デフレの正体 藻谷浩介
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷 浩介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 新書
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ざっとしか読んでないけれど、非常に面白かった。
まあ、人が減ってるところで、そう簡単に経済は成長しないという話。言われてみれば国内だけを相手にしている企業ってなかなかないよね。
パルテノン 柳広司
- 作者: 柳広司
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2010/10/05
- メディア: 文庫
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パルテノンは行ってきたばかりなので思わず買ってしまった。どの話も楽しめた。決して体験することのできない時代と場所を生き生きと描き出す描写力。悪と思っていたものが正義になり、愛だと思っていたものが裏切りになり、またその逆へと次々に展開するスピーディーな展開。そしてそのなかで明らかになっていく数々の伏線と最後に明らかになる一筋縄ではいかない結末。
でもなによりも僕は「はじめに」が面白かった。そこに描かれている「店のオヤジ」には私のイメージする知を愛した古代ギリシャ人の後ろ姿が透けて見えるきがした。
今、あるパルテノンは残骸でしかない。1687年、ヴェネチアの人々はパルテノンに武器弾薬とともに立てこもったトルコ人に攻撃を加え神殿ごと破壊。その後1799年、今度はイギリス人外交官がかろうじて残った部分をはぎ取ってイギリスに持ち帰った。
でも、残骸だからこそ僕らがいろいろと想像をふくらませる余白が残ったのかもしれない。もし完璧な姿のままいまに残っていたら柳さんは自分が描いた物語の登場人物と同じように「我を忘れたようにぽかんと口を開けて見あげる」ばかりだったかもしれない。
パルテノンの丘を上った人はだれもが、できあがったばかりの姿はどんなであっただろうと想像する。そうした想像する行為も含めて今のパルテノンがある気がする。
あの遺跡からこれだけの物語を書いた柳さんの想像力はすごい。というべきか、残骸となった現代においても人間の想像力を刺激し続ける建物をつくった古代ギリシャ人はすごいと言うべきか。
本格小説 水村美苗 200209
- 作者: 水村美苗
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/09/01
- メディア: 単行本
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一気に読んでしまった。
読み終わって夕飯を食べに町に出たけど、いつもの道を歩いていたら何だか泣きそうになってしまった。それは悲しいとか感動したとかいうものではなくて、突然世界が変わったので体が驚いているといった感じだった。
うまく言えないけどこの本のおかげで本当に幸せな時間を過ごすことができた。こんなにも美しい世界を作ることができる日本語は素晴らしい言語なのかもしれない。
勢い余って半年ぶりにブログも再開です。
地球が静止する日
SFは嫌いじゃないので見に行った。
地球を救うために人類を消しにきた異星人が、途中でなぜか「やっぱり人間にもいい面がある」と言って、半端に都市を破壊して宇宙に帰ってゆくお話。
残念ながら人に勧めるほどのいい映画とは思えなかったけど、途中で出てくる、人間を調べるために人間に化けて長年地球で暮らしてきた異星人の調査員の言葉は印象深かった。彼は
「客観的にみるとやっぱり地球のためには人を消すしかない、
でも僕は彼らが好きだから一緒に消えたい。」
と言っていた。
原作の「地球の静止する日」も読んでみた。こっちの方が、人間に対して鋭い批判(ネタとしては古いけど)が行われているような気がした。
016 into the wild
抽象度の高い言葉が連続すると、意味がとりづらい。例えば、「リンゴは赤い」といえば、それまでだけど「倫理は愛と対立する」とか書いてあると何の事だかよくわからない。それは「倫理」とか「愛」とう言葉が全然具体的ではなくて人によってイメージするものが違うからだと思う。ただ、それを書いた本人としては、そうとしか書きようのないから書いているわけで、それを別の言葉に置き換えてなんとか伝えようとするから、哲学書はどんどん長く難しくなっていく気がする。
抽象度の高い「哲学的な言葉」は、読み手の解釈を強く要求するが、人は置かれた環境によってずいぶん考え方も変わるので、「哲学的な言葉」も環境によって意味が大きく変わってくる。どんな言葉でもその意味は、環境によって変わるけど「哲学的な言葉」は特にその度合いが強いとおもう。酒の席で叫ばれる「友情」と、たった一人で暗闇の中でおもう「友情」は随分と違うものだろう。
「into the wild」で主人公はたくさんの「哲学的な言葉」を口にするが、その言葉たちは、主人公が死に近づくにつれ輝きをましゆく。人が社会を捨て、自然に近づき、孤独になればなるほど抽象度の高い言葉が、具体的にイメージしやすくなる。そして彼が死ぬ瞬間の映像にはまだ言葉にできていない、とても大切な人間の思いが表現されていた気がした。
(意味のないことを小難しく語ってカッコつける人たちはみんなアラスカにいけばいい)
何がいいたいかというと非常によい映画でした。