若い女性ばかりを惨い手口で殺害し、その様子をインターネットラジオで実況するラジオマーダー・ヴェノム。その正体を突きとめてほしいと、しがない探偵・
光文社の新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」の第三期として、選考会で指摘を受けた個所を改稿し、2024年4月、光文社より単行本刊行。
一回ごとに1人の女性を殺すところを実況する配信「ラジオマーダー」。パーソナリティのヴェノムは、全七回配信すると宣言している。既に第三回が終わっていたが、死体はまだ発見されていない。オッドアイの美女でフリージャーナリスト・
不特定の若い女性に対する連続殺人事件を配信するという劇場型犯罪。それに対抗する劇場型探偵。さらに負けじと動き出す捜査本部。物語は鶴間の一人称による探偵パートと、東山の一人称による警察パートの交互で進む。
かなり改稿したものと思われるが、主要登場人物が少ないこともあり、犯人像はある程度簡単に浮かび上がる。多分改稿前はもっと露骨だったのだろう。犯行や探偵の配信はそれほど目新しいものではないので、作者が描きたかったのは、連続殺人のミッシング・リンクは何かという謎と事件の構図と思われる。そして、その狙いは成功した。この作品が面白くなるのは、後半から。この畳み込みは新人の筆としては悪くないし、一気に読める。
ただ、あまりにも都合がよすぎる展開には疑問を抱く向きも多いだろう。他人や警察が、ここまでシナリオ通りに動くはずがない。読者によっては興醒めするかも。それも多くの読者が。
アイディア頼りの作品で終わっているので、もう少し肉付けが欲しい。ブラフのかけ方を覚えてほしいものだ。