Six Agesの背景世界について

太陽神の末裔
Six Agesの背景であるグローランサの神話世界を知るためにまずグレッグ・スタフォードの古代ダラ・ハーパを描写するGlorious ReAscent of Yelmから入ります。SA1およびSA2の時代は歴史が始まる前の神代で神々がいまだ人類とともに地上を闊歩し、神々と人を隔てた神々の盟約(Cosmic Compromise)はいまだなされていません。

Six Agesの背景になるペローリア地域は太陽を信仰する帝国によって支配されてきました。SAでプレイする氏族(Clan)はNivorahという神代の太陽帝国(後のダラ・ハーパ帝国)の南方の都市の末裔です。

Nivorahは初代皇帝Murharzarmの十大都市の一つであり、またMurharzarmが反逆の神々に討たれ大洪水で帝国が沈んだ後にAnaxial皇朝が復興した小暗黒時代の七大都市の一つでもあります。(おそらく英雄戦争時代の都市ジラーロとほぼ同じ位置です)

Glorious ReAscent of Yelmの続く話ではイェルムが砕き散ったあとの小さき太陽も弱まり氷河が迫る中、帝国を守るために卵の殻のようなドームで帝国を覆う計画をManarlavus皇帝が宣言しますがNivorahの民が皇帝の命に逆らってドームの計画に反対し、結果神に逆らう悪しき民として神罰を受け、Nivorahは氷河で押し潰され、民は賤しき馬に乗る/馬が引く戦車に乗る流浪の民になる記載があります。

聖なる身分制度に守られた都市生活を最善とするダラ・ハーパ側の世界観からすると都市生活を捨てて氏族として生きていくことは転落以外の何物でもないからです。またNivorahの神もこの帝国への背信から名前を喪ったという記述があります。

SAは出来事を流浪の民となった祖先の騎馬民族(Rider)側の視点で記憶しています。プレイヤーのRider氏族側には都市を捨て流浪の民になったことが神罰であるという意識はありませんが上記の事情から高慢な北方のダラ・ハーパの文明とは愛憎半ばする関係にあります。同じくNivorah から逃れたチャリオットの民である戦車の民(Wheel)はよりダラ・ハーパ的な男性優位的/形式張った価値観を持ち自由な価値観を持つRider氏族を軽蔑しています。

嵐の民との和合
SA1の主題はタイトル通り、上記の太陽の都市を捨てた騎馬の民であるRiderが南方から来る嵐の神の信者と和合し、嵐の時代の戦乱のなかで生き延びて繁栄していく道を模索していくことになります。GROYでは名前が喪われたとする主神の光の神はSAではエルマルと呼ばれています。

SA1の時代は太陽神を討って勝ち誇るオーランスとその嵐の眷属が母なる山から四方を征服していく小暗黒の時代でGreg StaffordがKing of SartarやBook of Heortling Mythologyで描写しています。真の太陽を喪って衰えゆく北方の帝国と南から入植してくるオーランスの子ヴィングコットの民の緩衝地帯である難しい地域でプレイヤーの氏族は生きていくことになります。

SA1の段階では馬に乗ることはHyalorを信仰するRiderの氏族にのみ許される特権であり敵対する種族であるWheelやRamは魔術的な意味で馬に乗ることができません。SA1のプレイヤーの選択とストーリー展開によると思われますが、プレイヤーのRider氏族に現れるElmaliの英雄とRam(Vingkot)氏族の間に現れるOrlanthi(Ernaldan)のヒロインとの禁じられたロマンス、困難を乗り越えた上での結婚が行われます。RiderとRamの結びつきにより騎馬のオーランス氏族が誕生します(これがSA2でプレイされる氏族になります。)


そして混沌の時代
SA1の終わりにプレイヤーの氏族はオーランスの神話を受け入れて多くの嵐の神々の信仰をするようになりますがエルマルを主神とする信仰は変えません。SA2ではプレイヤーの氏族は王を持たないRiderの伝統を抜け周辺のオーランス氏族を従える王を頂くBerenethtelli部族の指導者となります。Berenethtelliは他のオーランス人と異なり足の速い馬に乗る術を知っていたため栄えていました。


しかしながら混沌の時代が到来しました。オーランスの太陽を地獄に送り、天地をかき回して大洪水を引き起こすやり口が世界にほころびを生み出したのか、もしくはオーランスを妬む不浄の三神が悪魔を呼び込んだのか。いずれにせよ混沌と嵐の軍勢がStormfallの戦いで激突し、オーランスは敗れます。プレイヤーの氏族も参戦しオーランスの敗北を目撃します。

SA2開始時点ですでにオーランスは死んでおり信者の信仰に応えなくなっています。(オーランスがどのように死んだか/地獄に行ったかについてはゲームの主観においては知らされず、ただ神を亡くした絶望感だけが描写されます)神々は力を失っていき祈りは応えなく、土地はアーナールダの死とともに衰え収穫は減っていきます。神々は頼れず無神論者が生まれ神よりも精霊に、農耕よりも狩猟や採集に頼ることで生き延びるようになります。

Berensteadの王権は混沌の跳梁とともに配下の氏族が分断され有名無実なものとなっていきます。人々の心は窮乏にすさみ、混沌の攻撃はワクボスやNontrayaの物理的なものから隠秘なもの(マリアの疫病やポチャーンゴの変容)、精神的なもの(オンパロムやセセイネイ)、エルマルの最大の敵Teghernと多岐に渡り、たとえプレイヤーの氏族が堕ちなくても、周囲に混沌によって滅びたり、誘惑に転向する堕落した氏族が増えていきます。


このような破壊された世界で生き延びる術はあるのか、奇跡があるとすればわずかに生き延びた個々人のなかにある星の魂にしかないのかもしれません。世界はもはや滅びることが運命づけられており、再生するしか可能性はありません。


Six Agesについての個人的な感想、今後と私の妄想


個人的にはGreg Staffordの神々の戦いと大暗黒を主題とする古代の神話への愛と奔放な想像力をこれほど再現できた作品は他にほとんどないかと思われます。グローランサの昔の時代を掘り下げていくこのシリーズがさらに続くことを期待したいものです。

特に次のSA3やさらに次のSA4がもし製作されるとするのなら主役がBerenethtelliである以上、壊れた評議会や火葬やさらには裸足の英雄の登場するグバージ戦争が舞台になるのかもしれません。舞台をペローリア地方だけに留めておくことは難しいのかもしれませんが。

題名がSix Agesである以上、当該ゲームが最終的には帝国の時代や赤い月の昇天、英雄戦争なども網羅する全部で6章になることが予定されているのかも知れません。今からそこまで期待するのはもはや妄想の域かとは思いますが。

ペント人の起源

2023/8/30 Jeff Richard氏のWell of Daliathの記事の翻訳です。記事の翻訳の責任はZebにあります。
 
長いこと断片的だったペントの騎馬民族の起源について。またペント人にもイェルマリオが信仰されていることが明らかにされました。
 
神代ペローリア最初期の騎馬民族である星光の祖先たち(1998)(*1)についての記事がGreg Staffordに書かれたのはその疑問に応える形だったかと思いますが、それでもGROYの灰色の時代のダラ・ハーパにおける騎馬民族の争い(*2)やコリマー部族のハイアロールの三ヶ一の氏族(*3)とかの関係が不明確でした。
 
(敢えて煙に巻くところはおそらく生前のGregのTrickster Shaman Arkatiの面目躍如というところだと思いますが)このたびJeff Richard がGlorantha RuneQuest CultBooksの出版に合わせて神知者的な太陽神のイェルムとイェルマリオへの公式的な収束見解に伴う記事でもあります。
 
Six AgesのプレイヤーのHyalor-Berenethtelli氏族(*4)とも少々関係します。
 
ペント人の起源
2023/08/30投稿
ペント人の起源は灰色の時代の2つ(もしかすると3つ)のグループに始まる。
 
最初のグループは「星光の祖先たち」でありアーコス河上流に現れた。馬に引かれた戦車や馬車に乗っていたが、馬に直接乗ってもいたのかもしれない。天空に初めて現れた星である極星に従って進んだが、先駆星(イェルマリオ)(*5)が空に現れると供犠をおこなうようになり、暗黒の中に光をもたらすのを助けた。
 
「星光の祖先たち」は分裂して北に西に東に向かい、さらにその先でも分裂した。トナカイを牧畜したり犬を飼うようになった。ついには「地面を歩む民」、ロウドリルの農民たちと出会い、支配者となった。トナカイの代わりに牛や羊を牧畜するようになった。イェルマリオが主神だったが、極星やアイリーサ(*6)なども信仰していた。しまいには部族のグループのひとつ、HirenMaDorの指導者(*7)がライバンスの古代都市にて荘厳な儀式を行い、ダラ・ハーパ皇帝を名乗った。この出来事は曙の百年以上前であることを憶えて欲しい。
 
一方で純粋なる馬の民と呼ばれる他のグループがドラゴン・パスとセアードにいた。彼らもイェルマリオを信仰していたが、彼らは神々の戦いで倒れたかの神(*8)の子孫であると自称していた。彼らは馬に乗り、馬を遊牧しており、他の家畜を拒絶していた。そうすることによって彼等は失われた神への忠誠を保ち、稀に失われた神との接触を持った。
 
曙が起きた時に純粋なる馬の民もしくはハイアロールの民はHirenMaDorの民と争った。HirenMaDorの民との全ての競争で純粋なる馬の民が勝った。純粋なる馬の民の馬は最良のもので、かつ彼らの魔術は復活した太陽(「皇帝の」イェルマリオ)との繋がりのためにより強力であった。HirenMaDorが純粋なる馬の民の指導者であり、誓約(ギアス)で包まれた神官王であるVuranostum(*9)を王として認めるのを拒絶すると、彼等は戦った。しかしHirenMaDorは士気に乏しく速やかに降伏した。その後新たに征服された民はVuranostumにダラ・ハーパの皇帝の位に就くように説得した。
 
Vuranostumの後継者たち、子たちは内輪揉めして、十の試練を受けようとする者は一人もいなかった。イェルマリオはその後、地界を脱出した反逆の神々と戦うためにVuranostumの子たちを召喚したが馬の神(*10)は打ち負かされ、オーランスに轡をかけられた。その後純粋なる馬の民の部族は解体し、純粋なる馬の民は騎馬民族の各部族の司祭階級になった。HirenMaDorは貴族の支配階級になった。「地面を歩む民」はこれらの貴族や司祭に仕える農夫や船乗りや商人や職人となり、「太陽の子ら」と時には呼ばれるようになった。
 
続く百年間、「太陽の子ら」がダラ・ハーパを支配した。彼等はゼイヤラン人や勢力を強める(イェルマリオを帰還したイェルムの先触れと再定義を目指す)「帰還せしイェルム」のカルトと争い始めた。Glorious ReAscent of Yelmの記述に反し、「太陽の円盤」イェルムは「太陽の子ら」に認知されていた(*11)が、接触することは難しく、純粋なる馬の民の司祭階級にのみ可能だった。しかし221年に「皇帝たるイェルム」が儀式の中で祈念され、新たなダラ・ハーパ皇帝としてコルダフが即位すると、第二評議会の援助もあって新帝は「太陽の子ら」の軍勢を倒した。「太陽の子ら」の司祭や貴族のうちコルダフに降伏しなかった者は東方に逃れることを強いられた。
 
この出来事が歴史上のペント人の起源となる。少なくとも大部分のペント人の起源である。
 
第三のグループもいるだろう。彼等は太陽暦221年より前に先立ってペントに住んでいた民である。彼等は星光の祖先たちの子孫で東方に移住したと主張する。もしくは(大暗黒で滅びた)Yamsurの子らであると主張する者もいるであろう。
 
シェン・セレリスの後のペントには三つのグループがいる。第一は伝統的な太陽崇拝者であり貴族階級はイェルムを信仰し、騎兵たちはイェルマリオを信仰し、(アイリーサの信仰として)牛や羊を遊牧する民。第二に純粋なる馬の民、彼等は司祭階級でありイェルムを信仰している。第三に大気の神々を信仰する嵐の部族である。
 
私が思うには現代のペント人の世界観において歴史はより単純だ。我々は大暗黒にて極星を追跡した者の子孫であり、イェルムの帰還に世界が備えるためイェルマリオに選ばれた。我々は世界を征服し、トロウルや怪物や氷の魔を滅ぼした。ダラ・ハーパは我々のものであり、我らの王たちは太陽の都にて世界の王として即位した。「地面を歩む民」を正義と知恵によって支配した。しかし地面を歩む民は信頼に値せず怪物たちと手を組んで我々の祖先をHar As Jingに追放したのである。
 
しかし我々は天空の神々の子孫であり、Har As Jingに住むことで我々は強くなった。我々は太陽と、惑い星と、星々の力を、風と精霊の力を、そして我々に仕える家畜の力を呼び出すことができる。高貴な馬こそが我々のもっとも愛する下僕である。
 
以上によりペントとダラ・ハーパの間には強力な宗教的な繫がりがあることが判明する。しかし鍵となる相違点は「皇帝たるイェルム」のカルトである。ペントには「皇帝たるイェルム」の下位カルトは存在せず、全てのペントの部族連合の指導者はイェルムの司祭の援助を支配の上で必要とするのである。
 
しかしながらこの条件はいつも当てはまるわけではないと私は思う。例えばシェン・セレリスは「皇帝たるイェルム」の支配者として認められていた(*12)と私自身はかなり確信を持っている。
 
イェルムとイェルマリオの関係は私には興味深い。曙以前はイェルムを信仰することは誰にも出来なかった。イェルムは死んでおり地界にいたのである。しかしイェルマリオ-先駆星は灰色の時代に姿を天空に現していた。曙とともに純粋なる馬の民は厳格に馬に関する古代の禁制を守っていたがゆえにイェルマリオから帰還したイェルムへと移ることができた。
 
そして天空の出来事についてさらに考えてみよう。青白い「小さな太陽」が暗がりの天に現れて、空は灰色に変わった。小さな太陽は空を徘徊して、呼び出したり対話したりできる存在だった。時が過ぎて小さな太陽の道は安定してより多くの星が空に現れた。そして大いなる前兆として輝く燃える太陽が天空に戻り我々に昼夜をもたらした。太陽は昼であり、小さな太陽は夜である。小さな太陽は小さな太陽の名の通り同じ黄道を辿り、従って二つの天体には明らかに関係性がある。
 
純粋なる馬の民は禁制と厳格な生活習慣により太陽との接触が可能であり、太陽は小さな太陽より多い魔術を提供してきた。HirenMaDor族は純粋なる馬の民の援助がなければ小さな太陽からしか魔術を得ることが出来なかった。しかしながら「帰還した太陽のカルト」は太陽の魔術を全ての範囲において直接受け取ることができるのである。
 
それではペント人はダラ・ハーパ人より伝統的なイェルム信者なのか?その通りである。しかし多くのペローリア人は皇帝たるイェルムのカルトこそがペント人が持たないイェルムのカルトを定義づける主要部分であると言うであろう。このことは宗派の違いと言うよりはむしろ開始点から異なると言うべきであろう。皇帝が皇帝たるイェルムのカルトを聖別する必要があるのだが、221年以来、ペント人は皇帝を持つことができていない。あるいは皇帝を生み出す新たな儀式を持つことが可能かもしれないし、おそらくそれがシェン・セレリスの行ったことであろう。
 
ペント人はイェルム信仰の黄金弓の祈祷師の伝統を持っているが、ペント人の司祭が祭るイェルムのカルトはほとんどペローリアのイェルムの司祭のカルトと同じであろう。
 
ペント人は農夫や遊牧民にイェルマリオが信仰されているという認識はある。小さな太陽は信仰することは簡単である。イェルマリオのカルトの者はペント人の社会の一般構成員である。
 
皇帝の太陽のカルトはよりえり好みする。イェルムの信者の血統の者のみイェルムを直接することが可能である。皇帝の太陽のカルトがペント人の支配層や司祭階級である。
 
皇帝の太陽はペローリアの主神でもあり、ペローリアの皇帝は皇帝の太陽の大司祭である。皇帝の太陽のカルトは赤の女神に誘惑され、女神の息子を皇帝にしたのである。
 
小さな太陽はペローリアの丘陵地帯でも信仰され、その信者は暗黒と戦い、自分の土地の外に住んでいる怪物たちと戦った。小さな太陽は古の原野やその他の森のエルフにも信仰されている。エルフたちは同じ宗教の信者かもしれないが暗黒に立ち向かうときを除けば必ずしも友人や同盟者ではない。
 
イェルマリオが地元のエルフたちにも信仰されていることを憶えていない人がいることを私は不思議に思っている。そして当然のことながら森の民は馬の民と本の全く同じページには現れないものだ。たとえ同じ神々への信仰を共有しているとしても。
 
これらの三つの事例(*13)全てにおいて、小さい太陽は敵対的な環境の中で攻め込んでくる暗黒に立ち向かう民に加護を与える。小さい太陽は人類やエルフや獣の民やグリフィンや-果てはドラゴニュートまでも血筋に関わらず受け入れる。小さい太陽は近づきやすく、二年以上ある部族に戦士として勤めさえすれば小さい太陽の秘儀にすら入信できるのである。
 
グレイズランド人はこれらのグループの(かなり)後の分派ではないのか?その通り。グレイズランド人の祖先はプラックス人と戦うためにドラゴン・パスの王国に雇われた純粋なる馬の民の部族(*14)であった。
 
Jeff Richard
 
(*1)Library of Londarios: Ancestors of Lenshi Kings(1998)、Entekosiadに記載されている非ダラ・ハーパの神話群の繋がりだがEntekosiadには掲載されず後発でIssariesの公式サイトの記事として公開された。
(*2)Jenarong Dynasty。Glorious ReAscent of Yelmに記載されている大暗黒の後の灰色の時代の王朝として挙げられているが実のところ複数の騎馬民族の支配層の権力推移。
(*3)Hyaloring Triaty。第三期にコリマー部族に吸収されたオーランス人でありながら太陽崇拝(Elmal信仰)の独自の文化を持つ三氏族の連合体。
(*4)Bereneth部族の始祖がHyalorの一族であることは公式的にBook of Heortling Mythologyに記載されている。Six Agesでは公式と異なりRedayldaはヴィングコットの直接の娘とはなっていないが馬の女神とされることは共通している。
(*5)おそらくGreg StaffordのEntekosiadやAncestors of Lenshi KingsにはKargzantの名前で言及されている。Jeff Richard氏流には神代のKargzantはYelmalioであり、太陽神はYelmかYelmalioかの二択となる。神のローカル名称にあまり関心がないのはCults Bookの特徴。
(*6) Eiritha。おそらくペント人は家畜の女神をパップスでの呼称とは別の名前で呼んでいる?
(*7) Jenarong。Fortunate Successionでは14代ダラ・ハーパ皇帝。Jenarong 王朝の創始者のようにGlorious ReAscentでは挙げられているが実のところHirenMaDorは騎馬民族の一部に過ぎず、Jenarongの後継者の多くはHirenMaDorではなかった。Jenarongは必ずチャリオットに乗って描写される。
(*8)ジェナートの庭園の神ヤムサーのことか。Yamsur in Genert's Garden。神々の戦いで乗った馬を見捨てたハイアロールの祖先の神。昔から神名録に載っていながら曖昧な神性。純粋なる馬の民は牛や羊を飼わず、第二期のパヴィスのArrowsmith王朝や第三期のドラゴンパスの草飼う民、ルナー帝国に臣従したCharUn族等が挙げられるがこれらが信仰だけでなく血統での同系統であるか否かは不明。
(*9)Fortunate Successionでは16代ダラ・ハーパ皇帝。Hyalorongの出身とされており、Handsome Equestrian(美貌の騎手)と呼ばれていたところを見るとJenarongと異なり戦車でなく馬に直接乗っていた。
(*10)Bridle Conjunction。轡の合。Plentoniusは反逆の神に先駆星が敗れ、軌道周期が安定したことで騎馬民族の神が轡にかけられたと解釈している。繰り返しになるが、ここでYelmalioやHorse GodとJeff Richardに呼ばれている神はGlorious ReAscent of YelmではKargzantとして言及されている。ペント人にとってイェルマリオが馬の神という定義は初かもしれない。
(*11)ペント人は純粋なる馬の民が信仰するイェルムを太陽の円盤Sun Diskと呼び、灰色の時代に信仰されていたカルグザント(=イェルマリオ)とは別の信仰という理解でいいのか。現時点(2023年9月時点)でRuneQuest Glorantha Cult Book: Solarは出版されておらず、ペント人のイェルマリオ信仰や司祭階級のイェルムへの信仰については明らかになっていない。
(*12)Greg Staffordの関心がMysticismと東方神話にかなり傾いていた時期があったとき、Sheng SelerisはむしろMysticismの失敗例として挙げられていた。太陽神信仰とシェン・セレリスが公式に結びつけられたのは初出かもしれない。
(*13)ペント遊牧民、ペローリア人、エルフのことか。
(*14)英雄パヴィスに雇われたジョラズ・カイレムと弓師王朝のことか。

ヴォルメインの地理と勢力、著名人

以下Guide to Gloranthaのヴォルメインの章よりまとめました。訳の間違いの責任はzebにあります。

【島】
【聖なる本国】
*ベルゲング(Belgeng):ヴォルメイン主要三島最大の東の島。皇帝の都ヤ・モン・ウォウがあるところ。西部に穀倉地帯であるトカン地方、北部に皇帝の直轄領であるエドミヨ地方がある。人口55万人。(イメージ的には本州?)
*チャダウ(Chadu,Chadau):ヴォルメイン主要三島にして、ゲニスクとベルゲングの中間の海にある島。人口30万人。幽霊に憑かれたサモアゲイ森林がある島。(イメージ的には四国?)
*ゲニスク(Ghenisk):ヴォルメイン主要三島最西の島。沼沢地が多く、都のノブブは多くのトゥサンクスを崇める海賊の本拠。人口30万人。(イメージ的には九州?)
*ウォルチャ(Worcha):チャダウ島の南にある小さな島。人口8万人。
その他の本国の島:人口7万人。

【支配圏の島】
*シェンザ(Shenza):ヴォルメイン北方の大きな島。地理的にはアイセリン共和国諸島に近いが、ヴォルメインの支配を受け入れている。人口20万人。
*後背諸島(Hinter Islands):その他のヴォルメインに支配されているが本国とは認められていない島々。その中でも皇室に認められている島(グルーゲル、オウシクズ、シェンザ、スラビミリ)があり、その他の島(荒廃島、ヘイシディク、マルモディ、ウォルチャ)は認められていない。人口40万人。

皇朝
*オスデロ(Osdero):アブゼルド(古代ヴォルメイン、テシュノス、クラロレラ)の不死鳥皇帝。洪水により滅び、アブゼルドの国々は分断された。彼の不死鳥の玉座はヴォルメイン皇帝が継承している。クラロレラではメトゥサイラと呼ばれる。
*ヴァルゼイン(Valzain):オスデロの死後ヴォルメインの主神となったジョセルイ(正しき神々)。
*コルマラ皇家(Kolmala Dynasty 第三皇朝?):賢者エンロノを助言者とするコルマラ・ヒン・マドを創始者とする皇朝。最後の皇帝コルマラ・ジャン・ダルの悪政により滅亡。
*フォ・シャン皇家(FoShan):天から墜ちた都市チュランプルや反神セケヴァーの皇朝。クラロレラ皇帝「戦の龍」ヴァヨビに追放される。
*クアン・カル皇家(KuanKal):フォ・シャンを追い払ったクラロレラのヴァヨビ皇帝に建てられた孔雀の皇朝、不人気でムル皇朝に滅ぼされた。
*ムル皇家(Mur Dynasty 第十三皇朝):クアン・カルを追い払った土着の皇朝。不死鳥のムル・ヴァンデロを創始者とする。歴史時代に入ると隠退した。
*第十九皇朝;太陽の女神ヴィジャヤの子孫に創始された皇朝。愚かな戦争で呪われた荒廃島を生み出した。最後の皇帝はオトマラ市に追放された。
*ジャン皇家(Jan Dynasty 第二十一皇朝、今の皇朝):ジャン・イマヌを創始者とする。太陽暦1189年から統治している。

【氏族】
*ハイルニン氏族(Hairunin Clan):現在のヴォルメイン最強の氏族。帝国宰相ハイルニン・ヴァンドゥを長とする。ベルゲング南東、ビシロ市の白鷺の城を本拠地とする。後背諸島の奴隷の腕輪を産するスラビミリ島を支配している。藤原氏平氏のイメージ?
*飛燕氏族(Flying Swallow Clan もしくはバズヒ氏族):後背諸島のシェンザ島を支配する氏族。シェンザ島のイェゾ市を本拠とする。臣下であるギスヨ氏族と密かに争っている。
*ギスヨ氏族(Githyo Clan):「秋の変」でハイルン氏族と、シェンザ島とグルーゲル島の間の海峡で争った。主筋である飛燕氏族と争い、バズヒ・アマムを人質にしている。シェンザ島のウラソ市を本拠とする。
*紫蘭野の氏族(Field of Purple Orchids Clan):ハイルニン・ヴァンドゥに「秋の変」で反乱し、敗れた氏族。現在の家長ジョトモはウォルチャ島に追放されている。ヘイシディク島のクォンブ族(島から離れるとすぐに死ぬ種族)を奴隷としている。
*ジャヤンガー氏族(Jayangar Clan 双鶴氏族):ゲニスク島のトゥサンクスを崇める海賊を束ねる氏族。ジャヤンガー・ノンボを家長とする。
*スンダ・カラパ氏族(Sunda Kalapa Clan):コルマラ皇家を起源とする。チャダウ島のヌシェンイ市とジシュ市を本拠とする。黒魔術を用いることで知られる。赤蝶氏族と敵対関係にある。
*赤青鷲の氏族(Red Blue Eagle Clan):武術家クマンティ・ルンとテラスクを信仰する氏族。チャダウ島のイミン市に本拠を持つ。
*赤蝶氏族(Red Butterfly Clan):第十六皇朝を起源とする氏族。チャダウ島のムザス市を本拠とする。スンダ・カラパ氏族と敵対関係にある。
*ロラナガ氏族(Loranaga Clan 死の蛇の氏族):ゲニスク島北東のロディヤ市を本拠とする悪名高い傭兵の氏族。
*ハイルン氏族(Hairun Clan):ギスヨ氏族と「秋の変」で争った氏族。後背諸島ニクンビラ島のグシク市の白虎城および、ベルゲング島のテンガインジャ市を本拠とする。ハイルニン氏族の従属氏族?
*スラバヤ氏族(Surabaya Clan):悪名高い第十九皇朝を起源とする氏族。ベルゲング島東部のケラフ市を本拠とする。

【著名人】
*ヴォルメイン皇帝(Emperor of Vormain):ヴォルメイン帝国の皇帝。
*バズヒ・カナマル(Bazhi Kanamaru):シェンザ島の公子にして飛燕氏族の長。父であるバズヒ・アマムをギスヨ氏族に人質にされ、反乱の口実を与えずにギスヨ氏族の力を損なおうとしている。
*黄金童子(Golden Boy):皇帝に仕える英雄。イバナス山の妖魔を絞め殺したことで名高い。
*ハイルニン・ヴァンドゥ(Hairunin Vando):最強の氏族であるハイルニン家の長。皇帝と桜花の皇子ジャン・モトウジョ双方の義父であり、帝国の宰相である。紫蘭野の氏族を「秋の変」で追放した。
*イタガキ(Itagaki):ジョトモ公子に従う薙刀を使う女英雄。
*ジャン・モトウジョ(Jan Motoujo):桜花の皇子と呼ばれる皇帝の末の息子。トカン地方の領主。宰相ハイルニン・ヴァンドゥの娘、ハイルニン・ジョトミンを妻に持つ。
*ジャヤンガー・ノンボ(Jayangar Nonbo):双鶴(ジャヤンガー)氏族の長。ゲニスク島の海賊たちを従えることで国内で最も裕福な者のひとり。ベルゲング東部のスラバヤ氏族と同盟を結んでいる。
*ジョトモ、ウォルチャ島公子(Jotomo, Prince of Worcha):紫蘭野の氏族の長。彼の父はハイルニン・ヴァンドゥに「秋の変」で反乱して失敗し、処刑された。
*ジェングの未亡人 (Widow of Jengu):海賊団赤旗艦隊の女の首領。現在その悪名は遥かに死んだ夫を上回っている。

啓発の歴史

要約すると:ダラ・ハッパの歴史をとおして啓発はいろいろと誹謗され、魔女狩りにかけられ、元の形がどのようなものか、信者がどのようなものなのかわからない状態になっていました。(ルナーの到来までは)

曙の時代:ナイサロールが啓発を教えていたが、その知識や信者がすべてグバージ戦争で滅ぼされ、残っているのは秘密を守ろうとして謎めいた暗号や経典のみとなった。
・現代のルナー帝国の啓発が、ナイサロールの説いた啓発と同じか違っているかはわかりません。確かめる術がない。

帝国の時代:例外的に啓発の教団がおおっぴらに帝国に受け入れられていたことはあったが(最初の再誕寺院・啓発教団)、それらもカルト同士の争いや、社会情勢に合わない行動をしたことで時の皇帝に滅ぼされた。
・例外はダラ・ハッパ帝国自体が危機的状態にあったスポルやEWFの占領時代で、これらの時代には啓発者と思われる英雄が活動していました。

第三期:ルナー帝国の勃興で、グレートシスターが啓発の哲学を教える役割を担っていた。
・シェン・セレリスの征服で、ヴィゼラ的な悟法の哲学がペローリアに入り込み、ルナーの啓発も影響を受けました。
・17世紀現代のルナーの神学では、イェルムが啓発を受けて、それをナイサロールや赤の女神が受け継いだと主張しています。

Excerpt From Fortunate Succession

サンダーブレスレストランへようこそ


サンダーブレスレストランへようこそ!当店はチェーン店で、七店舗現在展開しております。

・クラブタウン店
・鉛の城店
・アダーリ店
・パヴィス店
・キトリ森店
・ブラックウェル1号店
・ブラックウェル2号店
下記は人気メニューです。
・全てのメニューに野菜、人間のエール、食用可の木の皿、エルフの骨のつまようじがついております。
・ウォクタパスの触手(火を通した後氷で冷やしております。ランナーの足つきです)
・家畜人(ガーン)のゼリー(モロカンスから仕入れております。ランナーの手とスパイスをつけてお召し上がりください)
・ピクシーのてんぷら(つけあわせにクマネズミがつきます。別注文になりますが偽マッシュルームと一緒にお召し上がりください)
ドワーフの尻肉(アルコールで漬け込んだマリネです。ドングリソースとレモンのスライスをつけてお召し上がりください)
・エルフの胴体(影の踊りのエルフのお造りでございます。インパラのバターつきです)
・トロウルキンバーガー(超有名メニューです)
・生きた家畜のかぶりつき
・ハム甲虫の生け造り(ランナーの小骨で皿に動かないように留めております。付け合せはエジプトクマネズミとゴキブリソースでございます)
・トロウルキンパイ(ドワーフとエルフのミンチとマッシュルーム、偽マッシュルームのスライスを混ぜたものが具になっております。)
・ドリンクはトロウルのものを一通り、人間のエール、エルフの樹液、肉汁酒など各種とりそろえてございます。


サンディ・ピーターセンいわく:この店の台所に入るくらいなら舌噛んで死ぬよ・・・

Excerpt from Trollpak

トラートの赤き剣

トラートの赤き剣(Red Sword of Tolat)はStafford Library:Revealed MythologiesやMiddle Sea Empireに描かれている宝物です。おそらくグローランサの異文化間の衝突を描いている記事の中で一番複雑な話です。Guide to Gloranthaでもこの喪われた宝物についてのプロットが記載されています。

A.トラートは赤い惑星の戦神であり、青い月の息子アートマルの友でした。あるときトラートが敵(*1)に不意打ちされたとき、アートマルがトラートの命を救いました。トラートは感謝して自分の剣をアートマルに贈りました。

B.アートマルは下界の女性カソラに魅惑されて月の船で降臨しました。二人の子孫が嵐の時代に広大なアートマル帝国を築きました。当時ナーガン砂漠は青い炎の海と呼ばれたエフト海であり、アートマル人たちは大いなる船(*2)を操ってこの海を航行していました。アートマル帝国は隆盛を極め、素朴なアギモリ人は辺境に追いやられました。

C.敵(*3)と争うなかで、アートマル帝国は戦う手段を選ばず、結果堕落していきました。そしてアートマルは北方から来た嵐の神(*4)に殺され、堕落しきった帝国はパマールト神の炎の雨で滅亡し、灰燼となりました。アートマル人は自らの神を喪ったことで魂をも喪いました。しかし剣はその前に北方大陸に移っていました。

D.ザラニスタンジ族はコボランドラ(*5)の民であり、長い脚を持つローパーと呼ばれる獣に騎乗していました。青い月と戦神トラートを信仰していました。コボランドラの皇帝デュルポスはザラニスタンジの族長ゼメンダルンにトラートの剣を命を救ってもらった褒賞として与えました。

E.ザラニスタンジ族はその後、北の大陸に移住しました。この剣を用いてセクカウル王国(*6)をジェナーテラ南東部に建国しました。初代王デングバルはトラートの剣を大地に突き立て、そこにはトラートの大寺院が作られたのです。軍神トラートの神殿は海の神々から王国を守りました。

F.しかし時が立つにつれてセクカウルに東方の法士たちが入り(*7)、彼らは血生臭いトラートの信仰を嫌いました。愚かな法士ヘスレナブ(*8)は時のセクカウルの王テュルヴェノストにトラート信仰をやめるように進言し、王はそれに従いました。トラート信者の反乱が起こり、また海の神々はトラートの加護が王国から去ったことに気づきました。ショーグ海が洪水を起こし、王と愚かな法士たちは溺死しました。デングバル王のトラートの神殿はトラートが自分の剣の柄をつかみ、陸塊ごと神力で海上に引き上げた(*9)ので、無事でした。

G.その後、チューランプールの都(*10)が天上から墜落し、メリブの島には破壊的なアシュルタンの民が住むようになりました。島は呪われたものとテシュノス本土の民に見なされました。テシュノス本土には預言者チャルが現れて、ブルスサシャム王は彼の教えである火と輪廻転生と悟法を混淆する信仰を受け入れました。

H.歴史時代に入ると、中部海洋帝国がウェアタグ人の海上覇権を打倒し(*11)、ジェナーテラ南部を艦隊で征服しました。その頃、メリブの民はブラトスザラン王に率いられて、古のザラニスタンジの慣習に従っていました(*12)。彼らは太陽暦805年、トラートの剣を携えてスヴァガッド皇帝のスロントス軍と戦い、敗北したのです。この時西方人のオダナル卿がトラートの剣を獲得しました。彼はこの剣をメリブのトラートの寺院に戻すことで王権を得て、メリブを中心としたテシュノス沿岸部を中部海洋帝国の植民地(*13)としました。

I.その後、剣になにがあったのかは記録にありませんが、海の大閉鎖と、中部海洋帝国の騒乱の中で喪われたようです。剣を捜し求める者がテシュノスや、アートマル人の遺産を復活させようとする者たちから現れています。第三期半ばにはセレンティーンというテシュノス人がトラートの剣を探してゾーラ・フェル河流域に国を作りました(*14)。英雄戦争でも、ある英雄が剣を捜し求めることになります。彼が剣を見つけ出すと、それはザラニスタンジ族とアートマル人を物質界に呼び戻すことになるのです。

(*1)Revealed Mythologiesでは、天界でのトラートの敵の名はブレドジェグ(Bredjeg)になっていますが、これをウーマスと考えることも可能です。
(*2)現在のルナー帝国で使われているムーンボートはアートマル人の遺産かもしれません。
(*3)Revealed Mythologiesによると、ここでいう敵はおそらく神代のパマールテラ西部に植民地を持っていた邪悪なヴェイデル人であり、彼らと戦うには手段を選べなかったという話のようです。
(*4)Revealed Mythologiesによるとこの嵐の神の名前はBarakuですが、これをオーランスと考えることも可能です。
(*5)Coborandra。Troll GodsのAnnillaのカルトの記述によると、詩的な「星と海の間、硬い岩と優しい心の間の国」と描かれています。Peter Metcalfe氏の説だと、神代のフォンリットであり、パマールト神話でトリックスター・ボロンゴが邪悪の山バンダクを創造した土地セルヴッコであるとのことです。
(*6)海で分断される前のテシュノス、トロウジャン、メリブ全体の総称。
(*7)ヴィゼラの悟法の法士。ひとりがネンデュレン(オォルス・サーラーを調伏して「ネンデュレンの平和」を作った賢者)の弟子のヘスレナヴでした。
(*8)ヘスレナヴの愚かな行為はふたつあります。第一にオォルス・サーラーが弟弟子だったときに屈辱を与え、彼が解脱に失敗する原因を作ったこと。(彼に虫(イプ)というあだ名を与えたのはヘスレナヴでした。)第二に後述の理由でセクカウルの王国を滅ぼしたこと。彼も失敗だったことはわかっていたようで、未練を残した亡霊となり、ヴォルメインの賢者エンロノに救われました。
(*9)この陸塊がメリブ島です。
(*10)Churanpur。火の神カーカルと反神ヘレスプルが天界で戦ったときに墜落した天界の都市。墜落した場所はヴォルメインとテシュノスの間の海上でした。その住民は地上界の卑小な生活を恨み、周囲に破壊を撒き散らす存在だったようです。反神アヴァナプドゥルが夢の世界に追放されるとチューランプールの島は消え去りましたが、その民はメリブ島に移り住んで歴史時代にも存続しているとのことです。
(*11)タニアンの勝利の戦い。
(*12)どのような理由でショーグ海の洪水を生き延びて、スロントスでセシュネラ人と戦うことになったのかは不明です。Peter Metcalfe氏の説だと、洪水でいったんザラニスタンジ族は滅びたのですが、テシュノスの英雄ガックのヒスゴラントールのせいで、その慣習は復活したということのようです。
(*13)イィスト植民地Province of Eest。
(*14)Moon Design社のJeff Richard氏のブログでHistorical Atlas of Gloranthaを参照のこと。

ゼオタームの対話集

以下はMoon Design公式サイトにあるXeotam Dialoguesの記事の翻訳です。訳の間違いの責任はZebにあります。アスタリスク(*)の箇所は訳注です。

ゼオタームの対話集

グローランサファンの皆さん!

今日の記事は貴重なもの-ゼオタームの対話集の断片である。対話は第三期の後期に西方の魔道師たちに非常に好評を博した。

対話の原本の日付は1480年ごろと信じられている。しかしこの特定の写本は1618年のものである。対話は達人の魔道師であるゼオタームと、彼のラリオス人の若い弟子アーノール(*1)の間で行われた。

三つの都市(アジロス、ダンク、アーンロール)が元々の対話が行われた場所であることを喧伝している。ゼオタームが15世紀後半にこれらの都市に(もしくは付近に)住んでいたからである。最高導師(*2)セオブランクはこれらの対話の写本を収集していることで知られる。(対話はセオブランクが若いときにはじめて人気が出たのである)

ゼオタームの対話集

アーモールが最初に学んだのは自分の精神を制御することであり、いかに自分の身体を構成する元素の種類に焦点を当て、集中を外の宇宙に拡張することであった。そして元素への制御を意志の支配下に保つことであった。アーモールはこれらの仕事が難しく、訓練の終盤まで来ても集中し、元素の制御を保つのに魔力の護符の助けを必要とすることが分かった。

訓練のこの局面は制御していた元素が、低級な人間に信仰されている神々であることを学ぶまで終わらなかった。アーモールは元素のこと、すなわち元素そのものと同一のもので造られている神々について学んだ。:ヒメール(*3)、寒気の神。ナカーラ(*4)、暗黒の女神。スラマック(*5)、水の神。ガータ(*6)、大地の女神。ズレッサス(*7)、天空の神。ローディク(*8)、火の神。

アーモールが後に学んだことは、定命の者が元素を完全に制御することは望み得ないことであり、そうしようとすることはその元素と同一のものになることを意味するということだった。アーモールの導師はある種の蛮族の妖術師はまさにそういうことを試みて、神々の奴隷となるに至ったと言った。

その代わりふさわしい振る舞いをする魔道師は元素の低位の神のひとりである、元素そのものというよりその一部であるスルビュアリ(*9)を制御するのである。スルビュアリが親である元素そのものより有用である理由はこの事実に由来する。全体のほんの一部であることにより、スルビュアリのそれぞれはある一面において特色を持っている。したがって、ナカーラは地上界の上下の暗黒であるにも関わらず、魔道師は夜の暗黒たるスルビュアリのゼンサを呼び出して夜間の目的に使役することができるのである。

ひとつの相に特化していることで、スルビュアリは特定の起源に依存してはいるものの、独自の行動を取ることが可能になっており、有用性が増す。したがってヴィエルトル(*10)は火のスルビュアリであるものの、彼は神々の鍛冶師でもある。各々の元素に個有種のスルビュアリがいる:暗黒のデイホーリ(*11)。冷気のホールリ(*12)。水のトリオリーニ(*13)。大地のリキティ(*14)。天空のワンボーリ(*15)。火のプロマルティ(*16)。

しかしアーモールは元素とは諸力なくしては不活性の質量にすぎないことを学んだ。力の神々とは世界の様々な活動を制御している神々である。愛と豊穣の女神であるティルンタエ(*17)。ヴァマルム(*18)、戦争の神。メソル(*19)、復讐の神。ゲサー(*20)、死の神。など他にも数多くがいる。

力は行使されればされるほど、威力を増していくという点に特色がある。したがってユールマルがフラマルを殺すまで(*21)世界には死というものはなかった。その後の“神々の戦い”における大規模な虐殺により、ゲサーは力を増していき、彼の領域は神と定命の者を問わず、世界のすべての存在を内包するに至った。

アーモールがこのことを学んだとき、彼は導師に尋ねた。「では人類と神々の違いはなんなのでしょう?」

「ほとんどない。」との導師の答え。

「我々が神々と呼ぶ存在であっても定命の者と同じく死に見舞われることはありうる。しかし神々は我々定命の者のような老衰や病気による死は免れている。」

「しかし殺される可能性はあるのでしょうか?」

「偉大な力を持つ武器を用いれば。世界で最初に死に見舞われた存在であるフラマルを例に取ってみよう。彼は神であったが、ユールマルの手にかかり倒れ、死んだ。」

「しかしフラマルはいまでも生きています。すべての伝説が語っているように。」

「その通り。毎年フラマルの魂が地界から地上界に戻るため苦闘したあと、フラマルの肉体は生まれ変わる。イーヒルム(*22)が毎朝転生し、彼の物質的な肉体が黄昏で死ぬのと同じように。」

「では彼らの魂は死んだあとも生命を保全するのでしょうか?」

「その通り。全ての生命ある存在の魂が物質的な形態が死んでも生き続けるのと同じことだ。」

「我々、定命の者も含めての話でしょうか?」

「我々、定命の者も含めての話だ。」

「ではもし人間の魂が地上界に戦って戻ってきたら何が起こるのでしょうか?その魂はふたたび生命と物質的な形態を取り戻すのでしょうか?」

「その通り。ナカーラから逃れたあと地上界にたどり着くことでこのような魂はカエリス(*23)と呼ばれる別種の神々となる。北方のジョナートと東方のハルマストはまさにこのような神性だ。テイロールやアーカットと同じような存在だ。」

「それではもしある人物の肉体が死んでも、その者の魂は再び物質の形態を取り戻し、神になるかもしれない。生前に地界に降りていき、再び地界から出てきた者はどのような存在となるのでしょうか?」

「その論点は本質についてというより意味論となるな。暗黒の世界に降りていけば、その者が地上界で死んだのと同じように、人間の物質的な形態はその者から去ることになり、根本的な元素の形へと回帰することになる。ナカーラへと降りていくことこそが死である。そして地上界へ再び現れることはその人間を、地上界での死の前に神のひとりとすることになるのだ。」

「もし人間の肉体が死で根本的な元素へと戻るのなら、ひとりの人間はどのように転生するのでしょうか?その者は定命の者の母の子供として再び世界に入って来ることになるのでしょうか?」

「“神々の戦い”の前に生きていたゼデイ(*24)のように、そうなることもある。しかしたいていの場合は、再び地上界に現れたときカエリスは以前よりも強力な力を得ることになる。その者はほぼ他のいかなる形態にも姿を変えることができるし、地界に降りていくことなしに自分の魂を、いかなる物質的な形態からも完全に引き離すことが可能な能力を持つことになる。」

これらの神々の種族に加えて、アーノール(*25)はバーテイ(*26)、もしくは混血の神々として知られる神々について学んだ。バーテイの神々は元素の神々もしくはそのスルビュアリが交わったことによる結果である。フーマト(*27)、風の神がバーテイのなかで最強の神であり、ガータとズレッサスの子供である。そのほかにはフラマルとハイキム、スラマックとガータの双子の子供がおり、トラート(*28)とアニーイラ(*29)、イーヒルムとナカーラの双子の子供がいる。

これらの神々と、彼らに似た神々は、元素の神々その者の産物か、もしくはひとりの元素の神々と、第一世代のスルビュアリの産物である。彼らはより属性と機能において元素の神々に似ている。これらの神々は自分のスルビュアリを生み出す能力があるバーテイである。したがってフーマトの眷属である多くの風の神々、コーラーティ(*30)と呼ばれる存在がいる。これらのバーテイは元素のバーテイとして知られ、またその(能力の)制限により、低位のバーテイとも呼ばれる。

高位のバーテイたちは他のバーテイの(直接の)子供であり、すなわちバーテイ同士の子供か、バーテイとスルビュアリの子供である。より複雑な元素の混血により、これらの神々は祖先が何であるかはほぼ重要でないまでに機能においてより広範囲を許されている。彼らの重要性はスルビュアリのように物質的な属性に依存しておらず、より機能に依存している。たとえばユールマルは狡猾で頭の回転の速いトリックスターとしての方が、彼の血統の中に含まれている全ての豊穣や水や大地や、太陽の火の神としての属性よりも重要なのである。


しかしその一方で、バーテイは混血であるにもかかわらずしばしば強い力に成長する事はない場合もある。このようなバーテイは属しているはずの神々というよりも不老不死の人間に似た生を営む。彼らの魔力はもちろんいかなる人類よりも強いものである。彼らはしばしばルアーサやアルティネーのように群れをつくり、氏族を形成する。そしてルアーサがセシュナや、フマト、スラマックの要求に応じてセシュネギの地を滅ぼしたように、高位の神々の指示の元に地上界で行動する。

イファルドル(*31)と呼ばれるもうひとつのバーテイの階級は二つのスルビュアリの種族の産物である。スルビュアリは元素の神々やバーテイよりも特化しており、力が弱いことから、イファルドルの階級はいかなる神々と比べても最弱である。実のところイファルドルの種族は非常に弱いあまり、病気や老衰による死の犠牲になる。イファルドルは定命の種族である。

イファルドルには多くの種族が存在する。マルキオン人はひとりのコーラーティとトリオリーニの混血であり(*32)、誕生の地であるブリサの地にちなんだブリソス人という呼び名の方がよく知られている。タマール人(*33)はデイホーリとティルンタエの集団の混血である。

「全ての定命の種族、もしくは人類はイファルドルの階級に属するのでしょうか?」アーノールは尋ねた。

「全てではない。」導師は答えた。
「この世界の大部分の住民はスンチェンとして知られる種族である。この世界の野蛮で、獣じみた種族の間で、類似した言語が使われているのはこれが理由だ。イファルドルの血統を持つ種族がいるときのみ言語が異なる。なぜならスルビュアリの各種族は固有の言語を持っていて、彼らのいかなる子孫にもそれが伝わっているからだ。」

「スンチェン族の起源はなんでしょうか?」

「クラロレラ人の言葉だとこの単語は“動物の子ら”を意味する。全てのスンチェンの国々はある種の動物の神性の子孫か、その種族のほかの階級の神を親の一人に持っている者の子孫なのだ。」

「ではこのことが北方のジョナートの民が“熊の民”と呼ばれている理由なのでしょうか?」

「その通り。“神々の戦い”の前は地上界のほとんどがスンチェンの純粋な種族によって占められていた。“山羊の民”や“馬の民”、“猫の民”、“牛の民”、その他多くの民がいた。しかし“神々の戦い”と“混沌との戦い”でこれらの国々は混じり合い、動物との兄弟関係を喪ってしまったのだ。

私の知る限りだと、北方のジョナートの民は熊と交流する能力の大部分を喪ってしまっている。南方のミスラリ山脈にいるバスモルの獅子の民は獣との兄弟関係を保っているようだが、野蛮状態に堕落している。南方のプラロリの民は獣との兄弟関係を保っているが、過去の時代ほどではない。そして極東のヴリーマクの民(*34)は鳥の王の兄弟たちとの親族関係を保っている。

彼らが血統を汚染されておらず、直系の獣からの血統を主張することができる生き残っているスンチェン族と言えるだろう。しかし私が聞いたことのない他の種族もこの世界にはいるのかもしれない。」

「このような親族関係の利点は、時に獣と直接交渉することができるということ以外に何でしょうか?私には種族が混じり合う事は、元素の神々同士が混じりあって、より強い神の血統を生んだのと同じように、人類の種族を強めることになるように思えるのですが。」

「この場合はそうではない。ある民が獣と会話できるということは、彼らが自分の神である祖先とより容易に会話できるということを意味する。したがって容易に自分の神々から“力”を得ることになる。その民の魔力は自分の血統を純粋に保っているときに最強になる。」

「このことは今でも、ブリソス人やタマール人に明らかなように、彼らの血統はブリソス人のように孤立によって、もしくはタマール人のように他の種族と交わることへの恐怖によって、時代の変遷においても比較的純粋さを保ってきた。そして彼らは祖先との交流を行ううえでは地上界で最も強大な種族となっている。」

「それでは自分の民の歴史と起源を知っている魔道師は知らない魔道師よりも強大になるということでしょうか?」

「その通りだ。」

アーモールはしばらく黙っており、そして質問した。

「ラリオスの住民の起源はなんでしょうか?」

アーモールの導師は首を振った。

「それは私には答えられない質問だ。この土地の野生の民は、多くの異なる世界の場所に多くの異なる起源を持っている。この土地の者は特有の結婚の慣習の世代を経過して、非常に血統の混合がおこなわれ、現在の住民たちの創始者であるいかなる神の名前も、挙げることが不可能になってしまっている。」

「では私のような者が強力な魔道師になることは不可能ではないにしても、困難なのではないでしょうか。」

「そうではない。一人の人間は自分の血統を知らなくても神性の力を服従させることができる。そして元素と力を呼び起こすことで、正確にそのことをおこなえば、極めて効率的な威力を出す。アミュレットや魔法図やタリスマンのような術具は一体の神か力に捧げられており、魔道師が集中をより容易に行えるように助ける。もちろんこの方法は欠点もある。」


(*1)原文のまま。ArmorではなくArnor。本文でも入り混じっている。
(*2)セオブランクはロカール派の宗教最高指導者High Watcher。彼が生まれたのはKings of Seshnela Part3(http://moondesignpublications.com/page/kings-seshnela-part-three)によると1470年ごろである。
(*3)Himel。おそらくTroll Godsのトロウル神のHimileと同一。
(*4)Nakala。暗黒の貴婦人。抽象的な暗黒の神。
(*5)Sramak。水の物質の顕現。Wyrms FootprintsによるとDaliathとFramantheの兄弟。
(*6)Gata。抽象的な大地の顕現。
(*7)Zrethus。グローランサ古の秘密によるとDayzatarの別名。
(*8)Lodik。おそらくLodrilもしくは似た神性。
(*9)Srvuali。マルキオン教徒の神話によると、神代のスパイクおよび歴史時代中部ジェナーテラの異教の世界をスルヴューラSrvualaと呼ぶらしい。
(*10)Vieltor。強いて既出の類似の神を考えるとGustbranか。
(*11)Dehori。トロウルの暗黒の精霊の神、Dehoreの眷族。
(*12)Hollri。
(*13)Triolini。Wyrms FootprintsによるとTriolinaの眷族全て(魚人をはじめとする水の生物すべて)を意味するのだが、ここでは意味が限定されている。
(*14)Likiti。おそらくSeshna Likitaに関係する。
(*15)Wamboli。
(*16)Promalti。
(*17)Tilntae。Anaxial's Rosterに既出。
(*18)Vamalm
(*19)Mesor
(*20)Gether。オーランス人のフマクトか。Vamalmと同一の神でないのは興味深い。
(*21)おそらくフレラー・アマーリのあるラリオスの神話に影響を受けている。
(*22)Ehilm。ラリオスの神話で言う太陽神。
(*23)Kaelith。不死性を得た英雄のことか。
(*24)Zedei。彼に関する神話は訳者には不明。
(*25)なぜかここで弟子の名前がまたアーノール(Arnor)に戻っている。
(*26)Burtae。Genertela: Crucible of the Hero Warsで既出。
(*27)Humat。ウーマスもしくはオーランスのことか。
(*28)Tolat。トロウジャンのアマゾンに崇められている赤い惑星の神。
(*29)Anehilla。トロウルの青い月の女神Annillaの別名か。
(*30)Kolati。
(*31)Ifaldor。神々の子孫である定命の種族。
(*32)AerlitとWarera Triolinaの神話のことか。Wyrms Footprintsに既出。
(*33)Tamali。グローランサのどこに住んでいる種族なのかは不明。暗黒の神々の末裔ということからすると、トロウル族なのかもしれない。
(*34)Vrimaki。リンリディの民のことか、シャン・シャン山脈の鷹の民のことかは不明