ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ワン・フロム・ザ・ハート

 

ワン・フロム・ザ・ハート

ワン・フロム・ザ・ハート

  • フレデリック・フォレスト
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「地獄の黙示録」のあとにこの映画撮るのか。しかもセットで。そして興行的には大コケするのか。なんかもー、それだけでめちゃくちゃ面白いな……

話としてはとりとめもない話というか、なんかこう言葉では説明できない感情で引きつけられたふたりの痴話喧嘩と仲直りを見させられるだけで、俺はそこまで興味が持てない。けどもまあ、こういう映像的なテクニックの数々を見ていると、あーなるほどこういうふうに完全にコントロールされた映像を作りたかったのね、というのはよくわかる。OPで立て続けに現れる看板からして、CGがないのに良く作ったなーって溜息が出るもんねえ。

また、そういう全体に漂う作り物っぽさが、この一筋縄ではいかない人間関係にミョーな質感を与えているなあ、という気はする。なんとなくミュージカルと似ているのかもしれない。ラスベガスってものすごく人工的な場所が舞台なのも、その感じをさらに一層強めてるんだろうなあ。

まーしかし、こういう心情に共感する系の映画、自分はニガテなんだなあと改めて思いました。いいからボラボラ島に飛んじまえ! 今すぐ行け! 帰ってくるな! と散々思ってしまったよ……

ケロッグ博士

 

ケロッグ博士(字幕版)

ケロッグ博士(字幕版)

  • アンソニー・ホプキンス
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ケロッグ博士がちょっとカルトっぽくてやべーって話はどこかで聞いてた気がするんだけど、こんな映画が撮られてるなんてなー。

まずは何より欲望と禁欲がせめぎ合ったアメリカって感じ。何より博士の代名詞となってるコーンフレークなんて、大量生産の時代だからこそ必要とされた食べ物なワケで、そこには資本主義の潮流を見ざるを得ないわけだけれども、一方でアメリカは当然キリスト教的な禁欲主義が源流となっている国であって、その鬩ぎ合いがあからさまなくらいビリビリ走っているよなー。

まあ、その鬩ぎ合いだけで一本作られているというか、それ以外の味付けがちょっと雑じゃない? 裸と便を全体にまぶして、肝心の話自体はちょっと雑な感じもする。父と子の関係も、あんな場当たり的に解消されちゃって果たして良いのだろーか? 詐欺被害を受けた男も、なんかこう中途半端な感じになっちゃったしなあ。

それにしても、アンソニー・ホプキンスがセルフ浣腸するシーンはぜひ見たかったぜ! っていうか子どもが浣腸を認知していたのが一番面白かったわ。養子ってことも合わせて、コンプレックスが妙なところで社会と合致しちゃった話だよなぁ……

ヘル・フロント 地獄の最前線

 

いや……なんで今コレを映画にしたんだろ。地味。とにかく地味。もちろん新しくやってきた兵士の視点で、地獄の第一次世界大戦の塹壕戦をやる、というのはわかるんだけれども、でもすでにたくさんそういうのを見てしまっているからなあ……今更戦争で神経症を患った兵士の苦しみとか見せられても、知ってる知ってる、十鹿成らなかったりする。やっぱ登場人物の芝居とかそういうのをちゃんと見なきゃいけない話なのかなあ……うーん、正直全然興味が持てなくて困る。

とまあ、全体的にのれない話ではあるんだけれども、そのなかでミョーに食事の話が細かいのはなんか面白い。戦場における食事の重要性はなんだかんだ聞くけれども、こういう地味で命懸けで暗い話の中で、延々パイナップルの話とかしているのはめちゃくちゃ印象に残るなあ。あと、コックがトビー・ジョーンズなのは笑ってしまう。ホントインパクトある顔だよなートビー・ジョーンズ。

映画の話自体は全然ピンとこなかったんだけれども、ラストの姉の姿があまりにも美しすぎて、それで溜息ついてオッケー! という感じになってしまうのはまーオレの悪いところだよな。あの美術は好きすぎるからなあ……

お兄ちゃんはおしまい!

 

 

いやー、これはクソしんどい話だな……

男性のセルフネグレクトは問題だと思うんだけれども、これだけ献身的な家族がいても、それだけでは男性が男らしさの呪縛から逃れられない……という内容になっていて、それが大変厳しい。そしてそれが逆に、美少女キャラクターになれば、ごく当たり前のことをするだけで、この生きづらさから逃れられるのだ、ってメッセージになってしまってもいて、本当に暗澹とした気分にさせられてしまう。本来ならばそうではなく、男性のままでも、ちゃんと近くに自分を愛してくれる人がいて、一緒に努力するなら、きちんとした生活もできるよ、という話であって欲しい気持ちもあって、だからラストの「表面上の楽しさ」に流され、それからの女性としての人生に全く想像力が及んでいない、先延ばしの決断も、男としての生きづらさの拒絶というストーリーの立て付けからは、大変無責任なものに思えてしまうのだった。

あと、単に女性になるのではなく、若返ってしまう辺りもまた話のテーマをしんどくさせているよなあ。責任ある大人であることの生きづらさというのには全く向き合う気がないというか……若返ること、被保護者になることでしか、自分の人生を立て直すことができない、みたいなのは、ファンタジーとしてはわかるんだけれども、ファンタジーとしてのカギカッコを常につけておかないと、結構危ないとオレは思います。

まあ、そこら辺そこまでちゃんと自覚できているのかはちょっとわからんけどね。化粧で自己肯定感を高めるべきところで、姉が当然のように「誰かに見せるわけじゃない」とか言ってしまってる辺りとか、本当にそのリアクションで合ってんの? と思う。それって、有害な男性性に追い詰められた兄が、女性になれば自己肯定感を得ることができて立ち直れる――と判断した妹としては、ちょっとなんか解像度が荒くないかしら? とは思った。

生きる LIVING

 

生きる LIVING

生きる LIVING

  • ビル・ナイ
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繊細……なんだけれども、黒沢明版のインパクトがめちゃくちゃ強かったから、なんか物足りなさを感じてしまうよなあ。記憶がもう曖昧なんだけど、前半の主人公が決意するパートとか、あんなに細やかにわかりやすくやってたっけ? 内面がイマイチ良くわかんないまま、むき身でドン! と葬式がやってきて……のインパクトと、モノクロのハイライトがクソ強いブランコのシーンがあるからこそ、の映画であるような印象なので、このリメイク、イイ映画ではあるが全然印象度が違うよなあ、とは思ってしまう。

にしてもこれ、イギリスでやる意味のある話になっているよなあ。そんなおおっぴらじゃないけれども、硬直した官僚組織に対して女性の視点が風穴を空ける話になっていて、それはこの時代のこの場所であることにちゃんと意味があるというか。いや翻って、「生きる。」があの時代の日本を舞台にしたことにも、ハッキリと強い意味があったわけだけれども。

前半の、酒を飲んだり女性と遊んだりという、「男らしい」遊びでは全く満たされなかった主人公が、ラストのブランコのシーンで幸せな姿でいられる、というのは、まあたぶん意図したんだろうし、とても良いシーンになっていると思いました。あの名シーンからの逆算で、こういうシナリオになったのかもしれないなー、みたいなことも思ったよ。

映画『ゆるキャン△』

 

つらい……なんだこのつらさは……

しまりんに地方のミニコミ誌編集させて正月を会社で迎えさせるの無慈悲過ぎる……嫌マジで辛くないですか。学生時代とはちょっとフェーズが違うのはわかるんですけど、そのリアリティはボディブローのように効く。

あとまあもちろん恋愛が全ての答えというわけではないけれども、そういうニュアンスが全くないのって逆に不自然な気がして、見ていてすごくグロさを感じてしまう。作品全体を、老いとか過疎とかそういうものが覆っていて、地方の人々のコミュニケーション含めて、わりと真摯にそれに向き合ってる作品なワケじゃないですか。なのにそこから、男女の愛の営みがスッポリ抜けている、というか消臭されているように思えるのは、なんかものすげー気持ち悪さを感じてしまう。思いの他気持ち悪くて本当にビックリした。なんなんだろこの感覚は……

あとまあ、映画としてのスケール感みたいなのが必要な枠組みだってのはわかるんだけど、しかしこの題材が上手くフィットしてるようには思えないところもある。運営維持含めた地方の問題って、こんな手軽にコミットしてOKなものなのだろうか……いや、俺が難しく考えすぎなのかな?

作品としてはいつも通り丁寧に作ってあるのはわかるし、社会人を描くというトライ自体もとても良いことだとは思うんだけどな。うーむ……

宝石の国

 

いやー、すごいところまで飛ばされちまったなあ……読み放題だったんでガンガン読んだんだけれども、最後はちょっと放心状態になっちゃいますね。

アニメを観ていると「ん? なんか評判ほどやばい感じはしないな……」と思ってたところが、マンガを見て納得。こんな宝石が人間じゃないからってかわいらしい絵に合わせてグロいことするなあ……というところからのー、全力で浄化にかかるの、何これ? まあ確かに仏教もチーフの話だよなーとは思ってたけどさー、こんなところまで辿り着く?

しかしまあ、そもそも「なんでこの人たちは戦っているの?」というのがよくわからない立て付けから始まっていて、それが最終的にこういうところに辿り着くのは必然と言えば必然か。生きるために戦うのではなく、滅びるために戦う、というのは今の時代だからこそ色々考えさせられちまいますねえ。しかし人間、戦わないで滅びることすらできないってのは、うーむ大変きっつい話ではありますね。

いやまーしかし、ホントアニメがアニメとしての快楽を追求してがんばってたんだなーというのが大変よくわかった。コレ普通にやったらこのマンガの良さを3DCGで出すのって難しそうだもんなあ。テイストは結構違っている気もするけれどもお、それでもちゃんと納得の落とし所になっているのはすげーなーと思いました。