地域がささえる食と農 神戸大会  

第五回農こそコミュニティー
産消提携国際シンポジウム


久々に訪れた神戸。天気も良く、港から海を眺めるのが気持ちいい。
阪神淡路大震災から十五年。当時の面影もほとんど分からず、人間の力もまたすごいものだと改めて感心した。
70年代からの有機農業運動は、行き過ぎめた市場経済から自給型地域経済の再建を目指し、生産者と消費者の提携関係を深めてきた。
その考え方が基礎となり、80年代から全米でCSA(地域支援型農業)運動として広がり、2000年代からEU,東欧、アフリカ等でAMAP(家族経営農業を守る会)運動が広がりだした。
現在ではカナダ、ブラジル、アルゼンチン、インド、ロシアなど世界中に広がっている。
現在の日本の状況はというと、2006年に有機農業推進法が制定され、2008年にはオーガニックモデルタウンとして全国で約50の市町村が選ばれ、今後ますます有機農業への感心は高まると予想されるが、流通業界の参入や消費者のニーズの多様化などから本来の有機農業運動は停滞気味のようだ。

今回の海外の産消提携事例で、イタリア、アメリカ(ニューヨーク)、インド、オーストラリアなどの報告があったが、疲弊していく農村の起爆剤的に産消提携を進めているあたり、日本の農村で起こっている状況と近いものがある点が良くわかった。グローバリゼーションによる地域格差を改めて実感した。

日本の事例では埼玉の小川町などがあげられた。パネルディスカッションでは特徴的な農家や、様々な形で有機農業で関わる人たちの熱い発言が会場を沸かせた。

今日本で元気な産直のひとつアースディマーケットも紹介された。JAS認証をとってない小規模農家や、新規参入の若い農家が多いので、今後のモデルとして面白い展開が期待される。


今回かなりタイトなスケジュールだったが、とてもいい刺激になり勉強になった。
「山奥でシコシコ農業ばっかやっててもイカンナ」と思った。
関西の有機農業の熱さも伝わった。
有名な方々ともお会いすることができた。星寛治さんには「活動家は体を無茶するからね。
君も体には気をつけて」と声をかけていただけた。が・・・活動家?
最後に尾崎零氏の耳に残った言葉。
「農が社会に貢献できるということが大事である」
僕の場合、鴨川に貢献していけるような農業を目指すということ。
深いテーマが残った。

京都〜宮崎〜熊本〜博多の旅

11月30日、鴨川に移り住んでから長期で出かけることもなかったし、
車で妻子供とロードトリップということで、初めての体験でワクワクしながら千葉を出た。


京都では「うさと」(綿・ヘンプ・蚕などの自然素材を使った服)の
新事務所(まだ改装中だったが)とオーガニックカフェ・ミレットに行った。
京都はやはり全体的に気持ちいい。天気にも恵まれ九州への期待も高まった。

↑うさと新事務所にて(京都)

↑京都、カフェミレット。おいしいごはんごちそう様でした。



宮崎ではちょうど波が良く波乗りを楽しんだ。
その日泊まった小林の村営の旅館はとてもいい温泉で、部屋も一戸建てでゆっくりできた。

↑宮崎、木崎浜。天気、気温、波よし。。


↑ウチの次男、兼汰君。ごきげんです。


熊本では南阿蘇のO2ファームこと大津耕太君と愛梨さんの家で2泊させてもらった。
O2ファームは「無農薬おあしす米」「放牧阿蘇の赤牛」「減農薬きゅうり」の3本柱で
農業を営みながら環境問題にも取り組んでいる。
古民家に住み、子供もうちと同い年で賑やかかつエネルギッシュだ。
ヤエのミニライブを企画して、地元の若い人たちが集まった。
盛況に終わりそのあとは田舎の交流会、飲み会だ。
僕も焼酎が旨くて結構飲んでしまった。
翌日ちょっと気持ち悪かった。

阿蘇山火口にて

↑和麻も兼汰も元気、元気!

↑O2ファーム Yaeライブ。

↑すごい焼酎発見!

↑飲みすぎ! by.Yae

↑大津家の皆様、お世話になりました。ありがとう!



活気みなぎるように見えたが、若者の就農という観点でみたらそうでもないそうだ。
田んぼが空いてきてるがこれ以上広げるのは厳しいと耕太君は言ってた。
リゾート化してるので別荘も多い。そういう人たちは年に何回かしかこないそうだ。

阿蘇に別れを告げ、アンナプルナ農園に向かった。
途中ミルクロードと呼ばれる赤牛の放牧地帯を通るのだが、
この日は寒く雲も近くて流れが速く雪もちらつき、とても風景が素晴らしかった。
千葉の山にはない雄大さがあった。

↑ミルクロードの風景。美しかった。



菊池というところにあるアンナプルナ農園は「出アメリカ記」
「木を植えましょう」などの著者である、正木高志さんの農園だ。
現在は東京を拠点に環境活動や憲法9条の活動を中心に動いているので不在だったが、
奥さんのチコさんと娘のラビさんが現在農園をきりもりしていて、
無農薬のお茶を中心に森の活動などを行っている。
僕は正木さんの本を読んで森に興味を持ち、アドバイスがほしい時に会えたりと、
とてもリスペクトしている存在だ。

↑アンナプルナのログハウス。静寂な中に建ってました。



O2ファームが「動」とすれば、アンナプルナは「静」といえるだろう。
静寂な空気に包まれた農園だ。
裏の山などに案内してもらった。
本で読んだボランティアで3000本苗木を植えた森だ。
冬なので葉は落ちてたがいろんな木が植えてあるのがわかる。
やはり下草刈りが大変だそうだ。
家もすてきなログハウスで薪ストーブの前で本を読みたくなるというラビさんの気持ちがよくわかる。


両方の農園に共通してたのは、訪れる人が増えて対応が大変だということ。
自然王国は分業化してる部分があるのでいいが、農家は大変だろう。
両方とも注目度の高い農園だし、あー同じような悩みかかえてるねとシミジミ語り合った。


今回よその現場を見れてとても良かった。
ちょっと今年は疲れ気味だった僕は元気をもらえたようだ。

↑ラビちゃん、チコさん、お世話になりました。


その後福岡でyaeのラジオ収録に立ち会う。
「おおラジオ局だ!」と素人まるだしで中に入った。

FM福岡にて。


北九州からフェリーで一日半かけて東京へ。途中発熱してしまい、
船酔いと熱で汗だくになりながら帰宅。その次の日まで寝込んでしまった。
最後の最後で浄化されたようだ。

今回思い切っての10日間という長期旅行だったが、家族とずっと過ごして、
まあいろいろあったが、いい勉強になった。
九州は雄大で力強くていい人にいっぱい会えた。
外にでたことで地元・鴨川の良さも再確認できたような気がする。  

以上。藤本ミツヲ

「小利大安」の有機農業を目指して

有機農業のこれから

少し前に「有機農業は誰のものか」という雑誌を読んだ。
まあ読んだといってもパラパラといった感じだが、
農家、流通業者、学者や議員など様々な立場の方が書いている。
今年の四月に有機農業推進法による国家助成金が全国45の団体に支払われ、
長らく「異端の少数派」であり、
「理想優先の社会運動派」と見られていた日本の有機農業は国策として認知されて、
次の段階に入り始めた。
僕はこの世界では入りたての新参者なので勉強不足のところもあるだろうが、
これからの有機農業のあり方を畑を耕しながら考えたりしている。
スーパーマーケットに大きく商品が並ぶような時がくるのだろうか?
サービス的観点、有機を広めるというのであれば結局巨大流通の流れに飲まれていくのだろうか。
野菜も買い叩かれて、農家もこれじゃやっていけない・・というんじゃ今と変わんねえじゃん!!
実際千葉県山武の農家の原価計算表が出てたが、春大根10a作付けで50万の赤字である。
ここはどこに出荷してるのかは書いてなかったが、大根一本100円で卸していた。
消費者に届く時は200円らしいので、半分は流通業者に持っていかれるのである。
しかし無農薬大根が100円とは安すぎる。
民俗研究家の結城登美雄さんは「百姓をやっていける値段を百姓が決められるようにならなきゃだめだ」と言っていた。
売る奴が偉くて作る奴は冷や飯を食わされる。
どの業界もそうだが有機農業界にも市場の波が来てしまうのだろうか。



地産地消身土不二という基本

「国の有機農産物自給率を上げよう」的な発想からは市場原理に追い回される。
過剰在庫処理と高値売買のため都市部に卸が集中するからだ。
結局今の市場機能が一番の消費者サービスになるのだろう。
やはり基本は「その土地で採れたものをその土地で消費する」という地産地消型の自給率UPであり、
露地栽培による「旬のものを食べることによる医食同源」という身土不二的な考え方である。
各地域の自給が上がって結果的に日本の自給率が上がりましたというのが一番望ましいのではないか。
理想論かも知れないが気づき出している人は増えてきているし、土台から作り直す必要を感じる。
なんにしても日本という大きな単位ではなく地域の自立したコミュニティーを再構築し、
その中で有機農業のあり方を模索していくべきである。



鴨川自然王国での実践と模索

「小利大安、有機農業はそれでいい。」
埼玉県小川町で30年以上有機農業を実践する金子美登さんの言葉である。
我が鴨川自然王国は(というか俺が)この理念をリスペクトし実践している。
「顔の見える関係」は今のところ、この昔から続く産直方式が最善だと思う。
スーパーで顔写真置いてれば「顔の見える関係」だろうか。
間に人が入れば入るほど「顔は見えなくなる」。
最近よく耳にする有機認証団体の不祥事を思い起こせばわかる。
この仕事は利幅が薄く仕事が多いので手を抜きたくなる気持ちもわかる。
が、結局「認証」などという他人任せでは安全は確保できないのではないか。
一軒の農家が40件の消費者と提携し、
一軒1万円で一月40万とすれば、経費を引いても何とか暮らせる。
これこそ「小利大安」であり、消費者にとっては安全安心であり、
このような百姓を増やし、このような消費者を増やすことこそ本当に必要なことだと思っている。


国際機関「開発のための農業技術評価」(IAASTD)も
21世紀の目指すべき農業形態は小規模経営の有機農業だと言っているらしいが、
根本的な部分を見誤るとグローバリズムに食い散らかされるだけである。
百姓が正しい眼で見定めていくことで、次世代の有機農業の方向を大きく左右していくのだろう。


以上。       藤本ミツヲ

たかだか5年やそこらの百姓経験しかないので、「百姓学」
なんてえらそうに言えたものではないのだが、
他にタイトルが思い浮かばず、宇根豊さん著書
「国民のための百姓学」から引用させてもらった。

もちろん宇根さんの哲学に影響を受けたからではあるが、
僕がここで書いていきたいことはもっと具体的な日々の
生活のことや、百姓仕事の幅をもっと広げ、例えば
バイオディーゼルを作ることや大麻を使って
新しい産業を起こすことなども百姓仕事と捉え、
従来百姓仕事とされてきたものに現代のニーズのものも
加えていきたいと思っている。

そうすることで半農半X以上にもっと地元や地域に接触し、
農村が朽ちていく存在ではなく、これからのグローバリズム
の波に対抗すべく自立したローカルコミュニティーが育って
いくと思っている。

そして僕自身、昔の農村の人々はほとんど自給自足していたこ
とに習って、環境、農、エネルギー、福祉、医療、教育などと
いった垣根を越えて、真の自立した生活者を目指したい
と思ったからである。

里山移住が単なるのんびり田舎暮らしではなく、サバイバルを
生き抜くライフスタイルと捉えて発信していくつもりである。

まあなんにしてもこれから自立した生き方を目指す人々にとっ
ては面白い時代に入ったのは確実であろう。

                            
   藤本ミツヲ