『バトゥーキ』終わっちゃった。


 最後がマキマキで、そこはいろんなところで言われてるように、すごくもったいないし、とてもがっかりさせられるのだけど、読めてよかった。



 打ち切りなのか何なのか、事情を知らないまま好き勝手なことを言わせてもらえるなら、最終話につなげるためにあと三話くらいは欲しかった。
 特に純悟サイドの顛末。レグバを殺そうとして、そこからどうなるのかという期待を胸に待っていたら、何も語られないまま最終話になっていた。いっちママの言葉で止まったのか、殺意はマランドラージェンだったのか……。



 最終話そのものは最終話としてまとまってた。
 いろいろ行間を読む楽しみをもらったと思っておこう。クッソ長~~~い行間ではあるが。



 女子高生の霊*1は、親とこじれていた部分だけは解決していたけど、それは彼女の抱えている問題の本質ではない。むしろ彼女にとって枷となっていた毒親から解放されたことで、より人の道を踏み外せるようになってしまった。
 彼女の師匠も喧嘩カポエイラを信仰しているから彼女が更正する余地もない。人と人の関わり方は無数にあるが、力で屈服させる関わり方以外に興味を示さない人生を送ることとなった。のだと、想像してみる。
 彼女はやがて、師匠とも微妙に異なる道に進み始めたのではないか。
 彼女の師匠(咬泉)は主人公の師匠(流亜)とコミュニケーションを取る機会があったのだろう。弟子がこれこれこんな感じで困っているし、なんかイッチとジョーゴできるよう仲介してくれと頼まれてる、といった相談をしたのではないか。流亜先生はこれを受けていっちに、(霊がいる)ブラジルへ飛んで欲しいという話を持ちかけた。
 ごくごく素直に読み解くと、こんなふうな成り行きがあって、最終話でいっちはブラジルにきたのだろう。



 最終回前の純悟たちについて。
 純悟はレグバを殺さなかったばかりか、何かしら解り合えたのではないかと思う。しかしお友達として手を繋ぐというわけにもいかなかったのではないか。ギャングの本命の後継者を、その取り巻きごとボコボコにしているわけである。これを無罪放免で放置してはギャングの名折れだろう。新ボスとなったBJは機械的に純悟抹殺を部下に命じる。ギャング組織としてそうせざるをえない。いっちはギャングの遺産相続の騒動から解放されることとなったが、今度は純悟がギャング関連の騒動に巻き込まれていく。純悟の在籍するみつお組も巻き込むこととなる。こうして純悟はいっちの前から姿を消す。消息不明のまま最終話へ。
 もちろん最終話の時間軸までくるとギャング組織は壊滅している。これで純悟はギャングからの逃亡生活から解放される。(ついでに逃亡中のなんやかんやで日本のヤクザから足を洗っているとなお良い。)



 ギャング組織壊滅により、作中で主人公周辺に起きたあらゆる対立関係は消滅した。
 これによりかつて敵対関係にあった人たちとも会えなくもないという状況になっている。「会えなくもない」という程度では満足できない人もいて、いっちのメストレであるアモロゾはホーダを開く。かつては敵対していた者達もひとつの輪となる場として。地球の裏側(日本)で対立した人たちが、そのまた地球の裏側(ブラジル)で、巡り巡って同じホーダを囲む。
 遺産相続で争った姉アグリ、同じく争った弟レグバ、遺産相続劇の火種を巻いた父*2、その父と敵対していたギャング組織の白猿――複雑だった相関図は消え、集った全員が友であり仲間であり家族である。
 そこでいっちは純悟と再会する。



 て感じなんやろか。
 鉄馬はカポエイラ関係ないからホーダには呼ばれないし、まあ自由気ままに酒を飲んだり暴力を振るったりしているんだろう。



 これを想像上のものじゃなくて漫画として提示してもらえなかったのが、なんとも惜しい。







 以下、蛇足。
 自分は序盤もイケる派。一巻が仮に無名の作家に描かれたものだったとしても自分は続きを楽しみにしていたと思う。迫先生はどう思ってるんだろう。描き直せる機会をもらえたとして、描き直すのだろうか。

*1:敢えて本名は避ける。調べるのが面倒とかいう理由で。

*2:最終話で顔は描かれていないが、口元から下が一コマだけ映る。BJ戦で死んだのではなく、生存し、生存することによってギャングから足を洗うための最良のタイミングをものにできたのではないか、と匂わせる。が、確証はない。