双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

陰謀

|戯言| |雑記|


「連休が明けた途端に、この異常なほどの静けさって… ホビダー。
つまりこれがあなたの云う、彼らによる陰謀ってことなのね」

「ああそうとも、スカリー。ようやく分かってきたじゃないか。
そもそも大型連休そのものが、或る目的を遂行するため
連中、即ち政府によって意図的に作られたものなんだ。
しかもそれは巨大な計画の中の、ほんの一部に過ぎない。

そしてまぁ、君も思い知っただろうが、国民から意思を奪い、
自分たちの意のままにコントロールし、ああして連休を使って
僕らを右往左往させ、心身を消耗させて苦しめて居るって訳だ。
そして更に悪いことには、これ以上考えたくもないが…
そいつは連休が終わった後も、しばらくの間じわじわ続くのさ。
つまり、だ。
例のチップを使って、大衆の意識から完全に僕らを消してるんだよ!」

「なんて恐ろしいことを…」
「ああ、スカリー。まったくだ」


かくして我々は、大型連休などと云う政府によって仕組まれた
ロクでもない陰謀に振り回され、生気を削がれてゆくのである。

見えない敵と戦って居る

|戯言| |雑記|


連休と云うのは魔物である。
たまたま良い感じの流れになったとしよう。
そこでちょっとばかり多めに客が入り、ちょっとばかり多めに売り上げて、
おや?ひょっとすると、このままこの良い感じが続くかも…などと
僅かでも油断して浮足立とうものなら、即座に足元をすくわれて、
翌日には掌を返すが如く、途端に絶望の奈落へ突き落される。
そうかと思うと今度は傍若無人の一見客、と云う恐ろしい刺客を
息つく暇も無く次々と送り込んでは、我々を忙殺の業火に苦しめる。
彼らには我々の考えなど、いつだってやすやすとお見通しで、
我々がこうして思惑通りに一喜一憂し右往左往する様を、
遥か高みから見下ろし、滑稽滑稽とせせら笑って居るのだ。


「ホビダー、一体何が在ったって云うのよ?」
「なあスカリー、聞いてくれ。君だって本当は分かって居る筈だ。
大衆は常に奴らの徹底した管理下に置かれ、その体内へ埋め込まれた
特殊なチップによって行動も思考も、完全にコントロールされて居る。
現に僕らの元へこうして送り込まれては、自らの意思とは関係なく
同じ時間に来店し、同じものを注文し、会計で小額紙幣を求められても
一切応じず『一万円札しかない』と皆一様に同じ台詞を口にするんだよ!」


希望的観測も淡い期待も捨てろ。自分以外誰も信じるな。
そうして今日も我々は見えない敵と戦って居る。

四月逍遥

|雑記|


◆しばらく途絶えてしまって居た音信が気にかかり、思い立って旧長屋時代のご近所さんだった方へ数年ぶりに便りを出した。もしかしたらご迷惑だったかな…と半分諦めて居たのだけれど、二・三週間程が経った頃だろか。郵便受けに絵葉書が届いて居た。余白いっぱいに特徴の在る懐かしい筆跡が躍り、彼女らしいお茶目なイラストが添えられて。近況報告に愛猫の病のこと。いつもより少し寂しい春、と綴りつつも最後に「元気です!」と在って、ほっと安堵した。しみじみと嬉しかった。お便り、出して良かったな。


◆先週、お外っ子のお嬢が急に膀胱炎となり、一先ずは常備の猪苓湯で様子見したものの、閉院までは薬だけ出して頂けるとのことで、赤ひげ先生の所へ電話。翌日に先生不在の赤ひげ医院を訪ねると、丁度奥さんと娘さんが入院先から戻ったばかりのところであった。お話によれば先生は脳梗塞で倒れられたとのこと。現在は意識も戻って容態も安定し、徐々に会話や食事ができるよになって居ると云う。嗚呼、良かった。ご家族の皆さん、くれぐれもご無理なさいませんように、と気持ちばかりの差し入れを渡し、お嬢の薬を受け取って外へ出ると、同じく薬を取りに来たのであろう飼い主さん方が、やはり手に差し入れの袋を持って待って居た。皆其々に思いが在るのだな。先生や奥さんの人徳と姿勢。


◆その数日後。知人の話で爺ちゃん先生が四月に入ってすぐに亡くなられたと知った。倒れる直前まで仕事して居て、倒れてひと月余りで逝かれた訳で、何と云うか、すぱっとして潔い様が本当に先生らしいなと思った。死に様って、人となりが出るものなのかも知れない。


◆新緑の季節の足音と共に、Tさんから嬉しいお知らせが届いた。旧長屋時代からの長いお付き合いのご近所さん。久しぶりに訪ねに行くよ、って。コロナ禍の僅か数年間の空白が、それ以前に在った筈の時間を、事柄を、もうずっとずっと前の遠い日のことのよに感じさせてしまう。何倍も長く感じさせてしまう。近頃ふと湧き上がるその感覚が、ひどく切なく思えることが在る。でもきっと実際に合って互いの顔を見てお話したら、空白で歪んだ時間感覚はすぐに元へ戻る気がするのだ。たのしみでそわそわでわくわく。


◆連休中、隣県の美術館へ遠出しませんか?とのお誘いを受けるも、聞いたら印象派展とのことで、むむぅ食指動かず…(笑)。丁重に遠慮申し上げる。否、決してモネとか印象派がいけないのじゃないんです。単に私個人の偏った趣味の問題なんです。

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