卒論

美しい身体への情熱
〜わたしたちにとってクラシックバレエとは何か〜 

椎名絵里子

目次

1 はじめに 
・美しさの追究とクラシックバレエ・・・・・p,1

2 身体の美とその姿
・美しいからだとは・・・・・p,2
・健康美・・・・・p,3
・一般人のダイエット・・・・・p,4
・食事と運動・・・・・p,5
・食べるタイミング・・・・・p,7
・ダイエットとストレス・・・・・p,8
・ストレッチと細いからだ・・・・・p,9
・男性の強い美意識・・・・・p,11
・恋をするとキレイになる・・・・・p,12
・整形という手段・・・・・p,13
・見た目以外の美しさ・・・・・p,15

3 クラシックバレエ
・バレエダンサーの肉体は美しい・・・・・p,17
・姿勢・・・・・p,17
・全身の美しさ・・・・・p,18
ダンサーの肉体はみられるもの・・・・・p,20
ダンサーのダイエット・・・・・p,21
・わたしのダイエット・・・・・p,22
・プロ、ではない・・・・・p,23
クラシックバレエの条件・・・・・p,24
・アン・ドゥオール・・・・・p,25
ダンサーとケガ・・・・・p,26
ダンサーの精神・・・・・p,28

4 子どもに伝える試み
・ダンスサマーキャンプ 企画・・・・・p,30
・ダンスサマーキャンプ 当日・・・・・p,31

5 まとめにかえて 
・わたしにとってのクラシックバレエ・・・・・p,35

引用文献・資料/参考文献・資料・・・・・p,38


1 はじめに 

・美しさの追究とクラシックバレエ

 容姿。これは自分そのものをあらわす揺るぎない事実である。中身、中身といいつつも、見た目が重要視されるこの世の中、他人の目に映る容姿は出来るだけ美しくありたい。美しい容姿はどんなものか、なぜ人は美しいほうがよいとされるのか。
 そして、人びとは、どのようにして美しさを手に入れるのだろうか。ダイエットをして痩せることか、整形して顔をかえることか。ファッション、着るものをかえて美しく変身しようとするのか。誰かを愛し、その人のために、キレイになるのか。
 もちろん、これらは美と言って間違いではないと思う。しかし、外見が美しくなければだめなのか。そこには、外面じゃない、何か自分が自信をもって夢中になれるもの、人には負けない何かを得ること。そして人は輝き、美しくなることもある。
 外面だけが、美、ということばに値するものなのか。外面の美しさ、内面の美しさ、それぞれ一体どんなものなのか。
 人びとはどのようなとき、自分に、そして他人に美を感じるのか。その捉え方は、さまざまである。

 わたしは、幼稚園のころからクラシックバレエをやっている。クラシックバレエとは、芸術の美であり、あらゆる面でパーフェクトな美が求められる。
 クラシックバレエの美の価値とは、どのようなものか。一般人から見れば、たくさん脚が上がっていれば、たくさん回っていれば、「すごい」、「きれいだ」と感じるかも知れない。けれど、クラシックバレエにはクラシックバレエのルールがあり、単に、テクニックがあるだけでは許されない。テクニックは前提に、表現力、演技力、はもちろん、頭の回転も早くなくてはならない。
 そして、プロのバレエダンサーはなぜあんなに美しいのだろうか。バレエダンサーの肉体は単に細いだけではなく、それだけではバレエは踊れない。それはどういうことなのか。
 バレエダンサーが美しいのは肉体だけではない。そこには鍛えられた強い精神と自信が存在する。そこに、クラシックバレエの美学が存在する。これは、バレエダンサーだけに言えることではない。どんなことでも、プロを極めた人は美しいのである。それはなぜか。

究極の美をもとめる芸術、クラシックバレエクラシックバレエの美をもとに、「美」、というこの抽象的で深いものを少しでも探り、美とはこの世の中に生きる人にとって、どんなものなのか、そして、自分の人生を一緒に歩んだクラシックバレエ、それは、わたしにとってどんな存在なのか、ということを書いていきたい。



2 身体の美とその姿

・美しいからだとは

 現代を生きる人々、とくに若者たちの間では、美しいからだというものへの意識がとても強くなってきていると思う。
 美しいというだけで良い評価をうけ、得をすることはたくさんある。誰もが一度は憧れる、いや、永遠に憧れる美しいからだ、自分でなくても見ていたい美しいからだ。そんな美しい、といわれるからだとは一体どんなものなのか。何をもって美しいからだと言われるのか。ただ痩せていることだけが美しいというわけではない。
そこで、美に対する意識の高い(自己申告)10代から30代の若者たちに、美しいからだ、とはどんなものか、というのをアンケートしてみた。その結果、このような回答が出そろった。

 ・アンケート 「美しいからだとは?」 調査 2006年12月 10代〜30代の男女約30名

 ・適度な筋肉のある引き締まったからだ
 ・姿勢がいい
 ・しなやかさのあるからだ
 ・痩せすぎでない
 ・内股、O脚でない
 ・腹筋が鍛えられている
 ・パンツをきれいにはきこなしている人
 ・肌に艶がありきれい
 ・全体的にバランスがとれている

 このような回答が出た。

 これが、世間一般に思われる美しいからだだ。筋肉が適度についている、ということは、痩せていることは大事だが、ただ痩せているだけでは、きれいではないし、トレーニングをしている、と感じさせる筋肉がついていることが大事だと言う。そして、この筋肉がついているということは、良い姿勢にもつながる。美しいからだの条件に、姿勢がいいこと、という意見はかなりたくさん出た。姿勢がいいほうが、いろいろな洋服も似合うと言う。人間はどうしても猫背になってしまいがちだが、猫背はきれいにはみえない。たしかに、姿勢がいいほうがかっこ良くみえる。
  痩せすぎでない、というのは、今にも折れてしまいそうなほど、ガリガリに痩せてしまっているからだではなく、ほどよく筋肉と脂肪がついたからだがいいと言うのだ。
 日本人は、とにかく内股、O脚が多い。つま先が内側をむいたまま立ったり、歩いたり、男の子でもひざとひざのあいだに隙間がある人が何気にたくさんいる。女の子で、内股で歩くほうがかわいいと思っている子がいるかもしれないけど、私から言わせれば、ちっともかわいいと思わないし、ひねってしまうんじゃないかとみていて不安になる。ひざとひざがあけば、脚が曲がってそのぶん脚も短くみえてしまうし、身長だって低くなってしまう。パンツをきれいにかっこよく履きこなすにも、まっすぐで鍛えられた脚だから出来ることではないかと思う。
 それから、私の頭にまったくなかった言葉が出てきた。それが「しなやかさ」という言葉だ。これはどういうことかと言うと、筋肉がついていなければいけないにしても、筋肉質すぎてはいけないということで、例えばダンサーであったら、脚をあげたときに、どこまでも伸びていきそうな、しなやかさを感じさせるからだに美しい印象をうけると言う。よく、きれいな人を指すときに、スラッとしている、という言葉で表現をするときがあると思う。まさにその「スラッ」が「しなやかさ」なのだ。
 そして、これは私もすごい思うのだが、バランス、というのはかなり重要だ。全体をみたときにバランスがとれていて、美しいと思えることが、美しいからだの一番の条件と言ってもいいと思う。


・健康美

 これらのことをまとめると、「健康美」と言う言葉が浮かんでくる。私の中で、健康美は最近流行りの言葉だと思っている。健康美について、私の通っている整骨院の先生が、「最近の女性たちは単に痩せればいいと勘違いしている、痩せすぎは良くない、女性としての魅力がなくなってしまう、健康美というものがあるのをわかってほしい。」と言っていた。健康美、は痩せすぎてはいけないということはよくわかった。けれどぽっちゃりはどうかノこれは違う。
 ここではっきりさせなくてはいけないのは、「健康美」と「健康的」の違い。健康、と言うのは、医学的にみた数値が絡んでくる。 医学的に健康なからだ、と言われているのは、BMI(体格指数、体重(kg)/身長(m)2)だったら、22くらい、体脂肪率だったら、女性なら24、5パーセント、男性なら17、8パーセントくらいではないだろうか。これは、これくらいの数値だと一番病気にかかりにくいですよ、ということなので、いわゆる健康なからだで、健康美とは違う。もちろん、健康なことは生きてくうえでとても大事なことだ。
 しかし、その標準と言われる数値をたたきだしている人たちのからだをみると、見た目はすこしぽっちゃりしていることに気づいた。私の働いているスポーツクラブに、体脂肪を測るマシンがあるのだけれど、わりとしっかりした体型だな、と思う人が測ってみると、意外と全然標準の範囲内だったりすることが多い。これがいわゆる健康なからだ、「健康的」と言われるものだ。
 それが、「健康美」、というものになると、見た目的にも、数値的にも違ってくる。見た目的には、バランスのよい引き締まった美しいからだがもとめられ、かつ数値的にも標準の範囲内であることが大事だ。BMIなら18.5からが標準とされているから、それより低くなり過ぎてもいけない。
 健康であることと、美しくあること、これが一般的に言われる「健康美」であり、「健康美」であることが美しいからだの条件だと思う。ということは、健康的なからだで、その中に自分を磨いた、鍛えあげた、という努力が見えれば、それは「健康美」と言えるはずだ。そうしたら、「健康美」というのは、誰もがもっている要素であり、目指すことが可能なものだと思う。
美しいからだと言っても、その人の性別や身長、骨格、年齢によって全然違ってくる。その人の中で最大限に引きだせる美しいからだをつくっていくことが大事だ。


・一般人のダイエット

 最近のテレビを見ると、ドラマやCMに出ている旬な芸能人は、みんな細いということに気づく。そして芸能人というものは常に美しさの最先端であり、若者たちにとって憧れで、目指したいものであろう。
 芸能人のように細くなりたい、と思う若者は多いと思う。今の若者たちのダイエットへの関心はかなり高くなっているはずだ。それは別にいいことだと思うが、痩せたいという気持ちが強すぎて、最近では拒食症に陥る人々も増えている。実際に私の友だちでも、今は克服したが、過去に拒食症陥ってしまった人もいる。
 しかし、そこまでしてでも痩せよう、と思う若者が増えているのも事実だし、細さに対しての基準の高くなっているのも事実だ。けれど、一歩間違えれば、拒食症になってしまったり、身体の健康を害する恐れもある。
 私は、スポーツクラブで「2ヶ月集中ダイエット」というコースプログラムの、ダイエットのインストラクターというものをやっている。私自身、ダイエットコーディネーターの資格は持っていないが、資格のある者から数ヶ月間に渡りダイエットの研修を受けた。そこで私が得た、正しいダイエットの仕方を、少しでも多くの人に伝えたいと思う。
 まず、ダイエットをする前に、今の自分に本当にダイエットをすることが必要なのかを考えてほしい。自分のからだをしっかり知ることが大事だ。
 まず、自分の身長と体重のバランス。体格指数、BMIをみてほしい。BMIは、体重(kg)ヨ身長(m)ヨ身長(m)でだせるが、 これの標準範囲が18.5〜23である。もし、この数値よりも少なければ、一般の人であればこれ以上体重を減らす必要はないと考えられる。
 この、標準範囲内に入っている人でも、自分のからだに満足していないという人はいると思う。特に女性の場合は男性よりも体脂肪が多い。脂肪は筋肉より軽いため、女性は見ために太っていても、BMIを見ると意外に少ないということもある。
 そこで注目して欲しいのが体脂肪率である。BMIはそれほど多くないのに、見た目が気になる、という人がいれば、それは体脂肪率が高い人かもしれない。体脂肪率の標準範囲は、女性は20〜30パーセント、男性なら15〜20パーセントである。体重は重くないのに、体脂肪率が高いという人は、いわゆるかくれ肥満と言われるもので、まちがったダイエットをしたりしてしまうと陥りやすい傾向にある。なので、単に体重だけでなく、体脂肪率というのも気にしてほしい。
 逆に、女性の場合は体脂肪率が低すぎてもいけない。女性は体脂肪率が15パーセントを下回ると生理がこなくなるとも言われている。まちがったダイエットをすればそういった恐れも生まれてくる。
ダイエットは、美しさへの手段でもあるが、それを通りこしてしまうと、取り返しのつかないことにもなりうる。しっかりと自分の身体を知り、健康的に美しくなるためのダイエットをおこなってほしい。


・食事と運動

 さて、いざ健康的なダイエットをしようと思ったときに、どのような方法でダイエットをしていけばいいのか。
 よく、「運動は嫌いだし、時間もないから、食事を控えよう」もしくは、「食べるのは我慢できないから、運動で痩せよう」というのを耳にすることがあるかもしれないし、自分でもそういうことを考えたことがあるかとも思う。
 しかし、このダイエット方法では、本気で頑張れば痩せるには痩せるが、どちらにもデメリットが存在する。そしてそのデメリットをカバーするためには、食事と運動、両方を組み合わせてダイエットをしていくことがより効果的で健康的なのだ。
 私の働くスポーツクラブでダイエットをする人たち向けに、最初にダイエットのノウハウが書かれたファイルを渡している。その1ページ目に書かれているものが、まさにそれである。

 「ダイエットの基本的な考えかたとして、食事と運動を組み合わせて実践することをおすすめしています。
 なぜなら、食事だけ、運動だけのダイエットではそれぞれ、メリットとデメリットがあるからです。その、デメリットを減らして、効率よく、安全なダイエットを行うためには、運動と食事の両方を組み合わせて行うことをお勧めします。特に運動をすることによって、筋肉の量を維持・増加させリバウンドしにくくなるというのが大きな特徴です。」(1)

 と書かれているのだ。私自身もダイエットインストラクターとしての研修を受けているときに、このことはダイエットをする人たちにしっかりと伝えるように、と指導された。
 それぞれのメリット、デメリットとしては、運動には、筋肉や、基礎代謝を維持し、増加させ、リバウンドをしにくい身体にすることができるが、デメリットには、運動をすることには時間がかかることや、運動だけで痩せようと思うならばかなりの強度で身体を動かさなければならないことである。
 食事制限のメリットとしては、早く効果があらわれることと、体力のない人でもできるということである。デメリットには、運動をしないと筋肉が落ち基礎代謝、体力が低下すること、食事制限というものには精神的ストレスがかかるということである。そして何よりリバウンドの危険性が高いことがあげられる。
 ここで、リバウンドについて説明しておきたい。ダイエットをするにあたって、一番気をつけなくてはならないことがリバウンドだと言ってもいいくらいであると思う。 「2ヶ月集中ダイエット」のコースに申し込んだ会員に私が毎回言うことがリバウンドであり、リバウンドをしないようなダイエットをすることを常に心がけてもらうようにしている。
 リバウンドとは、知っての通り、ダイエットをして痩せたはいいものの、またもとの体重、もしくはそれ以上になってしまうことを言う。
 そもそもリバウンドはどうして起こるのかと言うと、食事制限だけに頼って急激なダイエットをすると引き起こる可能性が高い。無理な食事制限によって筋肉が減ってしまい、基礎代謝量が落ちてしまう。
この状態でダイエットをストップして、もとの食事の量に戻すと、基礎代謝量が落ちているからエネルギーを消費する力も落ちてしまい、さらには今まで食事制限をしていたために、カラダが次にいつエネルギーが入ってくるかわからなくなるため、入ってきたエネルギーをできるだけたくさん蓄えようとしてしまう。これによって、ダイエットにかけた時間の何倍も速いスピードであっというま間にもとの体重に戻ってしまう。
食事制限による無理なダイエットをすると、脂肪は落ちるけど筋肉も落ちる。なのに太るときにつくのは脂肪だけ!!そして勘違いしないでほしいのは脂肪が筋肉にかわる、ということはないとうこと。よく、「この脂肪を筋肉にしたいノ」なんて聞くと思うけど、これはありえない話で、脂肪は脂肪、筋肉は筋肉。だからこそ、一度ついた脂肪を落とすのは大変で、リバウンドをしないダイエットをすることが必要になってくる。
リバウンドをしないためには、どうすればいいのか。ここで、食事と運動、両方が大事ということがみえてくるだろう。
私のスポーツクラブの「2月集中ダイエット」の会員には、週に2回、1回約1時間の運動をしてもらっている。そして、食事は、1日に女性ならば、1200〜1300キロカロリー、男性ならば1500〜1600キロカロリーにまで抑える必要がある。もちろん、もっと摂食カロリーを減らせば早く減量できるが、リバウンドの可能性は高い。と言うことは、断食をすれば一気に体重は減るが、それだけリバウンドしやすいということにもなる。
 あるアスリートが、コーチに痩せろと言われ、寺で何日間か断食をした。そのときは本当に一気に体重は落ちたが、帰ってきてすぐに、何も食べてなかったストレスから、コンビニでお菓子を買い一気に食べたところ、あっという間に体重は戻ったという。断食ダイエットはかなり有名であるが、私の経験からいっても勧められない。
 正しいダイエットをすれば、1ヶ月2〜3キロ減量することが可能になり、これ以上減らすとキープするのも難しくなる。そしてその落とした体重を、1ヶ月間キープすることができれば、リバウンドの可能性は低いとされている。
 食事、運動、両方を組み合わせて、上手にダイエットをしてこそ、美しいからだは手に入れることができるであろう。


・食べるタイミング

 食事についてだが、同じものを、同じ量食べるにしても、タイミング、食べる時間によって、からだへの影響は違ってくる。そんなに食べてなくても、なかなか痩せない人、太ってしまう人は、食べるタイミングが悪い場合が結構ある。
 例えば朝ご飯を食べて、その日お昼ご飯が食べる時間がなかったとする。それで夜ご飯を食べることになると、食事と食事のあいだがすごく空く。普通、食間は4〜6時間が適正とされていて、これが空きすぎると、次に体内に入ってきたものが、すべて消化されてしまう。これが夜遅い時間、寝る時間に近ければ近いほど、脂肪となりやすい。遅い時間に食べるということは、あとは寝るだけになってしまうので、食べたものが全く消費されずに終わってしまう。そのぶん自分のからだの中に脂肪として蓄積される。
 寝る2時間前をすぎたら食べてはいけない、と聞いたことがあるかもしれないけど、私は2時間前に食べてから寝ると、次の日の朝、なんだか前の日の夜食べたものがうまく消化しきれてない感じがする。なので、私は寝る4時間前を過ぎたら食べないを意識している。実際その方が、寝るまでの活動時間が長くなり、それだけ消費されるカロリーも増えるし、翌朝の胃がもたれる心配もない。就寝前2時間と4時間、この2時間の差は大事だと思う。私はいつもスポーツクラブでダイエットを教えるときに、食べてから寝るまでは、最低2時間、出来れば4時間あけるように、と言っている。
 だからと言って、夜中の12時に食べたから、明け方の4時に寝ればいい、と言うことではない。体内時計というものは、私たちが思っている以上に正確なものなので、いつ食べたか、何時に寝たのか、と言うのはきっちりとわかっている。夜遅くに寝るというのはからだにはかなりよくないことで、ホルモンのバランスもくずれ痩せにくくなってしまうし、肌にだってよくない。本当は、痩せるためには、22時から2時のあいだ、しっかり寝ることも大事なのだ。
だから、本当は寝ていなければならない時間帯に、食べる、という行為をするのは、実によくないということがわかる。寝る4時間前を過ぎたら食べないようにしようとすると、22時に寝るなら18時、24時に寝るなら20時、これが食べてもいいリミットになる。さすがに22時に寝ることは難しいから、20時を過ぎたら食べないようにする、と意識するといい。
昔テレビでみた新体操を習っている中学生くらいの女の子たちも、コーチに夜8時以降は食べないように、と言われていた。それを思い出すと、就寝の2時間前ではなく、4時間前を過ぎたら、と言うのは、なかなかいいことだと思った。
アーティストの倖田來未が、8キロの減量に成功したときも、午後6時以降は一切食べない、というようにしたらしい。彼女はこのことをよく熱く語っているので、夜食べないダイエットによほどの自信があるんだと思う。実際ダイエットに成功した彼女が言っているのだから、かなり説得力はあるはずだ。
夜遅くに食べると、次の日の朝にもひびき、朝ご飯があまり食べれなくて、結局夜にお腹が空きまた遅い時間に食べてしまう。これが繰り返され悪循環になってしまうので、もし夜食べたくなったら、明日の朝は何を食べようかな、など前向きな考えをして、寝てしまおう。


・ダイエットとストレス

 食事制限をしていると、どうしても精神的ストレスから逃れられないであろう。また、ダイエットにも停滞期というものがあり、ダイエット始めてから体重が減ると、摂食エネルギーを減らしたからだにも、適応力がつき、どんなに頑張っても、体重が減らないときが誰にでもやってくる。
 こういったストレスは、どうやって解消すればいいのか。体重がなかなか減らない、いつもお腹いっぱいに食べることができない、このようなことから、ある日突然スイッチが入ったように暴飲暴食をし、あっというまにリバウンドしてしまわないためには、ダイエットと、どううまく付き合っていけばよいのであろうか。
 ダイエットをしていると言っても、1、2ヶ月のあいだ、毎日決まった食事制限を続けるのには、かなりの忍耐力が必要であるし、自分の好きな食べたもの我慢するのは、すごく苦痛なことであろう。
 歌手の倖田來未が、午後6時以降全く食べないダイエットをして痩せた、と言っていたが、「もし、ダイエット中に男の人に食事に誘われたら」と言う質問に対し、彼女は、「そのときはノ行きます(笑)」と答えていた。
 ダイエットに成功した彼女も、毎日午後6時以降食べていなかったわけではないのだ。男性と食事をする、たまに自分のごほうびをあげることによって、ダイエットすることをストレスとしないようにしていたんだと思われる。
 どんなかたちでもいいから、自分のごほうびをあげたり、たまには自分を甘やかす意志も、大切なことだと思う。
 誰だって、ついついダイエットをしていても、食べすぎてしまうことはある。それがいけないとは、私たちインストラクターも絶対に言わない。大事なのは、その後である。
 一度たくさん食べてしまったからと言って、それが次の日すぐに脂肪になることはない。脂肪になるには2週間くらいかかると言われている。ならば、その次の日にしっかり食事をもとに戻せばいいことなのである。
 頑張るときは頑張り、甘えるときは甘える。もちろん、甘えるときばかりではダイエットできるわけないが、頑張った分、それなりのごほうびは自分に与えてもいいはずだ。こう言ったメリハリ、オンオフを切りかえることも大事だと、私たちは指導している。
 それから、女性は生理2週間くらい前から、からだもむくみやす、食欲も増す。きっと誰もが気づいていることであるとは思うが、これは自然現象であり、逆らえないことだ。頑張っているのに体重が落ちない、むしろ少し増えた、なんてこともあるだろう。ストレスもたまりやすい。
 だが、この現象は自分が女性としてちゃんと健康に機能しているということだから、そんなときこそ、私は逆に無理な我慢をせずにしっかり食べることをすすめる。
 そして、たくさんの女性雑誌のダイエット特集などにも書かれていることだが、生理後2週間は痩せやすいと言われている。そのチャンスを活かせば、ストレスをそこまでためずにダイエットをすることができるだろう。
 ダイエットをするには、いかにストレスをためないか、精神的コントロールも必要になってくる。そのためにも、絶対に無理な目標は立てずに、少しずつ痩せてきれいになっていく自分を楽しむ感覚もあるといいのではないかと思う。


・ストレッチと細いからだ

 運動についてたが、どんなことを、どれだけやるべきか、これは、その人の身体能力や、体型によってトレーニングメニューは異なる。しかし、全ての人に言えることがある。それは、ストレッチである。実は、ストレッチと細いからだは、深く関係しているのだ。
 ストレッチについて、私の体験をまじえて話したい。

2006年 9月18日、敬老の日に、私のバイト先のスポーツクラブで、1日限定の、レッスンをやった。
クラスの名前は、「みんなでストレッチ」。当然のことながらレッスン内容はストレッチ。時間は30分で、ひたすらストレッチをやり、目的は、「ストレッチの大事さを知ろう」みたいな感じで、どんなストレッチをやるかは、私が自由に考えていいと言われた。
今まで、自分のバレエ教室で、子供たちを相手にストレッチをやったことはあったけど、大人、しかも自分の親と同じ、もしくはもっと年配ノそんな方たちを対象にやるのは始めてだったから、どうしようノ、何しようノムリさせてケガとかさせたらどうしょうノとかいろんな心配があり、レッスン内容考えるのにもなかなか苦労した。
そして、30分の間にどんなストレッチをしたかというと、

1、床ストレッチ:床にストレッチマットをひき、全身のストレッチ。腹筋や背筋なども鍛えつつやるのがポイント
2、上半身を起こして前屈したり、開脚をしてストレッチ。
3、立って股関節や上半身を中心に全身をストレッチしながら筋力もつけれるようにストレッチ
4、最後は深呼吸をしながら首や肩のストレッチをして全身のクールダウン

という感じで30分のレッスンだったけれど、5分くらいオーバーして、ストレッチをみっちり行った。

ほんとは、何か音楽をかけながらやることも考えたが、ストレッチに集中してほしかったため、今回は私に喋りのみで行った。

気になるお客さんの反応はノ「すごく良かった!!」、「全身が伸びた」、「普段使わないところをたくさん使った気がする」。 などなかなか好評だった。
一番嬉しかったのは、40代くらいの主婦の方に後日お会いしたときに、
「私、普段いくらトレーニングしても全然汗をかかないんだけど、あの日、先生のストレッチやったあとにトレーニングしたら、すごい汗をかきました!!」
と言ってくれたこと。
かなり嬉しい。これはストレッチをしっかりしたことによって、体が暖まり、新陳代謝が良くなった、と言うことで、発汗作用の効果絶大。さらには体がほぐれてトレーニングもしやすくなり、自分の体の筋肉を思い切り使えたんだと思う。
お客さんにも喜んでもらえたし、ストレッチの大事さを少し伝えられたような気がして、良かった。

そして、何がいいたいかというと、ダイエットにはストレッチは欠かせないということ。新陳代謝があがれば、それだけ痩せすいからだになる。からだに柔軟性があるということは、余計な筋肉や力を使わずに、細く長くしなやかな、からだをつくることに近づけるだろう。
ストレッチと細いからだの関係性を、簡単に言えば、新体操選手の、あの細く柔軟性に優れたからだを想像してもらえれと、納得がいくだろう。
ストレッチは、体力がなくてもできるし、マシンなども必要もない。家でも簡単に誰でもできるものだ。ぜひ、ダイエットをするときには、ストレッチにも関心を持ってもらいたい。


‐ダイエットの目的を見失わない‐

 そして、何度も言うが、「痩せている=美」ではない。
 スペインやイタリアでは、BMI18以下の痩せすぎモデルをファッションショーなどに出演させない、という規制の動きもある。2006年9月〜12月、ほんとにここ最近の出来事だ。
若者たちがモデルに憧れ、過度なダイエットに走り、拒食症などにおちいることを防ぐためだと言う。
 やはりどこの国でも痩せているモデルに憧れるのは同じだ。
 痩せていることだけが美しさの全てではない。ある程度、痩せていた方が、一般的に美しい、と言われる、ということである。
 そして、ダイエットは、どうしたら自分が一番美しく見えるのか、自分のからだの魅力を活かすために、してほしいものだと思う。


・男性の強い美意識

 女性の高い美意識は、今になって始まったことではないが、近ごろでは、男性の美意識というものも女性並みに強くなってきている。
 その証拠として、近ごろの男性は、すごくオシャレできれいである。ときどき、男の人の顔を見たときに、あまりのきれいさや手入れ加減に、ハッとしてしまうこともある。男性のためのエステもあるし、化粧品もたくさんある。男性も女性のように眉毛を手入れしたり、洗顔のあとに化粧水をつけたり、すごい人は化粧をしたりする人もいる。少し前だったら、「男のくせに気持ち悪い」とか、「女々しい」など言われたかもしれないが、今は逆にそれくらいしないとモテない、とまで思われているようだ。
 つい最近も、男の子の友達に、脚を細くするにはどうすればいいのかと聞かれた。太ったからダイエットをするならまだしも、脚という部分的なところ、さらに細い脚なんて、女性だけが憧れるものだと思っていたから、かなり驚いた。
 そんな中、週間朝日という週間誌で男性の美意識についての面白い記事を見つけた。
 その記事には、男性用の高級下着がよく売れている、高級パンツがブームだ、ということが書かれていた。男性の美意識は、外見だけでなく、見えないところにも、注がれているということだ。 渋谷にある男性下着専門店では、値札を見るとどれも1枚3000円以上の商品だと言う。
 最近の人気はボクサーパンツらしい。たしかに、テレビなどでも、男性がボクサーパンツを履いている率は高い。男性用下着のコマーシャルでもボクサーパンツを履いていることが多い。そもそも、男性用下着のコマーシャルじたい最近みかけるようになったのだが。
 なぜ、ボクサーパンツが人気なのかと言うと、伊勢丹、肌着・ナイティバイヤーの人が言うには、昨年からの男性用「美脚パンツ」の流行によるためだと言う。
それは、「股上が浅いため、へそまで隠れる普通のトランクスの上にはくと、下着がウエストラインからはみ出してしまう。見えてもいいように、せっかくなら下着もおしゃれなものを、と気を使う男性が増えたんです。」(2)ということらしい。
股上の浅い美脚パンツノそしてそのためにはくオシャレなボクサーパンツノついに男性もここまできたか、と言う感じだ。
 これについて、タレントの青田典子は、「究極的には下着じゃない、中身ですよ。男性がおしゃれで清潔になるのは大歓迎ですけど、追求しすぎると気合い入りすぎで痛々しいからほどほどに」(3)と言っていた。
 私もこの意見に賛成だ。男性がオシャレに興味をもってくれることは女性として嬉しい。しかし、そればかりに力を入れすぎて、肝心の男としての中身がなくなってしまったら、そのオシャレも女性たちは逆にひいてしまうかもしれない。
 この男性の美意識は、どこまで高くなっていくのだろうか。男女の美意識が並ぶ日はそう遠くはないかもしれない。もしかしたら、男性の方が女性よりも美に対する意識が強くなるときがくることも考えられなくはない。 


・恋をするとキレイになる

 女の人が美しくなるのにとても効果的で良い方法がある。それは、「恋」だ。

 例えば、自分に恋人や好きな人ができたときに、周りから、「最近きれいになったね。」など言われたことはないだろうか。逆に、友達をみたときに、「何だか女の子らしくなったなノ。」とか思っていたりすると、実は彼氏ができた、なんてこともあったりするのではないだろうか。
 恋と美についてのことで、通販化粧品で有名な、DHCの情報誌に、こんなことが書かれていた。
 「恋をしている人の瞳はキラキラ輝き、肌はピンク色に透き通って、髪もツヤツヤ。表情もイキイキとして、思わずハッとすることがあります。
 こうした変化は、ドーパミンなどの脳内物質と大きな関係があります。脳内物質とは、脳にあってなんらかの生理活性を示す化学物質のことで、100種類以上あると考えられています。記憶や睡眠に関わる神経伝達物質がよく知られていますが、恋愛と脳内物質の関係についても、色々なことがわかってきています。
 好きな異性に接すると、脳の中でドーパミンやルノアドレナリンなど脳内物質の中でもカテコールアミン類と呼ばれる神経伝達物質の濃度が上がります。すると、心臓がドキドキしたり、気持ちがたかぶったり、エネルギッシュになったりします。瞳孔を開かせる作用もあるため、瞳がイキイキと輝いて見えます。
 また、女性の場合、脳の視床下部から指令が出て、女性ホルモンのエストロゲンが多くつくられます。このエストロゲンこそ、皮膚の新陳代謝をよくして、きめの整った若々しい肌へと導きます。肌は瞳のうるおいを保つヒアルロン酸や、ハリのある肌、すこやかな髪をサポートするコラーゲンを増やす働きも。さらに女性らしい丸みおびたボディラインも、エストロゲンによるものです。
 恋愛時に急激に増える脳内物質として近頃注目されているのが、PEA(フェニルエチルアミン)。PEAもドーパミンと同じようか高揚感をもたらし、肌をピンク色に紅潮させます。このPEAの化学式は、食欲を抑える薬と構造がとてもよく似ているのだとか。好きな人のことを思って胸がいっぱいになり、食欲がなくなってしまった、という経験はありませんか?それはこのPEAのはたらきによるものです。
 こうして、恋をするとスリムになり、また忙しくて睡眠不足にもかかわらず元気いっぱいで、キレイなツヤ肌を保てたりといった、まるで「恋の魔法のようなことが起こります。」(4)
 難しいことばがたくさん出てきたが、要するに、恋をすると、キレイなれる物質が多く分泌されるということだ。
 恋をするとキレイになる、ということには、このようなしっかりと説明できる裏付けもあるということがわかった。
 実際、恋をすると痩せる、という人に、なぜか、と聞いたところ、「好きな人が目の前にいると、それだけでお腹いっぱいなるのノ」とかわいく断言されてしまった。
 恋をしたときに増える脳内物質、PEAが、食欲を抑える薬と構造が似ているというのもたしかなようだ。
 さらに、自分の好きな人の前では、キレイでありたい、と女性なら誰でも思うだろう。そういう気持ちが、自分を美しくみせるための努力をさせてくれ、よりいっそう見た目に磨きがかかるのではないか。
 もちろん、恋をして美しくなれるのは、男性にも言えることである。彼女ができたりすると、男の子は髪型や服装をいっせいに気にしだすようになる。それで男の子はあか抜けてゆく気がする。また、彼女がいる幸せ感から、自分に自信がつき、さらにカッコ良く男らしく見えるのではないだろうか。
 このようなかたちで、美しくなってゆくさまは、恋をした人の特権、と言えるのか。
 「恋をするとキレイになる」。だとしたら、人はみんな、必然とキレイになることができるのではないだろうか。そのためにも、美しくなるには異性の存在は絶対、なのであろうか。


・整形という手段

 美しくなる手段として、「整形」というものが思い浮かばれるだろう。昔は、整形することは、あまり世間ではよく思われなかった。親から授かったものに、手をくわえるなんて、という考えが強かったはずだ。
 ところが最近はどうだろうか。前だったら、整形には莫大なお金がかかるし、芸能人とか一部の人がやるもの、というイメージがあったが、今は、プチ整形という部分的に、短時間に、料金的にも少し頑張れば、誰でも簡単にできるものもある。
 若者たちの美に対する意識の強さから、整形はかなり一般化されてきている。若者向けのファッション雑誌なんかをみていると、絶対と言っていいほど整形の広告ページがまじっている。
 私のまわりでも、整形をした人がいる。その話をしたい。

  —ケース1 20歳女性の場合—

 これは、私のバイト先の同い年の男の子の妹の話だ。
 彼女が整形をしたのは、高校2年生のときだ。目、を10万円くらいでやったという。「二重の線はあったが、うすかったので、はっきりさせたかった」らしい。
 整形することに抵抗はなかったという。整形前と整形後、特にかわったことはないそうだ。


 —ケース2 18歳男性の場合—

 これは私が通うバレエスタジオの友達の同級生の話だ。
 彼が整形したのは高校3年生のとき、つまり最近だ。彼がしたのはプチ整形といわれるもので、目を糸で縫い付け二重にするもので、2万円くらいだった。糸は抜けば簡単に戻せるという。安いせいなのかはわからないが、少し痛かったらしい。
 整形の動機については、「今の自分がいやになった」、「変えたくなった」と言っていた。


 この2人の共通点としてあげられるのが、2人とも未成年のうちに整形をしたということ。
 未成年の場合は、整形の際、親の承諾が必要になる。ということは、2人とも親の了解を得たうえでの整形をしたということになる。しかも、両方とも、親は子が整形することに対して、とくに反対はなかったという。
 親、までもが我が子が自分の顔をいじることに抵抗がなくなってしまっているのだ。
 そして、もう1つの共通点は、2人とも、整形したのが、目、であること。
 やはり、目の印象というものは大きいものなのだろうか。整形とまでいかなくても、一重を二重にする、アイプチなども、ドラッグストアなどでたくさん売っている。たしかに、目がかわれば、顔全体の印象は大きくかわるだろう。
 今では、こんなに簡単に整形ができるようになってしまった。だが、もし整形することによって、その人が幸せになるのなら、いいのではないか。そう思っている人は今の若者には多かった。だからこそ、整形が一般に受け入れれているのだと思う。
 実際、同い年くらいの女の子に聞くと、勇気はないが、整形をやってみたいという人はたくさんいた。男の子も、さすがに整形をやってみたいという人は少なかったが、自分の彼女が整形でも別に問題はないという。
 私も、整形したことにより、顔だけでなく、内面的なものも美しくなり、その人が生きていくうえで、プラスになるのであれば、いいとは思う。
 男子高校生のように、今の自分をかえたかったという理由で、整形という手段をとるのも気持ちはわからなくはない。
 だが、整形という、人工的な美しさが、ほんとにいいのだろうかノと深く考えれば考えるほど、これは永遠のテーマに違いないと思った。もうこの判断は個人に任せるしかないものだと思う。
 ただ、私は、整形という行為に及ぶ前に、何か自分の中でかえれるものがあるかを、よく見直したうえで、最終手段として顔にメスをいれてもらいたい。簡単な気持ちでは、整形はしてほしくはないというのが私の考えだ。


・見た目以外の美しさ

 私は、これまで身体、見た目の美しさについて話してきたが、身体の美しさを研究していて、とても大事なことに気がついた。
 それは、中身、芸、の美しさである。これがないと、見た目がどんなに美しくても、その人が美しくみえないのではないかと思う。逆に、何か自分の中で誇れるものがあれば、その人は眩しいくらいの輝きを放つことができるであろう。
 私がそう考えたことについて、猫ひろしのことを話したい。

 先日、テレビを見ていたら、TBSで、「オールスター感謝祭」の再放送がやっていた。あの番組は私は結構好きで、見ていたら、猫ひろしがでていた。猫ひろしと言えば、147センチというかなり低い身長で、芸も結構さむい、で有名な芸人だ。
彼が、その番組「オールスター感謝祭」の、赤坂5丁目ミニマラソン、というものに出ることになった。赤坂5丁目ミニマラソンというのはその名の通り赤坂5丁目を芸能人たちがマラソンし、順位を競うもの。あれは途中で結構きつい坂とかもあるので、猫ひろしが走ると聞いて、大丈夫なのか?と私は思った。
ラソンにはそれぞれ一応ハンディがついていて、まず最初に女子のスタート、次に男子、それからなかやまきんに君とかペナルティのワッキーとか。なかなか運動神経の良いひとたち。猫ひろしはなんと、きんに君とかワッキーよりもきついハンディだった。えっノ猫ひろしって速いんだノ。私はかなりびっくりした。
そして、レースが始まり猫ひろしもいよいよスタート。速い速い。スタジオもあまりの速さに騒然としていた。結果は1位がエリック・ワイナイナーというマラソンのオリンピック選手。そしてわずかに遅れて2位が猫ひろし。何十人もいる芸能人のなかで、猫ひろしが2位。かなりびっくりだ。すごい。

ここで言いたいのは、猫ひろしの「美」について。普段の彼は「美」とはかなりかけ離れていると思う。けれどマラソンをしているときの彼は、かっこよく、美しかった。
私は今まで外面的、ルックス的な「美」についてばかり研究してきた。でも、それとは違った美しさもあると思った。能力的な「美」。彼はほんとにルックスは全然良くないけれど、彼の速く走れるという能力に、私は「美」を感じた。これが猫ひろしの「美」である。
 芸、の美しさについて、元スチュワーデスであり、現ジョージワシントン大学客員教授、国際評議員。月刊「ぺるそーな」の発行人である、浜田マキ子はこう言う。
「チャン・ツィーやオペラ歌手のマリア・カラスなどは、一芸に秀でた迫力で美女になりました。美しさは生まれつきの顔でなく、自分をどう磨くかだと思うのです。「一芸に秀でれば人生が見えてくる」と作家の有馬頼義さんも書いています。一芸に秀でるとは、「手本をマネて、自分のものにするためにナレるまで練習する」という学習そのものです。女性はキレイになること即ち一芸に秀でること。よいお手本を見つけて、どんどんキレイになっていただきたいと思います。」(5)
 日本でも、一流の芸術家や、アスリートたちは、みんな輝いていて、美しい。それは、顔、などもって生まれた外見ではない。芸を磨くことによって、彼らは自分に自信をつけ、美しくなるのだと思う。
 そこには、たくさんの努力があったはずだ。だからこそ、自分の芸、そして努力に胸を
張れる。それが、彼らの美しさというものではないか。
 美しくなるためには、何か自分の中で譲れないものをもつ。もつために努力をし続けること。その頑張っている姿こそが、誰がみても美しいと思えるものではないだろうか。
 そして、いい意味で、「自分に自信のもてる自分」になることが、素晴らしいことだと思った。肉体だけでなく、ハートも磨かれることが、美しさを放てるようになるだろう。


3 クラシックバレエ

・バレエダンサーの肉体は美しい

 肉体にかなりこだわりのある私は、今までいろんな人のあらゆる肉体を見てきた。そのたびにこの人はこんな体つきだ、とか、この人のここが素敵、ここが残念。この人絶対体脂肪少ない。とか、他人のからだをみるたびに毎回自己分析をしてしまう。その度に思うことは、ダンサーの肉体は美しい。その中でもとくにバレエダンサーの肉体というのは群を抜いて素敵だ。
 これは、自分がバレエをやっているからそう言っているのではなく、客観的に見て、そう思う。街を歩いていても、この人バレエをやっているな、というのは結構わかるし、全くバレエをやったことのない普通の人でも、きれいな人をみて、この人バレエとかやってそうノとか、バレエとまでは断定はできずとも、何か特別なことをやっているな、と思ったことはあると思う。
 評論家である三浦雅士は、バレエダンサー上野水香を、みたときに、長身にして、首が細く、手足の長さに呆然としたという。それから、芸能人いえば、米倉涼子神田うのなどがバレエ経験者だ。2人とも、バレエ歴は長く、それぞれ、有名なバレエ団でも踊っていた。米倉涼子は、雑誌のインタビューで、「今のボディがあるのは、20歳まで続けたクラシックバレエのおかげ」、と言っていた。
 2人のスタイルの良さは、女性雑誌のスタイルがいいと思う芸能人ランキングなどの、上位にいつも名前があがることでわかる。


・姿勢

私は、よく他人に、「バレエをやっている」と言うと、だから姿勢がいいんだねと言われるし、「姿勢いいよね」と言われて、「バレエやってるのでノ」と答えると、「やっぱり!!」となることがある。
 なぜ、そんなに周りに気づかせることが出来るのか。別にその人の前で突然踊ったりする訳でもなく、髪だって普段はおだんごにしていない。バレエダンサーの肉体が美しいからと言って、普段裸でいるわけでもないし、レオタードだって着ていない。なのにどうしてバレエをやってる人ってわかるんだろうノと言うかなぜ目立つのであろうか。
そこに隠されたものは、前の文章に出てきた「姿勢」なのだ。姿勢がいいとそれだけで目がいく。ついその人を見てしまう。そこで、この人姿勢がいいな、ということに気づく。どこをみて、姿勢がいいかと思わせているのかと言うと、胸から上、とくに肩と首だ。
 バレエダンサーは基礎のバーレッスンによって、肩と首は美しく鍛え上げられる。人は、他人を見るときまず最初に相手の顔を見ることが多いはず。脚を最初に見る、という人はあまりいないはずだ。顔を見ようとすれば、自然と首から肩にかけてのラインは目にとびこんでくる。そのときに、バレエダンサーをみて、姿勢がいい、とか、きれいだ、とか思ったりするのだ。
バレリーナのヘルスケア」と言う本を読んだら、こんなことも書いてあった。
「ひきしまった体、ほっそりした脚と言うのは、エステやエアロビクス、水泳で得られるでしょう。でも、女性の誰もがあこがれる、美的でエレガントな体のなかで、バレエや舞踊でしか得られるないものがあります。細く長いくびと、なだらかな肩です。これだけは、水泳やエアロビクスで体脂肪率をどれほど減らそうとも、筋肉をきたえようとも、得られないものです。また、エステでくびのまわりをマッサージしてもらうのは爽快ですが、それで形がかわるものではありません。〜中略〜運動選手に多く見られる短いくびは、肩があがっているのではなく、肩やくびのまわりの筋肉がきたえあげられて筋肉が大きくなるのです。見方によればそれはそれなりに野性的で魅力的であるのですが、エレガントではありません。」(6)
よく、バレエの先生にも、「首を長くしてー!」とか、「もっとなで肩に!」とか注意をうける。そして、「バレエにはテクニックももちろん大事だけれど、ここら辺の表現も大事」と、胸から上を指しながら言われることもある。
 やはりこの首から肩にかけての美しいラインはバレエ特有のものと言える。たしかにスポーツ選手は、肩まわりの筋肉が鍛えられているため、すごく盛り上がって見え、首が短く見える。どことなく猫背に見えてしまうときもある。
バレエをやっている人の中には、すごく華奢な人もいれば私のようながたいのしっかりした人もいる。けれど、骨格に関係なく、レッスンによって肩と首、これは間違いなくみんなきれいだ。痩せている人はもちろんのことだけれど、多少太っている人でも胸から上はきれいで、前から見れば鎖骨が目立つし、横から見れば、首がまっすぐたっていて、後ろから見れば、肩と肩胛骨がおりていて、首が長くみえる。斜めの角度から見ればうなじ美人にもなれる。


・全身の美しさ

もちろんダンサーの肉体が美しいのはこれだけではない。肩から首はあくまでもパッと見てとときに一番目立つところなのである。胸から下だって、もちろん美しい。
 バレエを踊るには、アライメント(体の中心となる軸)がしっかりしていないといけない。常に体の芯がまっすぐでないとだめなのである。そのためには、ボディ、いわゆる上半身がまっすぐ引きあがっていないとなのだ。背中をまっすぐに、そして胸も反り返らないように、猫背はもちろん、逆のそりすぎもいけない。前にも後ろにも、右か左どちらかにも、上体がぶれないように、体を引き上げて踊るようにするため、肉体は引き締まり、まっすぐなからだになる。
脚はどうだろうかノ脚のかたち、筋肉のつき方にはかなり個人差があるが、ダンサーの脚がすらっとまっすぐしなやかに伸びているのは、これもまたバレエ特有の動き、クラシックバレエをやるにはとても重要なこと、アン・ドゥオールをしなければならないからである。
 アン・ドゥオールというのは、ターン・アウト、つまり外に開くことで、バレエダンサーは踊るときに、脚を外に開いている、アン・ドゥオールをしている。アン・ドゥオールをしっかりおこなうには、股関節のストレッチ、内ももの筋肉がかなり重要になってくる。
 股関節をしっかりストレッチするということは、すごくいいことで、前にテレビを見ていたら、ダイエットにいい相撲のポーズがある、と言っていた。私はその時点でピンときた。それはバレエの二番ポジションのグランプリエだ。これはどういう動きかと言うと、足を肩幅より広くとり、つま先と膝をなるべく外に向けて立つ。そのまままっすぐ下へ膝を曲げながら腰を落とす、というバレエのレッスンのほんとにはじめにやるものなのだけど、これがまっ先に私の頭に浮かんだ。相撲でも土俵入りのときに、バレエの二番ポジションのグランプリエと同じ構えをしてる、と思ったのである。
 正解は、私の考えた通りだった。これは相撲では「腰割り」と言うらしい。股割りは有名だけど、腰割と言う言葉は初めて聞いたし、構えにもそんな名前がついていることにも驚いた。
そして、この腰割りの格好が、股関節がストレッチされ、血行が良くなり、リンパに刺激を与え、新陳代謝が良くなると言うのだ。テレビで腰割りを視聴者にすすめていた。
 これを、基礎としておこなうクラシックバレエは、やっぱり理にかなっていることに気づかされる。そして、グランプリエで大事なのは、膝とつま先が外を向いていて、同じ方向を向いていること、足の小指側が浮かないこと、おしりが突き出ないこと。みているほうからすれば、シンプルな動きなのに、すごく注文が多い。これをやろうとすると、脚の内側の筋肉を使うし、しっかりストレッチもされてなければいけない。
ももの内側は、日常ではほとんど使われることはない。だからすごくたるみやい。アン・ドゥオールに欠かせないももの内側の筋肉を使うことにより、バレエダンサーの脚はすらっと引き締まる。バレエではももの前側の筋肉を使うことはほとんどないため、前からみたときに脚が太くみえることもない。それで、バレエダンサーの脚は、まっすぐしなやかなラインになるのだ。
 これで、バレエダンサーの肉体は全体的に美しくなることが出来る。
 しかし、間違ったレッスンをすれば、逆に変な筋肉のつきかたもしてしまう場合もある。それに、レッスンのときだけ頑張れば言い訳ではない。普段から、姿勢、歩き方、しぐさ一つ一つに気を配らなければ、バレエダンサーのからだはつくれない。
逆に言えば、普通の人でも、日常の意識や、多少のトレーニングをすることや努力によって、バレエダンサーのように踊ることは出来なくても、姿勢が良くなったり、引き締まった美しいからだに近づけることが出来るとも言える。何も、バレエダンサーのからだだけが美しいと言うのではなく、バレエのレッスンは、美しいからだをつくるためにとてもいいことだと言いたい。
 プロのバレエダンサーのからだは、よく見ると、細いだけでなく、しっかりとムダのない筋肉もついている。それが美しさを演出しているとも言えるだろう。

 
ダンサーの肉体はみられるもの

しかし、私が思うのは、バレエダンサーの肉体が美しいのは、もちろん、クラシックバレエのレッスン、トレーニング、は大きく影響を与えている。けれど、もう一つ、ダンサーの肉体がスポーツ選手などと違う美しさをもっているのには大きな理由が存在すると思う。
それは、ダンサーというのは、みられるものだからだ。もちろん、スポーツでも、観客のいるスポーツはたくさんある。けれど、スポーツ選手などの体は、決して人にみせるためにあるのではない。その種目をやるのに必要な筋肉が鍛えられ、それに応じた肉体になっていく。なぜ鍛えるのかは、目にみえた結果、数値、など記録を残すためである。だから、それぞれスポーツ特有の体つきなる。
ダンサーにも、もちろんコンクールや大会、といった順位の出るものもあるが、ほんとうの目的は、踊ることによって観ている人を惹きつけ、感動させ、楽しませることである。それはスポーツのような数字の記録では表せない。ダンサーの肉体は、みせるためにあるのである。
ダンサーは人にみられるために肉体が磨かれる。そして、人にみせることによっても、磨かれる。これは、芸能人にも同じことが言える。
 よく、デビューしたての芸能人をみて、あまりぱっとしない人だな、芸能人にしてはそこまできれいってほどでもないな、と思ったことがあるかもしれない。けれど、だんだんとみていくうちに、きれいになっていったり、かっこ良くみえたりしてくることある。これがまさに、みられる、ということがもたらす効果なのである。
 芸能人になればたくさんの人にみられることが仕事になる。そのために芸能人たちは、自分をきれいに、かっこ良くみせようと思い自分を磨く努力をする。 そしてたくさんの人にみられ少しずつ人気が出てくる。 そこで自分に自信がつき、いっそう輝いて美しさがます。芸能人はこのような相乗効果で、普通の人にはない、美しさ、そしてオーラをもっているのだ。
 元プロ野球選手の新庄剛志、私は、彼はスポーツ選手というよりもパフォーマーに近いと思っていた。私はあまり野球に詳しくないが、彼のことはすごく好きだ。あるニュース番組で、2006年、「スポーツ選手、オブ・ザ・イヤー」というもので、1位をとっていた。ちなみに2位はフィギュアの浅田真央だった。彼の人気は、全国的に広がっている。       
彼の試合でやるパフォーマンスはおもしろかったし、あそこまで自分に自信をもてるというのもかっこ良く、気持ちがいい。そして彼の体はすごく鍛え上げられていて、下着のコマーシャルもやるほどだ。
そんな彼がある時テレビで、「みせるための筋トレ」と言っていた。彼は、自分の肉体が、野球をやるために鍛えていたというのではなく、みせるためだというのだ。これは、ダンサーと同じだ、と思い、はっとしたけれど、彼なら言うのもわかる、とすごく納得もした。
バレエダンサーは、基礎をしっかりとしたレッスンにより無駄のないからだをつくり、さらに、人にみせる、みられる、というためにつくりあげてられていく。たくさんの要素によりスポーツ選手でもなく、芸能人でもない肉体の美しさ、まさに芸術的な美しさがある。
ダンサーに肉体は、みせるためにあるから美しい。


ダンサーのダイエット

バレエをやっていると、日頃から体を動かしていっぱい汗をかいているからやせやすい、と言われることが多いけど、実際はどうなんだろうかノ。多分、逆だと思う。小さい頃から、あまりにも、ハードな練習量をこなし、たくさん体を動かしているため、適応力がついている。だから、普通の人がやるダイエットは絶対にやせないと思う。私も実際そうだったから。バレエダンサーには、一般の人よりも過酷なダイエットが強いられる。
ダンサーがダイエットをするのは難しい。日々のレッスンで身体に抵抗力がついているため、普通の人が1ヶ月マイナス3キロ減量を目標としたメニューを、ダンサーがこなしても個人差はあるけど、おそらく、減量はほとんど望めない。
 成人女性に必要な1日のカロリーが約1800キロカロリーとして、これをダイエットする場合は、1日の摂取カロリーを1200〜1300キロカロリーにしてもらい、それに週2回のトレーニングを加える。
  これが私のいるスポーツクラブで教えているダイエット方で、これをしっかり守って続ければ、2ヵ月で、マイナス5〜6キロ減量できる計算になる。
1日1200キロカロリーと聞くと、すごく少ないように思えるかもしれないけど、食品を上手く組み合わせて食べれば、意外に結構食べれるものだったりする。だからこそ、1日に1200キロカロリーくらいの摂取量にすることは、ダンサーの身体にとっては、大した制限にはならないかもしれない。実際私が舞台前には、1日1000キロカロリーくらいしかとってなくて、毎日のように稽古をしていたけど、2キロくらいしか減量出来なかった気がする。
じゃあどうやって痩せればいいのか。と言うのが問題になってくる。最初から太らないのが一番いいに決まってるけど、舞台の間際になって焦るのではなくてもっと期間に余裕をもって少しずつ減量できるのがいいけど、実際はそんなにうまくはいかないもので、年頃になるとやっぱり体重は増加してしまうし、ダイエットをしようとしても、半年、1年も続けようと思うと、飽きてしまうことだってある。
ダイエットにあてる期間は2〜3ヵ月くらいがベストだと思う。何か舞台があったりするなら、半年前くらいからウェイトを気にしつつ、3ヵ月前くらいから、本気モードでダイエットをしていくのがおすすめ。本番1ヶ月をきったら、あまり意識しなくても私は自然に少し体重が減って軽くなるので、ダイエットすることよりも、体調管理や、身体のケアなどのほうに気を使うようにしている。1ヶ月をきると自然に体重が減るのは、本番2〜3ヵ月前に行った食事制限が、その頃になって結果があらわれてきているんだと思う。


・わたしのダイエット

では、どうやってダイエットをしていくのか、私の経験を踏まえたうえで話したいと思う。
よく、普通の人には、痩せたいなら運動しなさい、と言うけれど、ダンサーなんてそんなものはとっくに、普通の人の何倍もやっている。むしろ暇さえあれば踊っています、くらいの感じだと思う。となると、やっぱり痩せるには食事をコントロールするしかない。私は、高校3年生の春休みから、大学入学にかけて、一気に5キロくらい太ってしまったことがあった。原因はただ単に食べ過ぎだったのだろうけど、食べ過ぎには精神的なストレスが自分の中に何かあったんだと思う。大学に入って、何度もダイエットをやろうとしたけど、環境がかわって、いろいろなストレスが自分にかかり、それに痩せなければ、というプレッシャーが加わり、余計に太ってしまった。そうこうしているうちに夏休みに入っり、大学から解放されて、気持ちを入れかえて、もう一度ダイエットをちゃんとやろう、と自分の中で決心した。
夏休みになるとやっぱり夜更かしをしてしまうもので、朝起きるのが遅くなった。そこで私はかなり遅い朝食だけど、だいたいいつも果物とか、果物の入ったゼリーなどを食べていた。これがだいたい200キロカロリー。そして午後になるとレッスンかバイトに行く時間になる。レッスンの前には意識的に炭水化物をとるようにした。おにぎりとかパンを食べてから踊るようにしていた。カロリー的にはおにぎりの方が低くていいと思う。ただ食べすぎるとお腹が重くなって踊れなくなるので注意。食べたとしても2個まで。パンは、カロリーが高いので絶対に1個までと自分の中で決めていた。
なぜ、踊るまえに炭水化物を食べた方がいいかと言うと、空腹のまま、踊っていても何もエネルギーとして消費されていない気がする。空腹で踊った後に、体重を計っても全然減っていないことが多いし、何で食べてないのに減らないんだろう、と言うストレスで一気に暴食してしまうおそれもある。だからレッスン前には何か食べるようにしている。実際、運動をしたりする前には、何かエネルギー源となるものを摂取してあげた方が、食べたものがエネルギーとなりからだの代謝があがるらしい。
 もちろん、レッスンが終わった後は、水分しかとっていなかったから、平均すると1日約600〜800キロカロリーのくらいしか、ダイエットしていた間は食べていたなかった。今思えば、よくそんな生活が出来たな、と思うけど、そのときは全然苦にはならなかった。多分、夏休みで学校に行かずに、自分の好きなバレエばっかりやっていたからだと思う。何か舞台が近かったわけでもなく、ストレスが何もかかっていなかったので、ダイエットがやりやすかったのだと思う。ダイエットをするには、そのとき自分がおかれている環境もとても大事だということに気づいた。
結局、2ヵ月の間で、体重が5〜6キロ落ちた。普通の人がそのときの私と同じことをしたら、倍くらいの体重が減っていたと思う。
このダイエットをして、1番大事だと気づいたことは、夜遅い時間に食べない。これだと思う。レッスンの前、5時か6時くらいにおにぎりを食べたら、ダイエットしている間はそのあと一切食べなかった。これが1番効いたはず。あとはお菓子を我慢すること。朝に果物を食べれば、糖分はとれているから、お菓子は必要ない。やっぱりお菓子はダイエットの天敵だった。夜遅い時間に食べないことと、お菓子を我慢することはダイエットしたい人誰にでも言える。普通の人だったらこれをするだけで、すぐに効果があらわれる場合もある。ダンサーはこれに加わり普通の人がカロリーをけずる努力を何倍もしなければならない。もしかしたら普通の人の半分しか食べなくても体重がなかなか落ちないこともある。


・プロ、ではない

東京バレエ団上野水香は、昔、8キロ太ってしまったことがあると言っていた。それを1ヶ月で戻したらしい。どうやったのかというと、ほとんど絶食で、休憩のときもじっと目をつぶって極力体力を使わないようにしていたという。ちなみに、上野水香の現在のプロフィールは、身長170センチ、体重45キロである。
 これを聞いたとき、自分でもってみようと思ってみたけど、やっぱり無理だった。これはプロのバレエダンサーだからできることであるのだと実感した。私たちのような、普段学校や仕事があるような立場にいる場合は不可能なのである。いくら体に抵抗力がついているとは言え、1ヶ月絶食は絶対にむりだ。
やっぱり普段日常生活で、友達や家族といるとき、おいしいものをたくさん食べたくなるときがある。そんな時は、みんなで楽しくたくさん食べて、精神的にも安定させることが大事だ。
 前にどこかで、ひとりで食べるよりも大勢で食べた方が太らないというのを聞いたことがある。これは本当に当たっている気がする。ひとりで食べるときは、ひたすら無言で食べつづけるだけだけど、大勢と食べれば楽しくなり、会話がはずむ。そうすると、カロリーも消費している気がするし、何でこんなたくさん食べてしまったのだという罪悪感も少ない。バレエ友達一緒だったら余計にそうだ。そしたら次の日からまた頑張ろうと気持ちを切りかえることだってできるし、楽しかったあとなら、翌日食事を抑えることだって、精神的な苦にもならない。
 普段、たくさんレッスンをして体を維持しようとする力がつくということは、痩せにくくもあるけど、普通の人より太りにくいということも言えると思う。
バレエをやっていたって、ダイエットをしていたって、たまにはごほうびをあげることも大事だ。
レッスンによって鍛え上げられた身体には、良いこともあればその分リスクもある。ダンサーは、本当に自己管理が大切だ。そして普通の人とは違うことを常に理解していかなければならない。


クラシックバレエの条件

 クラシックバレエというものは、華やかにみえるが、とても厳しい世界で、私のように地元のスタジオでお稽古事としてやっていても、酷使されることがたくさんある。それが、プロのバレエダンサーとなればその重荷はさらにいっそう増すことになる。
全くバレエを知らない人の、バレエダンサーのイメージと言えば、細い、という言葉が必ず出てくるが、その想像をはるかに超えるほど、プロのバレエダンサーのからだは、ほんとにみんながびっくりするほど痩せている。普通の人からみたら、もっと脂肪をつけた方がいいと思うだろうし、一般的に言われる、「健康美」とはかなりかけ離れているとも思う。けれども、それがプロのバレエダンサーの条件であり、痩せていることが絶対で、第一条件であると言っても過言ではない。
 なぜ、そんなに痩せていることが大事なのだろうか。それはもちろん見た目がきれいだからである。もしバレエダンサーが太っていたらノきれいではないし、やっぱり観客はがっかりする。バレエ公演のチケットは決して安いとは言えない。せっかくお金を払ってみるのに、主役のダンサーが太ってたりしていたらあんまり観たいとは思わないはずだ。
そして、この痩せているということは、身長や顔の大きさ、手足の長さなどの骨格などではなく、自身の努力さえあれば、やせることは誰にでもできるとみなされるので、余計に重要視されるのだと思う。
クラシックバレエの最大の特徴、ほかのダンスにみられないものと言えば、これもクラシックバレエのイメージとして出てくるつま先立ち、トウシューズだ。つま先で立って踊る、ということが、クラシックバレエのメーンというか魅力である。つま先で立つということは、そこに自分の全体重がかかることになる。だとすると痩せているほうがそれだけつま先にかかる体重は軽くなり、足への負担も少なくなる。負担がかかると、故障の原因にもなるし、無理に踊ろうとして、脚にバレエに必要のない筋肉もついてしまう可能性も出てくる。
 さらに、つま先へかかる重さは、身長と体重のバランスではなく、体重全てがそのままつま先にかかるので、身長の高い人は、低い人よりも痩せることにたいして高い意識を持っていなければいけないということにもなる。
痩せているほうが、見た目がきれいで軽やかにになるわけでもなく、実際にも軽やかな踊りをこなすことができる。ジャンプひとつにしても、軽いほうがたかく飛べるのは当たり前のことである。体重が重ければ、男性と組むときに、パートナーに支えられることも、もってもらうこともできない。逆に軽ければ、パートナーのサポートのおかげで、普段の自分の実力よりも数倍上手くみせることだってできる。
そして何より、痩せていることによってカバーできることがたくさんある。手足が多少短くたって、細ければ長くみえる。体型のコンプレックスはほとんど気にならないくらいにできるはずだ。同じテクニックの持ち主なら、スタイルのいいほうに目にいくし、きっと上手く見えるのではないかと思う。逆にテクニックはあるのに太っているバレエダンサーがいたら、すごく残念でもったいないことだ。バレエをやるにあたってテクニックは当然だけど、痩せていることによって、技量をアップさせてみせたり、苦手な部分も目立たさなくすることできる。
痩せているということは、見た目だけの問題でなく、バレエを踊る、ということにもたくさんの影響を与える。
 海外のバレエ学校などでは、入学する生徒の身体だけでなく、親、さらには祖父母もみるという。祖父母が肥満だと、遺伝でその子も将来的に肥満になる確率が高いからである。
 生徒たちは、太っているかどうかだけではなく、胴や脚の長さ、顔の輪郭、歯並びまでもそれぞれ厳しいチェックをうける。
 入学してから太ってしまうと生徒たちはには減量が強いられる。それが出来なければ、残念なことに、退学させられてしまう。成長段階にある子どもたちに、減量をさせることは、精神的にも苦痛だし、健康面でも危険はいっぱいあると思う。 けれど、それが出来なければ、プロとしてやっていけないということになる。
 痩せていることが、クラシックバレエの全ててはないが、それが、全てを左右する場合もあるということである。
 
・アン・ドゥオール

 クラシックバレエでは日常ではやることのない動きをたくさんする。その中でもっとも大切であり、基礎なのがアン・ドゥオールである。アン・ドゥオールはバレエ用語で、フランス語で、外へ、という意味である。英語で言えばターン・アウトだ。
 バレエでは、両脚がしっかりアン・ドゥオールされてなければいけない、両脚が外側に開いていなければいけない。これがバレエの基本ポジションなのである。
なぜ、アン・ドゥオールが基本ポジションなのかは、きちんと理由がある。本に書いてあったのは、
 「舞台が横に長く広がっているために、横への移動をスムーズにし、観客に横への広がりを見せる必要性から生まれたとあります。それからもうひとつ言えるのは、本来、人にとって不安定なはずのアン・ドゥオールで立つことは、バランスがとれるちょうどよいポイントをつかむことになるということです。逆に言えば、そのポイントさえつかめていれば、鏡を見なくても、正しいポーズが再現可能になるわけです。客席に鏡はありません。自分の姿を確認することはできないのです。ダンサーには、アン・ドゥオールの状態でも、人が普通に立っているのと同じくらいの安定性があることが重要なのです。」(7)
 たしかにクラシックバレエの舞台は横に広いから、横移動が多い。そして、舞台には鏡もなければつかまるバーもない。だから、自らのからだにバランス感覚がなければならない。そのために、不安定なはずのアン・ドゥオールを、もっとも安定するポジションにさせなければいけないのだ。そして、正しいアン・ドゥオールというのは、
 「つま先と足首、膝、股関節、そして骨盤の高い位置、肩、耳のラインまですべて一直線上にある状態」のことを言う。 しかし、これが完璧にできる日本人はほとんどおらず、生理的には180度まで開くのには無理があるという。
 実は、私はこの正しいアン・ドゥオールをしようとすると、180度どころか、90度すら危うい。私はもとから脚が内側に向いているため、つま先とつま先を180度開こうとすると膝から上がつま先と同じ方向を向かずに、内側にねじれてしまう。さらにおしりもうしろに出てしまい、出っ尻状態になってしまうのだ。これは典型的な間違ったアン・ドゥオールのやり方だ。ほかにも、つま先、膝、骨盤は外に開かれてるが、おしりが下に落ちて、猫背っぽくなるタックイン状態と言われるものもある。
そして、このアン・ドゥオールが正しくできていないとどういうことが起きるのか。まずは、舞台を大きく使うための横移動がしにくくなる。さらには、間違った使いかたで、筋肉への負荷がたくさんかかり、脚のかたちどころか、アライメント、がくずれ、でこぼこしたからだになってしまう。
 そして何より、ケガの恐れがある。これはどういうことかと言うと、高くジャンプをして、着地するときに、内股で床に降りることを想像してみてほしい。考えただけでもおそろしくなる。足は、内側にはどこまでもまわってしまうため、着地のときなどにアン・ドゥオールを意識しないと、足首が内側へねじれ、ひねってねんざをしてしまう。それを、アン・ドゥオールがしっかりできていれば、外側へ開くのには限界があるため、変にひねってしまうようなことはない。
 私のような脚は、アン・ドゥオールをするために必要な筋肉が欠けているため、それをつける必要がある。あとは、バレエに適した脚をつくるのには、ストレッチも必要だ。それから、自転車には乗らないほうがいいとかも言われるし、正座や脚をくむことも、バレエダンサーにとってははよくないことだ。
生まれもった骨格はそれぞれだが、それにあったトレーニングをし、正しいアン・ドゥオールに近づけていくことが、クラシックバレエのテクニックのレベルをあげ、表現の幅も広げることになる。

ダンサーとケガ

 スポーツ選手もそうだが、ダンサーにもケガはつきものだ。わたしも、ケガというものを経験してきた。ダンサーのケガについては、このようなことが書かれている。
 「ダンサーの怪我にはいろいろと原因はありますが、事故によるものをのぞいては、正しいアン・ドゥオールができていないためです。すなわち、関節も正しく使われていないのです。正しく筋肉がついている人は怪我をしにくい。ですから、ダンサーの怪我というのは、じつはダンサーの身体になりきれていない人の怪我だと言うことができます。
 ただ、正しい使い方のできていない人でも、ある程度までは、感性や運動能力によって動くことができます。ですが、そういう人はひとつの作品を長いあいだ練習してきて、感性が間近というときに大きな怪我をしてしまう。身体のなかに作品が入りこんで、体力的にも精神的にもうまく対応できる段階になって、関節に異常が起きているという場合がとても多く見られます。」(8)
 そして、ダンサーに多い怪我と障害というのが、

 ・腰痛
 ・膝の痛み
 ・足首のねんざ
 ・外反母趾による痛み
 ・脚の関節の腱鞘炎
 ・首の障害
 ・肩こり
 ・股関節の痛み

 だという。私はこの中の腰痛、足首のねんざ、を経験した。しかも理由もずばりなのだ。
 足首のねんざは、正しいアン・ドゥオールができていないためだった。普段から、ジャンプの着地のときなどに、私は脚がアン・ドゥオールとは逆のアン・ドゥダン(内側の意味)に入ってしまうため、先生によく、「えりこ日舞あしー!!」など言われる。なのでジャンプのときはアン・ドゥオールを意識しようとしているのだか、私が足首をねんざしてしまったのは、まわるときだった。まわるときに、まわろうという意識が先行し過ぎてしまい、まわる瞬間、立ち上がるときに、軸足へのアン・ドゥオールの意識がうすれ、内側へひねってしまい、ボキッ、とかなりいい音をたて、そのままねんざしてしまった。
 それはもうものすごく痛くて、立ってることさえもできなかった。患部をアイシングしたけど、足首が相当腫れた。そのとき、私はどうしても踊らなければならない状況にあり、治療に専念することができず、全治2ヶ月くらいかかった。あのとき初めて、アン・ドゥオールすることが大事だと思い知らされ、正しいポジションをとらないことが引き起こすケガの恐ろしさを知った。
 腰痛については、本番2〜3ヶ月くらいまえから、腰の痛みを感じていたのだが、私はもとから背中が柔らかく、腰が痛くなることがあるため、あまり気にしなかったが、本番1ヶ月まえをきり、作品が仕上げ段階に入ったというのに、突然腰の痛みが今までに感じたことのない痛みにかわ

ダンサー(バレエダンサー)の肉体ー続きー

・バレエダンサーの肉体は美しいー続きー

 しかし、私が思うのは、バレエダンサーの肉体が美しいのは、もちろん、クラシックバレエのレッスン、トレーニング、は大きく影響を与えている。けれど、もう一つ、ダンサーの肉体がスポーツ選手などと違う美しさをもっているのには大きな理由が存在すると思う。
それは、ダンサーというのは、みられるものだからだ。もちろん、スポーツでも、観客のいるスポーツはたくさんある。けれど、スポーツ選手などの体は、決して人にみせるためにあるのではない。その種目をやるのに必要な筋肉が鍛えられ、それに応じた肉体になっていく。なぜ鍛えるのかは、目にみえた結果、数値、など記録を残すためである。だから、それぞれスポーツ特有の体つきなる。
ダンサーにも、もちろんコンクールや大会、といった順位の出るものもあるが、ほんとうの目的は、踊ることによって観ている人を惹きつけ、感動させ、楽しませることである。それはスポーツのような数字の記録では表せない。ダンサーの肉体は、みせるためにあるのである。
ダンサーは人にみられるために肉体が磨かれる。そして、人にみせることによっても、磨かれる。これは、芸能人にも同じことが言える。
 よく、デビューしたての芸能人をみて、あまりぱっとしない人だな、芸能人にしてはそこまできれいってほどでもないな、と思ったことがあるかもしれない。けれど、だんだんとみていくうちに、きれいなっていったり、かっこ良くみえたりしてくることある。これがまさに、みられる、ということがもたらす効果なのである。
 芸能人になればたくさんの人にみられることが仕事になる。そのために芸能人たちは、自分をきれいに、かっこ良くみせようと思い自分を磨く努力をする。 そしてたくさんの人にみられ少しずつ人気が出てくる。 そこで自分に自信がつき、いっそう輝いて美しさがます。芸能人はこのような相乗効果で、普通の人にはない、美しさ、そしてオーラをもっているのだ。
 元プロ野球選手の新庄剛志、私は、彼はスポーツ選手と言うよりもパフォーマーに近いと思っていた。私はあまり野球に詳しくないが、彼のことはすごく好きだ。試合でやるパフォーマンスはおもしろかったし、あそこまで自分に自信をもてるというのもかっこ良く、気持ちがいい。そして彼の体はすごく鍛え上げられていて、下着のコマーシャルもやるほどだ。
そんな彼がある時テレビで、「みせるための筋トレ」と言っていた。彼は、自分の肉体が、野球をやるために鍛えていたと言うのではなく、みせるためだと言うのだ。これは、ダンサーと同じだ、と思い、はっとしたけれど、彼なら言うのもわかる、とすごく納得もした。
バレエダンサーは、基礎をしっかりとしたレッスンにより無駄のないからだをつくり、さらに、人にみせる、みられる、というためにつくりあげてられていく。たくさんの要素によりスポーツ選手でもなく、芸能人でもない肉体の美しさ、まさに芸術的な美しさがある。

ダンサー(バレエダンサー)の肉体

ダンサー(バレエダンサー)の肉体


・バレエダンサーの肉体は美しい


 肉体にかなりこだわりのある私は、今までいろんな人のあらゆる肉体を見てきた。そのたびにこの人はこんな体つきだ、とか、この人のここが素敵、ここが残念。この人絶対体脂肪少ない。とか、他人のからだをみるたびに毎回自己分析をしてしまう。その度に思うことは、ダンサーの肉体は美しい。その中でもとくにバレエダンサーの肉体というのは群を抜いて素敵だ。
 これは、自分がバレエをやっているからそう言っているのではなく、客観的に見て、そう思う。街を歩いていても、この人バレエをやっているな、と言うのは結構わかるし、全くバレエをやったことのない普通の人でも、きれいな人をみて、この人バレエとかやってそう…とか、バレエとまでは断定はできずとも、何か特別なことをやっているな、と思ったことはあると思う。
私も、よく他人に、「バレエをやっている」と言うと、だから姿勢がいいんだねと言われるし、「姿勢いいよね」と言われて、「バレエやってるので…」と答えると、「やっぱり!!」となることがある。
 なぜ、そんなに周りに気づかせることが出来るのか。別にその人の前で突然踊ったりする訳でもなく、髪だって普段はおだんごにしていない。バレエダンサーの肉体が美しいからと言って、普段裸でいるわけでもないし、レオタードだって着ていない。なのにどうしてバレエやってる人ってわかるんだろう…と言うかなぜ目立つんだろうか。
そこに隠されたものは、前の文章に出てきた「姿勢」なのだ。姿勢がいいとそれだけで目がいく。ついその人を見てしまう。そこで、この人姿勢がいいな、と言うことに気づく。どこをみて、姿勢がいいかと思わせているのかと言うと、胸から上、とくに肩と首だ。
 バレエダンサーは基礎のバーレッスンによって、肩と首は美しく鍛え上げられる。人は、他人を見るときまず最初に相手の顔を見ることが多いはず。脚を最初に見る、という人はあまりいないはずだ。顔を見ようとすれば、自然と首から肩にかけてのラインは目にとびこんでくる。そのときに、バレエダンサーをみて、姿勢がいい、とか、きれいだ、とか思ったりするのだ。
バレリーナのヘルスケア」と言う本を読んだら、こんなことも書いてあった。「ひきしまった体、ほっそりした脚と言うのは、エステやエアロビクス、水泳で得られるでしょう。でも、女性の誰もがあこがれる、美的でエレガントな体のなかで、バレエや舞踊でしか得られるないものがあります。細く長いくびと、なだらかな肩です。これだけは、水泳やエアロビクスで体脂肪率をどれほど減らそうとも、筋肉をきたえようとも、得られないものです。また、エステでくびのまわりをマッサージしてもらうのは爽快ですが、それで形がかわるものではありません。〜中略〜運動選手に多く見られる短いくびは、肩があがっているのではなく、肩やくびのまわりの筋肉がきたえあげられて筋肉が大きくなるのです。見方によればそれはそれなりに野性的で魅力的であるのですが、エレガントではありません。」
よく、バレエの先生にも、「首を長くしてー!」とか、「もっとなで肩に!」とか注意をうける。そして、「バレエにはテクニックももちろん大事だけれど、ここら辺の表現も大事」と、胸から上を指しながら言われることもある。
 やはりこの首から肩にかけての美しいラインはバレエ特有のものと言える。たしかにスポーツ選手は、肩まわりの筋肉が鍛えられているため、すごく盛り上がって見え、首が短く見える。どことなく猫背に見えてしまうときもある。
バレエをやっている人の中には、すごく華奢な人もいれば私のようながたいのしっかりした人もいる。けれど、骨格に関係なく、レッスンによって肩と首、これは間違いなくみんなきれいだ。痩せている人はもちろんのことだけれど多少太っている人でも胸から上はきれいで、前から見れば鎖骨が目立つし、横から見れば、首がまっすぐたっていて、後ろから見れば、肩と肩胛骨がおりていて、首が長くみえる。斜めの角度から見ればうなじ美人にもなれる。
もちろんダンサーの肉体が美しいのはこれだけではない。肩から首はあくまでもパッと見てとときに一番目立つところなのである。胸から下だって、もちろん美しい。
 バレエを踊るには、アライメント(体の中心となる軸)がしっかりしていないといけない。常に体の芯がまっすぐでないとだめなのである。そのためには、ボディ、いわゆる上半身がまっすぐ引きあがっていないとなのだ。背中をまっすぐに、そして胸も反り返らないように、猫背はもちろん、逆のそりすぎもいけない。前にも後ろにも、右か左どちらかにも、上体がぶれないように、体を引き上げて踊るようにするため、肉体は引き締まり、まっすぐなからだになる。
脚はどうだろうか…脚のかたち、筋肉のつき方にはかなり個人差があるが、ダンサーの脚がすらっとまっすぐしなやかに伸びているのは、これもまたバレエ特有の動き、クラシックバレエをやるにはとても重要なこと、アン・ドゥオールをしなければならないからである。
 アン・ドゥオールというのは、ターン・アウト、つまり外に開くことで、バレエダンサーは踊るときに、脚を外に開いている、アン・ドゥオールをしている。アン・ドゥオールをしっかりおこなうには、股関節のストレッチ、内ももの筋肉がかなり重要になってくる。
 股関節をしっかりストレッチするということは、すごくいいことで、前にテレビを見ていたら、ダイエットにいい相撲のポーズがある、と言っていた。私はその時点でピンときた。それはバレエの二番ポジションのグランプリエだ。これはどういう動きかと言うと、足を肩幅より広くとり、つま先と膝をなるべく外に向けて立つ。そのまままっすぐ下へ膝を曲げながら腰を落とす、というバレエのレッスンのほんとにはじめにやるものなのだけど、これがまっ先に私の頭に浮かんだ。相撲でも土俵入りのときに、バレエの二番ポジションのグランプリエと同じ構えをしてる、と思ったのである。
 正解は、私の考えた通りだった。これは相撲では「腰割り」と言うらしい。股割りは有名だけど、腰割と言う言葉は初めて聞いたし、構えにもそんな名前がついていることにも驚いた。
そして、この腰割りの格好が、股関節がストレッチされ、血行が良くなり、リンパに刺激を与え、新陳代謝が良くなると言うのだ。テレビで腰割りを視聴者にすすめていた。
 これを、基礎としておこなうクラシックバレエは、やっぱり理にかなっていることに気づかされる。そして、グランプリエで大事なのは、膝とつま先が外を向いていて、同じ方向を向いていること、足の小指側が浮かないこと、おしりが突き出ないこと。みているほうからすれば、シンプルな動きなのに、すごく注文が多い。これをやろうとすると、脚の内側の筋肉を使うし、しっかりストレッチもされてなければいけない。
ももの内側は、日常ではほとんど使われることはない。だからすごくたるみやい。アン・ドゥオールに欠かせないももの内側の筋肉を使うことにより、バレエダンサーの脚はすらっと引き締まる。バレエではももの前側の筋肉を使うことはほとんどないため、前からみたときに脚が太くみえることもない。それで、バレエダンサーの脚は、まっすぐしなやかなラインになるのだ。
 これで、バレエダンサーの肉体は全体的に美しくなることが出来る。
 しかし、間違ったレッスンをすれば、逆に変な筋肉のつきかたもしてしまう場合もある。それに、レッスンのときだけ頑張れば言い訳ではない。普段から、姿勢、歩き方、しぐさ一つ一つに気を配らなければ、バレエダンサーのからだはつくれない。
逆に言えば、普通の人でも、日常の意識や、多少のトレーニングすることや努力によって、バレエダンサーのように踊ることは出来なくても、姿勢が良くなったり、引き締まった美しいからだに近づけることが出来るとも言える。何も、バレエダンサーのからだだけが美しいと言うのではなく、バレエのレッスンは、美しいからだをつくるためにとてもいいことだと言いたい。

ダンサーの肉体は美しい

 はじめに 

 容姿。これは自分そのものをあらわす揺るぎない事実である。中身、中身といいつつも、見た目が重要視されるこの世の中、他人の目に映る容姿は出来るだけ美しくありたい。美しい容姿はどんなものか、なぜ人は美しいほうがよいとされるのか。究極の美をもとめる芸術、クラシックバレエクラシックバレエの美をもとに、「美」、というこの抽象的で深いものを少しでも探り、美とはこの世の中に生きる人にとって、どんなものなのかを書いていきたい。

ダンサーのダイエット

 ダンサーがダイエットをするのは難しい。日々のレッスンで身体に抵抗力がついているため、普通の人が1ヶ月マイナス3キロ減量を目標としたメニューを、ダンサーがこなしても個人差はあるけど、おそらく、減量はほとんど望めない。
 成人女性に必要な1日のカロリーが約1800キロカロリーとして、これをダイエットする場合は、1日の摂取カロリーを1200〜1300キロカロリーにしてもらい、それに週2回のトレーニングを加える。
  これが私のいるスポーツクラブで教えているダイエット方で、これをしっかり守って続ければ、2ヵ月で、マイナス5〜6キロ減量できる計算になる。
1日1200キロカロリーと聞くと、すごく少ないように思えるかもしれないけど、食品を上手く組み合わせて食べれば、意外に結構食べれるものだったりする。だからこそ、1日に1200キロカロリーくらいの摂取量にすることは、ダンサーに身体にとっては、大した制限にはならないかもしれない。実際私が舞台前には、1日1000キロカロリーくらいしかとってなくて、毎日のように稽古をしていたけど、2キロくらいしか減量出来なかった気がする。
じゃあどうやって痩せればいいのか。と言うのが問題になってくる。最初から太らないのが一番いいに決まってるけど、舞台の間際になって焦るのではなくてもっと期間に余裕をもって少しずつ減量できるのがいいけど、実際はそんなにうまくはいかないもので、年頃になるとやっぱり体重は増加してしまうし、ダイエットをしようとしても、半年、1年も続けようと思うと、飽きてしまうことだってある。ダイエットにあてる期間は2〜3ヵ月くらいがベストだと思う。何か舞台があったりするなら、半年前くらいからウェイトを気にしつつ、3ヵ月前くらいから、本気モードでダイエットをしていくのがおすすめ。本番1ヶ月をきったら、あまり意識しなくても私は自然に少し体重が減って軽くなるので、ダイエットすることよりも、体調管理や、身体のケアなどのほうに気を使うようにしている。1ヶ月をきると自然に体重が減るのは、本番3〜2ヵ月前に行った食事制限が、その頃になって結果があらわれてきているんだと思う。
では、どうやってダイエットをしていくのか、私の経験を踏まえたうえで話したいと思う。
よく、普通の人には、痩せたいなら運動しなさい、と言うけれど、ダンサーなんてそんなものはとっくに、普通の人の何倍もやっている。むしろ暇さえあれば踊っています、くらいの感じだと思う。となると、やっぱり痩せるには食事をコントロールするしかない。私は、高校3年生の春休みから、大学入学にかけて、一気に5キロくらい太ってしまったことがあった。原因はただ単に食べ過ぎだったのだろうけど、食べ過ぎには精神的なストレスが自分の中に何かあったんだと思う。大学に入って、何度もダイエットをやろうとしたけど、環境がかわって、いろいろなストレスが自分にかかり、それに痩せなければ、と言うプレッシャーが加わり、余計に太ってしまった。そうこうしているうちに夏休みに入っり、大学から解放されて、気持ちを入れ替えて、もう一度ダイエットをちゃんとやろう、と自分の中で決心した。
夏休みになるとやっぱり夜更かしをしてしまうもので、朝起きるのが遅くなった。そこで私はかなり遅い朝食だけど、だいたいいつも果物とか、果物の入ったゼリーなどを食べていた。これがだいたい200キロカロリー。そして午後になるとレッスンかバイトに行く時間になる。レッスンの前には意識的に炭水化物をとるようにした。おにぎりとかパンを食べてから踊るようにしていた。カロリー的にはおにぎりの方が低くていいと思う。ただ食べすぎるとお腹が重くなって踊れなくなるので注意。食べたとしても2個まで。パンはカロリーが高いので絶対に1個までと自分の中で決めていた。なぜ、踊るまえに炭水化物を食べた方がいいかと言うと、空腹のまま、踊っていても何もエネルギーとして消費されていない気がする。空腹で踊った後に、体重を計っても全然減っていないことが多いし、何で食べてないのに減らないんだろう、と言うストレスで一気に暴食してしまうおそれもある。だからレッスン前には何か食べるようにしている。実際、運動をしたりする前には、何かエネルギー源となるものを摂取してあげた方が、食べたものがエネルギーとなりからだの代謝があがるら
しい。
 もちろん、レッスン終わった後は、水分しかとっていなかったから、平均すると1日約600〜800キロカロリーのくらいしか、ダイエットしていた間は食べていたなかった。今思えば、よくそんな生活が出来たな、と思うけど、そのときは全然苦にはならなかった。多分、夏休みで学校に行かずに、自分の好きなバレエばっかりやっていたからだと思う。何か舞台が近かったわけでもなく、ストレスが何もかかっていなかったので、ダイエットがやりやすかったのだと思う。ダイエットをするには、そのとき自分がおかれている環境もとても大事だということに気づいた。
結局、2ヵ月の間で、体重が5〜6キロ落ちた。普通の人がそのときの私と同じことをしたら倍くらいの体重が減っていたと思う。
このダイエットをして、1番大事だと気づいたことは、夜遅い時間に食べない。これだと思う。レッスンの前、5時か6時くらいにおにぎりを食べたら、ダイエットしている間はそのあと一切食べなかった。これが1番効いたはず。あとはお菓子を我慢すること。朝に果物を食べれば、糖分はとれているから、お菓子は必要ない。やっぱりお菓子はダイエットの天敵だった。夜遅い時間に食べないことと、お菓子を我慢することはダイエットしたい人誰にでも言える。普通の人だったらこれをするだけで、すぐに効果があらわれる場合もある。ダンサーはこれに加わり普通の人がカロリーをけずる努力を何倍もしなければならない。もしかしたら普通の人の半分しか食べなくても体重がなかなか落ちないこともある。
レッスンによって鍛え上げられた身体には、このような、なるべくカロリーを消費しないようにする力がついてしまっているため、ダンサーは、本当に自己管理が大切だ。そして普通の人とは違うことを常に理解していかなければならない。