風に立つ(柚月裕子)★★☆☆☆ 4/13読了

問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度ーー補導委託の引受を突然申し出た父・孝雄。南部鉄器の職人としては一目置いているが、仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の思いもよらない行動に戸惑う悟。納得いかぬまま迎え入れることになった少年と工房で共に働き、同じ屋根の下で暮らすうちに、悟の心にも少しずつ変化が訪れて……。家族だからこそ、届かない想いと語られない過去がある。岩手・盛岡を舞台に、揺れ動く心の機微を掬いとる、著者会心の新たな代表作!

南部鉄器の職人として親子で働いている孝雄と悟の家に補導委託で少年を預かることになった。孝雄には悟が知らない過去があり、少年にも非行に走ってしまった訳がある。それらが何なのかをもったいつけてなかなか明かさずにやたらに引っ張るのだが、分かってしまえばそれほど意外な話でもない。かなり拍子抜けしてしまった。『孤狼の血』や『盤上の向日葵』には遠く及ばないね。

falo+(ピュウファロ)

2度目の訪問。17時過ぎの入店で、奥の4人客の隣に案内された。ここからだと窓から外がよく見える。向かいの厨房内は横前くんと竜矢くんの定位置で、今回はこの2人と色々話せた。
最初の泡はゼロ・インフィニート。濁りが美味い。塚本さんが代官山へ行っていたので、安井さんがワインを出してくれた。突き出しは長ネギ。前回酸っぱい系だったので、またその路線かと思ったら違っていた。

最初は「富山県ホタルイカとふきのとう味噌のクロスティーニ」。ふきのとう味噌が美味い。ふかしたジャガイモにぬって食べても美味いだろうな。具の量はこのままでいいからパンをもうちょっと大きくしてくれたらいいのになとちょっと思った。ワインは例によってお任せで。

次は今回食べようと思っていた「マグロ脳天とピスタチオ味噌のタルタル」。半生のマグロ脳天とかナッツとかの色々な食感と味が口の中に一気に来て、これが美味い。ナイスアイディアだね。ワインはダミアンのリボッラ・ジャッラとヴォドピーヴェッツのオリジネ。

次は「桜えびと青のりの落とし揚げ」のハーフ。falo+は揚げ物が少ないので、揚げ物があるといいなあという要望に応えてくれたようだ。ざっくりめの長芋がいい食感でこれも美味い。ワインはカンティーナ・マルゴのマグナム。

ポルケッタまでちょっと時間が掛かるということだったので、「豚のコッパのカツレツ」を追加。元々普通にコッパを出していたらしいんだけど、それをカツレツにアレンジしたとのこと。ワインはダリオ・プリンチッチのソーヴィニョン。

メインは「塊で焼いたピュウファロのポルケッタ」。前回はイノシシ肩ロースを食べたので、今回はポルケッタと決めていた。代官山のオリジナルは秘伝のスパイスががっつり効いているのだが、虎ノ門ではスパイスではなく、豚の熟酢で食べるので、ややマイルドな感じ。個人的にはこちらの方が好きかもしれないな。


予定外のカツレツを食べたのでお腹がいっぱいになってしまったので、パスタはハーフにしてもらった。これも決めていた「ギターで作った手打ちパスタ 自家製柚子胡椒と海苔のクリームソース」。青のりがふわっと香って、柚子胡椒がピリッと来る。想像した通り美味しかった。

ドルチェも前回はfalo+オリジナルはなかったのだが、今回は2つオリジナルがあった。そのうちの1つであるレモンソルベを頂いた。さっぱりして美味しい。最後はエスプレッソ。

ワインは今回初めて安井さんに出してもらったのだが、クリネッツ、ダミアン、ヴォドピーヴェッツ、ダリオの流れは素晴らしかったね。なかなかグラスでこの流れで飲めるお店はないんじゃないかな。今回来る前にあるお願いごとをしていたのだが、それにもちゃんと応えてくれた。料理もワインも最高でした。代官山も新メニューをどんどん出しているようなので、虎ノ門も負けじと頑張ってほしいね。次に行く日が今から待ち遠しい。

青年団第99回公演 こまばアゴラ劇場サヨナラ公演 『S高原から』

高原のサナトリウムで静養する人、
働く人、面会に訪れる人…。
静かな日常のさりげない会話の中にも、死は確実に存在する。
平田オリザが新たに見つめ直す「生と死」。

作・演出:平田オリザ
出演:島田曜蔵 大竹 直 村田牧子 井上みなみ 串尾一輝 中藤 奨 永山由里恵 南波 圭 吉田 庸 木村巴秋 南風盛もえ 和田華子 瀬戸ゆりか 田崎小春 松井壮大 山田遥野

アゴラ劇場閉館ということで、お別れを告げに行ってきた。サヨナラ公演にはいくつか演目があったが、私が選んだのは『S高原から』。「最も」かどうかは分からないが、青年団らしい芝居だと思う。
客入れの段階から役者が舞台上にいる、同時多発会話、役者が客席に背を向ける、などなど、これぞ青年団だよなあと懐かしかった。というのも、アゴラ劇場で青年団を観るのは、2017年の『南島俘虜記』以来だから。
やっぱりあの狭さが舞台上と客席の親密感を生むよな。最後の方では「ああ、もうアゴラ劇場で芝居を観るのもこれで最後なんだな」と思ってしんみりしてしまった。青年団の芝居もたくさん観たし、他の劇団の芝居もたくさん観た。「花に嵐のたとえもあるぞ、さよならだけが人生だ」かな。

BUNDAN COFFEE & BEER

観劇前のランチで、以前から行きたかったこちらのカフェにようやく行った。アゴラ劇場では何度も芝居を観ていたのに、駒場公園に来るのも初めてだった。カフェは日本近代文学館内にある。雑誌に取り上げられたりしているので混んでるかなと思ったが、何とか並ばずに入れた。
こちらでは文学作品に出てくる料理を再現したメニューが並んでいて、ドリンクも「TERAYAMA(寺山)」「AKUTAGAWA(芥川)」「OUGAI(鴎外)」といった文豪の名前の付いたコーヒーが飲める。
迷った末に「森瑤子のヨロン丼」と普通にアイスコーヒーにした。ヨロン丼とはオイルサーディンを使った丼で、大ぶりのオイルサーディンが二切れとパプリカやズッキーニなどの野菜がたっぷり入っている。これはなかなか美味しかったね。いつか自分でも作ってみたい。
アゴラ劇場が閉館してしまうから、このカフェに来るのも最初で最後かもしれないなあ。

デリンクエンテ ウィーピング ファン 2023

グレッグ・グリゴリオ。オーナーワインメーカーのグレッグが2013年、リヴァーランドに設立した新しいワイナリー。リヴァーランドは、みずみずしい柑橘系の果物や世界水準のブドウ園で造られたワイン、マレー河の雄大な流れなど、訪れる人を豊かな自然の恵みでで溢れ、オーストラリアではテーブルワインの産地として認知されています。オーストラリアワインの「機関室」と表現され、ファインワインとは縁遠い土地でしたが、彼が作るワインはリヴァーランドの新たな可能性として高い注目を集めています。
ブドウはそれぞれステンレスで自然醗酵、残糖が規定の値に達したところでブレンドして瓶詰。酸化防止剤を含む添加物は一切不使用。旨味を伴う洗練された辛口のロゼ・スパークリング。(インポーター資料より)

夕飯は、シーフードグラタン。
ワインはウィルトスで購入した変顔ワイン。エチケットは気持ち悪いけど、味は良し。濁りが美味いんだよな。

悪逆(黒川博行)★★★☆☆ 4/7読了

周到な準備と計画によって強盗殺人を遂行していく男――。大阪府警捜査一課の舘野と箕面北署のベテラン刑事・玉川が、広告代理店の元経営者殺害事件を追うなか、さらに被害者と面識のある男が殺される。二人はそれぞれ士業詐欺とマルチ商法によって莫大な金を荒稼ぎした悪党で、情報屋の標的になっていた。警察は犯行手口の違いから同一犯による可能性はないと判断するが、いずれも初動捜査で手詰まりとなる。犯人像を?むことができないまま、さらには戦時中に麻薬密売組織に関わり、政治家とも昵懇だった新興宗教の宗務総長が殺害される。警察の動きを攪乱しながら凶行を続ける男の目的はどこにあるのか? 舘野と玉川は、凶悪な知能犯による完全犯罪を突き崩すことができるのか? 

今回は既存の登場人物ではなく(おそらく)、大阪府警捜査一課の舘野と箕面北署のベテラン刑事・玉川のコンビ。捜査中に色々食べるのはいつもどおりだが、そこまで掘り下げない。犯人側からの描写もあり、捜査陣が犯人にたどり着けるのかどうかは、最後の最後まで分からない。相変わらず面白かったけど、ちょっと長いかな。

フレデリック マニャン コート ド ニュイ ヴィラージュ (クール ド ロッシュ) 2017

ジュヴレ・シャンベルタン北隣「ブロション」のLa Queue de Hareng区画が主体(一部Colgoloin 村の区画)。全体の作付面積5ha は標高240〜280m の20 区画からなる。主となる東向きの高台となっている区画の畑は表土が薄く厚い岩盤がむき出しになっている。50%全房。5日間のマセラシオン。自然酵母で発酵。マロラクティック発酵後、12 ヶ月古バリック熟成。
果実の凝縮した甘やかで華やかな香りと味わい。甘いスパイスの余韻が心地よい。

夕飯は、ミュンヘンのハム・ソーセージ、パンドコロのパン、蒸し野菜とキャロットラペ。
ワインはワイン見聞録で購入。フレデリック マニャンが2本あるので、そのうちの1本を開けた。香りはやや弱め。口に含むと甘さを感じる。酸味は穏やかで、まったりとした濃度を感じる。最後に苦みがちょっと来る。流石の美味しさ。香りがもっとあれば更に良かった。