなくて4輪のものが圧倒的に楽なので今後買うならそうしようということ。2輪は移動時かなり辛かった……
これはオフの度に思ってるけど、いろんな人たちに会って話をすることが刺激になってよかった。特に今回はいい作品に出会えたり自分が寄稿した本も出たりで同人って面白いと改めて思った。だからといって自分も本出すみたいな話には即ならないけど、とりあえずこうしてブログで久しぶりに文章書けるくらいにはいきいきとしている。
各種飲み会やコミケ会場等でお話してくれた方々、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。京都に来てくれてもいいんだよ。