環境省中央環境審議会総合政策部会「第3次環境基本計画に向けた考え方」に関する意見

Date: Mon, 5 Sep 2005 10:33:16 +0900
関係各位(以下、一部改変)
 日本生態学会生態系管理委員会でまとめた「自然再生事業指針」の内容について、上記「環境基本計画に向けた考え方」に対応する言及があるかどうかをまとめました(別掲資料)。発見できた場合に青字で該当箇所を(P2L10)などと示しています。生態系が「微妙な均衡の上に成り立つ」(環境基本法の文言)ことの中身に、もう少し触れてほしい原則に★をつけました。順応的管理については十分「基本計画」に反映されていると思います。
 その上で、以下に述べる修正意見を述べます。

  • P1 新・生物多様性国家戦略には3つの危機(①開発や乱獲など人間活動に伴う負のインパクトによる生物や生態系への影響、②里山の荒廃等の人間活動の縮小や生活スタイルの変化に伴う影響、③移入種等の人間活動によって新たに問題となっているインパクト)が指摘されていますが、第2、第3については4頁に言及があるものの、第1の危機についても該当箇所で併記して言及していただきたいと思います。
  • P1,P3, P7 環境(の)容量 : 生態学事典では「環境収容力」という用語にしましたので、統一していただければ幸いです。
  • 全体的に、生態系自身がもつ自然の回復力を活用すること、生物多様性を守ること、在来の生物を保護すること、遺伝的変異性の保存に配慮することなどについても、もう少し言及していただきたいと思います。この文書には「温暖化」が12回登場しますが、「多様性」は5回、「(生物の)絶滅」は1度も登場せず、若干バランスを欠いていると思います。
  • P19 「生態系やリサイクルといった関連する分野の研究者や技術者など、環境教育や環境保全活動の専門家ではない者の役割も期待される。」という文言ですが、本来より多様な専門家を含めた多様な人材の参画は基本計画でも十分言及していることであり、ここで生態系やリサイクルを特に重視していただくのはありがたいのですが、「環境教育や環境保全活動の専門家ではない者」という表現は不要と思います。一部の者だけを環境教育や保全活動の「専門家」と呼ぶ必要はないものと思います。
  • P21 「リスクコミュニケーションのような、企業や行政と一般国民との対話を適切に進めるためには、化学等の専門家であってコミュニケーションを助ける能力を持った人材を育成する必要がある。」 リスクコミュニケーションの重要性は環境問題全般に関わることであり、化学物質については一定の共通認識が得られているものの、生態系管理などにおいてはまだまだその認識が十分浸透しているとはいえません。少なくとも、生態系管理、外来種問題などの合意形成においてはリスクコミュニケーションが不可欠です。「化学、生態学等の専門家・・・」としてはいかがでしょうか。

以上、宜しくご検討のほど、お願い申し上げます