こるもの先生作品一覧
探偵は御簾の中 鳴かぬ螢が身を焦がす
魔界の底から 高尾の天狗短編集
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korumono.booth.pmレベル94少女から最後の挨拶 - 汀こるもの - BOOTH
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レベル94少女から最後の挨拶 Kindle版
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犯人たちの事件簿 渋谷白虹貫日ステージデザイナーズノート物理書籍版 | 汀こるもの
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犯人たちの事件簿 渋谷白虹貫日ステージデザイナーズノート Kindle版
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続・五位鷺の姫君3 縦横無尽のウォークラフト - 汀こるもの - BOOTH
Kindle版http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B089398YN4/migiwa0c-22/ref=nosim
探偵は御簾の中 検非違使と奥様の平安事件簿:講談社タイガ|講談社BOOK倶楽部
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FGOミステリー小説アンソロジー カルデアの事件簿 file.01 (星海社FICTIONS)
bookclub.kodansha.co.jp
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続・五位鷺の姫君2 有為転変のハニートラップ
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Kindle版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B084VS923Y/migiwa0c-22/ref=nosim
続・五位鷺の姫君 因果逆転のカースフォージ
https://korumono.booth.pm/items/1519712
Kindle版
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非モテヒキコモリコミュ障だけど平安時代だから結婚できてしまった ~落窪物語より~
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THANATOSシリーズ
パラダイス・クローズド
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フォークの先、希望の後 THANATOS
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リッターあたりの致死率は THANATOS
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赤の女王の名の下に THANATOS
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空を飛ぶための三つの動機 THANATOS
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061827766/migiwa0c-22/ref=nosim
立花美樹の反逆 THANATOS
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溺れる犬は棒で叩け THANATOS
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00ENC7MAM/migiwa0c-22/ref=nosim
アリス入城(THANATOS水槽読本より) Kindle版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00H6U1Z4W/migiwa0c-22/ref=nosim
設定資料編(THANATOS水槽読本より) Kindle版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0187MJPGC/migiwa0c-22/ref=nosim
完全犯罪研究部
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009YG89LS/migiwa0c-22/ref=nosim
動機未ダ不明 完全犯罪研究部
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00H76PZDW/migiwa0c-22/ref=nosim
少女残酷論 完全犯罪研究部
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00B1N5BXQ/migiwa0c-22/ref=nosim
れべきゅー
ただし少女はレベル99 出屋敷市子
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00J4G0R22/migiwa0c-22/ref=nosim
レベル98少女の傾向と対策
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00PSE3014/migiwa0c-22/ref=nosim
もしかして彼女はレベル97
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062990709/migiwa0c-22/ref=nosim
『レベル96少女、不穏な夏休み』汀こるもの|講談社ノベルス|講談社BOOK倶楽部
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01N51W9ZJ/migiwa0c-22/ref=nosim
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07JZ6X76G/migiwa0c-22/ref=nosim
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07BS4DYJQ/migiwa0c-22/ref=nosim
初花
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07G8NT7J2/migiwa0c-22/ref=nosim
長野家族サービスツアー3
煮売屋なびきの謎解き仕度 (ハルキ文庫 み 14-1) | 汀 こるもの |本 | 通販 | Amazon
新刊昨日発売です。当座、電書の予定はありません。よろしくお願いします。
泣いても笑っても3日目の朝が来た。
2泊目のホテルは晩飯がついていない分安く、温泉の露天風呂に風情ある虫の音が響き、ビジホと違ってベッドだけでなくテレビの前にソファーが置いてあり、そしてWi-Fiにパスワードがかかっておらず「セキュリティは自己責任」だった……
いや、ルーターにランダムな数字のパスワードを設定して各部屋にその数字を配ってくれ。
何となく冬場のスキー客向けの宿な気がする。
1泊目の温泉旅館は悪くないのだがなぜか前の客の荷物をワゴンに載せたのに俺のスーツケースはガン無視したという第一印象最悪の宿だった。
それなりの値段のところを選んだはずなのになぜだ。
さて3日目の予定はフリーだ。
帰阪するだけで最低7時間かかるが、俺は移動だけの日で終えるつもりはない。
14時くらいまでは観光したい。
俺「上田城を候補に入れたが、真田丸ブームのときならともかく今はどうなっているかわからない。戸隠神社は遠すぎるので善光寺にしよう」
姉「真っ暗な中でご本尊の扉に触れる戒壇めぐりというのがあるらしいぞ。内陣入場券600円」
俺「どうせならフルセット共通券1200円にしようぜ」
姉「シルバー料金がない」
俺「寺でシルバー割引してたらきりがないからだろう」
ということで牛に引かれて善光寺参りが決定。
カーナビをセットして高速道路に乗る。
スムーズな旅路。
姉「ちょっと待ってどう考えても善光寺は諏訪湖の方角じゃない」
こう気づくまでは。
出立前にGoogleマップ共有していたのが役に立ってしまった。
100km単位で道を間違えていた。
車載カーナビ【シンギュラリティ】(愛称)はどうやらひらがな入力「ぜんこうじ」で、長野県に3か所ある善光寺の諏訪市のを見つけてしまったらしかった。
この現象は尾道「せんこうじ」でも起きた。
というか全般に寺の名前は検索しづらい。
悲しいかな車載カーナビは5Gとかではない謎のネットワークで渋滞情報や気象情報をせっせと拾ってきてどこのパーキングエリアにサンクスがあるとか知っているのに、iOS16のYahoo!カーナビより遥かに頭が悪い。
【シンギュラリティ】はもうサンクスが全部ファミマになってしまったことは知らないし人間には見えないがこいつだけガソリンスタンドだと思っている【幻影】もたくさんある。
しかし画面が見やすいのは圧倒的に車載カーナビなのでこういうことになる。
俺「俺この旅で安曇野5往復くらいしてるー! てか最初から戸隠行ってた方がむしろ近かったなー!」
ファンボックスのネタに事欠かない家族サービス旅一行。
読者サービスでもあるのか?
やっと12時過ぎに長野市到着。
俺「……!? と、都会だ!」
よく「日本はイオンとフランチャイズファミレスで地方がどこも同じ景色になってしまう」と言う。
安曇野にはいくらセブンイレブンと牛丼屋があってもこれは全く当てはまらなかったが、長野市はガッチリそうだった。
ここに来て昨日までいた安曇野が口笛がなぜか遠くまで響いて日本ぽくない杉でも松でもないメタセコイアめいたやたら大きい木が至るところにそびえ、元傭兵の偏屈なアルムおんじとあの雲が私を待っているとびきりのアルプスの麓で、長野市が灰色の雲に覆われた石の町フランクフルトであることが判明。
アルプスで彼岸島を読むな陰キャ。
俺「……この片道三車線の【都会】の幹線道路沿いにリンゴ畑があるのを見ると、信号なしの山道15km先で南アルプス天然水に育まれていたあのリンゴ農家のリンゴにプレミア価値つくな」
姉「だろう!?」
俺「レギュラー178円だ! 安曇野に持っていく方が手間がかかって高くつきそうな気がするのに何であっちのが安かったんだ!? 日本経済がわからん! 都会の人からは多めにガソリン税を徴収しているのか!?」
安曇野のガソリンスタンドはセルフとか言って支払いを付属のコンビニでやらせてついでにドライブ中の飲み物やらガムやら買わせる気満々だった。
その後、大阪府下の我が家の近所に安曇野より安いガソリンスタンドを発見。日本経済がわからん。
しかし長野市はただのフランクフルトではなく川中島古戦場の史跡が国営公園になっている。多分武田信玄が軍配掲げて上杉謙信の刀を受け止める像がある。特に推しではないので考えないようにする。
古戦場があるのは岐阜県みたいだが岐阜県は馬が突進できないように都市部のあちこちに変なカーブがある、そういう仕掛けはない長野市。
姉「前の職場の人に好きな戦国武将を聞いたらすごい悩まれた」
俺「で、答えは?」
姉「浅井長政。わたしはただ織田信長が好きか嫌いか聞きたかっただけなのに」
俺「それは重度の信長の野望プレイヤーでうっかり二階堂盛義とか長宗我部とか六角とか答えられないという配慮だったんじゃないかな。そういうことにしておこう。てかその質問、範囲が広すぎるから最初から信長・秀吉・家康の三択に絞っとけ」
さてこるもの先生は御朱印帳の3冊目がそろそろいっぱいになりそうなので、御朱印集めを卒業することにした。
神田明神・讃岐白峯寺・太宰府天満宮もコンプしたし棺桶に入れる分には3冊で十分だろう。
御朱印帳3冊の功徳で帳消しにならんほどの罪業があったら諦めよう。
俺「仁王さまは……高村光雲!? 最近の人だな!? 運慶快慶とかじゃなくて!?」
この神社仏閣マニアがうるさい2022。
俺「ここも頼朝と桂昌院かよ。俺、頼朝が寄進した寺も桂昌院が寄進した寺も今年3軒目だぞ2人ともそんなに金が余って宗教に入れ揚げてたのかよ」(※寺の単位は「寺」です)
南都焼き討ちの反動で源氏がものすごい勢いで寺社勢力を味方につけていたことがわかる。
帰ってから調べたら善光寺、この辺の寺社勢力としては超大手だったんだね。
寺宝館とか見て確認したかったが豪快に道に迷って時間が押していたこともあり、入場料払って見るのはお戒壇巡りを含む内陣だけということに。
100kmも道を間違えていなければ寺宝も見たのに……
境内のあちこちに入場券を売る券売機があるのが違和感。
1か所に1台しかないのも違和感。修学旅行生がたかると使えなくなる。
入口に3台くらい置いて共通券ばっか売った方がいいんじゃないの?
内陣に入ったところ、何やらの祈祷があってありがたいので見ていけと言われて聞くことになる。
定例の勤行とかではなく、よその人が頼んだ健康祈願とかの祈祷だった。
俺「……祈祷頼んだ人、新潟はわかるけど京都もいたな」
姉「京都の寺で祈祷してもらえばいいのに」
上方から目線を炸裂させる俺たち。
お戒壇巡りとは:
善光寺の本尊は仏教伝来の時代に蘇我氏に打ち捨てられたものを拾って大事に保管していたものなので、一般公開していない。代わりに鎌倉時代に作った像を7年だか4年だかに1回ご開帳している。
お戒壇巡りでは真っ暗な地下通路を通って本尊を封じた部屋の錠前を手探りで触って本尊と結縁する。
何で錠前触ったら本尊と結縁することになるのか理屈が全くわからん。
わりと足許に点々と小さい電球ついていて前の人の背中くらいは見えるのだが、それでも現代にあるまじき暗さで非日常感がある。
何か、前の老夫婦のおばさんの方がメチャパニクって小さく悲鳴を上げており、途中で立ち止まった。
このご時世、赤の他人に接触するのは避けたい。
闇より密の方が怖い。
俺の後ろは家族だからどうとでもなるが、前の人にあんまりぶつかりたくないので渋滞が発生。
どうなることかと思った。
俺「なかなか愉快だったが怖さ、やり遂げられなさでは東大寺の柱の穴をくぐるやつの方が上回ると思う。あっちは成し遂げられなかったときどうなるかの恐怖が違う。非日常体験で信仰心を強制発生させると言うなら巨大な長谷観音の足の指を触らせて無理矢理ひれ伏させる方がテクニカルだった。足の指を触って結縁する方がわかりやすいし。そもそも闇が恐ろしいのはここ最近ではないか? 電灯が普及するより前はこれくらいの暗さは日常では?」
御朱印帳3冊目の寺マニアは傲慢だった。
姉「仏教に宗派がまだなかった推古天皇の頃の……?」
俺「嘘つけ。南都六宗ナメんな」
※仏教伝来から遣隋使で南都六宗の僧が来るまでにタイムラグがあるらしい。
俺「さあリンゴ狩ってジビエとジンギスカン食ってわさび農園行って上高地に思いを馳せて諏訪湖を見て蕎麦を食って善光寺にも来た、長野で果たすべきノルマを果たしたので帰阪!」
姉「いつも旅ってこんなギチギチに用事詰めてんの?」
俺「ギチギチに用事を詰めつつ神社の階段とかで挫折して近所のWi-Fiの入る茶店で2時間ツイッター見たりしてる」
姉「楽しい?」
俺「俺はキミが何年かに1回南国リゾートに行きたいとか言い出す方がよくわからない。くつろぐのは家でよくない?」
噛み合わない家族間の旅行概念。
帰りは7時間の車の旅とのことだったが、名古屋で路上に落下したプロパンガスボンベが爆発。朝に爆発して夜まで撤去してたので岐阜県まで大渋滞。
姉「思えば親戚が全員大阪府内で完結している俺ら、盆の渋滞という概念と無縁で生きてきたがあれってそんなに親族の圧すごいのかな」
俺「言うて俺もコミケ出てたときは新幹線の通路に座ったしな」
もう高速バスに乗る体力はない俺ら。
他人に遠慮しながら寝るより起きてる方が楽なんです。
お疲れさまでした。
長野家族サービスツアー2
(前回までのあらすじ)
家族サービスでやって来た長野県安曇野。
なぜか姉は道端にリンゴの木が存在し、リンゴの実が生っているのを目撃した途端に人が変わってしまった。
姉「リンゴ狩りじゃー! 一般的にシーズンは8月上旬から12月までって! 今は9月後半!」
……そういえば昔、遠足で葡萄狩りに連れていかれたっけなあ。
幼稚園の頃。ということは40年ほど前。
俺「……果糖は血糖値を上げやすいぞ。リンゴってその場でそんな何個も食えるもんか? 宿の売店で4個500円で売ってたの、そこそこ安くない? スーパーの相場は1個150円?」
姉「リンゴを【木からもいだ】という実績を解除したい! 梅と桃と柿とブルーベリーはうちの家でも獲れるしイチゴは河内、ミカンは和歌山、梨と葡萄は岡山まで行けば可能だが、リンゴの南限は長野、北限は青森で意外と北海道では獲れない!」
俺「実績解除……リンゴはそんなポケモンみたいなもんだったのか……」
姉はその昔、奈良県で柿をもぐ仕事をしていた半農人である。
こうして書き出すとうちの畑で獲れる果物、多いな。
俺「わかった、キミがリンゴをハントすることに反対はしない。ただ、世間にはそこにいる全員が参加者にカウントされて料金を取られるタイプのバイキングやアルコール飲み放題があるな? どうにか俺だけカウントされない方法を検討して。最悪、駐車場でスマホの電書読んで時間潰すから。あんなん学校行事数十人数百人で行くから時間がかかるのであってキミがリンゴを狩っても作業時間はせいぜい1時間以内だろう」
姉「よし、こるものさんは車で待っていたまえ。じゃらんで宿の近くのリンゴ農家を予約した。入場料なし、リンゴを収穫して持ち帰る分の料金が発生するタイプのリンゴ狩りだ」
インターネット社会すげえな。
それで翌日やって来たリンゴ農家。農場ではない、農家。
農家の横に車駐めて1人、マガポケで『彼岸島』読んでたら他に2組くらいリンゴ狩りの客が車で来た。結構賑わっていた。
まあどっちかというとこんなところに来てソシャゲやってマガポケのデイリーチケットが勿体ないとか言って彼岸島読んでた俺の方がおかしいわな。
しかも彼岸島は期間限定無料イッキ読みキャンペーン中だった。
しかし無料だからって1日で一気に全巻読みたいタイプの話ではないのも確かだった。
髪短くて童貞臭が濃い初期の宮本明、見ててむずがゆいな。
農家のあんちゃんがリンゴの品種をいろいろと教えてくれたが、「フジ」以外全然聞いたことないやつだったような気がする。
姉「獲ったどぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
何だか知らんがリンゴ欲は発散されたようで何よりだ。
健康に腹が減ったら、昼飯は有名な鹿ジビエの店だ。
関西人はジビエに対して独特の感情がある。
俺「……日本人の一般的な宗教感覚に照らし合わせて、奈良県の鹿ジビエって食べにくくない?」
姉「わかるー」
奈良公園の鹿は春日大社の神鹿、神の使いとして崇められている。
春日大社は藤原氏の氏神。
かつて、鹿を殺した者は【石子詰めの刑】に処されたらしい。
石子詰めとは:罪人を生きたまま首まで穴に埋めた後、近所の皆で死ぬまで石を投げつける(※諸説あります)
このため、奈良県では朝早くに起きて家の前に鹿の死体がないか確認。死体があったら隣の家の前に移動して自分は知らん顔をする、という県民ジョークが近畿一円でまかり通っていた。
俺「奈良県飛鳥村で鹿ジビエ串の屋台が賑わっていたのを見たことがあるが、どうせなら長野県の罪のない鹿ジビエが食べたい。原罪の穢れなきギルティフリーの鹿肉を」
姉「別に藤原氏に気を遣う理由ミリないけどな。今どき、鹿は害獣で農家の被害が洒落にならんらしいし食べて応援しなければ」
俺「リンゴを鹿から守れ」
ということでまた15km車をカッ飛ばしてやって来た。
そしてついに今回の旅のメインイベントである大王わさび農場。
観光バスが何台も駐まり、修学旅行生もいて景気がいい。
が。
俺「……入場無料ってここ、わさび関連の土産物を売ってわさび関連のフードコートで飯を食わせて……それだけのためにバスでドカッと観光客を連れてくる場所、そういう需要はわかるが、入場料無料でこんなにピカピカのトイレが建つほど儲かって……? 無料だから近所から犬の散歩の人が来てるが……」
俺「……わさび農場ってわさび掘ったりその場でサメの皮でおろして蕎麦を食ったりするのかと思ってた」
姉「蕎麦は食わせてるかもしれないがわさびは掘るものではない」
俺「なんか、リンゴ狩りしといてよかったな」
俺「……これ、修学旅行生は何も悪いことができない場所だから連れてこられるやつでは? ちょっとやそっと抜け出しても盛り場が近所にない。俺が高校生のときは北海道の山奥の綺麗な滝や湖だった」
姉「飛鳥村の亀石とかもそんなんだ。どうせ田んぼと石しかない」
俺「で、俺たちはこの後は? 近くの、日本百名山の田淵行男記念館に行って?」
姉「昨日、旅館の飛騨牛つきの豪華な夕飯を食べたので夜はその辺に死ぬほどある信州蕎麦を食べる。昼がジビエでこってりしてたから夜はあっさり。長野に来たからには蕎麦でしょ」
俺「おやきはパーキングエリアでも食べられそうだし、俺あんま野沢菜入りのには興味ない。小豆あんのがいい」
父「梓川を上流に向かって上高地を眺めたい。車で道路を通るだけでいい」
俺「……ちょっと待った。【梓川】を経由する地点をカーナビに設定できない」
父「梓川を上流に向かって」
俺「上流という概念は俺にもGoogleマップにもない!」
姉「川沿いに道路がなくはない」
俺「その道路を通る地名をカーナビが知らん! その辺の住所がまるで登録されてない! 生協センターはダメだった!」
父「上流に」
俺「このカーナビ人間に川の水面を見て上流か下流か見定めてからハンドルを切れと!?」
ここでもう1つ問題が発生。
俺「お、おい……Googleマップを見てたらこの辺の蕎麦屋、全部【15時】閉店だぞ!? こうしている間にも売り切れた端からどんどん閉まっていく!」
姉「マジで!? ……うおおおお、ホテルが晩飯なしだから安いプランだったがこうして見ると近所に夜に開いている飯屋がない!」
俺「安曇野や穂高の住民は晩飯を外で食わないのか!?」
姉「一番近い夜営業のチェーン店が15km先のスシロー!」
父「梓川を上流に上高地を」
姉「蕎麦は明日、善光寺で食べよう」
善光寺編に続く!
長野家族サービスツアー1
これまでのあらすじ:
遺産相続で共闘していた父と叔母(父の兄の配偶者)は遺産相続後もちょいちょい遊びに行ったりしていた。
このコロナ禍で年寄り友達とつるんで遊びに行くのが難しくなっている昨今、遊び相手がいるのはいいことだ。
何より叔母さんのオゴリなのがデカい。
向こうはあんまり娘夫婦から孫に還元したりしておらず、金が余っているらしい。
ならばこちらが有効利用して世間に還元した方がいいのだろう。
うちは俺しか車の運転ができないので叔母が運転してくれるのはありがたいし。
俺も忙しかったりでいろいろと状況が把握できない。
父「来週、北海道に行ってくる」
俺「北海道のどこに?」
父「さあ?」
……さあ、とは?
俺「北海道と言うからには3泊くらいするのでは? 1泊や2泊では元が取れないのでは?」
父「話し合った結果、熊野にした」
俺「北海道とえらい違いだな? しかし熊野なら俺も行きたい。おごって」
こうしてこるもの先生は熊野古道の資料を集めた。
俺「そもそも熊野三山とは修験道の……山の神と海の神と……熊野古道平安装束コスプレ屋! ええと午前と午後と予約で……」
父「あ、熊野、取りやめになった」
俺「は?」
父「叔母さんが急に寝込んで」
俺「まあ……あんたより年上だしな……コスプレ屋を予約する前でよかった」
~8月~
俺「ああ修羅場が忙しい忙しい」
父「突然だが明日熊野に行くことにした」
俺「……は?」
父「那智の滝にだけ日帰りで」
俺「は、はあ」
~次の次の日~
父「はい、これ、昨日のお土産、きびだんご」
俺「……那智勝浦は和歌山では?」
父「うん、岡山に行った」
俺「よく考えたら叔母さん、免許返納しなきゃいけない年齢じゃないのか!?」
この噛み合わなさに何だか恐ろしいものを感じたので修羅場が明けたら俺の運転で旅に出ることになった。
もう信じられる手段は自分でハンドルを握ることだけだ。
なお、父は去年無理矢理認知症検査に連れていって「年相応に物忘れが激しいがそんなもんです、次は2年後」の診断が出ていた。
元々運転免許を持っていない。
叔母さんは知らん。娘夫婦が何とかしてほしい。
俺「で、熊野?」
父「いや、長野県に行きたい」
俺「何でこれまでと違う地名が出てくるんだ……?」
しかし父は元々山男で日頃、長野の話はよくしていた。
60代で体力の衰えを自覚して引退しただけで。
まあ山の麓ならいいか。
どうせ長野なんて電車で行っても現地で車が必須になるのに決まってる。俺は詳しいんだ。
姉「でも長野の道とか細いんじゃないの?」
俺「最近はナビの道幅指定をちゃんとするようになった。俺はこないだ伊豆に行ったばっかりだし東は足利まで行ったことがある。針インターを制した俺を信じろ。で、長野のどこに行きたい?」
父「長野と言っても諏訪大社は別にいらん」
俺「そうだな。俺も行ったし4つも行かなきゃならんし。じゃ松本城、善光寺、戸隠」
姉「安曇野大王わさび農場」
俺「……わさび?」
父「大王わさび農場」
……昔から父はよく俺らを盆栽展に連れていった。
俺は全く盛り上がらなかったが、姉は適応して今に至る。
桜の花見に行って酒を飲むのではなく花の品種を気にするのはこの人たちくらいである。
俺「……もしかして君ら、俺の企画の神社仏閣参りはあんまりお気に召してない……?」
父「いや、まあまあ」
姉「松本城は階段が嫌」
俺「はい。俺も城の違いはそんなに知らないです。とにかく行きたい場所をこのGoogleマップのマイマップに登録して共有してください。俺はわざわざ長野まで2泊3日で行くからには目的がほしい」
姉「はい」
その後、これがとても車で行けない登山道の目印であったことが判明する。
俺「ややこしいから何かもうさっさと9月19日とかに行っちゃったりする? 1日目はどうせ高速に乗るばっかりだから祝日とか関係ない」
姉「残念ながら台風直撃だ。それどころじゃない」
俺「はい」
姉「次の週も天気が悪くてイヤだがこれ以上待てん」
ということなどあって、26日出立となった。
当日。
俺「車の旅は荷物が重くなってもかまわないという利点があるので飲み物をスーパーなどで安く買って車に積んでください。コンビニでトイレ借りると何か買わなきゃいけないのでそのときに飲み物を買うが、パーキングエリアはトイレ使っても必ずジュースを買わねばならないわけではないのでスーパーや酒屋の安いのを買って持っていく」
姉「トイレ近くなったらまずいからあんまり飲み物飲まない方がいい?」
俺「逆。1日中車に乗ってると最悪、エコノミークラス症候群になるので血栓を作らないようにじゃぶじゃぶカフェインと水分を摂って1時間1回休憩を入れてパーキングエリアのトイレで関節の曲げ伸ばしをしろ。俺たちは若くないし糖尿病で頻尿だ。あと、初日は旅館で豪華な晩飯を食うのが確定しているので昼は雑に各自、パーキングエリアでラーメンやコロッケなど食べるように」
なので、高速道路に乗るとナビの計算する到着時間+2時間くらい読んでおくべきだ。
俺「俺は運転席に2つあるドリンクホルダーの片方をゼロコーラなどのカフェイン飲料、片方を真水にしている」
姉「えっ冷えてない真水は無理。麦茶じゃないと」
俺「……だから我が家にはやたらと麦茶のペットボトルがあったのか……」
家でも沸かしているのになぜ外で麦茶の600mlボトルを買うのか不思議だった。
さて出立。
姉「ああっ!」
俺「な、何? 忘れ物?」
姉「スムーズに高速に乗った!」
俺「……カーナビに従っただけだが?」
なぜかチート主人公のような扱いを受ける俺。
姉「名神高速に乗ったー!」
俺「関西から東に向かうんだから当然だろう……君らは叔母さんの車でどんな目に遭ったんだ……叔母さんはそもそもナビも使えているのか……?」
姉「あのナビ、北が下向きに表示されるのが慣れなくて」
俺「普通、ナビは進行方向に向いて画面が回転するのでは……ていうかこのナビ、いつも新名神でいきなり道を忘れて発狂するのに今日は名神高速だな!? 機械の分際で人を乗せるときだけ格好つけやがって!」
初日はともかく、帰りにナビが新名神を避けたのには理由があった。
俺「フツー大阪に近づくのに渋滞する、名古屋を通るのに渋滞する、というのはあるけどこれは静岡の洪水の影響あんの? てか明日(2022/9/27)は高速生きてんの?」
姉「行き先が長野でよかったよな」
岐阜県のどこかで自分のためにシャレオツな500円のういろうセットを買ったはずなのになぜか帰宅した今に至っても荷物の中に見つからない。
さて。鎌倉時代直前、平家は木曾義仲の台頭を見すごすことができず北陸攻めを敢行。
数万騎の軍勢を派遣するが、数で劣る木曾義仲に惨敗。
特に砺波山の戦いは「親と子、兄弟が互いに先を争って谷に落ち、平家軍の屍で谷が埋まった」と言われるほどであった。
しかし当時の記録は大体鎌倉の北条氏が残したもの以外、京都在住の貴族が書いていたため京を離れた戦場で具体的にどのような戦術が取られたか詳細は不明で、現代の歴史家たちはこれといって勝因・敗因を断定できなかった――
丸1日高速道路で甲信越を突っ走った俺「関西から300kmも400kmも遠征してきた先のアウェイで勝った後の報酬も特に約束してないのに、兵站があって士気の高い現地民に勝てると思う方がおかしいんじゃ!」
冷静に考えると木曾義仲も水島や宇治川などのアウェイでは負けていたのでものすごい天才ではなかったのかもしれない。
夕方頃になって安曇野で高速を下り、黒部アルペンルートを臨む大町温泉郷を目指す。
俺「第一蕎麦屋発見! 第一わさび屋発見!」
姉「蕎麦屋はともかくわさび屋!? わさび専門店でやっていけるのか!?」
俺「いけるらしいぞ、この道メチャわさび屋の看板ある! ……【たぬき】って看板あったぞ、たぬきの何!?」
後でググったら単にそういう名前の食堂があるらしい。
俺「【BIG、17km先】って一体何なんだよBIG……」
イオン系列の複合店舗らしい。
全国的に見かける大型の電気屋、ディスカウントストア、牛丼屋、コンビニが立ち並ぶ幹線道路沿いを走ったが、本物の都会より随分歯抜けに思える不思議な道沿い。
「穂高城」が城の形をした寿司屋の類であることはまあ大体わかる。
(※その後、ググったら旅館だった)
「アルプス座禅」の謎の看板、これだけ唯一ググっても正体がわからなかった。
ロシア柳生っぽいアルプス座禅。
俺「……常々疑問だったが日本アルプスって日本にヨーロッパのアルプス山脈の存在が知られる前は何て呼ばれてたんだ?」
父「ええと、飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈だが明治になってイギリス人が日本アルプスと称して以来そっちの方が有名に」
俺「外圧かよ。日本にしかいないのになぜか外国人の名前がついてるシーボルトミミズとかシュレーゲルアオガエルとか」
姉「むしろそっちは外国人が名前つけるまではどうしてたの?」
俺「フツーにミミズとかカエルとか呼んでて種類まで記録してなかったんじゃないの。俺、アマガエルとシュレーゲルアオガエルの見分けつかんし」
参考:
アマガエルとアオガエルの見分け方 - 広島大学デジタル博物館
俺「地上(※高速道路でない場所の意)でガソリンを入れなければならない。高速道路のガソリンスタンドは足許を見て鬼みたいな高値を吹っかけてくる、さっきレギュラー187円とかだった」
2022年はウクライナ情勢や円安の影響があるので日記にもガソリンの値段を書いておこうと思った。
俺「今すぐ入れるわけじゃないからとりあえずガソリンスタンドの看板を見て相場を観察してくれ」
姉「安曇野メチャ安い、レギュラー会員価格167円……リンゴ!」
俺「何て?」
姉「木にリンゴが生っている! 初めて見た! リンゴ狩りがしたい!」
俺「……え?」
姉「リンゴ狩りじゃ!」
こうしてハンドルを握っている俺にはよくわからない理由で、突如姉が「リンゴ」しか喋らなくなった……
続く!
當麻寺への道・2
……1のアップ日がいつって?
8月はずっと原稿を書いて血糖値を測っていました。
煮売り屋なびきの謎解き仕度
お江戸ほっこり下町人情グルメコージーミステリです。
養い親のじいさんが旅に出たのでその間、飯屋で留守番してる14歳のなびきちゃんがあれやこれや問題を抱えた客に料理を作って出すと何か解決します。
「こるもの先生そんなの書けたんですか?」
書けなかったので今の今までえらいことになってました。
何でそんな向いてなさそうな仕事してたんですか。
いやいろいろと思うところあって……
ほっこりお江戸人情は需要が強いんだよアンソロ出てる!
逆に今、異能力バトルは書き手が余ってるが需要は……とかモニョモニョと。
まあ俺は異能バトルの人ではない……のか?
わからん。今となってはもう何もわからん。
「後々ストーリーで回収しなくていいから江戸雑学多めに入れて!」と言われたくらいで思ったよりいつも通りです。
本当にこれはほっこりお江戸人情なんですか。
すげーほっこりしてるよ猫でアライメント調整もしたよ動物を無駄に殺したりもしてないよ。
まだ生きている魚介類を新鮮なうちに調理したりはした。
この次は探御簾4です。トリック以外は大体できてる。
それは何もできてないのと一緒では?
いやできてるんですよ。
とりあえず祐高さまはどのツラ下げてか兄上が持ってきた新巻鮭食うところからな。
(※平安時代における新巻鮭は登録番号つきの松阪牛すき焼き肉に匹敵する。東北でしか獲れないから)
さていよいよ奈良博の展示が始まったので。
この下書き書き始めた頃はそうだったんだよ。
まず『趣味どきっ! アイドルと旅する仏像の世界』で室生寺を紹介していたのでそちらへ。
女人高野って九度山慈尊院のことかと思ってたよ。
ってどうやら提携キャンペーンしてるらしい。
宇陀室生寺、河内長野金剛寺、九度山慈尊院、高野女人堂の4か所らしい。
本日は普通に南都の中心に来てから天理方面に逸れて20kmばかり凄まじい山道を走ることになる。
高速道路に乗せられる、とビビったら無料区間だった。
どんだけ人が来ないのか。
砂利トラしかいないじゃん。
高速道路の無料区間って何km/h出していいのかビミョー。
折角だから針インター、針テラスに寄っておけばよかった。
何があるのか知らんが地図ではやたらと目立つので。
奈良の実績解除ポイントじゃないのか針テラス。
これより秘境に行くにはもう十津川村しかないぞ。
さてここ、罠がある。
堂々とオフィシャル駐車場のような顔をして現れる駐車場看板、長谷寺のメインストリートの一番最初。
長谷寺本体まで歩いて5分以上かかる。
しかも400円も取る。
しかし駐車場の階段を降りて下の道にある「事務所」にわざわざ金を払いに行かねばならない。
……この事務所、人、いるの?
ついに金の払い方はわからなかった。
人を罠にかけておいて商売する気あるのか。何なんだ。
相撲館といい奈良県はもうちょっとやる気になれ。
それで一番デカい看板の駐車場から歩くこと5分ほど。
観光客、いなくはない。
しかし地元民の生活感にあふれていて何か、いたたまれない。
地元の人が世間話をしているところに観光客、いづらい。
土産物屋が生きてるのか死んでるのかわからなくて気まずい。
本堂まで階段を登ったら息が切れたので桂昌院のナントカを華麗にスルー。
この少し後、姉にせがまれて螺鈿細工体験しに嵯峨行ってついでに清涼寺千本釈迦堂に行ったらそこにも桂昌院のナントカがあって、よっぽど成り上がって金が余って宗教に突っ込んでたんだなとなる。
ここで出会った素敵な生き物。
一通り見たらまた針インター通ってブッ飛ばして、いよいよ奈良国立博物館の中将姫特別展へ。
入ったらいきなり中将姫曼荼羅、を納めた厨子の戸が展示してある。寄進者の名前が書いてある。
「源頼朝」「北条泰時」
……あ、これでこの特別展してんのね。
思った以上に當麻寺は頼朝から寄付をもらっていた。
展示。
・平安時代中頃、當麻寺に「絹製の」曼荼羅が納められる
↓
・鎌倉時代、頼朝が奈良県の寺に寄進しまくった影響で當麻寺が有名になる
↓
・當麻寺の曼荼羅が蓮糸で織られたものという伝説ができる
↓
・蓮糸で曼荼羅を織った「女の身で生きながら極楽往生した奈良時代の横佩大臣の娘・中将姫」のキャラクターが誕生
↓
・頑張って絹糸に蓮糸を混ぜて曼荼羅を織る人が出現する
↓
・蓮糸曼荼羅がだんだんどうでもよくなって中将姫が長谷寺の観音さまのはからいで授かった子だとか継子いじめに遭っていたとか幼くして女官としての才覚を見せたとか帝の求婚を断ったとかチートが盛られる
↓
・折口信夫が過剰なチートを削いで奈良時代っぽい要素を足して『死者の書』を書く
中将姫伝説は最終的に江戸時代に
「継母にいじめられ、妖術で既婚男性に言い寄る中将姫の歌舞伎」
が出現するに至ったと……
江戸時代の人、何でも同じ味にするんだな!
いやこれは現代の俺らが言えた義理ではないな……
何か折口信夫の気持ちわかるわ……
この日、1日で走行距離150km越えていたが得たものは大きかった。
長谷寺はともかく室生寺は中将姫に何も関係なかったけどな!
當麻寺への道・1
これの予習として當麻寺に行くことになった。
折口信夫『死者の書』はハードルが高いので近藤ようこのマンガ版を読んでからポツポツ読んでいる。
図書カード:死者の書
いつも奈良に行くルートは生駒山経由だが、當麻寺は葛城なのでまず大阪府を河内方面八尾市まで南下して二上山を越える。『死者の書』も二上山から話が始まるので。
……大阪府内なのに北摂の人間が知らん景色が広がってるな……
ブドウ狩り農園とか……
えっ伊勢物語『筒井筒』の河内国高安ってこんなところ? マジ?
「風吹けばおきつ白波たつた山 夜半にや君がひとりこゆらむ」
って「カネモチの女がおるゆうだけでわざわざ夜中に山越えてそんなとこまで行かなあかんとか男の方は大変ですねすごいですね吾が君、おかわいそうに。まああんじょうおきばりやす」ってえげつないイヤミだったのか? 京都からこんなとこまで一晩で来れんの?
道の駅とか寄ってみようかとも思ったが対向車線だったのでやめた。
コンビニの駐車場がやたらと巨大で「公衆トイレ兼雑貨屋」という体裁に変わる。何か地産野菜も売ってるし。
伊豆の国市大河ドラマ館もオフィシャルグッズの他にジャガイモやトマトや手作り蒸しパンなど売っていた。やる気があるのはいいことだ。
ナビが紹介するので葛城観光駐車場というところに入ったが、ここは相撲館の最寄りで駐車場代は相撲館まで払いに来いとものすごく観光客の善意に頼っていて遮断機など機械的精算システムが何もなかった。
當麻寺まで歩いて5分以上。
黙って當麻寺最寄り駐車場に駐め直した。そちらは普通に下に跳ね上げ板と機会精算機がある。
當麻寺が近すぎて当初、どこが當麻寺かわからず、ぐるぐる周囲を巡ってやっと山門から入って、境内裏口からぱっと見たら俺の駐めた車が見えた。
結構お高い拝観料を取る。そのせいか、各御堂にはエンドレスでラジカセで数分の解説を流している。CDかもしらんが。
「平重衡の南都焼き討ち以来~」
……………………………………。
流石に重衡はこんなとこまで焼き討ちに来てないが、反平家寺社だったということで信心深い頼朝はかなり當麻寺に貢いだらしい。鎌倉時代に建てた御堂がある。
南都焼き討ちで焼け残った仏像を引き取ったりもしたらしい。
規模のわりに仏像コレクションが多彩。
宝物殿には中将姫に関する宝物、陀羅尼助丸を煎じた釜など展示されている。陀羅尼助丸の歴史は古くは役小角にまで遡り……
奈良県の古い建造物、どこもかしこも役小角と弘法大師いるな。
中将姫の舎利……あ、何となく綺麗な白い石ですねこれは。そんなもんなんですね。
今なら入山料、ご本尊特別拝観、大講堂併せて2000円になるところを共通券を買えば1700円とお得に!
……本当にそれはお得に?
首を傾げながら特別拝観に入る。
そして本堂に入り、全長1,018.0cmの十一面観世音菩薩立像の足もとに。
全長10メートル、外から俯瞰すると「へー」くらいなのだが、足もとまで行って顔を見上げるとかなりの巨大感威圧感がある。
そんで「観音様に願いを伝える」と称して足の指に触れる(※感染症対策のために紙1枚挟む)
触れた後は観音様の周囲を右から1周する。
……巨大超越存在の足もとにひれ伏す儀式、予想よりマゾくてやべえな……
これ考えたやつ変態じゃないの……
他に人もいないのであまりに楽しくて3周してたら「その裏に他の仏像もありますよ」と係のお姉さんに訝られた。
像自体は室町時代の作だがその前にあったやつが何度か焼失して作り直したらしい。菅原道真が書いた長谷寺縁起文によると……何か出発点から大ボラ吹いてない?
8世紀の徳道上人が像を造ったらしい。
……何か「寺に泊まった」くらいしか記述がないが……?
また、講堂には「玉鬘観音」なるものがあった。源氏物語で玉鬘が長谷寺に詣でて運が開けていくのにあやかって作ったらしい。
……後世にファンアートが作られるこの感じ、何かすごく……
いや、これくらいがっついて行かないと1200年生き延びてはこられなかったんだろう……
既に當麻寺に行ったのに2に続く。
白桃殿さまご乱心・設定・あとがき編
あとがきです。ネタバレ注意。ここに置くものは後で消したりしないので慌てないでちゃんと本編を全部読んでから読んでください。
『探偵は御簾の中 白桃殿さまご乱心』(汀 こるもの):講談社タイガ|講談社BOOK倶楽部 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000363451
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伊豆配流ツアー 2日目・修善寺編
と一念発起して入れたレギュラーガソリン、164円。
静岡県の最安160円~最高170円の丁度中間。
てっきり修善寺に近づけば近づくほど高くなると思っていたが、近づくとむしろ安い。
狐につままれたような気分。
言うて来週200円台に上がるかもね。
歴史の1ページとして記録しておく。
しかし修善寺には罠があった。
ネットに書いてある「修善寺オススメの駐車場」がカーナビに表示されないのだ!
車に固定のナビ、スマホのナビ両方で検索してもダメ!
ノイズが多すぎて絞れない!
住所でも出ない!
修善寺は人が来て当然なので努力をしていない!
ガッデム!
車で来るような情弱に配慮はない。
しかも土地勘のない関西人の来訪を修善寺は想定していない。
俺だってなぜか日光東照宮には1回も行ってないのに2回も久能山東照宮に行くことになって「もう2度と静岡県には行かねえ」とそのたび誓っているのに調子こいて修善寺にまで行くな。
温泉街を通りすぎて山に入ったり、30分くらい格闘した後でやっとそれらしい駐車場に到着。
死ぬかと思った。
しかしそこは修善寺としては端っこだった。
折角来たんだから範頼墓隣の茶店で何か食べるか……
昼飯まだだし。
と思ったのに看板は無常に「本日休業」
木曜なんかに来るのが悪い。知ってる。
頑張って修善寺のメインストリートを目指す。
この「範頼墓」、スタンプラリーの最後の難関なのでは。
土産物屋とか全然ないぞ。
それはそうとそろそろ何か食わんと血糖値がヤバい。
日が射して暑くなってきたし、冷たいもの。
冷たくて血糖値が上がるもの食べれてトイレ貸してくれるなら何でもいい。
宝物殿の入場券をお守り授与所で買う。
……お守り授与所に北条政子の母子守りあるのはブラックジョークか?
どういう気持ちで売ってるの?
死因宝具?
宝物殿は岡本綺堂『修禅寺物語』激推しだった。
帰ってから青空文庫で読むことにする。
って短めの戯曲だったからここでスマホで読んでもよかった。
激推しのわりに「『修禅寺物語』は頼家以外全員岡本綺堂のオリキャラですよ」という謎の断り文句が書いてあった。
まあフィクションと史実は分けるべきであるが。
そんでここも北条早雲で新九郎聖地だった。
本当にこの辺で活躍してたんすね。
公暁の写経とかあった。まだギリ文字が読めた。
さて、寺に行ったら最後の難関は万寿もとい頼家の墓と指月殿だ。
二代目鎌倉殿頼家は、頼朝以上のスケベ殿、二代目性の大将軍で部下の妻をNTRなど人望がなくちょっと寝込んだのをいいことにクビにされて三代目実朝が立つことに。
その後、頼家は修禅寺に監禁されて北条家の陰謀で漆入りの風呂に入れられるなどしてものすごい不治の病であるように演出され、ガチャ爆死と見なされロックを外され刀解に回されくべられることとなった。
それだけでは飽き足らず筥湯で入浴中に襲撃を受けて暗殺される。
落ち目のときの入浴は源氏の死亡フラグだった。
その後、いろいろあって政子が暗殺された我が子を悼んで建てたのが指月殿である。
こうして俺の修善寺巡りは終わった。
まあお土産屋をちょろっと見て、温泉なんだから炭酸煎餅の1つも買わなきゃな。
来た道を戻りながらお土産を物色する俺に、押しつけられる試供品の饅頭、丸々一個。
「どうぞお試しくださいーお茶も飲んでくださいー」
……饅頭1個丸ごともらうと流石に罪悪感がすごい……
その後も試供品を山ほどくれる。
しかも俺以外に客がいない。
「……クッキーください」
こうして俺は何かに負けて特にほしくもない麦こがしクッキーを買って帰ることになった。
今日はこんなに歩き回ったんだからすごい距離なんだろう!
さて、修善寺から大阪まで5時間。
「料金200円です。ETC使えないから現金で」×2
今どき、通行料200円を小銭で取る謎の有料道路を2回走らせられる。
「三島から沼津までは下道通った方が速いすよ」
「それは本当にそうなの!?」
超長距離を走ると途中に意味のないUターンを2回挟んで「これでさっきの予定より2分早まりました」とか言い出すクセの強いカーナビ〝シンギュラリティ〟(愛称)との戦いが始まった。
このカーナビ、電話回線ではない謎のネットワークで天気予報や道路工事、渋滞情報を収集する、俺の使ってきた中では一番頭がいいが、とにかくクセが強い。
新東名高速の愛知県から滋賀県、湯の山~新亀山ジャンクション辺りのデータを持っておらず、自分で新東名を走れと言いながらいざその辺に差しかかると俺が走っている道路を見失い、下道で検索し直しては必死に「右折して」「左折して」と高速道路では無意味な指示を出すので無視するのが大変。
新東名を知らないのにいざその場に至るまでは知っているつもりでルート計算をするのも意味がわからない。
新東名が開通したのが2012年って謎ネットワークにつながっているのに何でデータが更新されないんだ?
それで必死で大阪まで帰ってきたら高速を降りるところを間違えて大阪府内で豪快に迷った。