世論の両極化と中道政治

 私が宇野常寛氏に関する『解散・総選挙が急浮上!宇野常寛氏「"左翼じゃない野党を作ります"、これが国民に刺さると思う」と民進党議員に直言』と言うネット記事を引用し以下のように意見したところ


早速ご本人から反応が来ました

その後Twitterの方は言い合いになってしまい話が噛み合っていないのですが、twitterでは書き切れなかった意見をここにまとめたいと思います。
 **世論は両極化しているのか?
 かつて民主主義には中位投票者定理が働き、二大政党は共に中道化し近似化すると言われていました。確かに10年前まではその傾向があり、中道と言うボリュームゾーンを制することが政治のセオリーでした。
 私は近年では世論の両極化が進み、そのセオリーは通用しなくなっていると考えているのですが、宇野氏は世論の両極化に否定的です。


 ネット世論は左右両極の意見を拡張させる性質があります。ただ世論が両極化しているのはネットの世界だけで現実世論は違うと果たして言えるでしょうか?
 欧米では極右的な民意が現実に興隆し、既存政党も中道から左右両極寄りに軌道修正した政党が比較的健闘し、中道寄りの政党は苦戦する傾向にある。フランスのマクロンは例外的に中道路線で旋風を巻き起こしたが、当選後蜜月期も満了しないうちに支持率が急落し、直近の選挙も苦戦しています。彼に中道の再興を期すのはなかなか難しい状況だと思います。
 日本はどうでしょうか?日本では極右政党は興隆していませんが、安倍政権一強体制と、最近の選挙で日本共産党が着実に議席を増やしていることを以って、世界的な「世論の両極化」の類型に含める見解が少なくありません。もちろん「安倍政権を支持しているのは極右ばかりでなく中道も支持している」と言った反論もありますが、アメリカのトランプ大統領も極右ばかりに支持されている訳ではないのに世界的な世論の両極化の象徴とされていることから見ても、有力な否定材料とは言えないでしょう。
 世論の両極化現象のもう一つの側面である「中道の没落」現象は日本で見られるでしょうか?宇野氏は都議選で都民ファーストが票を集めたことを以って「日本では中道のニーズが多い」と根拠にしているようです。
 私はこの現象を以て「中道のニーズが多い」とは見ていません。小池都知事の戦術は支持の最大化です。民主党ですら賛成した豊洲移転問題を蒸し返し、民進党に飽き足らない左派的な民意を刺激すると同時に、韓国人学校問題や関東大震災朝鮮人虐殺問題で右派層のニーズに呼応。更に国政選挙では自民党の右側に居た人たちと組もうとしています。私には彼女は中道政治家でなく、「民意が両極化した現状において特殊な戦い方を模索している人」にしか映りません。もちろんその中で中道的な民意も捕捉はしているでしょうが、右や左の民意をかなり広く取ろうとしているのは、中道のボリューム不足を認識しているから他ならないでしょう。
 もちろん「中道の没落」とまでは言えないかも知れませんが、ボリュームソーンであると言う認識は多くの政治家にはもはやないでしょう。私も、旧民社党のような小政党ならともかく、二大政党の一翼を担おうとする政党が、このゾーンだけで飯を食うのはもはや難しいと思います。

世論の賛否が二分する問題で、二大政党が両党とも賛に回っていいのか?


 宇野氏がどの問題を指して「反対するだけの野党」と言っているのか解りません。最近では集団的自衛権行使について国論が二分(世論調査により賛否に幅があるが…)、カジノ法案等はどの調査も反対が上回っていたが、このようなケースで野党第1党は反対の立場を取ってことを批判していたのであれば危険です。
 私は「ファシズム」と言う言葉でこの危険性を表現しましたが、宇野氏に噛みつかれました。一党独裁で民意の半分が無視される状況と、二大政党によって民意の半分が無視されるのとでは状況が異なりますから、ファシズムと言うのは確かに不正確な表現でした。ただ、多くの民意が無視されるという危険性と共に、極端な主張をする政党が興隆するチャンスを与えると言う2つの意味で危険なことです、
 勿論例外もあるでしょう。二大政党が共に意見を一つにすることが尊いと思われるケースも確かにあります。ドイツでは移民の抑制を求める世論が高まってもメルケル首相のCDUが比較的リベラルな政策を取り、二大政党のもう一翼のSPDと共に移民に寛容な政策を続けたことは国際的に高く評価されています。しかし今回の選挙において、ドイツ連邦議会で初めて極右に議席を与える結果になり、民主主義を不安定化させるリスクを招いてしまいました。
 「二大政党両党が賛成に回るなら、国論は二分しない」と言う意見もありました。
 ただ、民進党集団的自衛権行使反対の立場を明確にしたから、反対の民意が増えた可能性はあるでしょうか?少なくとも今の民進党に世論をオルガナイズする力があるとも思えません。そんな力があったらもっと選挙で議席を増やしているでしょう。

中道に可能性はないのか?

 私は国民の半数が反対する法案に賛成することが「中道」等とはさらさら思いませんが、極論を言う政党よりは中道政党の方がいいと思っています。
都市の無党派層が中道であるかついては若干議論の余地はありますが、宇野氏は「『都市の無党派層は組織化できない』と言う思い込み」


と言っていますが、思い込みを捨てれば中道政治が成功する訳でもなく、ここ20年多くの政党が出来ていないのですから、難しいのです。
公明党のような宗教政党は別として、中道政党にはそれを熱心に支持するモチベーションが湧きにくく、熱心な支持者がいない政党は、追い風が止むと途端に議席維持が難しくなるからです。
中道政党に対して熱心に支持するモチベーションが湧きにくいのは、左右両極の政治勢力のように目指すべきベクトルがはっきりしないからです。「どちらかに偏らないようにバランスを取る」みたいな方針では、なかなか積極的に支持される理由にはなりません。
私は政治を線でなく面で捉えることで、中道にも活路があると考えています。つまり右から左に至る直線上の真ん中に中道を置くのでなく、下の図のように馬蹄形の図の頂点に中道を描くのです。

詳しくは5年前の『「中道」は左右とは別の一つの極である』というエントリーをご覧いただければ幸いです。
http://d.hatena.ne.jp/kechack/20121120/p1

うちの会社にもいる稲田朋美型社員

 大バッシングの渦中に居る稲田防衛相だが、私の周囲には稲田大臣を擁護する人が多い。日報を隠したのは幕僚幹部或いは背広組のトップたちで、稲田大臣は部下から適切な報告を受けられず、なのに責任だけ追及される可哀そうだと言う感じの意見だ。
 自民党内からも「稲田大臣は四面楚歌。周りに彼女を助けようと言う人が誰もいない」という声が上がっているが、私もそのように感じる。だが、可哀そうという気は起きない。

 真っ先に「うちの会社にもいるよ、そういう管理職」と思った。
 つまり、大した実力もないのに、トップに可愛がられた結果出世したが、実力不足と周囲の非協力に遭ってワークしていない管理職。
 確かに一番悪いのは、実力の見極めをせずに、自分の好みで抜擢したトップだ。稲田大臣の問題で言えば安倍総理。次に悪いには非協力的な周囲? いや違うと思う。確かに僻みから非協力なのかも知れないが、このように抜擢された人は得てして?上司受けだけ良くて、同僚や部下からは全然信頼されない?タイプの社員が多い。上司受けする出世術ばかり研鑽して、それ以外のスキルが伴っていないから総スカンを喰らうケースが多い。非協力な周囲を攻める以前に本人に問題があり過ぎるケースが多い。稲田大臣がどうなのかは詳しくは知らないが、その類型なのかも知れない。

ローカル路線バスの旅 第22弾まとめ

 残念ながら今回も失敗でしたが、秀逸なコース設定だったと思います。
 上田駅午後5時頃にリタイアしてしまいましたが、本当にゴール不可能だったのでしょうか?
上田発1730に菅平の先の渋沢に行くバスがあり、途中の自治センター入口で入軽井沢行きに乗り継ぐことが可能です。
入軽井沢は新地蔵峠を挟んで長野市松代と対峙する場所にあります。ここに1808に到着して峠を越えれば長野市です。ただし峠の向こう側を走るコミュバスはとっくに終わっているので松代高校まで歩く必要があります。松代高校の終バスは2030と比較的遅いのですが、約11?の峠道を2時間22分で走破するのはよほど健脚な人でないとムリ。
 ということでこの案はネタ帳行き。

彼らはどこで挽回不可能になったのか

 逆算すると、最終日横川に泊まればゴール可能であった。ということは最終日安中に泊まらずに、ひたすら横川まで歩けばゴール可能であった。もちろん登り道を20?も歩けと言うのはムリな話。
 それを避けるには高崎駅発1300の松井田支所行きに乗る必要があり、小山経由ではまず無理。古河での選択を間違えたという結論になる。
 ちなみに小山経由でもゴールできる方法は1つだけ見つけたので後述する。

では最速ルートはどうだったのか

 ネット上でいろいろ盛り上がっていますが、@sa_tw1- surprise attack 奇襲 - さんが紹介しているコースが最速と思われます。

桜ヶ丘団地から小諸に向かうコミュバスを見つけられるかが味噌。御代田駅に行くより徒歩距離が減らせる上、始発が早いので早くゴールが出来る。
 バスが遅れたらアウト、現実的に発見不可能等いろいろツッコミはありますが、最速ルートを捕捉しておくことは意味があります。
だいたい事前に調査可能な人が3日でゴール可能にしておかないと、ネット検索禁止の条件で4日でゴールは難しいというのがこれまでの観測なので、最速ルートの調査は重要です
 ちなみに、伊香保草津経由でもゴール可能で、軽井沢に早く到着できる上、徒歩距離が短い。
伊勢崎市民病院950-1030前橋駅1047-1135渋川1150-1207伊香保1234(上州ゆめぐり号)1407草津温泉1430-1553軽井沢
 ただしその後の接続が悪く、結局追分入口で2泊目となる。
 ちなみに草津温泉で90分後の便でも追分入口まで行けるので、極楽コースだ。ただもし番組で「草津温泉で休もう」なんてことになったら完全な仕込み以外ありえないだろう。

小山経由でもゴールできるコース

 今回は「小山に行った時点でアウト」だったのですが、古河に出ず、八千代町から直接小山を目指せばゴール可能でした。
 古河市と八千代町を結ぶ茨城急行バスの路線は実は結城市のコミュバスと繋がっています。あくまでも火曜日のダイヤで、他の曜日だと少し変わってきますが…

  • 1日目(最速ルートからの続き)

八千代町役場1446-1459諸川1514-1519七五三場1530-1549森石油店(徒歩)鈴成自動車前1651-1710小山駅1740-1756小山西高校(徒歩)栃木駅 宿泊

  • 2日目

栃木駅721-755道の駅みかも(徒歩)佐野新都心1010-1103佐野市民病院1105-1137下彦間明神1331-1346やすらぎハウス(徒歩)足利市役所1556-1629小俣駅入口(徒歩)1805-1850さくらモール 宿泊
 足利から桐生方面に向かった方が、ゴール時間には影響しませんが歩く距離を減らせます。太川さん一行は足利から太田まで歩きますが…

  • 3日目

香林上702-733伊勢崎駅805-830県立女子大845-925高崎駅1105-1222松井田支所(徒歩)横川駅1400-0434軽井沢駅(徒歩)軽井沢病院1548-1619追分入口(徒歩)やまゆり公園1711-1734小諸駅1833-1915上田駅
 やまゆり公園から小諸に向かうコミュバスを発見できるかが味噌

  • 4日目

上田駅830-846上田市民病院858-913ベイシア様前945-1013力石公民館
以下最速ルートに同じ
上田まで行けても、結局追分泊まりと同じになりますが、徒歩がない分いいでしょう

その他ルート

id:Disabled-personさんが藤岡から佐野に抜けるルートを紹介しています。こちらは4日目の午後にゴール可能。

http://d.hatena.ne.jp/Disabled-person/20160102

選挙情勢 ポイント整理

    • 野党ともに前回より優位になる点、不利になる点がある。
  • ただ野党が有利になる点は効果が見えないものが多く、蓋を開けてみないとわからない。
  • 与党が不利になる点もいくつかあるが、あまり大きなものではない。
  • それを考慮すると、現段階では与党有利の状況と言わざるを得ない。
与党 野党
有利な点 (1)自民党政党支持率が高い
(2)第1次安倍政権時代の安倍総理に対する負のイメージが払拭されている。
(3)当面自民党政権が続くとの認識が強まり、組織票が集まりやすい
(4)新人議員比率が低く、知名度不足リスクがない
(5)野党間の選挙協力が進む
(6)バッファープレイヤー的投票が期待できる
(7)前回落選議員への同情票(次点バネ)が期待できる
(8)お灸的投票行動がなくなる。(民主党
不利な点 (9)落選中議員への同情票(次点バネ)がなくなる
(10)前回自民党の勝ち過ぎにより影響力を失った公明党が、今回は自民党の支援に力を入れない可能性
(11)解散の意義が支持者に理解されていない。またこの時期の解散を快く思わない支持者が多く、選挙に力が入らない
(12)共産党を除き前回より政党支持率が低い
(13)候補者擁立、選挙準備の遅れ
(14)党首の発信力が弱体化。(特に民主党:野田→海江田)
(15)反自民票が共産党に集まる
(16)自民党政権が当面続くのが確実な中で、リスクを冒して野党候補を支持する団体が減る
    • 補足

**与党の優位点
(3)以前なら郵政団体や農協、医師会が自民党に反旗を翻すことがあったが、自民党政権が当面続くことが確実な状況では、怖くてそのようなリスクを冒す団体はなかなか現れない。自民党の政策に不満がある団体であっても自民党に平伏すしかない。
(4)今回の選挙で新人議員の比率が低く、いても二世議員等で知名度不足のリスクがない。前回初当選の議員は、2年間の議員活動である程度名前を浸透させることができている。もちろん盤石ではないだろうが。
**野党が優位な点
(5)前回に比べて非自民政党の競合は大幅に減るだろうが、そもそも各党の支持率が下がっている…⑫、支持率の高い共産党反自民票が流れる…⑮というマイナスを帳消しにしてお釣りが出るかは不明。
(6)90年代までは、基本的には自民党政権を望んでいるが、自民党が勝ち過ぎることを望まないバッファープレイヤーという有権者層が存在し、社会党政権は望まないが社会党に投票するような有権者は多かった。ただそのような政治風土は政権交代可能な二大政党制への期待と引き換えに絶えており、二大政党制への期待が潰えたからと言って復活するとは限らない。
今回は安倍政権の信任投票で、与党を圧勝させるか辛勝させるかが焦点であるにもかかわらず、ガチに「民主党には政権担当能力がないから」という理由で自民党に投票する有権者も多い可能性もあり、あまり期待できないかも知れない。
(7)次点バネはある程度当選回数があって、選挙区で有権者の信が厚い候補者でないと効かないと言われている。前回の選挙では、09年の選挙で地元の自民党候補が落選し比例復活もできないケースが多々あり、地元の人が非常にショックを受けたケースが多かった。前回自民党はそれほど支持率が高くなかったのに圧勝したのは、地元の先生の議席を何とか回復させようという次点バネの総結集の賜物という分析もある。
民主党のように前回落選した議員の多くが引退した状況では、そもそもバネが起きる選挙区は限られてくる。「大事な先生を落してしまった」と悔やまれているケースがどれだけあるか?
(8)前回の選挙では、民主党を支持してきたけど、今回だけは入れないというような「お灸票」が見られ民主党は大敗した。しかし下野後に民主党の支持率はさらに下がっていることから、これらの有権者がそのまま支持者を辞めて無党派層に転じた可能性が高い。そういう有権者を短期間で支持者に復帰させられないまでも「無党派層ではあるが、自民党には入れたくないので、鼻を摘まんで民主党に入れるか」というところまで持っていけるかが鍵。
**与党が不利な点
(10)前回の選挙ではかなり早い段階から自民党圧勝の予想が出て、公明党が支援調整に動くのではという予想をしたが、出口調査を見る限り公明党支持者は押し並べて自民党候補に投票していた。もちろん出口調査は嘘をついている可能性もあるが、選挙結果を見る限り公明党が支援調整に動いた形跡はない。自民党議席が増えれば増えるほど公明党の発言力は低下すると思われるが、公明党の支援調整は今回ないと思った方がいいと思う。
(13)マスコミはこれを一番指摘するが、そもそも野党の候補者擁立が遅れている選挙区=勝算の低い選挙区であり、そのような選挙区での候補者擁立に体力を使うくらいなら、勝てる選挙区に体力を使った方がいい。この現象自体は獲得議席数の増減を占う意味においてはさして重要ではない。

衆議院解散の大義は「3党合意路線からの転換」

 昨今衆議院解散の噂が吹き荒れている。ここで疑問視されているのが、解散の「大義」だ。有権者向けには「消費税増税延期の是非」を問うという出来レースでもまんまと騙せるかも知れないが、有識者やマスコミはしっくり来ないだろう。大義不明なまま解散すると、あまりいい論説をしてもらえなくなるので、何か大義を掲げる必要がある。

有識者に対しては「社会保障費への切り込み=3党合意路線からの転換」を匂わせて期待を得る。

 有識者の間には、自民党政権ですらなかなか決断できなかった消費税増税を、選挙に不利であると解っていながら決断した野田前総理への敬意はあるものの、多くの有識者が期待しているのは増税と歳出削減の同時進行だ。歳出削減に関しては、社会保障費こそが削減の本丸であり、そこを切り込まなけれれば意味がないと考えている有識者が多い。
 野田政権時代の3党合意は「社会保障費の財源のための消費税増税」というロジックであったが、本当はそのロジックを嫌う有識者は多い。これは自民党政権ですらなかなかできなかった消費税増税民主党政権が実行するにあたって、国民世論や当時の民主党議員の離反を抑えるために仕方ないものとして看過したに過ぎない。衆参両院で圧倒的多数を握いる安倍政権には、できればもう一歩踏み込んで「消費税増税社会保障費への切り込み」をやって欲しいと考えており、安倍総理はそのような要望やレクチャーはさんざん聞いているだろう。
 元々、次の総選挙までにはこの方向に舵を切らせるのは官界では既定路線であり、思いの他早く解散風が吹いた今、急いでシナリオライティングに追われているのではないか。「社会保障費への切り込み=3党合意路線からの転換」を期待させることができれば、有識者保守系マスコミを味方につけることは可能だ。

増税延期の代わりに社会保障費の削減

 3党合意路線への転換は2ステップを踏むことで、安倍政権は比較的低リスクで実現可能だ。
 まず消費税増税延期で税収減となるので、ここで社会保障費の大幅な見直しを掲げる。自民党民主党とは支持基盤が違うので、反福祉を支持の源泉にすることができるのは、片山さつき生活保護バッシングキャンペーンがネットで拍手喝采されたのを見ても判る通り。
 もちろん左派を中心に反発も多いだろうが、彼らは消費税増税を何よりも忌諱しており、それに比べれば社会保障費の削減への抵抗感は劣後する。消費税増税社会保障費の抑制どっちを取るかと聞かれたら、前者を取る左派が多いのではないか?日本では増税してでも社会保障を充実させるべきという「本当の左派」は殆どいないので、「増税延期の代わりに社会保障費の削減」は案外ウケてしまう可能性がある。

将来的には消費税再増税

 安倍政権が約束するのはあくまでも消費税増税の延期だ。1年半〜2年後には消費税を10%にする。この結果、3党合意路線の呪縛から解放され、消費税増税社会保障費の削減の同時進行が可能となる。有権者からそれほど批判されることなく、有識者から評価され、安倍政権にはベストなシナリオが描ける。
 もちろん景気がこのまま回復しなければ、いくら低リスクで有識者から評価されても、政権が盤石とはならないが…。

都バスの24時間運転は本当に失敗だったのか?

都バスの深夜運行は思いつき政策か? | 財経新聞
 結論は失敗だったと思う。ただ記事にあるように、トップの思いつきそのものが悪であるという結論は拙速だと思う。民間企業ではトップの思いつきを実行するケースは多々たる。スピード経営の必要性が叫ばれ、ボトムアップで施策立案をしている余裕がなくなった昨今そのような施策決定は増えているが、今のところそれが問題視される意見は聞かない。
 今回の失敗について多くの人が言及して通り「他の鉄道バスが運休している時間帯に、スタンドアローンに短区間にバスを運行しても需要が喚起できなかった」ということに尽きる。つまり深夜にバスを運転することが間違いであったというより、やり方が悪かったと言える。
 「神は細部に宿る」と言われる通り、結局細部設計がダメだったらその施策は失敗する。その点においてこの政策が失敗であったことを覆す余地はないが、「こうやれば成功したのでは?」という議論まで葬り去ってはいけない。民間企業で何か失敗があると、失敗の原因分析をしつこくやるが、政策になると、政策そのものを否定したい勢力が「細部設計の失敗」を攻撃して、有権者もまんまと政策そのものを否定する論調に乗せられて、「なぜ失敗したか」が議論されないまま、「その政策そのものが悪い」と安易に結論づけられて終わってしまうことが多々ある。今回もそのケースではないかと危惧され、失敗ではあってももう少し「こうやれば成功したのでは?」という議論が欲しいところだ。
 もちろん猪瀬前知事を擁護する気はない。細部設計をしたのは猪瀬前知事本人ではなく交通局のスタッフであろうが、自分の思いつきが実行されることで満足してしまい、細部設計の問題点を見抜けずに承認してしまったのは猪瀬前知事だ。交通局幹部は面従腹背で最初から失敗する制度設計をした可能性もあるが、仮にそうだとしても都幹部との信頼構築ができなかったのは猪瀬前知事の責任だ。

成功する細部設計は可能であったか?

 失敗の原因が、「他の鉄道バスが運休している時間帯に、スタンドアローンに短区間にバスを運行しても需要が喚起できなかった」であったとすると、解決策は以下の2つ考えられる。
1.距離を長くして繁華街から住宅地へ帰る需要を完結させる。
2.他の鉄道・バスも深夜に動かし、ネットワークを築く
 1の場合、例えば運行区間を渋谷―六本木―新橋―銀座―勝どき―豊洲 とすると、ある程度完結した需要ができる。ただ距離が伸びるので採算分岐点も上がり却って赤字が増えるリスクも高い。
 2はいくらなんでも無茶のように見えるが、例えば羽田空港から渋谷に到着するバスがある。
そのバスは1:49に渋谷に到着するので、六本木から同じ時間に到着するバスを設定、また渋谷2:00発の二子玉川、上町行きのバスを作る。つまりターミナル駅をハブにしたバス網を構築すれば、深夜に10路線ぐらいのバス路線を作るだけでもそれなりのネットワーク構築が可能である。
 私の思い付きではこの程度しか出てこないが、様々な角度で総括すれば妙案も出てこよう。「東京でバスを24時間運転すること自体が間違い」という結論に至るのはまだ早いと思う。

細部がボロボロの政策の評価について

 細部に問題があったために、「政策そのものが失敗」と結論づけられる政策はこれに限らず結構多いような気がする。最近では橋下市政や民主党政権の施策など…
 もちろん、「神は細部に宿る」ので、細部に問題のある政策を遂行した為政者は何ら擁護できるものではないが、「細部設計の失敗」を攻撃して、政策そのものを否定する言説をそのまま鵜呑みにするのもまた愚かだ。政治家や政党に罪はあっても、政策に罪があるとは限らない。
 猪瀬都政民主党政権は、失敗のレッテルを張られて終わってしまっているので、過去の失敗例の研究として扱うしかない。ただ橋下市政に関してはまだ高い市民の支持があって続いているおり、失敗と批判されている政策について、失敗を反省し修正することで挽回のチャンスを与えられている。
例えば大阪都構想や校長や教育委員、区長などの公募制も、制度そのものが悪というより細部の制度設計に問題があると事例だと私は考えるが、どうも意固地になってその細部の問題点をも認めようとしない嫌いがあり好感が持てない。確かに橋下市政の批判勢力の一部には「細部設計の失敗」を攻撃することで政策そのものを否定する傾向があり、また市職員も面従腹背で最初から失敗して市長に恥をかかせる施策設計をしている可能性もなくはない。かなり酷い問題が発生してもなお橋下市長を支持する市民が多いのはその辺の問題点を認識している為と思われるが、それが強すぎて橋下市政の細部の問題点を許容し、また橋下市政にその過ちを改めることを強く求めない緩い世論を形成しているのは逆に問題である。

産経新聞をdisって韓国検察の肩を持つ人っているんですね…

 産経新聞前ソウル支局長が韓国の検察に起訴された件で、韓国側の対応が甘いとか痛いリプライが飛んできた。
イタタタ…。本件については日本ペンクラブなど左派色の強い組織でさえ韓国側を批判する声明を発表しており、政治的スタンスに関係なく韓国を批判しなければならない案件だ。産経新聞を批判する為なら韓国側の肩を持つような人が存在するのはなんとも痛い
 私は基本的には「日本より中国や韓国が大事」なんて考えている日本人は存在しない。そんなのはネチウヨの脳内に存在する空想上のサヨクだと思っているのだが、考えを改めないといけないのか?
 本来諸外国への配慮以前の問題として、日本の戦中の政治体制や旧軍を否定的に捉えてその責任を厳しく評価する立場はアリだと考えている。戦中に弾圧され同志が拷問等で命を落としたような組織に戦中の政治体制の否定を最大化させるモチベーションが働き、それが過剰になるところは気になるところではあるが、基本的には左翼は日本の問題として正面から戦中の政治体制や旧軍を批判すればいい。
 ただ左派が弱体化する中で、国内でそういった言説のウケが悪くなり、右派が戦中を美化する発言をしたりすると、まず先に「諸外国との関係が悪化する」ことを指摘するなどだんだんと外圧を利用するようになってしまった。それが右派に「日本より特亜が大事な人たち」のような攻撃材料を与える隙を作り、さらに左派の言説の国内でのウケが悪くなると言う悪循環に陥ってしまった
 左派はまず右派を攻撃する時に外圧を利用するのを止めるべきだ。
 しかし、先述のようなバカな発言をしていると、日本より特亜の利益を重視する空想人物が実在することを認めざるを得なくなってくる。勿論、ネトウヨの自作自演の可能性もゼロではない。偶に「お誂え向けの敵」を作って叩く自作自演者もいる(ただ最近は検索サイトを利用して「叩きやすい痛い敵」を容易に探すことができるので、その必要性は低下しているが…)が、やはり痛い左翼がこれだけ多いと存在を認めざるを得ない。
 痛いサヨク。反原発のために福島県民差別を厭わない連中とか…、挙げたらきりがない。痛いサヨクが左派全体の主張であるような喧伝をすることで穏健派を含めたすべての左派を貶めることができるので、彼らには存在し続けてもらいたいと内心思っている右派もいるかも知れないが、私にとっては絶滅してもらいたい存在である。
 痛いサヨクをどうやって根絶するかは、また次回に…