ティッシュで顔を拭いても大丈夫!

夏の香港、建物の中はこれでもかというぐらい冷房が効いてる。しかし外は亜熱帯気候で高温多湿。気温が32度だとしても日差しが強くて湿度が高い。香港人はこの暑さになれているのか、意外に汗をかいていないのだが、私は外を歩けばすぐに汗だく。
ある夏の日、MTR粉嶺から炎天下を歩いて15分ほどのところにある粉嶺戲院へ向かうと、案の定汗はだらだら。映画館について汗を拭こうとバッグを探ると、ない、ない、ない。
いつも必ず持っているハンドタオルをすっかり忘れて家を出てしまった。汗はだらだら流れているのに拭くものがないなんて。恥ずかしい。バッグを探るとあるのはポケットティッシュだけ。どうしたものか。仕方がない。これでおでこぐらい拭いておこう。
窓口でチケットを買って入ろうとすると、入口のもぎりのおじちゃんが「顔にティッシュついているよ」。「え”〜〜〜〜〜〜恥ずかしい〜〜〜〜」。とまるでTempo(テンポ)のCM状態。
そうTempoというのは香港でもっともポピュラーなポケットティッシュ。かなり優れもので、日本のヤワなティッシュとは大違い。上質のパルプを使っているのか、しっかりしていて、ちょっとやそっとの水分でよれたり、破けたりしない。りっぱにハンカチの役目を果たしてくれるというのに、コンビニで1つたったの3ドルちょっと。
香港には針葉樹は生えないし、もちろん製紙工場もないから、Tempoは当然のごとく輸入品。それもドイツのSCA Hygiene Productsというメーカーの製品だという。ドイツ人が香港に来てこんなに普及しているTempoを見て驚いたとかなんとか・・・・。
メンソール、林檎、ジャスミンなんて香り付きがあるが、私はナチュラル派。薬局でパック売りをまとめ買い。かつてはもう少し縦に長いパッケージだったが、最近はこの「petit」サイズが一般的で、バッグに入れるのにもちょうどいい。家族が香港に遊びに来た時に使っていたら好評だったので、帰省時のお土産にしていたこともある。
因みに写真の36個入りパックは薬局で29ドル。さらに言うとティッシュなどは、スーパーや屈臣氏(ワトソンズ)、萬寧(マニングス)より普通の薬局の方が安いことが多いので、薬局を見つけたらチェック!


近くの薬局

まかない飯のアレ

香港の食べ物屋では、店内や時には店の外にテーブルを出して店員が豪快にまかない飯を食べている場面によく遭遇する。山盛りのご飯に炒め物や蒸し魚や蒸肉餅などを食べていて、メニューより「それ」が食べたいと思ってしまう場面も多々ある。
そのまかない飯のおかずが入っているのは、必ずといっていいぐらいステンレスの皿だ。使い込んでほどよくでこぼこして艶のなくなったステンレスの皿に無造作におかずが盛られた姿を初めて見た時、軽いショックを覚えた。そのステンレスの皿はどう見ても食器ではない。ステンレスのボールやステンレスのザル、ステンレスのお玉と同じ道具だ。その道具におかずを盛ってガシガシと食べている。女性では出来ない芸当。なんというか、食事というよりエネルギー補給という感じだ。あんなステンレスの皿が欲しいと思った。
油麻地から旺角にかけての上海街は、料理器具が揃う所として有名だ。中華包丁や憧れの丸いまな板、業務用のさまざまなサイズの寸胴などなどが並ぶ。最近ではケーキ作りの道具専門店もある。
上海街のステンレス用品を扱う店を覗いて歩いたが、まかない飯に使っているステンレス皿と同じ形のものは見つけられなかった。しかたなく妥協して買ったのが写真のステンレス皿。どこが違うのかというと、まかない飯のステンレス皿には縁がないのだ。そしてもう少し深い。
縁のあるこの妥協品を何に使っているかというと、主に蒸肉餅を作る時に使っている。蒸肉餅は肉を薄く皿になすりつけるようにするのが本来の形らしいのだが、平たい皿で蒸すと蒸籠から皿を取り出す時に美味しそうな肉汁がこぼれそうになる。そこで少し深さのあるステンレスの皿に入れて蒸していた。蒸しあがったら、ステンレスの皿ごと大きめの皿に乗せてそのままテーブルへ。蒸肉餅以外にも野菜を蒸す時もこの皿に野菜を乗せてそのまま蒸籠へ。蒸し上がったら別の皿に盛りつけていた。それなりに満足して使っている。
でも、やはり、まかない飯のアレ、縁のないアレが欲しい。それでご飯を食べようというのではないのだが、欲しい。次回、また上海街をさまよってみよう。


上海街

鯉魚門で潮風にあたる

香港島・西灣河は古い香港映画好きには聖地のような香港電影資料館がある場所。特集上映があると週末にはここへ通い1日に2・3本見ることになるが、過ごしやすい季節には映画館にこもっているのがもったいなくなって、時々映画をエスケープしていた。
西灣河からふらっと散歩に行く場所は何か所かあるが、たまにフェリーに乗って対岸の三家村というところに行っていた。聞き慣れない地名だが、鯉魚門(れいゆうむん)といえば知っている人も多いだろう。
香港島の西灣河から東隣の筲箕湾にかけてと対岸の鯉魚門の間の海はとても狭くなっていて、外海とビクトリア湾を隔てるこの海峡を鯉魚門と呼んだことが地名の始まりだという。
鯉魚門は海鮮料理を食べる場所として有名だが、私がここで海鮮を食べたのは10年住んでいてたったの1回だけ(笑)。いつもはふらっとひとりでただ散歩に行くだけ。散歩コースはいたって簡単。ただただ三家村(つまり鯉魚門)の路地を進んでいくだけだ。
魚を売る水槽や海鮮を食べさせるレストランが並んだ細い通りをどんどん進んでいくと、視界がひらけてくる。道なりに左の方に折れて進んでいくと海に突き出たように天后廟がある。その天后廟の左側を回ってさらにどんどん進んでいくと家は無くなり岩場になり、道もあるのかないのかといった感じになる。釣り人が岩に登って釣りをしていたりする(写真)。そんな風景をなんとなく眺めて潮風にあたる。それだけ。
先ほど道なりにまがった所からあまり綺麗ではない砂浜を海の方へ歩いて行くと、意外と水は綺麗で、やはり釣りをしている人がいたりする。実はここは夕暮れの絶景スポット。ビクトリア湾の向こうに沈む夕陽に釣り人のシルエットが浮かび上がったりする写真スポットでもある。中心地からそれほど遠いわけでもないのに、釣り人と夕陽を見ていると遠出をしてどこかの島の漁村に来たような気持ちになってくる。
陽が沈んで海鮮レストランに客がやってくる頃、小巴に乗って觀塘へ、觀塘からさらに小巴を乗り継いで旺角へと戻ってくると、いつもの賑やかな日常が待っている。


鯉魚門での買い物は、合桃(胡桃)に黒糖や蜂蜜を絡めたものや、雞仔餅、雞蛋卷。合桃で有名なのは紹香園だが、支店が街中にもあるので、やはりここではここにしかない店で合桃を買うことにしよう。


年香園餅家
 鯉魚門海旁道中43D

買い物籠下げて街市へ

私が住んでいたのは旺角、それもど真ん中。一番近い路上マーケットは煙廠街で、普段はここで野菜を買っていたが、店の数が多くないので、休みの日には決まって朗豪坊裏の廣東道に並ぶ路上マーケットか、散歩がてら少し足をのばして大角咀の街市(公設の市場)、時には小巴(ミニバス)に乗って九龍城の街市に買い出しに行っていた。
香港では地元スーパーマーケットの野菜売り場はどこも貧相だし、売っている野菜は新鮮さに欠けていて買う気がおきない。日系スーパーは近くになかったし、あったとしても日本からの輸入野菜は高くて買っていられなかった。地元の人で賑わう路上マーケットの品は新鮮だし安い。歩いているだけでも楽しい。
いつも買うのは野菜、果物、肉、卵(新界の農場でとれた卵)、茸、豆腐や豆ト(揚げのようなもの)といったもの。らきょうの酢漬けや漬け物のたぐい、蠟腸(中華サラミソーセージ)、蝦米(蝦の乾物)、干貝(貝柱の乾物)、貝の類(聖子やアサリや扇貝)も時々買った。魚のつみれはよく買ったが、魚は調理が面倒なので滅多に買わなかった。通っているうちにどこで何を買うかもほぼ決まっていた。
路上マーケットや街市で買う野菜は量り売りだ。単位は「斤」(がん)。1斤は約600グラム。葉もの野菜1斤はかなり嵩があるので半斤にしてもらうことも多かった。果物でも5つで幾らという店も多く、ついついいろいろ買ってしまう。
路上のマーケットや街市での買い物ではおのおのが白いプラスチックバッグ(何故か魚屋は赤い袋のことが多かった)に入れてくれるので、手にいっぱいプラスチックバッグを持つ事になる。バラ売りの卵(プラスチックケースに入っていない)や小袋のらっきょうの酢漬けや豆腐(これもプラスチックケースには入っていない)、紙の袋に入った油がしみ出そうな蠟腸と、ごろごろした芋や人参、葉っぱもの野菜などをいっしょくたにエコバッグに入れるのは、なかなか工夫がいる。
そんな買い物の途中に雑貨屋で見つけたのがプラスチック製の籠。形が可愛くて、サイズも大から小まで何種類も重ねてあったので、とりあえず1つ買った。籠を下げて路上マーケットを歩くとなんとなくうきうき、籠からはみ出す野菜の葉っぱも愛おしく見えた。
その後さらに別のサイズを2つ買って、合計で3つ持っていた。籠に付いていた紙切れによるとタイ製だった。値段は1つ20ドル前後だったと思う。チープで可愛いデザインな上に使い方も自在で、買い物に使う以外にキッチンに置いて麺などの乾物や缶詰などを入れたり、部屋に置いて雑誌を入れたりしていた。
2つは東京に持ってきた。大きい方は20リットルのゴミ袋がぴったり入るので、今キッチンでプラスチックのゴミを入れるのに使っている。写真に写っているのは小さい方で、まだ出番がなく今は納戸で眠っている。


雑貨屋(店の名前分からず)
 旺角廣東道、八百屋などが並ぶ通り。

蒸籠で蒸し蒸し

香港での食事はどうしても野菜不足で油過多になる。忙しい時には昼も夜も外食で済ませる事も多く、突然、野菜が食べたくなってサラダ屋に駆け込むなんてこともあった。さっぱりすまそうと麵を頼んでもスープには油が入っているし、野菜を摂取しようと麵屋で油菜(やうちょい)を頼んでも、日本のおひたしとは違って茹でる湯の中に油が入ってる。そんな事が続くと、つくづく油分がいやになって、夜遅く家でうどんやそばを茹でて食べたり、ただの茹でた野菜にドレッシングやポン酢をかけて食べたりしていた。
しかしおひたしばかりでは飽きてしまう。いい方法はないものかと考えた。そうだ、野菜を蒸せば簡単に沢山の野菜が食べられるし、肉や魚やソーセージも一緒に蒸してしまえばメインの料理にもなる。野菜は茹でるより蒸す方が栄養価も高いと聞くし、色鮮やかに仕上がる。ドレッシングを各種用意すれば、味も飽きないしノンオイルドレッシングなら油を摂取せずに食べられる。
香港のウチの台所は恐ろしく狭かった。最初は無水鍋の購入を考えたが、値段が高い上に重くて洗うのが大変そうだ。次に電気のスチーマーも考えたが、置いておく場所を確保するのが困難、洗うのも面倒そうだと、買うのはためらわれた。それなら蒸籠(セイロ)で蒸すのはどうだろう。蒸籠は手入れも簡単そうだし、手持ちの鍋に組み合わせればいい。お値段もそう張るものではないはずだ。そういえば、散歩の途中で気になっていた店がある。せっかく香港で蒸籠を買うのだからその専門店で買いたいと思った。
蒸籠は鍋の上に乗せるには鍋にぴったり合うサイズのものが必要だが、中華鍋に乗せるなら鍋より小さければよいということで中華鍋に乗せて使うように24センチほどの蒸籠を買うことにした。蒸籠は深さによって2種類あり、さらに蓋の状態も2種類あったので、深い方で蓋が丈夫そうな方を選んだ。
蒸籠を使って、馬鈴薯、南瓜、茄子、菠薐草、蓮根、玉葱、人参、椎茸、名の知れない茸、インゲン、キャベツ、ソーセージ、魚、肉とあらゆるものを蒸してみた。これにポン酢、梅や胡麻のドレッシングをかけて食べた。これが思いのほか美味しい。特に蓮根なんてびっくりするぐらい美味でお気に入りになった。もちろん焼売や蝦餃などの点心も蒸した。多い時は1週間のうち半分は蒸しものになっていた。
帰国する前に新しく蒸籠を2つ買った。ひとつは香港で使っていたのと同じ24センチほどのもの。もうひとつはそれより少し小さい20センチのもの(写真のもの)。お値段は最初に買った時からかなり値上がりしていたが、それでも2つで3000円程度だったと思う。今はもっぱら大きい方を使っている。因みに蒸籠は湿気が大敵で、湿気ってしまうと黴が生えるため、洗ってよく乾かし、風通しのよい場所に仕舞っておくのが長持ちさせるコツだ。
徳昌森記蒸籠は5代にわたって蒸籠を作っているという老舗で、すべて竹を使った手作り。一代目は広東省の田舎で蒸籠などの竹製品をつくっていたが、広州の茶樓が繁盛しているというので二代目が広州に出てきた。戦後になって三代目が香港へやってきて、今は四代目と五代目だという。蒸籠の胴のところに押されている「徳昌森記蒸籠」の大きく青い印が蒸籠作りへの誇りを感じさせる。
近くを地下鉄が通るため、このあたり一帯の地価が高騰しており、徳昌森記蒸籠も別の場所へ移らなくてはならないかもしれないという。なんとも寂しい。今の店舗のうちのもう1度尋ねておきたい。


徳昌森記蒸籠
 香港西環西邊街12號地下

平安T

毎年、離島の長洲で催されるのが奇祭として知られている通称「饅頭祭り」。正式な名を「長洲太平清醮」(ちょんざうたいぺんちぇんちう)という。今年は5月17日(金)が祭りの最終日になる。
最終日の昼間には、飄色という子供を乗せた山車や麒麟、獅子、象、龍などが舞い、銅鑼や太鼓とともに島内を練り歩き、夜には沢山の饅頭をつけた巨大な饅頭塚(包山)によじ登り饅頭を取る競争が行われる。夜中の饅頭取り競争はテレビで生中継される。
この日いつもは静かな島が大賑わいの大混雑になる。中環のフェリーピアからすでに大混雑で島に行く船はピストン輸送、島の細い道は飄色を見学する人であふれかえる。プロカメラマン顔負けの望遠レンズをつけたカメラが沿道のベストスポットに陣取っている。
「平安」と赤い印の押された饅頭を買うために長蛇の列が出来、ポテトや魚旦(フィッシュボール)、アイスクリームなどの小食(スナック)にも人が群がる。饅頭や平安にあやかったグッズが沢山売り出され、これらを買って帰るのも楽しみのひとつだ。
祭りの日にしか買えないものもあるが、「平安店」のTシャツはいつでも購入可能(ただしいつも同じデザインのものがあるのかは分からないが)。ここにはTシャツ以外に手提げ袋やステッカーなど、洒落たデザインの小物がある。小さな店なので見落とさないように。


平安店
 香港長洲新興後街147號