memorandums

日々の生活で問題解決したこと、知ってよかったことなどを自分が思い出すために記録しています。

Maker Fair Kyoto 2024 (学生らが)参戦した記録です

4月27〜28日に京都府精華町にあるけいはんなオープンイノベーションセンターで開催されたMaker Fair Kyoto 2024に参加してきました。

makezine.jp

ことのはじまり

学生が出展した作品は彼らが3年生のときのプレゼミ科目である情報学プロジェクトIおよびIIという通年科目で制作した成果物でした。

本科目では、各ゼミでそれぞれ卒業研究に向けた準備ということで様々なテーマを用意していまして学生が研究室を希望して選択します。うちの研究室ではここ5年くらいはオリジナルのコントローラとゲームを開発するをテーマにしてきました。その辺は研究室のHPにまとめていますので関心のある方はどうぞ。

takahashilabo

発想の源は?

さて、この作品を開発したのはヤマモトくんとタカザワくんというペアです。ゲームの企画は完全に学生にお任せしています。ヤマモトくんがロボット研究サークルに所属しているのですが、部室にあった電話機をコントローラにできないか?というところから始まったようでした。

最終的にはプレイヤーはクレーム電話を受ける人という設定で、四方八方からやってくるクレームに電話機のボタンを押すことで対処(消す)というリズムゲームのようなものに仕上げていきました。

分担開発の中身

ゲーム側はタカザワくんがUnityで開発し、コントローラ側はヤマモトくんが電話機+Arduinoで開発を始めました。ボタンは電話機のボタンを流用した方がいいはずなので、ということで多数あるボタンを効率よく読み取るためのマトリクス回路を読み取って、電話機の基板を流用することに成功しました。タカザワくんも決まった経路とはいえ連続してクレームを飛ばす処理に苦労したようです。何事、初実装のときには迷うものです。

で、とりあえず前後期の制作を終えて昨年12月に内部発表を終えて無事、必修単位4単位をゲットした2人でした。発表のときに使った動画を毎年、研究室の記録としてYouTubeにアップしているのですが、それが以下でした。

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科目は終了し単位ゲット、そこで終了が学生の常ですが、そこへ悪魔の囁き?

2024年に変わり、彼らの就活も本格化していきました。

その中、たまたまFacebookでMaker Fair Kyotoの開催告知を見かけたので、出る人がいたらとSlackで声掛けしたところ1チームがやってみますとのことで手を挙げてくれました(だったと思います、何となく記憶違いなところもありそうですがご容赦を)。

その後、出展応募をヤマモトくんが済ませてくれて、あとは神頼みという感じでした。確か今年2月くらいだったと思います。待つこと1ヶ月くらい。

私とM2のフジタくんがインタラクションに参加するため東京に出張中に、以下のSlackが送られきました。

確か聴講している最中でしたが思わず「おおー!」っと唸ってしまいました。僕もMaker Fair Kyotoは落ちた経験があったので受かったと聞いたのは驚きでした😲

余談

ちなみに、そのときに開発していたので以下でした。この当時、科学館とかでケンケンパをするインタラクティブ展示を目にすることがあって、でもそれって大きな場所が必要なので、それなら狭い部屋でも楽しめるやつを作ったらいいのでは?と思って作ったものでした。応募者多数のため、とありましたが、今回、初めてMFKの会場に行って暗所が全く無かったところをみて、この展示はそぐわないなと思った次第でした。本当のところはわかりませんが💦

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多忙な彼らを駆り立てるのは何だ!?

それから、就活しながら、2人の色々と大変な中、彼らを駆り立てるものが何であったのかわかりませんが。お金にもなりませんし、就活が進むわけでもないですしね、参加しないという選択をするのが普通だと思うのです。そりゃそうです。

ゲーム側は飛んでくるクレームがクレームらしくなり、以前は単発だったのですが複数が並行して飛んでくるようになりゲームらしくなっていました。何より感動したのはレベル設定です。ゲーム開始時はとても余裕が感じられるのですがゲームに慣れたあたりでクレーム数が多くなって対処に困るようになります。その緊迫感は昔のミサイルコマンダーを彷彿しますが、とても良かったと思います。そして、全消し機能が見事にゲームの緊張と緩和を作り出していました。

コントローラ側も、以前はボタンだけArduinoで処理していたのですが、受話器を上げるとゲーム開始・終了するようにしており、さらにBGMが受話器から流れてくるように別の音声再生モジュールを取り付けて同期させていました。なるほどなぁ〜という感じでした。

ソフトウェア・ハードウェアが一体になって成長した成果でした。素晴らしいです。一人でやるとここまでやろうとするモチベは保ちにくいでしょうけど2人なので頑張れたのではないかと想像します。

前日入りする2人

そして、Maker Fair前日、2人はそれぞれの方法で京都近くまで移動しました。ヤマモトくんはフェリーで、タカザワくんは新幹線で。

そして当日

僕も新幹線で移動しました。2人は10時くらいに会場入りし、僕は11時くらいに会場につく予定でした。

会場近くまで来るとSlackでやりとりしていたのですが、どうも反応が遅くなんかあったな。。。と思いました。ちなみに1日目は雨でした。しかも、こんな田舎に(失礼💦)お客さん来るんだろうか?と思っていました。

予想は大きく外れて凄い人でした。。。感謝感謝です。

展示場所につくとコントローラ担当のヤマモトくんがウンウン唸っていました。なぜかコントローラ側が動作しないとのことで。いつもMacで開発していたヤマモトくんがWindowsに変えて持ち込んだものの、ソースコードの中でシリアルで送受信する伝文の終端記号を改行コードで指定していたのがMacとWinで表記が異なり動作しなかったことがわかりました。

さらに本人らが参加登録したときは自分らですべて出さなければならないという状況だったため電源を設置してもらっていなかった。。。ということがわかりました。とりあえず半日くらいはプロジェクタも持つだろうと思っていたようですがプロジェクタの仕様を確認すると2.5時間くらい。。。orz 小まめに電源を切入したとしても6時間の展示は無理そうでした。

色々と省略しますが、結局、隣でブース展示していた福山大学さんから電源を借りることができました🙇‍♂ 本当に、本当にありがとうございました🙇‍♂ これで安心して展示がスタートできました。

写真が載せられないのが残念なのですが、来場される方がエンターテイメント慣れした関西の方が多いせいか、子供はもちろん大人の方も楽しもうとするマインドを感じました。

見学して思い出に残った作品群を勝手に紹介

ついでと言っては失礼なのですが、学生くんが展示対応している間にあちこち回りました。個人的に面白かった展示をいくつか紹介させていただきます。

京都橘大学の出展。制作者の学生さんが高校生のときにハンドベルシステムを見かけて自分も作りたいと思い始めたものらしいです。この研究室の学生さんではないけどなぜかこの研究室に来て先生の助言を受けながら完成させた、という話や、ベルを鳴らし止める仕組みなど色々と教えていただきました。これだけ具体的なものを作る上げるまでの苦労は多かったと思いますが、本当に楽しい時間を過ごされたんだろうなと想像しました。

京都橘大学 杉浦研究室 | Maker Faire Kyoto 2024 | Make: Japan

そして、京都産業大さんの出展の1つ。花火師が花火を制作するときに火薬を詰めるあたりをメタファとして使っているところ、作った火薬を実際の打ち上げ装置を模した筒に挿入すると花火が打ち上がり、最後には煙が出る演出、何もかもがこだわりの詰まった作品でした。ほんまに素晴らしいと思いました。

京都産業大学ファブスペース | Maker Faire Kyoto 2024 | Make: Japan

つづいて、京都精華大学電子工作部さんのTechnoANDONです。送信も受信もmicro:bitですね。2.4GHzでクライアント側から接続して動作する仕組みなので、通信できるかぎり何台でも追加できるとのことでした。遅延もなくほんとカッコいい作品でした。

京都精華大学 電子工作部 | Maker Faire Kyoto 2024 | Make: Japan

あと九大さんの盆栽システム。お祖父様から譲ってもらった盆栽を育てているうちに盆栽文化をより広めるためにITを組み合わせて色々活動を広げていらっしゃるとか。九大に限らず様々な若い人が参加したチームで活動されているそうです。ボーダーレスな繋がりがまさにいまの若い人を象徴していますね。個人的にはこのシステムの対象の選定が秀逸だと思いました。成長がそれほど早くはなく、でも確実に成長・変化する盆栽を長期間に渡って定点観測する装置、確かに必要ですし、自動化すれば絶対に喜ばれます。3Dモデルとして保存しておけば成長過程を見ることができます。そして盆栽のカッティングのシミュレーションや美しさの定義などへ発展させたいと仰っていました。本当に素晴らしい活動です。

BonsaIoT(九州大学) | Maker Faire Kyoto 2024 | Make: Japan

最後が京都産業大学さんのダンゴムシシステム😱このシステム、初めて見ましたが、実は10年くらい前から初めているご研究とか。最初見かけたときは「マジか!?」と思いました。透明なボールの上にダンゴムシがいます。歩いている様子ですがボールの頂上から移動することはありません。なぜならダンゴムシの歩く方向にあわせてボールを回転しているから。。。という仕組みです。シャーレではできない連続した移動をしかもカメラを固定したまま撮影できるわけです。もう着眼点がノーベル級だと思いました。

京都産業大学・情報理工学部・永谷研 | Maker Faire Kyoto 2024 | Make: Japan

話は戻して

1日目が終わったのは18時でした。12時始まりで18時ですからかなり体力的に辛かったと思います。トラブルなども色々ありましたし。とりあえず会場近くの魚民で打ち上げしました(終わってませんが💦)2日目は晴天というかめっちゃ暑かったです。30℃ですからね。。。それでもたくさんの来場者がありました。

色々と写真は撮ったのですが参加者の方が映っているので難しいのでやめます。すいません。参加者の方の表情こそ創造の源泉なんですけどね。。。内々で見て嬉しみを感じたいと思います👍

10時からスタートで16時に終わりでした。あと5分くらいで終了だな、と思ったら、何回か来てくださっていた方が再び挑戦されていました。それまでのハイスコアは23800点くらいでした。これも普通には考えられない点数です。僕もやってみましたが12000点くらいがいいところでした。30000点超えですからね。。。凄い反射神経(と予測能力)の持ち主です。

youtu.be

おわりに

2024年度も始まったばかりです。まだまだこれからという時期ですが、本当に素晴らしい体験をさせてもらいました。研究とは別に純粋に興味からインタラクティブシステム(要は玩具のようなもの)を作ることに時間を使ってきました。先日も少し書きましたが、小学生の頃に参加していた発明工夫展の続きのような感覚です。何か既存の技術でちょっと違った見方から面白いと思えるシステムができないか考えるのが好きでした。

最初にMaker系に参加したのが山口で開催されたYMMF2015でした。思い出話になって申し訳ないですが。これが9年前です。それから、オープンキャンパスなど何か人に見せる機会を納期に設定して通勤電車で考えたアイデアノートをもとに作品作りを少しずつやってきました。

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YMMFも隔年開催と聞いていたので2017年には開催されるのだろうと思っていましたが、結局、開催されず。。。残念でした。あの場所もお気に入りの場所の1つだったのですが。

その後、つくりと、つくるけぇに参加させていただき、一昨年の大垣のOMMFにも参加させてもらいました。途中、学生さんに手伝いをお願いしたことはありましたが、学生さんが開発したシステムを展示することはありませんでした。

こうやって出展してきて、やはり、企業でやるのとはまた違った人との繋がりや刺激がもらえることを実感してきましたので、ぜひ、学生さんにもその興奮を味わって欲しいと思ってきましたが。。。どう仕掛けていいのか糸口が見いだせませんでした。

たまたま学会のついでに横浜まで足を伸ばして参加したCEDECで見かけた以下でした。ゲームだけでなく筐体も作り上げている様を見せつけられました。こういうのを授業でやれば出展する準備になるんだな。。。と何となく感じたキッカケでした。

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それから、うちのカリキュラムで個人の自由が効く情報学プロジェクトのテーマでゲーム筐体も含めたゲーム開発をやってみたんですね。それが以下でした。苦労はありましたが、5人で楽しそうに開発を進めてくれました。ただ。。。残念ながらこのメンバーが4年生でゼミに残ることはなかったですからね。。。楽しんでいたのかは微妙だなと思いました。

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2020年からペアでコントローラとゲームを開発する方針に切り替えました。2人であれば比較的やることもあるし意見も出しやすいと思いました。コロナ真っ只中でしたのでオンラインとオフラインを半々くらいでやりました。大変でしたが。その後も続けて、そして今回の出展のペアの作品につながっていきました。

技術的にはUnityでの2Dゲーム開発、そしてArduinoとセンサー等によるマイコンプログラミング、両者を結合するデータ通信プログラムの実装、この3点が中心になります。今回の2人もそれらをうまく組み合わせて作ってくれました。

正直なところ、電話機という設定は個人的に無理やり感があってどうかな?と思っていたのですが、開催中に遊んでいる参加者の様子を見ていると、大人にしてみれば親しみのある電話機というインタフェースであること、そして、数字キーというわかりやすい操作ターゲット、これらは周りを巻き込んで「1だ、3だ、次は7を連打」という感じに巻き込むことに成功していました。

序盤はゆったりと進むのですが、中盤以降は球数も多くなり緊張感がマシます、そして、全消しするという機能のおかげで、一瞬だけ緊張が緩和されてプレイヤーに余裕と安堵感が生まれます。安堵感から緊張へと行ったり来たりさせることで適切なレベル?で興奮状態が続くのでしょうし、ゲームエンド画面を見て緊張から解放されると自然と笑顔になる様子も見られました。まさに「楽しかった〜」という感想を無言で伝えてくれている感じさえしました。

長くなりましたのでこの辺で終わりたいのですが。

残念ながら学部生の場合(院生はもちろんでる)、こういう活動に大学から旅費の補助は出ないことがわかりました。学部生でもサークル活動は出るのですが。。。こういうプロジェクトは教員の外部研究費から支出するのだそうです。残念ながら私にはそういう自由に使える外部研究費がなかったので出してあげれませんでした。参加費は出せたのですが、それより大きな旅費(往復と宿泊費で4,5万円くらい?)の捻出が必要だったと思います。

それでも出ることを決断した彼らに拍手を送りたいですし、やはり自分が時間とお金を投資したことですから、記憶にも残ったのではないかと思います。10年20年経っても大学生活で思い出せるのは日常ではなく非日常だと僕は思います。線路が敷かれた授業で覚えていることはほとんどありません。旅が思い出に残るのはまさにそれじゃないでしょうか?これこそあくまで個人的な考えですが、人って思い出でできているんじゃないかな。。。と最近思うことがあります。毎日そればっかり考えているわけではありませんが。

未来しかない彼らが今後、益々成長するのを楽しみにしています。

というところで筆を置きたいと思います。筆じゃないですが。。。💦ヤマモトくん、タカザワくん、オツカレ👍