東京バレエ団 くるみ割り人形

2021年12月24日 兵庫県立芸術文化センター
東京バレエ団 くるみ割り人形
プティパ・イワーノフ・ワイノーネン(斎藤友佳理改訂)
マーシャ:秋山瑛、くるみ割り王子:宮川新大
指揮:磯部省吾 シアターオーケストラトーキョー

 

クリスマスイブにくるみ割り人形ということで、息子と観に行ってきた。
まずなんと言っても、この作品は奇跡とか、天才とか、そういう言葉がぴったりな、とにかく素晴らしい作品。
劇場に行く喜びを凝縮した作品だ。もう見ていてワクワクし通しだった。

 

日本のバレエ団で一作品丸々を見るのは初めてだったのだが、十分に楽しめた。
しかも生オーケストラで見ることができて感謝。名だたる名曲と優美なダンスで耳と眼を楽しませてくれた。
久々に舞台を見る喜びを味わう一夜であった。

 

唯一違和感を感じたのは第一幕終わりの雪の精。合唱ではなくてボイスチェンジャーを使っているような、よくわからないが電子的な音が聞こえてきて残念だった(マイク使ってただけかもしれないが)。
演奏もテンポが速めで雑に聞こえた。

まあ、それは小さいことで、このような公演があったらまたぜひ行きたいと感じた。

PACオーケストラ 第128回定期演奏会

2021年11月28日 

ユベール・スダーン PACオーケストラ 第128回定期演奏会

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 竹澤恭子

ハイドン 交響曲第1番

シューベルト 交響曲第4番悲劇的

 

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 竹澤恭子

なんと言っても竹澤恭子のヴァイオリンである。おそらくストラディバリウスだが、輝かしい音色、豊かな響き。柔らかで優しい旋律から、ダイナミックでパンチの効いたリズムから、とにかく豊かな表現だった。オーケストラもこれまでの印象とは異なって成熟した、抑制の効いた、良い意味で芸術的な表現。庶民ぽさが全くない上等な音楽でよかった。スダーンの手腕が一発で分かった。

ハイドン 交響曲第1番

とっても軽快、軽妙で生き生きとしたハイドン。きちんとした造形を保ち品の良さもあるよい演奏だった。

シューベルト 交響曲第4番悲劇的

冒頭の序奏から響きの重厚さに驚く。一転して推進力のある演奏。スダーンの誠実な人柄が伝わってくるような、明確なフォルム、変なクセのない演奏が良かった。

PACオーケストラ 第127回定期演奏会

2021年10月24日

川瀬賢太郎 PACオーケストラ 第127回定期演奏会


ラフマニノフ

ピアノ協奏曲2番 清水和音

交響曲2番


ピアノ協奏曲は、第二楽章の夢のような世界が素晴らしかった。冒頭の管楽器とのやり取りから夢幻の世界へ。ちょっと拍が明確でない崩すような弾き方がここでは良くあっていた。第一、第三楽章も良いのだが、テンポが遅めなこともありその崩すような弾き方がちょっと気になることもあった。

アンコールの英雄ポロネーズはスケールが大きな楽しい演奏だった。ところで、このホール、ちょっと残響が長いのが気になり出した。薄いベールがかかったように聞こえる。ここは慣れるしかないのか。オペラの聞き取りはどうなのだろう。ドライな劇場に耳が慣れすぎているのかな。


交響曲2番は素晴らしかった!特に第二、第三楽章。鮮烈なリズムの第二楽章、決して甘くならず、でも甘美な第三楽章。全体のバランス、構成、オーケストラの鳴り、第三楽章の最後の一音の止め方などなど、とても良い演奏だった。もともとの曲が濃ゆいので、それをねっとりと演奏されるともう沢山となるが、川瀬は雄大さ、厚い響き、憂愁や甘さを失わず、でもスッキリとした味わいでよかった。川瀬の才能、特にオーケストラを伸び伸び演奏させる力を堪能できた。また聴きたい指揮者。

PACオーケストラ 特別演奏会

2021年10月9日 佐渡裕 PACオーケストラ特別演奏会

ベートーヴェン 交響曲4番

ベートーヴェン 交響曲7番

交響曲4番はあまり聞かない曲だが、かなり技巧的で、聴き込まないとついていけないなと思うとこがあった。他方で7番は聞き慣れていたし、ツボを抑えたとても良い演奏と感じた。第2楽章のコントラバスとチェロの語るような演奏が、だんだんと歌い上げていく様子、第4楽章の軽薄にはならずガンガンテンポを上げていくバランス感覚、終始高揚感が素晴らしかった。

前回初めてPACオーケストラ聴いたときもちょっと感じたのだが、ヴァイオリンにもう少し艶がほしいなと思った。木管楽器がなかなか色気のある演奏をするので余計にそう感じたのかもしれない。

 

PACオーケストラ 第126回定期演奏会

2021年9月19日 佐渡裕 PACオーケストラ第126回定期演奏会

イベール フルート協奏曲(工藤重典)

ブルックナー 交響曲第7番

 

久しぶりにコンサートに行ってきた。子どもが大きくなって、自分の時間が取れるようになってきた。また、人生の残りの時間を意識するようになってきて、やりたいことは積極的にやらなくてはとも思う。

 

そこで、劇場がよいを再開することにした。なんとなく都心部に行くのは気がひけるので、兵庫県立芸術文化センターにしたのだ。落ち着いたデザイン、何より大ホールでもコンパクトで良いホール。オペラやバレエも意識した作りとみた。


さて、ブルックナーの感想から。7番は生で聞きたかった曲だ。第1楽章、第2楽章の雄大な響き!しっかりとした足取りながら、着実に前進するリズム感の良さ。雄大なメロディーと熱く豊かな響きがホール全体に響いてよかった。ワグナーチューブの響きも堪能できた。

一転して第3楽章と第4楽章はテンポを上げ軽快に。全体の構成の面白さと難しさを同時に感じた。もう少し前の楽章を受けても良いかもと思った。

全体に、今後を期待させてくれる内容で、来て良かったと思わせてくれた。


前半のイベールは洒脱な小品。工藤のテクニックが冴えていた。第2楽章がよかった。アンコールは工藤にオケのメンバー2人と佐渡裕とあわせて4人でダニーボーイ。これが染み入る。

 

PACオーケストラは女性と若い人が多く活気がありそう。客層の雰囲気も自然かつリラックスしていて、音楽が生活に溶け込んでいるようだ。唯一、オーケストラとは対照的に客に若さが無いので熱狂が生まれるのか少し心配には思った。

The Road Cormac McCarthy

コーマック・マッカーシーによる小説「ザ・ロード」を読んだ。核戦争が原因と思われる大変動のあと数年経った、末期的様相を呈した地球上に生きる父と子を描いた小説。と書くとありふれた設定のありふれた小説に思われるだろうが、これはひと味もふた味も違う。


ここで描かれる地上の様子はいうまでもなく、世界の時計が止まった時刻が「1:17」であったり、唯一名前を持った登場人物がイーライだったり、背景には聖書が織り込まれているようだ。はっきりとは分からなくてもその宗教的な雰囲気は伝わってくる。マッカーシーの文体は余分な贅肉を徹底的に削り落としたもので、はりつめた静寂が全編を支配している。そして非常に叙情的である。


ほとんどの動植物が死滅した世界。人々が互いに互いを食って生き延びるしかない世界。そのなかで正しいあるいは美しい心を保って生きていけるのか?父と子は暗い空と灰に覆われた地上を、絶望的な状況の中、ひたすら死に向かって道を歩み続けている。でも、だからこそ父と子のあいだに通うもの、ほんのかすかにさす希望の光、そういったものが限りなくいとおしく美しく感じられた。そう、この小説はタルコフスキーを思い出させる。

ザ・ロード

ザ・ロード

地磁気を感じ取る牛


PNASに出た論文によると、Sabine Begallらはグーグルアースを使って牛などの草を食む動物がどんな向きで居るかを調べたそうだ。そうすると、南北方向にたたずんでいる牛や鹿が優位に多かったという。そういわれてみれば、牛ってみんな同じ方向いてもぐもぐやってる気もする。鳥や鮭は地磁気を感じ取って旅に利用していると考えられているが、牛みたいな大きな動物でも地磁気を感じ取る能力があるとなると、これは驚き。いったいどんな仕組みなのだろう。

BBC
PNAS