北欧生活研究所

2005年より北欧在住。北欧の生活・子育て・人間関係,デザイン諸々について考えています.

戦争の展示を見に行ってみた

f:id:jensens:20240425204947j:image
現在デンマークでは、戦争や地下壕をテーマとするいくつかの博物館に、関心が高まっているらしい(DR.DK)。

DR.DKの記事で紹介されていたスカナボー博物館(Skanderborg Museum)では、2022年から2023年にかけての来館者数が約25%増加した。博物館の学芸員であるマーティン・モルゴー氏によれば、ウクライナの戦争をはじめ、デンマークの防衛とヨーロッパでの戦争が注目されているこの時期に、第二次世界大戦時の展示が特に人気であるという。

地下壕の博物館としては、コペンハーゲンレジスタンスミュージアムが有名だろうか(レジスタンス・ミュージアムに行ってきた - 北欧生活研究所)。

来館者は、デンマークが大きな紛争に直面したとき、どのようなことが行われていたのか、また基本的な物資が配給される中で生活することがどのようなものであったかに特に興味を示しているという。

 

www.dr.dk

つい最近、個人的にも戦争関連の展示を見てきた。個人的にも大好きなユトランド半島にあるMoesgaard博物館の新展示「Kriger:戦争で戦う者」である。

Moesgaard博物館は、私が住んでいるコペンハーゲンから4時間ほどはかかるのだけれども、大好きな場所でよく行く。以前にも北欧の知られざる歴史を日本語で聞ける衝撃 - 北欧生活研究所や、デンマークの美術館:Moesgaard Museum Vol.2 - 北欧生活研究所で紹介したことがある。ウクライナ戦争が始まったばかりの頃、ウクライナ・ロシアで貿易をしていたバイキングたちの話「RUS:東方のヴァイキング」は、今思い返してもとても高品質な展示だった。

今回の「Kriger:戦争で戦う者」は、ローマ軍、日本の侍、ニューギニアのSepik、現代のデンマーク軍という4つの、大陸も時代も社会も異なる「戦う者たち」に焦点を当てた小さいけれどもキラリと輝く展示だった。

今だからテーマとして選ばれたのだろうと思う。個人的にも、この自分の平和な日常と大きくかけ離れた非日常的日常が、そう遠くない場所で繰り広げられているということを、毎日の生活の中で考えざるを得ない。ほとんどの社会文化で、忌避されるはずの人の命を殺めるという行為がなぜか戦争では日常になる。人を殺すというタスクを与えられた人たちが、その行為に入り込むまでの心持ち、明日は、誰かを殺すということを考える時の心持ち、そして、普通の社会に戻ってきた時にどのような心持ちで過ごすのだろうか。

「人は、いかにして戦う者になるのか?戦う前、戦っている間、戦いを終えたあと・・・(hvad det gør ved et menneske at blive kriger – både før, under og efter kampen)」

f:id:jensens:20240425205014j:image

 

 

北欧の知られざる歴史を日本語で聞ける衝撃

知られざるf:id:jensens:20220816044618j:image

2022年の夏のマイブームは、歴史だ。ひょんなことから歴史の繋がりを見せてくれるポットキャスト「コテンラジオ」の存在を知り、大航海時代やスペインの覇権の詳しいストーリーが今までにないほど色を帯びて、目の前に広がる欧州の街並みに重なって見えるようになった。それが夏のポルトガル旅行前だったから、「コテンラジオ」になおさらはまった。目の前にある歴史あふれる町並みに、もう消えてなくなっているはずの人たちや当時の空気が見えるような気がした。世界の偉人が、単なる「偉い人」ではなくて、一人の人間の姿で見えるようになった。

旅行から帰ってきてからも、隙を見つけては聴き続け、偶然耳に入ってきたのが、RUSという言葉だ。あれ?RUS!?そうだ、以前、紹介したオーフス近くの美術館で感動した展示「デンマークの美術館:Moesgaard Museum Vol.2」で紹介した「RUS」だ。

コテンラジオ」でRUSが紹介されたのは、ウクライナ🇺🇦を特集した特別回の第一回目で(ウクライナとロシア)、そこで話されていたのはウクライナの建国の歴史。それまで、RUSについては、日本語で聞いたことも読んだこともなかったから、美術館の展示で見て(デンマークの美術館:Moesgaard Museum Vol.2)、また、「コテンラジオ」でも聞いて、この偶然に小躍りしたくなるほど嬉しかった。

www.youtube.com

モースゴー美術館の展示は、ヴィジュアルに美しく情報量も多かったが、正直、きちんと理解できているのかあまり自信がなかった。だから、日本語で改めて聞けた時の感激はいかに。そして、日本語で聞けるっていいなと、改めて思った。頭にスッと入ってくる。

北欧の歴史に関心があったら、「コテンラジオ」オススメ。北欧に関心なくてもオススメ。

f:id:jensens:20220816044701j:image

デンマークの美術館:Moesgaard Museum Vol.2

f:id:jensens:20220530064358j:image

Moesgaard Museum(モースゴー美術館)に行ってきた。オーフス(Aarhus)南に位置するモースゴー美術館は、建築も環境も素晴らしく、展示も今までがっかりさせられたことがない。よっぽど優秀な学芸員がキュレーションしているんだろうか。

一般的には、デンマークの美術館というと、コペンハーゲンから電車で1時間北にいったところにあるルイジアナ美術館オーフスのAROSが挙げられることが多いが、私の中では、モースゴー美術館がかなり上位に来ている。とても素晴らしい美術館で、感動のあまり以前にも記録を残したことがある。あまり日本の人が行かないのは、コペンハーゲンからは遠い、車がない場合のアクセスはあまり良いとは言えずオーフス駅からバスで15分ぐらいかかるから、だろうか。とっても勿体無い。

 

jensens.hatenablog.com

今回は「RUS:東方のヴァイキング」の展示に惹かれていたこともあり、機会を得て行ってきた。天気も良く、緑豊かなMoesgaardを訪れるにはまたとない絶好の日和だ。

まずは、自然が広がる景色や子供をあやすヴァイキングの末裔の姿を楽しみながら素晴らしい美術館カフェで素敵なランチを味わい、満腹になってから展示に向かった。

続きを読む

Hven/Ven島に行ってきた

f:id:jensens:20220511135133j:image

夏が来た。

というのは大袈裟にしても、ここ数日快晴の心地よい日が続く。八重桜が満開になり、菜の花畑があちこちに黄色い絨毯を広げている。

天気良さそうだからきっと自転車日和だよ、と、以前から何度も話題に上っては断ち消えていたHven/Ven島に日帰りで行ってきた。

自転車で簡単に回れてしまうという小さな島は、かつて(もちろん)デンマーク領だったが、今はスウェーデン🇸🇪の一部だ。

人魚姫の近くから出るフェリーで、1.5時間。両側にスウェーデンデンマークを見つつ、気がついたら島に着いていた。

1日自転車で探検しただけだけれども、天気も良く程よい気分転換になった。特に目新しい行動ではないが、記録しておく。

おすすめトップ3

スピリッツ/Spirit of Hven

ヴェン島では、国際的にも評価されているスピリッツを製造している。ウイスキーは、スコットランドでも賞を取っているそうで、単なるスウェーデンの自己満足ではない。製造されている全てのウイスキーやスピリッツは、厳選された穀物スウェーデン産の穀物を使用し、完全に無添加・オーガニックなんだそうだ。

醸造所に行き、見学し、テイスティングもさせてもらった。ランチも食べたが、選択肢にスピリッツは見当たらず、(ベルギー🇧🇪の)ビールを飲んだ。

そして、せっかくだからお土産として何本か買っていくかと思いきや、笑えることに…、販売はしてくれなかった。スウェーデンでは、お酒は公営の酒屋でしか買えない。ものすごく販売機会を逃しているぞ、spirits of Hven。

f:id:jensens:20220524011505j:image

自転車レンタル

島はとても小さく、自転車で数時間で一周できてしまう。道路はそれほど広くないし、牧歌的な景色はのんびり見るのがいい。そして、そんな島は、自転車レンタルで回るのが人気だ。

 

Tycho Brahe ティコ-ブラーエ

f:id:jensens:20220524043000j:image

(デンマーク人の発音では)チュコ・ブラーが天体観測をした地。当時のデンマーク王🇩🇰 フレデリック2世にヴェン島の邸を下賜されたとのことで、この島を拠点にし、数々の天体観測や記録を作ってきたんだそうだ。

正確な天体観測を成し遂げ、助手のケプラーは、のちにチュコの天文観測データを使用してケプラーの法則を発見したそうだ。

小さいが昔の教会の建物が美術館になっている。Wikiを読むと鼻がシルバーで作られていたとか、笑える話がいっぱいだ。

 

デンマークの美術館:ルイジアナ美術館(Louisiana)

春先のルイジアナ

ルイジアナ美術館 は、デンマーク旅行する人が必ず目指すとも言っていいモダンアートの美術館だ。立地も景観もとてもよく、目の前に透明度の高い海が広がり、庭園が美しい。「世界一の景観」とも言われるのも納得だ。日本人のランドスケープアーキテクトに聞いた話だが、ルイジアナは、海底美術館の元になっているそうだ。そう言われて、初めて、ルイジアナ美術館が海抜下に位置している事を知った。

国際的にも注目される美術館ということもあり、尖った前進的な展示が多く、社会的な問題提起がされる。行くたびに脳内が爆発しグルグルとあらぬことを考えすぎてしまうので、個人的には、気軽に行けない美術館としてブラックリストに入れている。

2022年5月の企画展示はいくつかあるが、60−70年代に米国で活躍したポートレートDIANE ARBUSと都市計画建築家Peter Cook – City Landscapesが、今回も脳内から離れてくれない。

続きを読む

未来の図書館の姿:オスロ中央図書館(Diechman Bjørvika Library branch)

f:id:jensens:20220320234529j:image

オスロ図書館:Deichman Bjørvika Library branch は、2020年に開館した新しいオスロの図書館だ。ビョルビカ(Bjørvika)地区に立地し、オスロ中央駅やオスロ・オペラハウス:Oslo Opera Houseに隣接するロケーションの良い場所にある。他の北欧の新図書館におとらず、ノルウェーオスロ公共図書館は、未来の図書館の香りを漂わせている。

続きを読む