太田モアレ『鉄風』4
嫉妬よね……
あの子は 私と同じ時間を生きて来た 時間を平等に与えられてあの場所にあの子はいる
それってまるで 私が怠けて時間を無駄にしてきた気がして我慢ならないの
- 作者: 太田モアレ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/06/07
- メディア: コミック
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で、今さらなんですがこの作品は女子格ともうひとつ「嫉妬」がテーマなんだなあと思ったり。引用箇所は主人公・夏央の台詞ですが、それを吐露した彼女に対しても嫉妬する人間はいるわけです。それは師匠的立場の紺谷さんのモノローグや、同じジムのキリちゃんの心情からも描写されてますね。
スポーツマン=爽やか、なんて図式はもう古いって誰でも知っていることだとは思うけど、それでもフィクションで端役として出る場合はまだそのステレオタイプが使われていることも多い。
この作品はそうしたスポーツ(女子総合格闘技)と、「真っ直ぐな黒さ」が結合して独特のキャラクター性を放っている所が好きなんで、そうした「悪い子夏央ちゃん」をもっと見たいなあとか思います。
その結果夏央ちゃんが痛い目にあってぐしゃぐしゃに泣くとか最初期待していたんですが、お兄ちゃんにやたら怯える彼女は逆に何か面白くないんですよね。そろそろ兄妹間の確執がつまびらかにされて欲しい……。
ところで登場人物紹介ページもそろそろ欲しいです。
片岡人生, 近藤一馬『デッドマン・ワンダーランド』10
――アナタも
理解(わか)らないから殺すんでショ?
デッドマン・ワンダーランド (10) (角川コミックス・エース 138-17)
- 作者: 片岡 人生,近藤 一馬
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/05/26
- メディア: コミック
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そろそろレチッドエッグの存在理由というか製造目的が知りたいですね。シロは人造人間なのか改造人間なのか未だに不明ですし、ガンタももしかしたら普通に生まれてこなかったのかもしれない。
そういえばガンタ父って今までなんか言及されてたっけ……。所長があんなに執着しているのも謎い。
DWを出た後、「元の生活」に戻った皆の姿は中々新鮮です。千地さん、あれで社会人だったのかよ……あと羊くんのシスコンぶりが上がっていて笑える。かつての腹黒キャラはもう見えないな。
しかしDWの食糧供給ってどうやっているんだろう(笑)。
レチッドエッグの二重人格について、はっきりDIDって用語が出ちゃいましたけれどいいんですかね。実験された苦痛で人格が分裂しましたーって落ちだったらベタベタすぎるし、それなら二つで済むはずないと思うんだけれど。人格が二つあることについて、まだ何か仕掛けがあることを期待。
浅井蓮次+、上田夢人、林トモアキ『戦闘城塞マスラヲ』3、4(完結)
負け犬には分からない。皆がなぜ、こんな辛いことを続けるのか。
せめて、自分がヒーローだったなら、正義の為と信じ、戦えたのか?
戦闘城塞マスラヲ (3) (角川コミックス・エース 263-3)
- 作者: 浅井 蓮次
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/11/26
- メディア: コミック
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戦闘城塞マスラヲ (4) (角川コミックス・エース 263-4)
- 作者: 浅井 蓮次+,上田 夢人
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/04/26
- メディア: コミック
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いや原作読んでない(エリーゼんとこで採掘勝負終えた辺りはザスニで見た覚えが)から、これでちょうど一巻分の話かも分からんのですけれど。まあそこそこ綺麗に纏めたと思います。
しかし最高潮だったのは、やはり三巻のレース勝負の決戦あたりで、後は結構無軌道なコメディになってしまった印象なのでこれも仕方ないかな。エルシアの豹変とかちょいベタベタですが。
四巻のパロネタって、スネークにMMRにハガレンに……最後のあれはホーキング博士かビルゲイツかーですし。歌勝負にはミクもいましたね……。
ラノベのコミカライズとしては上等な出来なので、四冊分楽しませて貰っただけ良しとします〜。……もっと酷いコミカライズなんていくらでもあったさ、はははは。
小原愼司『コジカは正義の味方じゃない』1
リアルで充実してたらっ こんな事やってねっての
コジカは正義の味方じゃない 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
- 作者: 小原愼司
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2011/04/23
- メディア: コミック
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ある日突然、超常能力(ショボイがっかり能力も多数)を発現させた人々、「超法規居住人(略して超人)」が現れるようになったパラレルワールドの日本。超人たちは身を守るため覆面を身につけ、一般人には正義の味方(ヒーロー)も悪の怪人(ヴィラン)も区別がつかない!
と背景はヒーロー物のシリアスなテーマを伺わせるのですが、主人公の赤貧女子高生・子鹿を中心とした物語はごくミクロな範囲のもので、まったりした雰囲気を漂わせている。
天体戦士サンレッドは、特撮ヒーローのキャラクターが存在する世界で、ヒーローや怪人たちが現実に現実的に存在する・でもシリアスじゃなく庶民的な部分でのリアルさを描くお話なんですが、それともちょっと雰囲気が異なる作品です。
サンレッドの「あるあるネタ」等に対し、こちらは超常能力といっても全然便利じゃなかったり(サンレッドはみんなスペックは超弩級)、超人関係の組織がみんな小市民的だったり……。
作者の人を初めて見たのは、アフタヌーンの『パノラマデリュージョン』で、あれは話は面白そうだけれど絵が受け付けなくて読みませんでした。今思うともったいないことしたかも。
子鹿はまだ見た目にマイルドになった気がして、普通に一冊読み終えられました。
アフタヌーン購読時にパラ見した感じでは、パノラマも世界規模の危機が起きていた気がしますが、子鹿も今後大規模な話になってしまうのかもしれません。個人的にそうならないでいて欲しいんですが。
スカートの下にジャージはいちゃうようなお元気少女・子鹿、赤貧で超人の力(影女)を新聞配達のバイトに活用したりと、とりあえず家計を切り盛りすることで頭がいっぱいです。主人公からしてこの状態ですからねー。
子鹿の横には、彼女に憧れる白鳥くんというキャラがいるんですけれど、正義に燃えるとかそういうのが彼の役割だしなあ。白鳥くん、勉強もスポーツも出来る完璧イケメンだけどヒーローオタなのでモテなっつー残念キャラです。まあそんな彼にも想いを寄せる女の子の一人や二人はいるんですが……鈴木アリスかわえーよかわえーよ。
入江君人『神さまのいない日曜日II』
(頼むから……俺たちの事を、分からなくなってくれ……)
- 作者: 入江君人,茨乃
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2010/05/20
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今回は世界唯一の死者国家『死霊都市オルタス』を舞台にしたお話。なんか前作よりさらに、アイの子供としての可愛さが気合い入れて描写されてますねー。オルタス観光のくだりとか。
悪疫(ボックス)&強攻(レックス)ってあしゅら男爵……?
一巻の話は「死者は土の下で安らかに眠るべき」ということを全力で訴えている作りでした。
不死身だけど幸せに死にたいハンプニー。今まで育ててくれた人たちに騙されていたことを知り、それを悪と断じたアイ。いかにも葬るべき悪として振る舞うヒコたち死者連中。死んだ妻と暮らしていたユリーや、正しき墓守としてのスカー。
でも二巻目で「アイがどうするでもなく既に救われている」死者の国オルタスとその国民が登場し、一巻とは別の価値観が持ち込まれて物語に奥行きが出てきました。
前回、ネクロポリスだった自分の村を否定したアイが、今度は更に規模のでかいネクロポリスへ突っ込んでいくことから、容赦なくアイの「夢」について批判が出てきます。
アイが13歳なら、14歳なら、15歳なら、きっと直面しなきゃならなかった問題。当然指摘されるべきだったであろう考えの浅さや、彼女の夢で傷つく人や物の可能性。でも、それを、12歳の彼女に言うあたりが、とても容赦ない。
まあ飴と鞭と言いますか、飴として(というとちょっと違うが)アイには初めてのお友達が出来ます。アイとはまた好対照のキャラとして造形され、異なる回答を突きつけました。
ハンプニーはオルタスのことを知っていたのか、知っていたとしてさすがに手出しは控えていたのか気になる所ではありますが。個人が一国の超武力に挑むのはいくら不死身でも罵迦のやることだしなあ……。
前作は世界観もかなりおぼろげだったんですが、今作の舞台であるオルタスは逆に細かく作り込まれていますね。ライオンくんの同級生や、キリコが語った歴史の断片、町並み等々。
前作だといまいち目立たなかったユリーが、きちんとしっかりした大人として振る舞っているのはなにげに嬉しい点。ラノベじゃないがしろにされがちな立場でがんばってます。
えすのサカエ『未来日記』12
私は依存できる人間なら誰でも良かった
あなただって守ってくれる人間なら誰でも良かったはずよ
未来日記 (12) (角川コミックス・エース 129-19)
- 作者: えすの サカエ
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/04/26
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引用部分のように、雪輝が由乃との関係を今一度真剣に問い直す流れが白眉だったと思います。
由乃とのガチバトルで一冊使うかと思ってたんですが、逃げる彼女を追いかけて三週目の世界へ! とか微妙に外してくるのは良い感じか。
でも一万年いじけ続けるユッキーはどうかと思ったw せめて一年とか百年とか千年でも……。
あとみねねの「ちょっとひいきが過ぎねえか…!?」の台詞が作者の自己突っ込みにしか見えません。彼女、他キャラに比べ優遇されまくっていますよね。
今まで散っていった方々が救済されていったのは、ぬるいかもしれないけれど良かったと思います。しかし坊やの金太郎ルックにくすり。
殺人鬼の人だけは成敗されていましたが、最初から悪人やっているしまあいいか。あと12thってよく考えたら設定がデアデビルっぽい。
ラスト、あのハンマー硝子割りが出てきたのはちょいとした感動です。でっかい由乃にヤンデレヒロインの神髄が垣間見えた感じもまた良し。
ただ、結局カヲル某がユッキーに惚れた理由がよく分からないままだった気が。何か見落としましたっけ?
三週目由乃がうまくいくようになったのはいいんですが、あの家が崩壊していた理由も、ぎりぎりで持ち直した理由も不明瞭でご都合主義っぽいのはマイナス。ページ数が足りないと思うしかないか……。
ラストシーンなどは、何か凄い爽やかなボーイ・ミーツ・ガール風で良い物読んだ気分に浸れました。一巻のプロローグの「刺せないよ」が伏線っぽく思えてたけど、ちゃんと拾われてたのも良い。
と、ここまで書いて花子と寓話のテラー最終刊読んでないの思い出しました。作者の次回作を待つ間、そちらを消化しないといけませんね!