パナソニック教育財団成果報告会が中継されるそうです

7月30日に専門委員を務めているパナソニック教育財団の成果報告会が開催される。
私は15時20分から実施されるパネルディスカッションに登壇する予定である。
前年度特別研究指定校のアドバイザーが登壇し,担当した学校(私なら高槻市立芝谷中学校)の成果を振り返って,コメントすることになる。よって,成果発表と一緒に見ていただければと思う。
当日はUstream中継されるとのこと。詳しくはこちらのページをご覧ください。

いつも実施している授業にタブレット端末を

一昨日,多久市立西渓小・中学校を訪問した。もう何度目になるだろうか。今回は,中学校理科の授業を参観した。
運動エネルギーを扱った授業で,先生から提示された課題に対し,生徒はデータを収集していた。そのデータをタブレットPCに入力し,グラフ化を行った上で,生徒はどのようなことが言えるのかを先生に説明し,不十分であればやり直し,という仕組みをとっており,生徒どうしの学び合いを重視したスタイルをとっていた。それが十分に説明できた班については,さらにステップアップさせた問題に取り組んでいた。一部の生徒は参観者の方にも説明をしていた。課題設定,授業の雰囲気作り,授業の構成,どれをとっても普段されていることにタブレットPCをプラスαさせた,よい授業となっていた。言語活動ということで行けば,さらに色んな表現が授業を通して行われるとさらに良いのではないかと考えた。
タブレットを入れることで,これまでの授業になかった革新的な授業を,と言うのはよく分かる。しかし,まず一歩進めるにはこうした実践が必要だと認識した。生徒は,タブレットの扱いということではなく,学び合いの学習スタイルに慣れていたと思う。
さて,この日は台風により事後の研究会は一部で行われたが,これまで見られなかった形として,予定で行けば,拡大指導案法を採用し,議論をしようとしていたようだった。当日は,授業中に指導案に付箋をはるような形でコメントを参観者に書いてもらっていた。聞けば,県から研修か何かの指定を受けたので,ということだった。事後の研究会のあり方については本校において何度もコメントしてきたところだが,またしてもバージョンアップをさせていた。授業研究を着々と進める学校として,注目をしたい。
同校の小中一貫を主テーマとした公開研は11月7日に開催される予定だ。私も参加するが,お近くの方も参加されてみたはどうだろうか。

目標設定の難しさ(平和学習に関する科研)

長崎で,「絶対に取り組まない」と決めていた研究テーマとして,平和学習があった。長崎にやってくると,原爆のこと,平和のことなどのニュースに触れる機会が実に多い。ただし,私のような外部から来た人間は,安易にこういうことをテーマにすべきではないと考えていた。今も,そう考えている。
しかし,昨年度転機が訪れた。藤木先生を代表者とする科研費「逆拡張現実感を用いた体験し伝え共有する活動を組織する平和学習に関する総合的研究」が採択されたからである。誘われたのは藤木先生,しかも藤木先生ご自身が長崎出身ということもあり,お引き受けすることになった(他の方だったら断ったと思う)。この科研では,VRコンテンツを生かしながら,平和学習を進める実践研究で,私はそれを支援するようなデジタル教科書の開発に関わることになっている。
正直言って,遅々として進まない。その理由は,目標設定の難しさにある(おそらく態度目標であることは理解しているが)。原爆のことを学べばよいのか?平和について願うのはどういうことか?行動目標を設定できるか?悲惨さを知ることを学べばよいか?そもそも資料がないのでは?もう年月が進みすぎて,何を取り上げても現実感がないのでは?そもそもみんなが納得できるような目標設定や教材開発など無理なのでは?など,考えることが多数あった。しかし,少し整理できた部分もあるし,一歩前進したと思っておきたい。引き続き,議論を進めたいと思う。
こういうこともあり,昨年度から原爆資料館や平和祈念館を訪問したり,学生と一緒に資料にあたったりしている。昨年度は東大の池尻先生にお越しいただき,ストーリー教材の開発についてもうかがった。今,以下の書籍を手元に置き,読んでいるところだ。

原子雲の下に生きて―長崎の子供らの手記 (アルバ文庫)

原子雲の下に生きて―長崎の子供らの手記 (アルバ文庫)

小さい子の手記になっているので,読もうと思えばすぐに読めるのであるが,思うところが多すぎてなかなか読み進めることができずにいる。プロジェクトに関わりながら,私も学習をしている。

過去の教育者について学ぶ(大学院教育方法蓄積プロジェクト)

大学院・教育の方法と評価(今期は4クラスある)で,過去の教育研究・実践者から学ぶという授業を実施した。東京大学の山内研の取組みを参考にさせていただいた。教職大学院においては,実践を重視するというスタンスであるが,これまで(特に現職教員院生)に色々と聞いていると,こうした書籍から得られる学びが多いという話もあり,前から何かできないかとは考えていた。本年度,初の試みとなる。
まず人物を選定した。デューイやヴィゴツキーなども人物リストに入れたが,日本の著名な実践者も入れた(そういえば,日本人の研究畑の人は入れなかった)。現職教員院生の一部などは,大村はまや東井義雄などを選択していた。歴史的経緯や個人の背景に着目すること,こちらから紹介するキーブックは必ず参照すること,今日の教育実践にどのようなつながりがあるのかについて見つけ出すことなどを条件とした。また,10分程度の解説ビデオを作ることにしてもらった。これは,学部生などにどう伝えるかを想定して。加えて,ビデオとして見せる工夫も学習意欲向上の面から考えさせた(これは多くのグループには,結果として功を奏さなかったが,一部のグループは工夫をしていた)。
できたビデオについては教育学部アーカイブサイトに掲載をしてもらった(学部内の人は,見ることができます。詳細は聞いてください。)。他のクラスのビデオについても,視聴をしてもらった。振り返りとしては,ビデオ制作のグループを解体し,ペアを組ませ,それぞれが調べた人物についての異同をシンキングツールを用いて比較させた(これも後でよく見たら,山内研と同じ取り組みになっていた・・・あくまで結果論です)。
教員採用試験に出るから勉強すると,単語のみを覚えるだけで,終了後はまったく意味のないものになってしまう。しかし,それぞれ調べたことについて意味づけしたり,考えたりすることで,学びを拡げることができたのではないかと思う。最後は,これをもとにして過去,現代の教育の方法をどう見るかということを簡単に解説した。
このような理論的な側面を持つ授業も,専門職大学院ではまた,重要だろうと思う(ただし,実践とのつながりを明確に出来たとして)。

教科教育法におけるICT活用指導力育成のための実践研究

科研費として「教科教育担当の大学教員を支援するICT活用指導力育成のための授業モジュールの開発」を受けているが,本年度で最終年度を迎えている。これまで,教科教育担当の先生方が,どのように授業をとらえておられるのかについて分析をしてきた。加えて,教科ごとの典型的なICT活用場面やその留意点を教科ごとに整理をしたりした。本年度は,こうした知見を活用し,実際の授業の文脈にそうように,あわせてICT活用指導についても考えられるようなプログラム編成を,いくつかの教科で行うことを試みている。
本日は,ある教科の指導に関する打ち合わせを行った。自身が考えて,自分で行う実践研究ではないだけに,授業者の意図も組みながらどのように授業をやっていくのかを検討することはあまりない経験である。また短時間の実践だけに,その効果を検証するのも難しい。実践は限られた範囲になりそうだが,他の先生方とも協働でき,当初ある程度想定していたように,よい実践研究を試みることができそうだ。
研究としては,本年度で終了するが,こうした形で教員養成においてもICT活用の指導が普及するように今後も考えていきたい。

今月の学校訪問

今月は,複数の学校に訪問した。いずれの学校においても,指導助言等を担当した。大学の授業も夜間に設定したりして普段よりも多い月であったのだが,それとも両立させる形でよい訪問ができたと思う。

  • 多摩市立愛和小学校。先週に授業公開があったようだが,私は月始めに訪問をした。学校での授業を見せていただいた後,1時間は研究主任の先生の授業による校内研。とかく校長先生のリーダーシップが有名であるが,それだけではないことを実感することができた。若く頑張っておられる先生方が何名もいらっしゃること,研究会でも前向きな発言が見られたのに,正直驚いた。一方,ICT活用場面や授業そのものには,課題がありそうだ。この学校が,学習する組織として,研究を発展させられるかは要注目だと思う。
  • 多久市立西渓校。DIS School Innovationプロジェクトが2年目に入った。生活科・理科の研究会の一環として,このプロジェクトの公開授業が行われた。3年生と5年生の理科の授業。活用自体は慣れてきたと思う。一方で,事後の研究会では理科の学習として成立しているのかどうかということについて議論されることが多かったように思う。佐賀の先生方の議論の様子を見て,授業研究文化が充実していることを実感した。
  • 南島原市立長野小学校。長崎のICT活用モデル校のひとつ。田中健太郎先生が複式の算数の授業を公開。これまで,年に1度以上,田中先生の授業については拝見していたが,今までで一番準備をされ,このモデル校事業を充実させようという想いが伝わってきた。授業においては凝った使い方ではなく,多くの先生方が取り組めそうな場面を紹介されていたと思う。こういう情報が県下に伝わってほしいなと思った。
  • 長崎市立鳴見台小学校。ここもDIS School Innovationプロジェクトが2年目の学校。1人1台端末,入っているソフトなどから,かなりまじめに授業のことを考えていただき,今後の実践予定を提案して頂いている。私としては,だれでもできそうなもの,日常化を考えることの重要性を訴えた。できれば,長崎市のモデルのひとつになってほしいと思う。