あなたのkugyoを埋葬する

主に読書内容の整理のためのブログです。Amazon.co.jpアソシエイト。

「哲学の中のフェミニズムを考える」ブックフェアに参加しました

木下 et al.(eds) , 分析フェミニズム基本論文集慶應義塾大学出版会,2022)の邦訳に参加した.これはここ20年ぐらいに発表されたフェミニズム的哲学の研究を8つ選択し,それぞれ全訳したもので,訳注のほか,木下による編訳者解説も充実させている.
この発売にあわせて,慶應義塾大学出版会の企画で,「哲学の中のフェミニズムを考える」というブックフェアがあり,各地の書店で順次開催いただいている.
必ずしも同出版社の本にこだわらなくてもよいということから,私は7冊ほどまったく自由に選択させてもらい,その推薦文を書いた.全体では30冊弱となる.

「哲学の中のフェミニズムを考える」フェア「哲学の中のフェミニズムを考える」フェア,セクシュアル・マイノリティ関連書籍「哲学の中のフェミニズムを考える」フェア,配布冊子
「哲学の中のフェミニズムを考える」フェア,ブックファースト新宿店にて

ベースとなる論文集が「分析フェミニズム」ということで,この5年ぐらいに各研究者たちのがんばりでもりあがってきている分野だから,日本語で書店入手が可能で分析フェミニズムっぽいものはひととおり押さえたはずだが,そのほかに私は,この 基本論文集のなかでも主要な議論として取り上げているセクシュアル・マイノリティにまつわる議論への理解を深めるのに役立つと考え,以下の2冊を特に推した.

  • 針間和己,LGBT専門医が教える心・体そして老後大全(わかさ出版,2020)
  • 寺原真希子(ed.),東京表参道法律事務所 ケーススタディ職場のLGBT(ぎょうせい,2018)

セクシュアル・マイノリティは我々の社会でいま生活している人々であるから,生活上のニーズがさまざまにある.また,ある程度の人間が集まって活動するという点で,学校と並んで社会内で大きなウェイトを占める職場というところがあるのだが,そこは校則のようなかなり私的ルールだけでなく,もっと公的な,法による規制によって労働者が保護されている.そしてこの労働者には当然,セクシュアル・マイノリティも含まれる.これらのことが確認できるような文献として推薦した.いずれも実務的な参照に耐えることを目指して作られているので,前提知識がなくとも利用できるだろうと思う.
もちろん,セクシュアル・マイノリティの当事者の多くにとって,これらは確認するまでもない,生活の一環だろうと思う.しかし,( 分析フェミニズム基本論文集 収録の論文にも見られるような )“よりよい社会を目指す”という目的を明示的に掲げた議論を考えるならば,いまの我々の社会がどういう制度を提示できているのかについて,現在位置を把握しておくべきだろう.さらには,こと哲学的議論においては,本質的な指摘をするといったそれ自体は重要なはずのお題目をかさに着て,現在の社会の状況やその来歴がむやみに軽んじられ,ポイントを外して再構成した形で話が進みがちであるのだから.
セクシュアル・マイノリティについては,「このひとたちはどんな主観的経験をしているんだろう?」「人口の何人ぐらいいるんだろう?」「妄想のような病的な状態にすぎないんじゃないか?」といった問いはよく出てくるし,それらに答える文献もあるのだが,これらは,セクシュアル・マイノリティなんて周りに見たことないけど,ほんとに存在するのかなあ? という世間知らずな動機に基づいて問われることが多いように見える.(そしてこれらの問いに答えるものとして提示される書籍も,中高生やその保護者,あるいは大学生ぐらいに向けて書かれているものが多い気がする)
しかし,我々が暮らしている社会はすでに,セクシュアル・マイノリティが急に出現してあわてふためいているような状態ではない.ともに暮らす人々のなかに,ジェンダーモダリティや性的指向がまちまちなひとが以前からいること,ひとの幸福をそんなことを言い訳にして軽んじてはならないことを受け入れられるように,法律も医療も制定され,運用が行われているのだ*1

*1:もちろん,そうでない社会や望ましい運用が得られない場所もある.

十二月の怒れる男

先月(11月)は,文学フリマ東京35 出店者リスト - 文学フリマWebカタログ+エントリーで頒布する同人本に参加するための原稿を必死になって書いていた.私の場合,必死になるというのはこの20年変わらず,ことに集中するのに必死になるので大半を占めている.
その前の月(10月)は,11月に出版されることになる書籍の索引を考えるのに必死になっていた.

索引があるとよいとはよく聞く.翻訳のさいに索引が削られていると訳者(版元を含む)の態度に幻滅する,という話もきく.だが,そういうひとでも入手した本の頭から尻尾までに目を通したことはそれほど多くないのではと思う.私もそうだ.そして索引というのはそういうもので,単一のひとが持つ関心に応答するだけなら過剰である.複数のひとがその本を読むだろうこと,それらの関心をあるていど予測して先回りしつつも,予想外の関心にもある程度答えられるように,本の内容を大づかみして提示すること,という,かなり不安定な未来に期待して,索引をつくるのだ.
不安定な予測に基づくとはいっても,通読して内容をわかっている本なら,索引なんか簡単に作れるという気がするかもしれない.なにしろ議論を再構成して図示するとか,読解が難しいところの候補をいくつか検討するとか,明示的に検討されていない反論を考え出しておいてもとの議論のなかから自己擁護できる材料があるか探すとかいった作業をやりなおさなくてもいいのだ.ただキーワードを抽出し,その出現箇所を拾うだけ.多少の表記揺れを吸収すればいい.
そうだろうか? たしかに,構成が緊密な本,たとえば単一の著者の手になるモノグラフであれば,これは簡単かもしれない.しかし,さまざまな議論を集めたアンソロジーだとどうなるだろうか.両方の議論に同じ字面の言葉が出てきたとして,それは同じ見出し語として拾ってよいだろうか.あるいは,議論それぞれが同じ意味のアイデアを別の言葉で表現していた場合はどうだろう.それはぴったりと重なる意味で用いられているだろうか,それとも大部分が重なっているがちがいもあるのだろうか,そのちがいはアンソロジー全体の文脈においてどのぐらい重要だろうか.あるいは(悪いときには)索引作成者の考えすぎで,まったく関係ない言葉をゆがんだ観点から同一視しているに過ぎないのだろうか.また,同じ意味だとしても,片方の議論では中核的なアイデアだが,もう片方の議論では単なる例として提示されているだけかもしれない.こうした箇所全てが,索引のなかに等しく登場し,所在指示を与えられていてもいいだろうか.
こう考えると,索引をなぜ作るかという目的を設定するには,どのような読者を想定するか,という態度を決める必要がある.そして,索引においてどのような見出し語を選定するか,その所在指示をどこまで網羅的にするか,ということには,索引作成者が書籍全体をどのように理解するかという,これまたもっともらしい回答が複数ありうる問題に.同様に態度を決めなくてはならない.そして,アンソロジーや翻訳ならば,こうした態度決定は索引作成者が気ままにできるものではなく,おかしな態度や理解に対する批判を引き受ける責任を負わなくてはならないものだ.
これはかなり苦しい作業だ.また,索引には技術的な不明瞭さもある.たとえば,ここまでにも書いてきた「見出し語」「所在指示」といった索引作成上の用語や,それらがどのようなルールに一般的に従っているかは,ただ索引を見ているだけではわからない.
ここで私は1つ文献を紹介したい.藤田節子,本の索引の作り方地人書館,2019)だ.索引とはなんのためにあり,どれくらい作ればよいのか,どういう構造になっているべきか,それを実現するための具体的なプロセスはどうするとよいか,といったことがすべてまとまっている.また,このような文献が存在するということじたいが,索引づくりという行為,そして索引に価値を感じる態度を勇気づけてくれると思う.

Jenkins 2018, "性同一性の説明に向けて"

 Nottingham大で哲学を教えているKatharine Jenkinsが,トランスの権利運動によく登場する性同一性[gender identity]とはなんのことかについて説明する論文,Jenkins 2018を書いている.この論文は,哲学業界で最近流行している,概念工学という研究ジャンルの一例でもある.
 トランスの権利運動に対して,ちょっと気の利いた人間なら思いつく疑問がいくつかある.私はこの論文をそういう疑問への応答として読んだ.たとえば,この論文を読むとおそらく,トランスの権利運動が,必ずしも性同一性についての自認を絶対視する必要はない,ということがわかるだろう.また,以下のような立場をとりたいと考えるなら,この論文をよく読み,応答を考える必要があると思う:

  • 性同一性や性自認1といった怪しげな概念を使っているのだから,トランスの権利運動はばかげているにちがいない.
  • トランスの権利運動は,現状の性規範を絶対視しないと成り立たないのだから,性規範を批判しようとするフェミニズムとは相容れない.
  • トランス女性の主張を真に受けるなら,女性という被差別的な立場に自らを置こうとしていることになり,不可解だ.なにかべつの悪しき目的があるはずだ.

 さらに,ミスジェンダリングとは何をすることなのか疑問を抱いているひとにも,この論文はある程度理論的な助けになるだろう.というのも,ミスジェンダリングは当人の性同一性に反した扱いをすることだが,性同一性に反するとはどういうことか考えるには,そもそも性同一性とはなにかについて,いくつかの立場を検討する必要があるだろうからだ.
 他方で,もちろんこの論文は万能ではない.たとえば以下のような主張に対して,この論文はたいした回答にはならないかもしれない:

  • 性同一性という概念をうまいこと精緻化できるとしても,この概念によって生じる害のほうが大きい.トランスの権利運動は性同一性という概念を捨て去るべきだ.2
  • トランスの権利運動は性同一性以外にもいくつかの概念を用いている.それらの概念のうちどれかに不整合がある.
  • トランスの権利運動は性同一性以外にもいくつかの概念を用いている.それらの概念が性同一性と齟齬をきたしており,運動は全体としてやはりおかしい.3

 トランスの権利運動に対しては,運動じたいに内在的なおかしさがあるという批判だけでなく,もうちょっと外在的な批判もありうる.この論文はそうした以下のような批判にも答えるものではない:

  • トランスの権利運動は,性差別的な犯罪者を利するという有害な副次的影響をもたらすから,運動じたいが整合的であろうとも,トランスの権利を制限することは許容される.
  • トランスの権利運動の理屈は一見整合的だが,それは大義名分にすぎず,トランスは本心では悪質なことをもくろんでいるにちがいない.
  • トランスの自殺率が高いとしても,そういう軟弱者は権利主張なんかに値しない.
  • あるトランスが侮辱的な発言をしたが,権利運動のなかでそうした発言は非難されていない.侮辱的な人間とつるんでいるひとびとの主張に耳を傾ける必要はない.4

 まず,Jenkinsのここでの主張を,哲学者向けに箇条書きでまとめておく.
 次に,性同一性という概念に怪しげなことがありそうだと思われるときなにをすべきかについて,Jenkinsが行ったことを説明しながら私見を述べる.
 そして,性同一性を(現状どう理解されているかとは別に)どう理解すべきかについて,Jenkinsが推している「規範への関連づけ説」を解説する. そのなかで,規範への関連づけ説への批判で特によく考えるべきだと思われる点を1つ紹介する.具体的には,この説だと(あるいは,トランスの権利運動を真に受けると)トランス女性は自らを差別するよう要求していることになるが,そんな要求を真に受けることはできない,という批判だ.この批判にJenkinsがどう答えているかを見る.
 最後に,この論文からやや離れて,トランスの権利運動について,あるいはなんであれ運動について理論的に検討したいひと向けに,私の考えを書く.

Jenkinsの主張

Jenkinsの議論を箇条書きでまとめると,このようになる.

  • トランスの権利運動の目的がうまく果たせるように,「性同一性」という概念の定義を洗練すべきだ.
  • トランスの権利運動の目的とは,トランスの権利を促進することと,トランスフォビアに対抗することとである.
  • この目的を果たすために,目標概念[target concept]としての性同一性の定義は6つの条件を満たすべきだ.トランスの権利運動において性同一性という概念に求められている3つの条件と,その要求を満たすのに役に立つ3つの条件とがある.
    1. 性同一性は重要で,尊重されるべきだ,という考えがまともになる必要がある.
    2. 性同一性には倫理的な一人称特権があるという考えと両立可能である必要がある.
    3. トランスのひとびとのなかには,性同一性に基づいて性別移行や関連したヘルスケアを受ける必要があるひとがいる,という考えと両立可能である必要がある.
    4. 定義は明確で非循環的である必要がある.
    5. 性別二分法的な性同一性だけでなく,ノンバイナリーな性同一性にも適用できる定義である必要がある.
    6. 現行の性規範や社会構造への,広い批判と両立できる必要がある.
  • 性同一性の哲学的定義として,既存の学説には,傾向性説自認説規範への関連づけ説がある.このうち6つの条件を満たせるのは,規範への関連づけ説だ.
    • 傾向性説(McKitrick 2015)は,性についてのどんな規範に従う傾向があるか,によって性同一性を捉える立場だ.だが条件1と条件6との両立に問題がある.性のステレオタイプへの批判を認めるならば条件1が守られず,認めないのは条件6に反してしまう.
    • 自認説(Bettcher 2017)は,当人が「男性である」などと真摯に表明することを性同一性と捉える立場だ.自分の性同一性についての表明がなぜ特別に重要なのかを説明しないかぎり,条件1や条件3を守れない.
    • 規範への関連づけ説は,性についての規範のうち,どんなものが自分に関連づいていると感じるのか,によって性同一性を捉える.
  • 規範への関連づけ説には3つの批判があるが,応答できる.
    • 批判1: シスジェンダを規範とする説だ(Andler 2017)
    • 批判2: 性同一性についての自身の知識に特別な権威を認めることも条件に入れるべきだが,それを認められない(Bettcher 2017)
    • 批判3: トランス女性は進んで差別を受ける地位へと自分を貶めるおかしなやつということになってしまう(匿名の差読者).
  • 議論ははじまったばかりであり,考慮しきれていない倫理的・政治的に重大な考慮事由があるかもしれないので,規範への関連づけ説は決定的な結論ではなく,暫定的な主張にとどまる.だがトランスの権利運動の目的を共有しつつ,この結論に同意しないならば,以下の3つのうちどれかを選ぶ必要があることは言えた.
    1. 性同一性において目標概念の定義が満たすべき6つの条件のどれかを拒否する
    2. 性同一性についての既存の立場が6つの条件をぜんぶ満たすと主張する
    3. もっとよい立場があると主張する

怪しげな概念に基づいた運動とどう付き合うか

 この論文が扱うのは「性同一性」という概念だ.まず,多くのトランスの権利運動において,この概念が重要な役割を果たしていることが示される5.ところが他方で,この概念の内実はそれほど明らかではない.
 明らかでなさの特徴としてJenkinsがここで挙げるのは,循環性だ.「性同一性」という概念の定義には循環が含まれており,それによって定義を理解するのがむずかしくなってしまっている,というのがJenkinsの主張だ.どういうことか.
 男性という性同一性を備えている,というのはどういうことだろうか? よくある答えは,自分が男性であるという感じがすることだ,というものだ.つまり,男性という性同一性を,男性であるという感じで定義したわけだ.Jenkinsはこれを「民間の」概念の定義と位置づける.6
 では,その定義に出てくる「男性である」とはどういうことだろうか? そこで,男性という性同一性を備えることだ,と答えてしまうと,循環が生じる.性同一性とは何かがわからないから定義をきいているのに,その答えにまた「性同一性」が出てきてしまうと,性同一性とは何かがわからないままに終わってしまう.7
 このことじたいは,わざわざ哲学者に教えてもらうまでもなく,性同一性についてちょっと考えたことがあればだれでも思い至ることだと思う.トランスの権利運動(その他,どんな運動でも)が拠りどころとしている概念に哲学的な循環が見つかることは珍しくない.だが,ここが重要なところだと思うが,そのときとれる態度は2つあるだろう.

  1. 哲学的分析によれば,この運動が拠りどころとしているのは,循環した無内容な概念だ.だから,その運動の要求するところなんか,まともに取り合わないでおこう.
  2. 哲学的分析によれば,この運動が拠りどころとしているのは,循環した無内容な概念ということになってしまう.だから,運動の目的をうまく満たすような,べつのもっと哲学的に洗練された定義を提案しよう.

 どちらの態度を選ぶべきだろうか?8 Jenkinsは後者を選ぶが,前者を選ぶべきではないかと考える読者のために,ここで少し補足しておきたい.
 前者は,運動が目指すところやほかに利用している概念などを無視して,ただ循環やその他の哲学的難点を見つけるだけで,運動そのものを拒否できるという点で,おおざっぱではあるが効率的だ.そして世の中にはたくさんの運動があり,我々ひとりひとりが生きる時間はそれほど多くないのだから,すべての運動に真摯に取り合っているわけにはいかないし,そうできるふりをすべきでもない.なんらかのおおざっぱな基準で運動をふるいわけるのは,とがめられるほどのことではない.
 ただし,哲学の吟味に耐えることを目的としていない定義というのは世のなかにたくさんある.前者の態度は,それをむりやり特定の(哲学の)基準で評価し,その要求水準を満たしていないかぎり受け入れない,という,いささか専横な態度でもある.
 そして,いったん哲学の議論をはじめたからには,そうした思考の節約という実践上の理由だけで,運動ぜんたいを切って捨てるのはむずかしい.これはなにも権利運動だけに限った話ではない.たとえば形而上学の分野では,「もの」という概念を素朴に捉えた場合,さまざまな不整合が生じることが知られている9.だが哲学において,不整合を理由に「もの」という概念を放棄してしまうことだけが唯一の選択肢ではないし,「もの」という概念を使った実践はみんなばかげたものだとして棄却することも要請されない(そういう選択肢もあるにはあるが,ほかに選択肢があるというのが重要だ).民間の概念を暫定的な出発点として,不整合のある箇所を削ったり条件をつけたりといった哲学的な洗練を行い,よりましな定義を探っていくのは,哲学のごくふつうの作業だ.この作業が最初から済ませてある概念でなくては議論に値しないというなら,そもそも哲学者の仕事などなくなってしまうだろう.

規範への関連づけ説

 Jenkinsの推す規範への関連づけ説は,Xとしての性同一性を以下のように定義する.

SがXとしての性同一性を備える
iff.
Xという性の集団として階級づけられたひとびとに向けて,そういう階級に特徴的な社会的・物質的現実をどう切り抜けるか指導する,いわば「地図」を考えよう.Sには,そういう内なる「地図」が形成されている.

ややわかりにくいが,これは要するに,現状の性についての規範のうち,どんなものが自分に関連づいていると感じ経験するのか,によって性同一性を捉える,という定義だ.たとえば,すね毛を処理するべし・処理すべからず,女子トイレに入るべし・入るべからず,フォーマルな場ではドレスを着るべし・ネクタイを着けるべし,のように,性に結びついた規範はさまざまある.そのうちどれが自分に向けた指令になっていると感じ,どれは自分と関係ないと感じるか(内なる「地図」)によって,性同一性を捉えようというわけだ.
 そしてこの,この規範が自分に関連づいている[relevant]とか,この規範は自分に向けたものであるとかいう点が重要だ.自分に関連づいていると感じる規範がどれであるかと,その規範に実際従っているかどうかとはべつのことだ〔ここが傾向性説とはちがう〕.自分に関連づいていると感じる規範に抵抗を感じたり,批判をしたり,あえて従わなかったりすることは,特におかしなことではない.これにより規範への関連づけ説は,現状の性規範を絶対視してしまっているじゃないか(条件6を満たしていないじゃないか)という批判をかわすことができている.
 規範が自分に「関連づいていると感じる」ことと,実際に従いたいと感じることの区別は,微妙ではあるが重大だ.トランスの権利運動に対するよくある批判として,次のような両角論法が指摘されることがある:

  • トランス女性は,女性に関連づけられた規範に従わないならば,女性であるとは言えないので,女性としての権利要求によって性差別に荷担している.
  • トランス女性は,女性に関連づけられた規範に従うならば,そうした規範を無批判に受け入れており,女性としての権利要求によって性差別に荷担している.

 このジレンマからは,トランス女性はトランスの権利運動のもとで必ず(強い意味で)性差別に荷担している,という帰結が出てきてしまう.
 しかし,Jenkinsのような規範との関連づけ説が提示している区別を導入すると,こんな帰結は回避できる.以下のように言えるからだ:

  • トランス女性は,女性に関連づけられた規範に自分も関連づけられていると感じているから女性であると言えるが,女性性に関連づけられた規範を批判できるので,必ず性差別に荷担しているとは言えない.

 規範に対するこうした態度の区別は,哲学になじんでいるひとには,内在的理由と外在的理由との区別からしぜんに出せる帰結だと思う.
 たとえば(これはJenkinsの挙げている例だが)すね毛を処理するかどうかについて,男女の規範は大きく異なる.女性としての性同一性を備え,そのためにすね毛を処理すべきだという規範が(処理すべからずという規範よりも強く)自分が服するものだと感じていても,実際にはすね毛を処理しない,ということはまったく不自然ではない.規範を破ったことで居心地の悪さを覚えることもあるかもしれないし,不当な規範に抗ったことを誇りに思うかもしれないが,そのどちらも,女性特有の規範に従うべきだと感じることと両立する.
 なお,ここでの性についての規範の説明には,Haslnager 2012aのような社会的階級としての性説が採用されている.つまり,女性という性が従属的な地位に置かれた社会役割であることを前提にしている.性同一性についての規範への関連づけ説にとって,性がどういうものか(どういう社会役割か,あるいは,そもそも社会役割なのか)についての説明はオープンでありうるが,女性が従属的な地位に置かれていると認めたとしても,女性としての性同一性にしたがった性の再割当を求めるトランス女性の要求は,自分を差別せよという要求とは区別できるし,合理的な要求でもありうる.
 ときどき,トランス女性の権利要求を真に受けると,自分を差別するように要求していることになってしまうから理解できないとか,だからトランス女性はべつの悪しき目的を隠すために詭弁を弄しているとしか考えられないとかいう主張が見られる.だが,そのような批判は,性同一性について,そして性同一性の尊重について筋の通った説明が得られれば,論拠を失うことになるだろう.

トランスの権利運動はどれくらい重大か

 ここで,たしかにその区別はできるかもしれないが,単に規範への関連づけを感じたり経験したりするということだけでは,けっきょくそれをおおごととして扱うには及ばない,という反論があるかもしれない.
 反論はおそらくこんなふうになる.なるほど,そうした関連づけの感覚や経験は,その規範に従うかどうかその場その場で決断することよりも根深いものだから,おそらく本人が簡単に変更したり捨てたりできるものではないだろう.定義のなかに,「形成されている」というくだりがあることを思い出せば,当人の思いなしひとつでどうにかなることではなく,社会変革や肉体的手術を経なければ,関連づけの経験を捨てることは難しいのかもしれない.だが,社会や周囲の人間が,その経験によく配慮しなければならないのはなぜだろうか.当人の経験していることが,現実とズレていて苦痛を感じる,ということはじつによくあることだ.たとえばKapusta 2016が言うように,ミスジェンダリングは羞恥や不安や抑圧を与えるだろうが,我々はほかにもさまざまなことで羞恥や不安や抑圧を感じており,そしてそれを即座に不当だと考えるわけではない10.規範への関連づけ説は,性同一性を尊重することが重要だというトランスの権利運動の主張を説明できる(条件1を満たせる)だろうか?
 これについてJenkinsは2つの論拠を挙げている.
 1つめの論拠は,Bierra 2014が指摘するように,当人が規範とどう付き合うかについて周囲から継続的に誤解を受けていると,自分の意図を理解してもらううえでの権威が剥奪されていってしまうという問題が生じるから,というものだ.たとえば(これもJenkinsが挙げている例),トランス女性が大学の卒業式で,卒業式らしいフォーマルな格好を意図してドレスを着るとしよう.周囲がそのトランス女性の性同一性を尊重しない場合,それは卒業式らしいフォーマルさをむしばむ,目立ちたがりなふるまいとして扱われてしまうだろう(おまえはフォーマルな場ではドレスではなく男性向けスーツを着るべき人間なのに,というわけだ).意図についてのこういう誤解にいつもいつもさらされていると,深刻な社会的無力感に至ってしまうだろう.
 とはいえ,性同一性にかぎらずたいていの場合,我々は周囲にあまり意図を読み取ってもらえないのだから,その程度のことで無力感などと言うのは大げさだ,という再反論はできるかもしれない.性同一性について誤解を受けるなんてささいなことなのに,トランスの権利運動の要求は強すぎる,と言われることはあるかもしれない.
 ここで注意したいのは,ささいな誤解かどうかの基準はなにか,ということだ.みんなが気軽にやっていることだからとりわけ非難に値したりはしない,というのも,「ささい」の意味の1つではあるだろう.だが,その誤解が原因と見られる深刻な害が統計上見つかれば,気軽なことだから運動までして抵抗するほどのことではない,とは言えなくなってくる.
 Jenkinsも,ドレスの例のようなミスジェンダリングが害を起こすかどうかは,性同一性の定義だけで決まることではなく,経験的に調べて答えを出すべきだと考えている.そこでJenkinsは2つめの論拠として(提示される順序としてはこちらが先),Bailey, Ellis, & McNeil 2014など,トランスの自殺についての統計的議論をあげている.

理論的な検討について

 予告したとおり,ここからはJenkins 2018をやや離れて,運動について理論的に検討するときやるべきことについて私見を述べたい.
 まず,おそらくJenkinsと共有できるだろう点として,ここまでに書いてきたまとめにもすでに,以下のような主張が含まれている.

  • 専門家による理論的検討は,運動の額面上の主張の矛盾を突くだけに終わってはいけない.そうした矛盾があるなら,運動の目的をうまく満たすような,べつのもっと理論的に洗練された定義を提案すべきだ.

 繰り返しになるが,私はこれを,批判や検討においていつでもだれでもなすべきことだとは思わない.親切に目的をたずねるまでもなく批判し去るほうが望ましいような運動というのもたくさんあるだろう.だが専門家による批判を名乗るならば,たとえ最終的には運動の目的に同意しないとしても,理論的な不備を単に指摘するだけではなく,その不備を解消したうえで理論的な評価をはじめるのでなければ,せっかく備えた専門知を非専門家に還元せずに独占する結果に終わるのではないか.なんといっても運動家たちはだれもかれもが哲学者であるわけではないし,哲学以外にもさまざまな理論(社会学とか歴史学とか生物学とか)があり,だれもかれもがそのすべての専門家であることなどありえないのだから,そのすべてに不備がないことを要求するのは法外だ.
 目的をうまく満たすような定義を探すといっても,哲学の場合,特別なことをする必要はない.
 どんな哲学的議論も,検討したい帰結を受け入れるかどうか考えるにあたっては,関連のある前提をピックアップして,そこから妥当なやりかたでもとの帰結が出てくるかどうかをチェックする,という手続きを(暗黙的にであれ)とっているはずだ.その結果,議論は妥当だったが前提がまちがっていたという結論に至ることも,とくに珍しいことではない.こうした議論の構成・再構成こそが哲学者の腕の見せどころであって,帰結を拒否したいがためにずさんな再構成しかしなかったら,それは議論として価値が低いし,哲学的真理(それがなんであれ)に到達する方法として不十分だろう.
 同様に,運動を評価するにあたっても,結論となる目的が妥当な形で出てくるように議論を再構成したうえで,そこであぶり出された諸前提がまともかどうかをチェックする,という手続きは,まったく同様に行えるはずだ.Jenkins 2018の仕事は,トランスの権利運動を支えるにはどういった性同一性概念が前提として必要となるかを明らかにしようと企てた論文だ.冒頭で触れたように,その再構成のうえでもなお,ほかの問題は残っているかもしれない.だが,妥当な議論へと再構成が済んだからこそ,それ以外の部分に目を向ける形で検討を進められるのであって,それを怠っていては,運動の評価(それがなんであれ)に到達する方法として不十分だろう.
 もちろん,トランスの権利運動の目的を都合のいいように歪めれば,議論の再構成による擁護は容易になるかもしれない.Jenkins 2018が,トランスの権利運動を擁護しやすいように,その目的を弱い要求の形に入れ替えてしまっているのではないか,という批判は成り立つ.あるいは,自分がこれこそトランスの権利運動の目的だと思いこんだものだけを重視して,運動にとって本来だいじな目的(自認こそ性同一性の核だ,とか)を専横にも捨て去っているのかもしれない.
 この点でも,やるべきことはふつうの哲学的議論ととくに変わらない.Jenkinsもトランスの権利運動が多様な目的を備えていることは認めている.そのうえで,自分がここで説明をつけようとするのはこの6つの目的である,と明示しているのだ.前提が満たすべき条件(つまり,前提から帰結できること)を明示することで,それが歪められていないかどうかを確認できるようになっているわけだ.
 だが,ある理論的な議論がずさんな再構成に陥っているかはどうやったら判別できるだろうか.単に妥当なだけでずさんな再構成,というのはよくあるものだ.
 そのひとつの指標は,自説とは異なるほかの立場を,どれだけしっかり検討できているか,だろう.ほかの再構成のしかたと比べて自説がなんらか有利であることを示すというのも,哲学ではよく行われることだ.そしてそれを見てとるのに有用なのは,自分と同様の専門家によって提示されたほかの立場を検討していること,すなわち,分野に応じてちゃんとした文献を参照しているかどうか,だと私は思う.
 私は最近,哲学者の三浦俊彦によるトランスの権利運動への批判(三浦 2019/05)を再批判した声明に署名した.署名というのはけっこう不可逆的なことで,しばらく態度を保留にしていてもあとから署名するのはまったく問題ないが,署名しておいてあとからナシにするのは非常にむずかしい(だからこそ社会的な重みがある).私がそれでも署名に踏み切ったのは,三浦の議論が,特に「近年の定説を三段論法で確認」するというくだりで,トランスの権利運動の主張についてずさんな再構成に甘んじており,Jenkinsやその他の哲学者が行ってきた自認や性同一性についての哲学的議論を参照していない11にもかかわらず,哲学的議論として提示されており,単なる個人の差別的な発言という域を超えてしまっていて,公の場での批判に服すべきだと考えたからだ.
 専門家が行う哲学的議論なのに,哲学の蓄積(論文)を無視しているのは,不誠実だと私は思う12.ただもちろん,不誠実であることは,議論がいいかげんであることや,当人が該当の問題をまじめに扱う気がないことを示唆するかもしれないが,議論が誤っていることの根拠としては弱い.場合によっては,ほんとうに過去まじめに扱われたことがなく,参照すべき文献がないこともありえなくはない.とはいえ今回の紹介で私は,三浦が参照すべきだった文献は実際にはたくさんある(Jenkinsや,そこで参照されている文献)ことや,三浦の議論が説得的でないことを,はっきり示しえたと考える.
 声明や署名というのは,公表して自分の正当性を主張して,それで終わりというものではない.まったく逆に,そこで書き切れなかったことや,賛同した個々人の微妙な立場のちがい13について,継続して発表し,正当性を多角的に検証し,問題に取り組んでいく責任が生じると,私は思う.やりかたはひとそれぞれだし,かける時間も異なるだろうが,少なくとも何らかその責任に応答しなければ,個人を非難する共同声明は,数を頼みにした私刑や正義を笠に着た売名ともなりかねない.


  1. 日本語では,「性同一性」「性自認」のどちらも,"gender identity"の訳として用いられる.これにはStoller 1964による導入以来の歴史的経緯が関係するが,現代では,「自認」という訳をあてるのは哲学的には問題含みだと思う.gender identityが自分じしんには明白に知られている(認識的透明性)とか,自分以外の人間の観察や証言はつねに自分の判断より弱い根拠にすぎない(認識的一人称特権)という,論争的な前提を受け入れているように見えてしまうからだ.ここでは「性同一性」とし,「自認」は"self-identification"の訳として用いることにする.関連することだが,「性」を"gender"の訳として当て,"sex"の訳としては当てない.Jenkinsは文章上の利便性から私と同じような選択をしたと述べている(原文注3)が,私はもう少し積極的な理由づけができると思う."gender"を「ジェンダ」と訳してしまうと,"sex"のほうは生物学的な特徴として簡単に特定できるが"gender"は専門用語をあてるほかない概念だ,と受け取られやすい.しかし,sexを生物学的特徴として定義するのは非常に難しく,そのような受け取りかたは生物学を単純化してしまっているおそれがある.このあたりは高橋 2006を見てほしい.

  2. Jenkinsによれば,この立場はJeffreys 2014に見られるそうだ.Jenkinsはこの立場を直接棄却する作業はほかに任せている.たとえば,Lester 2017がそうだ.Lesterはこの本の14章で,Jeffreys 2014をGay 2014と読み比べて批判している(もしかするとトランスをはなから信頼しない人間に対して説得的な批判ではないかもしれないが).ロクサーヌ・ゲイの本はいちおう翻訳あり(野中・訳 2017).また,セックスに基づく権利侵害はジェンダに基づく権利侵害より現状ずっとひどいのだから,ジェンダに基づくトランスの権利運動は現状ではあきらめるべきだ,という優先順位に基づく批判も,もしかしたらこれに含まれるかもしれない.

  3. たとえば,トランスの権利運動は,性同一性が男性であるが女装をたしなむような人間をも,女性として扱うことを要求するではないか,という批判は,この手の批判の具体例になるだろう.

  4. 私はこの態度がはなから間違っているとは思わない.たしかに,他人の侮辱的な発言をとがめないでいながら,見て見ぬふりをしてとぼけるのは誠実な態度ではないし,そのせいで信頼を失うのも当然に思える.だが他方で,侮辱的であることがつねにそのような非難や不信に結びつくべきだとは限らない.我々はときには,侮辱することを道徳的に要請されることすらあるかもしれない.侮辱や人格非難のような,人間関係にまつわる道徳的評価がどういうときフェアなものになるかについては,Scanlon 20084章をはじめ,さまざまな研究がある.

  5. Jenkinsが参照するのは次の5つ. https://transequality.org/ https://srlp.org/ http://www.hrc.org/explore/topic/transgender https://www.stonewall.org.uk/our-work/campaigns/come-out-trans-equality https://www.amnesty.org.uk/issues/lgbti-rights また,https://www.amnesty.or.jp/lp/lbg/about/https://stonewalljapan.org/resources/transgender-life/でも,同様の言及がある.

  6. ちなみにこの「民間の」〔folk〕というのは,べつに哲学に詳しくない民間人を見下して使われているのではなく,哲学分野ではよくある言いまわしだ.哲学者は概念を評価するとき,あるていど哲学独自の基準を使うため,民間の・通俗的な・素朴な定義では満足しない.循環性はそうした哲学的な基準の例だ.哲学を気にしない場合,なにかの概念の定義が循環していることは非常によくあることで,我々はべつにそれでたいていうまくやっていける.しかし,理論におけるほかの概念との整合性とか,極端な事例への適用とかを考えると,循環している定義は扱いづらい.そういうとき,哲学者は定義を洗練し,哲学的に扱いやすい形に変えていく.

  7. 厳密には,哲学的な循環といってもいろいろあり,定義のあいだで循環が生じていてもそれは良性の循環であるから問題ない,ということもあるのだが,Jenkinsはおそらく悪性の循環だけを問題視している.

  8. ほんとは,ほかにも「哲学的な難点はあるけど,特に気にしなくてよい」というような態度もありうる.たとえば,議論しているあいだにもどんどんひとが死んでしまう,という状況では,哲学的な難点の解消は遠回りにすぎず,あとまわしにすべき,実践上の理由があるかもしれない.そして権利運動にはどうしてもそういう側面がある.ここでは,そうした遠回りがけっきょくは運動の目的をよりうまく達成するかもしれない,という,対立するべつの実践的な理由に訴えることにしよう.どちらの理由に重きが置かれるかは,状況によってまちまちだろう.

  9. たとえば,机というものがあり,それを構成するもっと小さな部品があり,机は部品の集まりと同じ1つのものだ,と我々は認めているように思える.ところが,この直観からさまざまなパラドクスが生じる.倉田 2017 pp. 2-34を読むと概要がつかめる.

  10. 羞恥を感じるとき,そこに不正があるかどうかは微妙なところだ.たとえば,私が足を悪くしていて,人前で転んでしまい,恥ずかしいと感じるとしよう.足を悪くしているのだから転ぶのは当たり前かもしれないが,それでも私が羞恥を感じることにふしぎはない.だがここで,足が悪くても転ぶのは恥ずかしいという自分への否定的評価に,足が悪いほかのひとにまで不利な規範(健常者は転ばないのだから,足が悪くても転ぶべきではない)を課す,障碍者差別になる前提がない,と言えるだろうか.

  11. 論文のような専門的評価にある程度さらされた文献を参照せず,ブログ記事などで済ませる傾向は,三浦 2019/06でも続いている.

  12. こうしたやや文献偏重な態度は,三浦本人から影響を受けている.三浦 2002, 2003, 2004, 2011の「論理パラドクス」シリーズは、ほぼすべてのパズルの解説に哲学内外の文献参照がついている非常に興味深い本で,これによって私は,いわゆる論理パズルが,頭の体操にとどまらない重要な哲学的問題と結びついていることを学んだ.

  13. ちなみに,個々人や諸立場の連帯を目指しつつ,その差異を等閑視しないというのは,クィアスタディーズの信条でもあるはず.

「ネタバレの美学」ワークショップの感想

「ネタバレの美学」ワークショップの感想

 2018年11月23日(金祝)に,公開ワークショップ「ネタバレの美学」で話題提供した.発表スライドはresearchmap上ですでに公開しており,年度明けぐらいの時期で論文化の予定もあるが,ここでは,次の問いに答えを与えたい:この発表はどうやってできたのか?
 話は2010年にさかのぼる.時系列を追って見ていこう.

続きを読む

雑誌「フィルカル」に寄稿しました

 9月末に発売になった「フィルカル」という雑誌の最新号に,「文化的盗用」と呼ばれる現象(「文化的盗用」と呼ばれる現象をめぐる争い)について,哲学者はどんなことを考えているのか,紹介した論考を寄稿しました.雑誌とのご縁じたいは,友人の紹介によるものです.
 この雑誌は,若手の哲学者が,(ポップ)カルチャーと最近の哲学研究とを関連づけて論じたいろんな文章を毎号掲載してます.この手の批評誌はネット・同人界隈でも最近また元気がいいんですが,こちらはなんと哲学者の査読が入るようになっていて,その点で学術的な質が上がっています! ほかの号もおすすめです.

 ふだん「文化的盗用」の話をひとにしたことないはずなので,なんで急に? と思われるかもしれませんが,私のもくろみではこの議論は,私がずっと気にしている“フェミニズムの哲学”にアプローチする上で重要です.今回の1万5000字ていどの短い報告は,その途中経過と言えるものになっています.
 イントロの「既存の学に基づいて話をしてくれェ……ウウウ……」という恨みのこもった箇所以外はほぼ書評的になっており,書評対象( Cultural Appropriation and the Arts (New Directions in Aesthetics) )が少し前(2008年)の本なのですでに出ている批判がいくつかありまして,それらを書評しながらいっしょに記載しようとした結果,論運びが歪んでいるところもあるようです.これは,紹介者としての私の反省点です.

フィルカル Vol. 3, No. 2 ―分析哲学と文化をつなぐ―

フィルカル Vol. 3, No. 2 ―分析哲学と文化をつなぐ―

フィルカル Vol. 3, No. 2 【9月30日発売です】 | philcul

ぜんたいの目次など詳細はこちらでも紹介があります.
『フィルカル』Vol.3 No.2に掲載いただきました - 仄聞社ジャーナル

第24回文学フリマにて,以下の25冊をお分けいただきました.しめて¥11,430.

お分けいただいたすべての本について,感想を書いていこうと思います.

借りたこれがテニスラケットだとして

昨年借りた本のリスト.

哲学
  • 心という難問 空間・身体・意味 は,ある対象の存在論的言明と、その対象を知覚するという言明とが、かなりごっちゃになっているような気がするのだが(隣の部屋にアイロンがあることを,推論によらず知覚できるのか?)、認知的侵入を極端な形に拡張して、素朴実在論を錯覚論法から守るという筋なのかな

心の哲学入門

心の哲学入門

自律の創成: 近代道徳哲学史 (叢書・ウニベルシタス)

自律の創成: 近代道徳哲学史 (叢書・ウニベルシタス)

心という難問 空間・身体・意味

心という難問 空間・身体・意味

ケアの倫理 (文庫クセジュ)

ケアの倫理 (文庫クセジュ)

人文・思想
  • 本を書く は訳がちょっと怪しい(たとえば,moralをなんでも道徳と訳すのはまずくて,教訓とか精神とかのように,倫理学者からすると相当ふわっとした意味で使うこともけっこうある)し,肝心の小説作りの心構えの面についての記述は,訳者解説が要領よくまとめてしまっているので読んでいてあまりおもしろくなかったが,後半のスタント・パイロットの話はかなりおもしろかった.
  • フェミニズムとリベラリズム (フェミニズムの主張) は,選択の自由としての自律性に重い価値をおく古典的な立場が,その限界のためにフェミニズムと対立してしまう事情について,見通しが得られる.ただ,「リベラリズムは…と主張する」みたいな言い回しは検証が難しいので(比喩だからね)注意しないとだな.
  • プラスチック・ビューティー―美容整形の文化史アメリカの美容整形のはじまりをまとめているんだけど, 人はなぜ美容整形をするのか / 谷本奈穂 / 文化社会学 | SYNODOS -シノドス- でもちょっと触れられているとおりで,第1次世界大戦で(塹壕戦で顔を出すので)傷ついた兵士に対して行われた複顔術がもと,という単純な歴史ではないみたい.これはそもそも,美容整形を,いかがわしい流行ではなく医療の伝統に根ざしたもの,と認知してほしがった医師たちのがわの一面的な捉えかたであって,ほかにも梅毒(鼻が低くなる)への対応とか,第1回ミスコンとの時代的共鳴や,いかがわしいもうけ主義の「にせ医師」を排除しようとしてできた2つの学会とかいったドラマがあった.ギャングや犯罪と結びつけて語られたり(顔を変えるってやつ),医療訴訟されたりなどといった負の側面もありながら,公開手術などのもうけ主義的なPRを経て,大恐慌下では就職に有利として,当時はやった心理学における「第一印象」とか「劣等感」とかいったタームを背景に,容姿の重要性が叫ばれた.そうやって単なる再建手術ではない美容手術がアメリカの社会や宗教に受け入れられていくさまが描かれていて,読んでいて飽きない.
  • ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア は米国の手売り(郵送)ミニコミ雑誌を収集した研究でものすごくおもしろいし研究手法としても勉強になる.
  • 少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか は女性の「ホモソーシャル共同体」を注抜きで登場させるので面食らうが,これは“女性だけの共同体”というだけではやはりだめでホモソーシャリティを備えていることが重要なんだよね.つまり,魔法少女チームというのは,なかよい連中がたまたま全員女性であるのではなく,女性として共同体を作ってるものなのだ,というのが論旨なので.そのために用いられるのが,(男性共同体ならホモフォビアや強制異性愛などであるところ)マザーリングやケアなどフェミニニティへの「適度」な肯定や「戦略的」な利用であり,また,多様な構成員を共同体に加えるための統一感ある制服の導入だ,という読みは説得力あるし実証もおもしろい.
  • 狂気の科学―真面目な科学者たちの奇態な実験 p. 136によると,ポップコーン販促のサブリミナル“実験”を行ったと主張したジェームズ・ヴィカリさんは消息不明ということになっていて,それって不思議ミステリー⤴なんだが,調べると1977年没という情報も出てくる.
  • Sound Design  映画を響かせる「音」のつくり方 は,脇役ではない音響の奥深さが伝わる本! リヴァーブを変えれば空間の広さを自在に錯覚させられる.大音量を使わずとも,高低のゲシュタルトだけで,狙った音に注意をひける.ただ,やや記述が散漫なので,早見表みたいに使うのは難しそう.

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた

触れることの科学: なぜ感じるのか どう感じるのか

触れることの科学: なぜ感じるのか どう感じるのか

狂気の科学―真面目な科学者たちの奇態な実験

狂気の科学―真面目な科学者たちの奇態な実験

Sound Design  映画を響かせる「音」のつくり方

Sound Design  映画を響かせる「音」のつくり方

言語が違えば、世界も違って見えるわけ

言語が違えば、世界も違って見えるわけ

信頼はなぜ裏切られるのか―無意識の科学が明かす真実

信頼はなぜ裏切られるのか―無意識の科学が明かす真実

ジプシー・ミュージックの真実―ロマ・フィールド・レポート

ジプシー・ミュージックの真実―ロマ・フィールド・レポート

「ジプシー収容所」の記憶―ロマ民族とホロコースト

「ジプシー収容所」の記憶―ロマ民族とホロコースト

フェミニズムとリベラリズム (フェミニズムの主張)

フェミニズムとリベラリズム (フェミニズムの主張)

プラスチック・ビューティー―美容整形の文化史

プラスチック・ビューティー―美容整形の文化史

ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア

ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア

クラリッサの凌辱―エクリチュール、セクシュアリティー、階級闘争

クラリッサの凌辱―エクリチュール、セクシュアリティー、階級闘争

少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか

少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか

シングルのつなぐ縁:シングルの人類学2

シングルのつなぐ縁:シングルの人類学2

  • 作者: 椎野若菜,馬場淳,谷口陽子,新ヶ江章友,國弘暁子,小池郁子,田所聖志,八木祐子,田中雅一,岡田浩樹,村上薫,妙木忍,植村清加,花渕馨也
  • 出版社/メーカー: 人文書院
  • 発売日: 2014/04/14
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
本を書く

本を書く

ゴジラ論ノート―怪獣論の知識社会学

ゴジラ論ノート―怪獣論の知識社会学

モナドロジー・形而上学叙説 (中公クラシックス)

モナドロジー・形而上学叙説 (中公クラシックス)

洋服を着る近代: 帝国の思惑と民族の選択 (サピエンティア)

洋服を着る近代: 帝国の思惑と民族の選択 (サピエンティア)

コンセプチュアル・アート (岩波 世界の美術)

コンセプチュアル・アート (岩波 世界の美術)

美味しい料理の哲学 (シリーズ・道徳の系譜)

美味しい料理の哲学 (シリーズ・道徳の系譜)

芸術SF・芸術ミステリー
  • アックスマンのジャズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) は,捜査役(マフィアの手先,刑事,功を焦る探偵社の新人)に応じて真相(実行犯の動機,計画者がそいつを実行犯として選んだ理由,計画者のそもそもの目的)を提示する作りがみごと.米南部が舞台のミステリーって終盤に嵐や洪水が多すぎない? 不満としてですねー,連続殺人犯が予告状送ってきて「ワシ,悪魔!今晩はジャズを演奏してない家庭をまわって人間ぶっころしちゃうもんね!」ってんで町中がジャズの渦に,っていうツカミなんだから,なぜジャズか? ってとこ,もっと芸術ミステリーにしてほしいよね(深水, 世界で一つだけの殺し方 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル) 2013 みたいになってもアレだが……こういうのでフェアプレーは難しい).
  • ザ・ベスト・オブ・バラード (ちくま文庫) 所収の"音を取りのける男"(1962)は,音楽を圧縮して超音波にしても感情を喚起する効果は保存されるのがわかったせいで,すべての音楽が超音波化され,肉声を使うオペラ歌手が時代遅れになった未来の話なのだが,我々がその時代に置かれたらやはり肉声や可聴域音波のほうを好むかもしれない.最近だと J・G・バラード短編全集1 (時の声) にも”音響清掃”の題で悠宇録されています.

アックスマンのジャズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

アックスマンのジャズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

世界で一つだけの殺し方 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)

世界で一つだけの殺し方 (本格ミステリー・ワールド・スペシャル)

ザ・ベスト・オブ・バラード (ちくま文庫)

ザ・ベスト・オブ・バラード (ちくま文庫)

SF
  • 宇宙探偵マグナス・リドルフ (ジャック・ヴァンス・トレジャリー) に収録の“海への贈り物”(1955)もそうだが,ファーストコンタクトものは,コンタクトの手段確保に注目した言語SFの側面がある.これは言語の理論が登場したために,外挿法でSF化可能になった,という歴史的背景も関係ありそう(普遍文法は1957)だけど.
  • エンベディング (未来の文学) は,(乱暴に言えば)「の」が多い言語構造を,むりやり子どもに教えこんでいる言語学者が出てくるファーストコンタクトもの.最近読んだのだと,話しかけてくるブラックホールとのファーストコンタクトものもあった(ヴァーリイ 1977)
  • 都市 (ハヤカワ文庫 SF 205) 所収のシマック,“密集地”に火星人の哲学者が出てきて,地球の哲学とちがい順を追って発展してるというので,地球人に賞賛される.異なる哲学や生きかたがある,ってのをSFはよく(牧歌的に)扱うが,大陸系のように太陽系系哲学ってのはあるだろうか
  • ロックイン-統合捜査- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) は,やさぐれた頭に染みるSF刑事もの.大きな変化があった社会が(法案のせいで)さらに変わりゆく時期を描くと,状況の導入がスムーズでいいな.このあと*アンドロイドの夢の羊*(2013)も入手ずみなのでお楽しみに私!
  • ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫) は,RPGっぽいって感想を見たがほんとだなあ,主役と脇役との分離がはっきりしてる.「ヴィクトリア」の探索行はカッリージ,*ローマに消えた女たち*(2011.2014,清水・訳)をちょっと思い出すがこっちのがポップ.
  • ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504) は,へんてこな小説だ.ふつうなら最初に風呂敷を展開してあとで畳むから,まず「ゾーン」内の品々の紹介が先に来る構成になるだろうと思うのだが.それらの登場は終章まで待たされ,最初から出てくるのは「適量」「空罐」などせいぜい数種.

彼女がエスパーだったころ

彼女がエスパーだったころ

テキスト9 (Jコレクション)

テキスト9 (Jコレクション)

ゴースト・オブ・ユートピア (Jコレクション)

ゴースト・オブ・ユートピア (Jコレクション)

エンベディング (未来の文学)

エンベディング (未来の文学)

都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)

都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)

ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫)

ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫)

マイクロチップの魔術師 (新潮文庫)

マイクロチップの魔術師 (新潮文庫)

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

ストーカー (ハヤカワ文庫 SF 504)

ミステリー
  • 怪奇探偵リジー&クリスタル は1938年のLAが舞台のB級オカルトミステリー短編集.4話めの"軽はずみな旅行者"の一節が泣かせる,私こういうのに弱いね……つまり,大人の目から見たら(その大人には届かない)輝かしい未来に手が届こうとしているのに,それに気づいていない子どもを,大人が励ますってやつ(この励ましは呪いにもなるんだけどね!).
  • 心臓と左手―座間味くんの推理 (光文社文庫) はそれぞれ3万字弱の短編集で観点も統一されており(表の様相に対する真相,あるいはそのさらに裏)とても読みやすい.こうすっきりとはなかなか描けないもんだと思う.

挑戦者たち

挑戦者たち

殺しのメロディー (海外SFミステリー傑作選)

殺しのメロディー (海外SFミステリー傑作選)

絶対0度のなぞ (海外SFミステリー傑作選)

絶対0度のなぞ (海外SFミステリー傑作選)

怪奇探偵リジー&クリスタル

怪奇探偵リジー&クリスタル

その他小説
  • あなたに贈る×(キス)[新装版] はキスされると死ぬ! という設定だが最近まで知らなくて,恐々としながら読んだ,賭けに出たやつが1人もいなかったことになるのが不満.
  • 大いなる不満 (新潮クレスト・ブックス) は解説で,「物語は次第に、その主観と外界とのずれや亀裂を発見することになる.それに気づきつつも,語り手はおのれの主観世界をさらに突き詰め…」という「自滅型一人称」が提唱されてるが,このパターンで面白く書くのは才能だよね!
  • エペペ はめちゃくちゃおもしろい.焦点人物の言語学者「ブダイ」が,国際学会への便をうっかり乗り違えて一切の意思疎通がきかない異国に迷いこむまで,わずかに1ページ半しかかからない.そのあとはずっとこの混雑した国での右往左往を楽しめるってワケよ.

レベル3 (異色作家短篇集)

レベル3 (異色作家短篇集)

美について

美について

クライム・マシン (河出文庫)

クライム・マシン (河出文庫)

完本 黒衣伝説

完本 黒衣伝説

恋愛採集士

恋愛採集士

古書収集家 (フィクションの楽しみ)

古書収集家 (フィクションの楽しみ)

あなたに贈る×(キス)[新装版]

あなたに贈る×(キス)[新装版]

偽窓

偽窓

大いなる不満 (新潮クレスト・ブックス)

大いなる不満 (新潮クレスト・ブックス)

怪獣文学大全 (河出文庫)

怪獣文学大全 (河出文庫)

ミニチュアの妻 (エクス・リブリス)

ミニチュアの妻 (エクス・リブリス)

はるかな星 (ボラーニョ・コレクション)

はるかな星 (ボラーニョ・コレクション)

青い野を歩く (エクス・リブリス)

青い野を歩く (エクス・リブリス)

エペペ

エペペ

夜更けのエントロピー (奇想コレクション)

夜更けのエントロピー (奇想コレクション)

煙草 カリフォルニアウイルス

煙草 カリフォルニアウイルス

その他

怪獣博士!  大伴昌司 ---「大図解」画報 (らんぷの本)

怪獣博士! 大伴昌司 ---「大図解」画報 (らんぷの本)

ザ・ビッグイヤー 世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲

ザ・ビッグイヤー 世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲

脚本を書くための101の習慣 ──創作の神様との付き合い方

脚本を書くための101の習慣 ──創作の神様との付き合い方

幻獣と動物を描く

幻獣と動物を描く

フェアトレードのおかしな真実――僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た

フェアトレードのおかしな真実――僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た

コーヒー「こつ」の科学―コーヒーを正しく知るために

コーヒー「こつ」の科学―コーヒーを正しく知るために

1年の計は元旦にあり(会計)

昨年買った本のリスト.

哲学
  • 問いかける法哲学 問い×法哲学(リバあり 2, 8, 13章)(何でも許せる人向け).10章(吉良,pp. 168-183)の年金をテーマにした議論は,同世代のひとどうしの平等や世代間の平等ではなくて,人生どうしの平等という議論になっていてかなりおもしろい.

Vulnerability: New Essays in Ethics and Feminist Philosophy (Studies in Feminist Philosophy)

Vulnerability: New Essays in Ethics and Feminist Philosophy (Studies in Feminist Philosophy)

What We Owe to Each Other

What We Owe to Each Other

Autonomy and Paternalism: Reflections on the Theory and Practice of Health Care (Ethical Perspectives Monograph Series)

Autonomy and Paternalism: Reflections on the Theory and Practice of Health Care (Ethical Perspectives Monograph Series)

Aesthetics As Philosophy of Perception

Aesthetics As Philosophy of Perception

Values of Art: Pictures, Poetry, and Music (Penguin philosophy)

Values of Art: Pictures, Poetry, and Music (Penguin philosophy)

Identity, Personal Identity, and the Self

Identity, Personal Identity, and the Self

未来世界の倫理―遺伝子工学とブレイン・コントロール

未来世界の倫理―遺伝子工学とブレイン・コントロール

問いかける法哲学

問いかける法哲学

世界の複数性について

世界の複数性について

心を名づけること〈上〉―心理学の社会的構成 (シリーズ認知と文化)

心を名づけること〈上〉―心理学の社会的構成 (シリーズ認知と文化)

ハーフリアル ―虚実のあいだのビデオゲーム

ハーフリアル ―虚実のあいだのビデオゲーム

自己知と自己同一性 (双書プロブレマータ)

自己知と自己同一性 (双書プロブレマータ)

思想

practica〈2〉アート×セラピー潮流 (プラクティカ (2))

practica〈2〉アート×セラピー潮流 (プラクティカ (2))

インターネットを探して

インターネットを探して

本の窓から―小森収ミステリ評論集

本の窓から―小森収ミステリ評論集

コミュニケーション――自由な情報空間とは何か (自由への問い 第4巻)

コミュニケーション――自由な情報空間とは何か (自由への問い 第4巻)

エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ)

エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ)

次の本へ

次の本へ

社会科学の理念―ウィトゲンシュタイン哲学と社会研究

社会科学の理念―ウィトゲンシュタイン哲学と社会研究

芸術SF・芸術ミステリー


爆発的―七つの箱の死 (双葉文庫)

爆発的―七つの箱の死 (双葉文庫)

ヘミングウェイごっこ (ハヤカワ文庫SF)

ヘミングウェイごっこ (ハヤカワ文庫SF)

アメリカ最後の実験

アメリカ最後の実験

バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)

バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)

古書贋作師 (創元推理文庫)

古書贋作師 (創元推理文庫)

TAP (河出文庫)

TAP (河出文庫)

80年代SF傑作選〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

80年代SF傑作選〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

SF
  • レズニック,暗殺者の惑星 (新潮文庫)(1982.1985,小川・訳),悪徳きわめる惑星に亡命した虐殺者を暗殺するため送りこまれた凄腕を阻むのは,奇怪な文化習慣!ナイフを返すときは柄のほうを渡しちゃダメ!?さらに潜伏のための殺人をかぎつけた敏腕刑事部長まで!頼みの綱はおばあちゃんテレパス
  • ラクトバチルス・メデューサ (ハルキ文庫) は,乳酸菌の突然変異によって食べた人間がどんどん石化していくという話.石化ということでこういうネタがあるのは知らなかった.元素置換みたいな錬金術めいた話よりは真実みがあっていいな.これは文学フリマのハヤカワSF本で教えてもらったやつ.

暗殺者の惑星 (新潮文庫)

暗殺者の惑星 (新潮文庫)

アンドロイドの夢の羊 (ハヤカワ文庫SF)

アンドロイドの夢の羊 (ハヤカワ文庫SF)

エネルギー救出作戦 (新潮文庫)

エネルギー救出作戦 (新潮文庫)

BLACK OUT (幻冬舎文庫)

BLACK OUT (幻冬舎文庫)

スロー・リバー (ハヤカワ文庫SF)

スロー・リバー (ハヤカワ文庫SF)

ルドルフ・カイヨワの憂鬱

ルドルフ・カイヨワの憂鬱

ラクトバチルス・メデューサ (ハルキ文庫)

ラクトバチルス・メデューサ (ハルキ文庫)

最後にして最初のアイドル【短篇版】

最後にして最初のアイドル【短篇版】

90年代SF傑作選〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

90年代SF傑作選〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

馬鹿★テキサス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

馬鹿★テキサス (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 福島(ed.), 人間を超えるもの 海外SF傑作選(2007).
ミステリー
  • 鳥飼否宇,"赤い露光 でなければ、ソルジャー・ウォーク"(2008.in: 爆発的―七つの箱の死 (双葉文庫) )では,美術館での連続殺人の一環として屋形船での殺人が出てきます.真相は他愛もないものですが.
  • 月の扉 (光文社文庫) はハイジャックミステリーということでネタが被っていないか確認に読んだ。この手の特殊状況は,「なぜわざわざいま殺る?」「いつのまに殺ってのけた?」「凶器をどう持ちこんだ?」をおざなりにせずちゃんと扱うとおもしろくなるね!ラストの1行は応用したくなる.
  • グラン, 探偵は孤高の道を (創元推理文庫) (2013.高山・訳,2016),このシリーズ( 探偵は壊れた街で (創元推理文庫) )を読むにつけ思うのだけど,探偵または作者の重要な才能の1つは,事件にふさわしい名前をつけることだと思う.人生において例外的にたくさんの事件を扱うのが探偵だ.だからちゃんと名付けてケースにしまわなきゃいけない
  • 淑やかな女性監察医が夜ごと狩人と化しロンドンを徘徊するゴシックパンクを求めてさまよう猟奇家の皆さん,カー, 二重人格探偵エリザ 嗤う双面神(双面神:ヤヌス) (ハーパーBOOKS) (2015.2016,川野・訳)こそあなたの求めていたものなので早く読んでください.
    • 王立協会の統制のもと歪んだ科学理解に支配されたヴィクトリア朝ロンドン.このごろ押し出し中の監察医エリザは猟奇犯罪の捜査にあたる.だがこの淑女の呪われた名字はジキル,彼女こそは副人格の凶暴蓮っ葉女リジー・ハイドを内に秘めた,あのジキル博士の娘なのである.
    • 人体各部を切断する事件現場に残された,大電流の痕跡が意味するものとは?いけすかない気取り屋の捜査官に顔を赤らめたりイヤミを言ったりしながら,精神病院で以前捕らえたあの殺人鬼トッドにヒントをもらったり顔を赤らめたりするエリザ!だが気をつけろ,錬金薬を定期服用せねば副人格が暴れ出すぞ.
    • 案の定暴れ出す副人格リジー!盛り場はあたしに任しとけ!髪の色も変わるぞ!酒場を根城にする妖精にヒントをもらったり顔を赤らめたりしながら夜の?捜査だ!エッ被害者に付着した狼の体毛!?犯人はもしや狼男では!?毎朝待ち合わせに遅刻しつつも異端視迫害を運よくかわしながら捜査するエリザ!
    • ついに出現するワイルドな狼男にリジーの体温は急上昇!だがロンドンにはさらなる脅威が.父の死後に出現した影の後援者の正体は!?すべての科学は私が仕切るとばかり,百年前に死んだはずのニュートンも登場!エリザの顔も真っ赤!引き寄せまっか〜!そして迫る落雷は“あの研究”まで予告していた!
    • 右往左往してるうちに事件が転がってくだけの筋だが,おかげで600ページ近い文庫でも設定の楽しさが持続してさらっと読める.ニュートン登場はタメがほしいし,2段落連続で顔を赤らめるのはどうかと思うが(従者ロボ「ヒポ」の頭のランプ並みの点滅だなおい!)みんなのダイスキが詰まってるよ!
    • (ところで日本版副題の「嗤う双面神」ってなんのことだろう.たしかにこの話には「双面」な運命,神のいたずらに必死で抗うひとが多数登場する.二重人格しかり,狼男しかり.そう,この話は重人vs. 獣人の戦いでもあるのだ)
    • The Devious Dr. Jekyll: An Electric Empire Novel (Electric Empire Novels) はその続編.

呪い! (ハヤカワ・ミステリ文庫)

呪い! (ハヤカワ・ミステリ文庫)

爆発的―七つの箱の死 (双葉文庫)

爆発的―七つの箱の死 (双葉文庫)

月の扉 (光文社文庫)

月の扉 (光文社文庫)

ミニ・ミステリ100 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミニ・ミステリ100 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

探偵は孤高の道を (創元推理文庫)

探偵は孤高の道を (創元推理文庫)

私の悪魔 (小学館文庫)

私の悪魔 (小学館文庫)

堕天使の街 (小学館文庫)

堕天使の街 (小学館文庫)

二重人格探偵エリザ 嗤う双面神(双面神:ヤヌス) (ハーパーBOOKS)

二重人格探偵エリザ 嗤う双面神(双面神:ヤヌス) (ハーパーBOOKS)

The Devious Dr. Jekyll: An Electric Empire Novel (Electric Empire Novels)

The Devious Dr. Jekyll: An Electric Empire Novel (Electric Empire Novels)

女子高生探偵シャーロット・ホームズの冒険 上 (竹書房文庫)

女子高生探偵シャーロット・ホームズの冒険 上 (竹書房文庫)

ガール・オン・ザ・トレイン(下) (講談社文庫)

ガール・オン・ザ・トレイン(下) (講談社文庫)

亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)

亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)

小説

off you go (幻冬舎ルチル文庫)

off you go (幻冬舎ルチル文庫)

MM9 (創元SF文庫 )

MM9 (創元SF文庫 )

生存賭博 (新潮文庫nex)

生存賭博 (新潮文庫nex)

真夜中のギャングたち

真夜中のギャングたち

. (period) (一迅社文庫アイリス る 1-1)

. (period) (一迅社文庫アイリス る 1-1)

ハーン・ザ・ラストハンター: アメリカン・オタク小説集 (単行本)

ハーン・ザ・ラストハンター: アメリカン・オタク小説集 (単行本)

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【下】 (キョート殺伐都市 # 8)

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【下】 (キョート殺伐都市 # 8)

オリエント急行戦線異状なし

オリエント急行戦線異状なし

わたしを見かけませんでしたか? (ハヤカワepi文庫)

わたしを見かけませんでしたか? (ハヤカワepi文庫)

龍の伽羅、Dr.の蓮華 (講談社X文庫)

龍の伽羅、Dr.の蓮華 (講談社X文庫)

マンガ
  • 銃座のウルナ 1 (ビームコミックス) は女性兵士SF.軍隊って国家のものなので人物に民族的ヴァリエーションが少なくなるもんですが,そのせいか人物の描き分けがよくわからん.でもいきなり僻地に送られた新米の視点はこんなもんか.
  • ひばりの朝 1 (Feelコミックス) で,「富子」は「値段」がつくかどうかにこだわるのだが,これが「見返り」を前提とした人間関係観から来てるってのはp. 118にあるとおり.でも人間関係の有害さって,そういう全順序がつく非人間的性質から来るばかりじゃないんだよね.
    • Vol. 1に顕著だけど,登場人物は皆,目の前の他人が自分の思い通りに行動することを妄想してて,人間関係の有害さの対処法は他にない(そしてふつうそうはできないから逃れられない)かのように描かれるが,ラストは固定された環境を脱すればgone and liveの目はあるということか.
    • あとtalk. 10に明らかだと思うが,善意(法律用語のほう)の扱いがうまくて,やっぱり知らないでなんかされるのってうっとうしいし,知らないでなんかしてんの見るのは腹立つけど,そういうの受けて気持ちラクになることもあり,かつそのありがたさに対価を払う必要はない,ってのがよかった.
  • アルテ 1 (ゼノンコミックス) も芸術マンガだ.
  • 大石まさる作品には キラリティ (コミック(YKコミックス))ライプニッツ (ヤングキングコミックス) で出会ったけど,爽快で細かく知的,たのしい宇宙SFでした.これをそれぞれ1巻完結でやるのはとんでもない力量だよ.
  • スズログ 01 (電撃コミックス) はまったく知らなかったSFだが,汚染された地表へ衛星軌道からデータサルベージを行うという設定でぐっときて一気に読んだ.
  • 近代麻雀 2016年 12/1 号 [雑誌] は, 近代麻雀漫画生活 の紹介を見て読んだ.

金田一少年の事件簿 File(28) (講談社漫画文庫)

金田一少年の事件簿 File(28) (講談社漫画文庫)

銃座のウルナ 1 (ビームコミックス)

銃座のウルナ 1 (ビームコミックス)

ひばりの朝 1 (Feelコミックス)

ひばりの朝 1 (Feelコミックス)

ひばりの朝 2 (Feelコミックス)

ひばりの朝 2 (Feelコミックス)

ゴジラvsキングギドラ (My First Big)

ゴジラvsキングギドラ (My First Big)

いかづち遠く海が鳴る 1 (ビッグコミックス)

いかづち遠く海が鳴る 1 (ビッグコミックス)

長閑の庭(3) (KC KISS)

長閑の庭(3) (KC KISS)

カペリートのまほう―すきすき!カペリート〈1〉 (講談社こどもクラブ)

カペリートのまほう―すきすき!カペリート〈1〉 (講談社こどもクラブ)

アルテ 1 (ゼノンコミックス)

アルテ 1 (ゼノンコミックス)

寒くなると肩を寄せて (ビームコミックス)

寒くなると肩を寄せて (ビームコミックス)

怪獣のテイル 1 (ヤングジャンプコミックス)

怪獣のテイル 1 (ヤングジャンプコミックス)

BLUE DROP―吉富昭仁作品集 (電撃コミックス)

BLUE DROP―吉富昭仁作品集 (電撃コミックス)

カプレカ 01 (CR COMICS)

カプレカ 01 (CR COMICS)

レンズのむこう (ジェッツコミックス)

レンズのむこう (ジェッツコミックス)

スズログ 01 (電撃コミックス)

スズログ 01 (電撃コミックス)

おふろどうぞ

おふろどうぞ

近代麻雀 2016年 12/1 号 [雑誌]

近代麻雀 2016年 12/1 号 [雑誌]

わたしのカイロス (BUNCH COMICS)

わたしのカイロス (BUNCH COMICS)

世界一周ホモのたび

世界一周ホモのたび

その他
  • 月刊住職 2016年9月号 は,各宗派のコメントをとった有り難い記事.自然が多く危険なので奥ノ院での使用を禁じた高野山など,判断の個別事情が興味深い.

詐欺とペテンの大百科

詐欺とペテンの大百科

スペイン語エッセイ Me lo dijo un pajarito Desde un pueblo de Asturias

スペイン語エッセイ Me lo dijo un pajarito Desde un pueblo de Asturias

超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方

超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方

きのうのH。 私の場合―GIRL'S SEX Document

きのうのH。 私の場合―GIRL'S SEX Document

古寺をゆく 2 高野山 (小学館101ビジュアル新書 4 古寺をゆく 2)

古寺をゆく 2 高野山 (小学館101ビジュアル新書 4 古寺をゆく 2)

爆裂天使 SUIT CD”爆”Jo-17

爆裂天使 SUIT CD”爆”Jo-17

小西真奈美写真集 「27」

小西真奈美写真集 「27」

高野山 (岩波新書)

高野山 (岩波新書)

24 BEHIND THE SCENES―『24』の舞台裏

24 BEHIND THE SCENES―『24』の舞台裏

百合作品ファイル (百合姫BOOKS)

百合作品ファイル (百合姫BOOKS)

Flawless 薬師寺涼子の怪奇事件簿イラスト集

Flawless 薬師寺涼子の怪奇事件簿イラスト集

FRaU (フラウ) 2013年 03月号 [雑誌]

FRaU (フラウ) 2013年 03月号 [雑誌]

女優美学 (東京カレンダーMOOKS)

女優美学 (東京カレンダーMOOKS)

美的(BITEKI) 2015年 10 月号 [雑誌]

美的(BITEKI) 2015年 10 月号 [雑誌]

同性パートナー―同性婚・DP法を知るために

同性パートナー―同性婚・DP法を知るために

月刊住職 2016年9月号

月刊住職 2016年9月号

誤訳ゼロトレーニング

誤訳ゼロトレーニング

東京喫茶帖

東京喫茶帖

購入全誌感想

第23回文学フリマにて,以下の32冊をお分けいただきました.しめて¥13,920.

お分けいただいたすべての本について,感想を書いていこうと思います.

図書収集家

最近借りた本のリスト.

哲学

統治と功利

統治と功利

時間と空間をめぐる12の謎

時間と空間をめぐる12の謎

モラル・トライブズ――共存の道徳哲学へ(上)

モラル・トライブズ――共存の道徳哲学へ(上)

美徳なき時代

美徳なき時代

倫理学の話

倫理学の話

動物倫理入門

動物倫理入門

ヘイト・スピーチという危害

ヘイト・スピーチという危害

世界のエリートが学んでいる教養としての哲学

世界のエリートが学んでいる教養としての哲学

美学

匂いの哲学

匂いの哲学

その他思想
  • 竹内&西原(eds.),マンガ文化 55のキーワード (世界文化シリーズ〈別巻〉 2)(2016),おもしろかった.
    • 秦,“エッセイコミック、実用コミック”:重いテーマは絵柄を簡略化すると描きやすいという指摘.
    • 夏目,“魔球”:魔球はチーム戦としての野球にそぐわないため廃れたと主張.ならここで例に出すべきは甲斐谷,*ONE OUTS*(1998-2006)でしょ!
    • あと,堀,“有害コミック問題”に引かれていた,中河,*子どもというレトリック*(1993)にある,有害コミック規制派への対抗クレームは重要.
      • 表現・出版の自由
      • 性差別はなくならないというフェミニストによる反対
      • 読みたい者を選ぶ子どもの権利擁護
      • 遮断の実効性のなさ
  • ハマーメッシュ,

歴史を逆なでに読む

歴史を逆なでに読む

にじ色の本棚 ―LGBTブックガイド―

にじ色の本棚 ―LGBTブックガイド―

男性権力の神話――《男性差別》の可視化と撤廃のための学問

男性権力の神話――《男性差別》の可視化と撤廃のための学問

美貌格差: 生まれつき不平等の経済学

美貌格差: 生まれつき不平等の経済学

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

マンガと音楽の甘い関係

マンガと音楽の甘い関係

BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす

BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす

ノンフィクション
  • コリンズ,宇宙旅行学―新産業へのパラダイム・シフト(2013)は,宇宙旅行・宇宙体験を産業にしたら景気回復するゾという大らかな本.VTOL発進できる宇宙港を「田舎の重要な施設」になど,SF作品のタイトルの一部を田舎にする件を地で行く(田舎ジョークは地方蔑視だと思うけど……)
  • 村上,et al.,基準値のからくり (ブルーバックス)(2014)おもしろかった,基準値にかぎらず統計的な値って四捨五入などの手を使うのだが,10の倍数だと人間が理解しやすいってだけで,算定方法としてはむちゃくちゃだよな.ミステリーの観点からは,米国大統領の暗殺リスクはスタントの死亡リスクより高い(それでも100人中2人,嵐の山荘よりずっと低い)という英国学士院の評価がおもしろい.美学的には,危険物施設からの保安距離は人間用施設(30m)より重要文化財(50m)のほうが大など.
  • ジンバルドー,ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき(2007.2015,鬼澤&中山・訳),ふつうのひとも悪行をなしちゃうけど英雄的行為もすることあるよってんで英雄の例が並んでいますぞ! タケルどの〜! 武勇だけでなく不屈を示した「社会的英雄」として科学者や官僚機構のなかのひとをあげている.

現代美術キュレーター・ハンドブック

現代美術キュレーター・ハンドブック

巨大化する現代アートビジネス

巨大化する現代アートビジネス

闇(ダーク)ネットの住人たち デジタル裏世界の内幕

闇(ダーク)ネットの住人たち デジタル裏世界の内幕

ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき

ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき

なぜ人はキスをするのか?

なぜ人はキスをするのか?

都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌―

都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌―

リベンジポルノ―性を拡散される若者たち

リベンジポルノ―性を拡散される若者たち

詐欺と詐称の大百科

詐欺と詐称の大百科

ゾミア―― 脱国家の世界史

ゾミア―― 脱国家の世界史

基準値のからくり (ブルーバックス)

基準値のからくり (ブルーバックス)

宇宙旅行学―新産業へのパラダイム・シフト

宇宙旅行学―新産業へのパラダイム・シフト

音楽の基礎 (岩波新書)

音楽の基礎 (岩波新書)

中南米の音楽―歌・踊り・祝宴を生きる人々

中南米の音楽―歌・踊り・祝宴を生きる人々

ひたすら読むエコノミクス

ひたすら読むエコノミクス

人はなぜ裏切りに目をつぶるのか――心の奥では知っているのに自分をだます理由 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-6)

人はなぜ裏切りに目をつぶるのか――心の奥では知っているのに自分をだます理由 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-6)

古書泥棒という職業の男たち: 20世紀最大の稀覯本盗難事件

古書泥棒という職業の男たち: 20世紀最大の稀覯本盗難事件

SF
  • ヘイリー(ed.),SF大クロニクル(2014.2016,北島・監修),さまざまなSF作品(SF作品シリーズ)の梗概を集めたフルカラー本! 映画中心だが小説もたくさんある.これは読んでよかった.作品ごとの年表(発表と作品内と両方)もあるし,梗概集としても使える.
  • ミラー,宇宙画の150年史:宇宙・ロケット・エイリアン(2014.2015,日暮 & 山田・訳),pp. 138-9のマシエウ・ヴォイタラのSpaceship Wreckyardがすてき,こういうコンセプトアーティストって1枚いくらで動いてくれるのかな
  • トゥーミー,ありえない生きもの―生命の概念をくつがえす生物は存在するか?(2013. 2015、越智・訳),知られている生物とは異なる祖先を持つ生物の可能性について探った楽しい本.第7〜9章では縦横に(そして適切に)人間原理が利用されていてすばらしい.最後はやっぱりボストロムも出てくる.

オルフェオ

オルフェオ

ありえない生きもの―生命の概念をくつがえす生物は存在するか?

ありえない生きもの―生命の概念をくつがえす生物は存在するか?

グリンプス (ちくま文庫)

グリンプス (ちくま文庫)

パラークシの記憶 (河出文庫)

パラークシの記憶 (河出文庫)

SF大クロニクル

SF大クロニクル

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF)

エンベディング (未来の文学)

エンベディング (未来の文学)

ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫)

ガンメタル・ゴースト (創元SF文庫)

SFベスト201 (ハンドブック・シリーズ)

SFベスト201 (ハンドブック・シリーズ)

ミステリー

ローマで消えた女たち (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ローマで消えた女たち (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ゲルマニア (集英社文庫)

ゲルマニア (集英社文庫)

ミニ・ミステリ100 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミニ・ミステリ100 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

剣闘士に薔薇を

剣闘士に薔薇を

逆さの骨 (創元推理文庫)

逆さの骨 (創元推理文庫)

現代ミステリ傑作選 18の罪 (ヴィレッジブックス)

現代ミステリ傑作選 18の罪 (ヴィレッジブックス)

アンダーグラウンド・マーケット

アンダーグラウンド・マーケット

半導体探偵マキナの未定義な冒険

半導体探偵マキナの未定義な冒険

奇譚を売る店 (光文社文庫)

奇譚を売る店 (光文社文庫)

ミステリ・ウィークエンド (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

ミステリ・ウィークエンド (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

その他文学

絵草紙うろつき夜太 (1975年)

絵草紙うろつき夜太 (1975年)

文章読本さん江 (ちくま文庫)

文章読本さん江 (ちくま文庫)

文学会議 (新潮クレスト・ブックス)

文学会議 (新潮クレスト・ブックス)

占領都市―TOKYO YEAR ZERO〈2〉

占領都市―TOKYO YEAR ZERO〈2〉

古書収集家 (フィクションの楽しみ)

古書収集家 (フィクションの楽しみ)

ふくろうの眼 (文学の冒険)

ふくろうの眼 (文学の冒険)

月光浴―ハイチ短篇集 (文学の冒険シリーズ)

月光浴―ハイチ短篇集 (文学の冒険シリーズ)

ゴーレム 100 (未来の文学)

ゴーレム 100 (未来の文学)

文学の用語

文学の用語

この世の王国 (叢書 アンデスの風)

この世の王国 (叢書 アンデスの風)

創作の極意と掟

創作の極意と掟

偏愛蔵書室

偏愛蔵書室

複製された男 (ポルトガル文学叢書)

複製された男 (ポルトガル文学叢書)

モンド9 (モンドノーヴェ)

モンド9 (モンドノーヴェ)

午後の死 (角川文庫)

午後の死 (角川文庫)

哀しみ (現代アメリカ文学叢書)

哀しみ (現代アメリカ文学叢書)

囁く血―エロティック・ホラー (祥伝社文庫)

囁く血―エロティック・ホラー (祥伝社文庫)

太陽の木の枝―ジプシーのむかしばなし (福音館文庫 昔話)

太陽の木の枝―ジプシーのむかしばなし (福音館文庫 昔話)

実用書

文章添削の教科書

文章添削の教科書

引きずらない人は知っている、打たれ強くなる思考術

引きずらない人は知っている、打たれ強くなる思考術

実例付きフォント字典

実例付きフォント字典

レディ・レッスン~ポジティブガールの教科書~

レディ・レッスン~ポジティブガールの教科書~

本は1日1冊まで

最近買った本のリスト.

哲学(自律性)

Personal Autonomy and Social Oppression: Philosophical Perspectives (Routledge Studies in Contemporary Philosophy)

Personal Autonomy and Social Oppression: Philosophical Perspectives (Routledge Studies in Contemporary Philosophy)

Relational Autonomy: Feminist Perspectives on Autonomy, Agency, and the Social Self

Relational Autonomy: Feminist Perspectives on Autonomy, Agency, and the Social Self

Autonomy, Gender, Politics (Studies in Feminist Philosophy)

Autonomy, Gender, Politics (Studies in Feminist Philosophy)

Self-Constitution: Agency, Identity, and Integrity

Self-Constitution: Agency, Identity, and Integrity

Adaptive Preferences and Women's Empowerment (Studies in Feminist Philosophy)

Adaptive Preferences and Women's Empowerment (Studies in Feminist Philosophy)

The Theory and Practice of Autonomy (Cambridge Studies in Philosophy)

The Theory and Practice of Autonomy (Cambridge Studies in Philosophy)

Personal Autonomy: New Essays on Personal Autonomy and its Role in Contemporary Moral Philosophy

Personal Autonomy: New Essays on Personal Autonomy and its Role in Contemporary Moral Philosophy

私事と自己決定

私事と自己決定

寛容と自由主義の限界 (叢書〈フロネーシス〉)

寛容と自由主義の限界 (叢書〈フロネーシス〉)

シリーズ 新・心の哲学II 意識篇

シリーズ 新・心の哲学II 意識篇

現代社会とパターナリズム

現代社会とパターナリズム

新しい女性の創造

新しい女性の創造

心に性別はあるのか?―性同一性障害のよりよい理解とケアのために

心に性別はあるのか?―性同一性障害のよりよい理解とケアのために

美学

Coffee - Philosophy for Everyone: Grounds for Debate

Coffee - Philosophy for Everyone: Grounds for Debate

  • 作者: Fritz Allhoff,Scott F. Parker,Michael W. Austin,Donald Schoenholt
  • 出版社/メーカー: Wiley-Blackwell
  • 発売日: 2011/03/22
  • メディア: ペーパーバック
  • この商品を含むブログを見る
画像と知覚の哲学―現象学と分析哲学からの接近

画像と知覚の哲学―現象学と分析哲学からの接近

美学への手引き (文庫クセジュ)

美学への手引き (文庫クセジュ)

vanitas004: ファッションの批評誌

vanitas004: ファッションの批評誌

その他思想

反西洋思想 (新潮新書)

反西洋思想 (新潮新書)

大英帝国の三文作家たち

大英帝国の三文作家たち

論より詭弁 反論理的思考のすすめ (光文社新書)

論より詭弁 反論理的思考のすすめ (光文社新書)

性 (愛・性・家族の哲学 第2巻)

性 (愛・性・家族の哲学 第2巻)

現代社会の倫理を考える〈15〉情報の倫理学 (現代社会の倫理を考える (15))

現代社会の倫理を考える〈15〉情報の倫理学 (現代社会の倫理を考える (15))

Out from the Shadows: Analytical Feminist Contributions to Traditional Philosophy (Studies in Feminist Philosophy)

Out from the Shadows: Analytical Feminist Contributions to Traditional Philosophy (Studies in Feminist Philosophy)

城壁内からみるイタリア (フィールドワーク選書16)

城壁内からみるイタリア (フィールドワーク選書16)

SF

恋人たち (ハヤカワ文庫 SF 378)

恋人たち (ハヤカワ文庫 SF 378)

ミラーシェード―サイバーパンク・アンソロジー (ハヤカワ文庫SF)

ミラーシェード―サイバーパンク・アンソロジー (ハヤカワ文庫SF)

クリスタルサイレンス〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

クリスタルサイレンス〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)

異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)

異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)

ラットランナーズ (創元SF文庫)

ラットランナーズ (創元SF文庫)

オルタード・カーボン

オルタード・カーボン

宇宙大密室 (創元SF文庫)

宇宙大密室 (創元SF文庫)

無常の月 (ハヤカワ文庫 SF 327)

無常の月 (ハヤカワ文庫 SF 327)

光世紀パトロール (徳間文庫)

光世紀パトロール (徳間文庫)

歌う船 (創元SF文庫 (683-1))

歌う船 (創元SF文庫 (683-1))

サイバー戦争〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

サイバー戦争〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

芸術SF
  • SFマガジン, No.478(1996年4月号)も購入.ロビンソン,"三十三枚目のルーアン大聖堂事件"(1985.1996,内田・訳),in: S-Fマガジン37巻4号(pp. 222-251)が目当て.「きちんとした善悪の概念がない」とされる探偵フレイアはキュートだし、推理はかなりモダンだった.
  • 川又,幻詩狩り (中公文庫)1984, 1985)の巽孝之による文庫版解説を読んでいたら,この作品は主役たる言語がアクションする「アクションSF」だ,って書いてあって,やられた!と思った.行為が主役のハードボイルドはできそうだ.

幻詩狩り (中公文庫)

幻詩狩り (中公文庫)

バベル17 (ハヤカワ文庫 SF 248)

バベル17 (ハヤカワ文庫 SF 248)

カストロバルバ―エッシャー宇宙の探偵局

カストロバルバ―エッシャー宇宙の探偵局

芸術ミステリー
  • 北森鴻の冬狐堂シリーズは,タフな独立知的労働者キャラの参考にと読み始めましたが,私の理想よりはちょっとソフトめだった.暴力描写というよりは孤立無援な感じがほしいのだけど,そういうのを痛切に感じる時期はもうちょっと若いものなのかもね.最初の狐罠 (講談社文庫)(1997)がやはり傑作だと思う.冒頭に掲げたテーマだけでも興奮ものだが,長い中盤のスリルがそれをいったん隠し,最後に呼び戻す優れた構成.ただし写真の件は納得いかない,輪が点滅したというなら別だが.

緋友禅 (文春文庫―旗師・冬狐堂 (き21-4))

緋友禅 (文春文庫―旗師・冬狐堂 (き21-4))

狐罠 (講談社文庫)

狐罠 (講談社文庫)

瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (文春文庫)

瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (文春文庫)

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

鎌倉香房メモリーズ (集英社オレンジ文庫)

鎌倉香房メモリーズ (集英社オレンジ文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

紳士のためのエステ入門 警視庁幽霊係 (祥伝社文庫)

紳士のためのエステ入門 警視庁幽霊係 (祥伝社文庫)

ビネツ (小学館文庫)

ビネツ (小学館文庫)

死のオブジェ (創元推理文庫)

死のオブジェ (創元推理文庫)

その他文芸
  • オベール,マーチ博士の四人の息子 (ハヤカワ文庫HM)(堀&藤本・訳,1997)はけっこう軽い語りで進むので不気味さがきわだつ.ただ孤立状況にはかなりもどかしさを感じた.私だったらもう少し心理的抑圧に説得力を出そうとがんばるところだと思うが,それだと重たくなっちゃうのでなんともな.
  • 谺健二恋霊館事件 (光文社文庫)(2004)は規模は小さいけどがんばって奇想を作ろうとしている.文庫版で収録された“五匹の猫”が,奇想というよりは震災描写としてすばらしいと思う.ただし猫が好きなかたは読まないほうがいいです,野良猫たちをずいぶん粗雑に扱うやつが出てくるので.
  • 梶尾,OKAGE (新潮文庫)(2003)は熊本を舞台にしたホラーSF.九州の震災を機に購入.
  • ガードナー,レスター・リースの新冒険 (ハヤカワ・ミステリ文庫 3-34)1984,乾・訳)はTwitterでおすすめを見て購入.奇妙な盗難事件のなぞを暴き,輪をかけて奇妙な手段で品物を盗み返してしまう盗賊の活躍を描く.この盗賊のところには警察からスパイが入り込んでいるのだが,盗賊のほうにはそれがバレていてからかわれている.
  • マーシャル,銀行は死体だらけ (ミステリアス・プレス文庫)(1998,仙波・訳)は香港を舞台にした警察小説で,集団毒殺のなぞに当時の香港ならではの事情がかかわるのがうまい.これはSFに舞台を変えて小ネタとして使いたいぐらいだ.冒頭から,ラッキーだけで重大事件解決の立役者になってしまって内心あせっている刑事などコミカルな描写が多く,楽しめる.
  • 文學界2014年12月号 (文学界)はなんで買ったか忘れてしまった,新人賞佳作の森井良、“ミックスルーム”かな? 選評には納得いかず.これ社会との靭帯を切られちゃて,ハッテン場をかろうじて拠り所にする都会のゲイ男性の不格好さを描いてるわけでしょ.これはマイノリティ小説だけが使える手(社会的に公表しやすい連帯とはべつの連帯にアクセスできる)を使ってはいるけど,貧困ものの新機軸と読むほうがいいと思う.こちらの記事とほぼ同意見: http://higuchimegumu.blog.fc2.com/blog-entry-1550.html

世界文学ワンダーランド

世界文学ワンダーランド

千羽鶴 (新潮文庫)

千羽鶴 (新潮文庫)

甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)

甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)

銀行は死体だらけ (ミステリアス・プレス文庫)

銀行は死体だらけ (ミステリアス・プレス文庫)

恋霊館事件 (光文社文庫)

恋霊館事件 (光文社文庫)

饗宴 ソクラテス最後の事件 (創元推理文庫)

饗宴 ソクラテス最後の事件 (創元推理文庫)

マーチ博士の四人の息子 (ハヤカワ文庫HM)

マーチ博士の四人の息子 (ハヤカワ文庫HM)

謀殺のチェス・ゲーム (ハルキ文庫)

謀殺のチェス・ゲーム (ハルキ文庫)

スペインの宇宙食

スペインの宇宙食

十兵衛両断 (新潮文庫)

十兵衛両断 (新潮文庫)

OKAGE (新潮文庫)

OKAGE (新潮文庫)

“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)

“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)

ニンジャスレイヤー ゲイシャ危機一髪! (キョート殺伐都市 # 2)

ニンジャスレイヤー ゲイシャ危機一髪! (キョート殺伐都市 # 2)

戦闘破壊学園ダンゲロス (講談社BOX)

戦闘破壊学園ダンゲロス (講談社BOX)

ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

魔法の世紀

魔法の世紀

文學界2014年12月号 (文学界)

文學界2014年12月号 (文学界)

セブン (ハルキ文庫)

セブン (ハルキ文庫)

宝石 ザ ミステリー2014夏

宝石 ザ ミステリー2014夏

村上龍料理小説集 講談社文庫

村上龍料理小説集 講談社文庫

探偵は壊れた街で (創元推理文庫)

探偵は壊れた街で (創元推理文庫)

約束の地 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 110‐3))

約束の地 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 110‐3))

約束の土地 (創元推理文庫)

約束の土地 (創元推理文庫)

文芸 2015年 08 月号 [雑誌]

文芸 2015年 08 月号 [雑誌]

銀河盗賊ビリイ・アレグロ (集英社文庫)

銀河盗賊ビリイ・アレグロ (集英社文庫)

復活祭のためのレクイエム (講談社文庫)

復活祭のためのレクイエム (講談社文庫)

香水ジルバ

香水ジルバ

ロコス亭の奇妙な人々 (海外文学セレクション)

ロコス亭の奇妙な人々 (海外文学セレクション)

ルームメイト (ハーレクイン・ラブシック)

ルームメイト (ハーレクイン・ラブシック)

遠い国の犯罪 (ハヤカワ・ミステリ文庫―アメリカ探偵作家クラブ傑作選)

遠い国の犯罪 (ハヤカワ・ミステリ文庫―アメリカ探偵作家クラブ傑作選)

屋上物語 (祥伝社文庫)

屋上物語 (祥伝社文庫)

黒猫の刹那あるいは卒論指導 (ハヤカワ文庫JA)

黒猫の刹那あるいは卒論指導 (ハヤカワ文庫JA)

ボートの三人男 (中公文庫)

ボートの三人男 (中公文庫)

マンガ

  • 佐々木,代名詞の迷宮 (花とゆめCOMICS)(1987),美学のゼミに入る話だった.こういうとぼけた筋書きをどうやったら思いつくんだろうな.ウィットに頼らなくてもできごとが可笑しいというタイプの喜劇やコントがあって,独特の作りかたがある気がするんだよな.

ハンサムな彼女 1 (集英社文庫(コミック版))

ハンサムな彼女 1 (集英社文庫(コミック版))

ハンサムな彼女 2 (集英社文庫(コミック版))

ハンサムな彼女 2 (集英社文庫(コミック版))

ハンサムな彼女 3 (集英社文庫(コミック版))

ハンサムな彼女 3 (集英社文庫(コミック版))

ハンサムな彼女 5 (集英社文庫(コミック版))

ハンサムな彼女 5 (集英社文庫(コミック版))

ハンサムな彼女 4 (集英社文庫(コミック版))

ハンサムな彼女 4 (集英社文庫(コミック版))

代名詞の迷宮 (花とゆめCOMICS)

代名詞の迷宮 (花とゆめCOMICS)

ガッチャマン クラウズ デザイナーズノート

ガッチャマン クラウズ デザイナーズノート

BL作家の勝負飯 (ポーバックス Be comics)

BL作家の勝負飯 (ポーバックス Be comics)

  • 作者: 秋葉東子,麻生ミツ晃,天城れの,新井煮干し子,井戸ぎほう,エンゾウ,神楽坂はん子,嘉島ちあき,梶本レイカ,カワイチハル,河井英槻,北沢きょう,小嶋ララ子,四宮しの,蔓沢つた子,永井三郎,博士,蜂不二子,羽生山へび子,ぱんこ。,ひなこ,藤谷陽子,松本ノダ,ミナヅキアキラ,モチメ子,毛魂一直線,本仁戻,ymz,雪路凹子,吉田ゆうこ,倫敦巴里子,碗島子
  • 出版社/メーカー: ふゅーじょんぷろだくと
  • 発売日: 2014/07/24
  • メディア: コミック
  • この商品を含むブログを見る
WOMBS REMNANTS: WOMBS番外編

WOMBS REMNANTS: WOMBS番外編

ヤサシイワタシ(1) (アフタヌーンKC)

ヤサシイワタシ(1) (アフタヌーンKC)

健康師ダン 1 (モーニングKC)

健康師ダン 1 (モーニングKC)

ひとはけの虹(1) (シリウスKC)

ひとはけの虹(1) (シリウスKC)

あなたのことはそれほど 1 (Feelコミックス)

あなたのことはそれほど 1 (Feelコミックス)

DRAGON FLY Vol1 (WANI MAGAZINE COMICS)

DRAGON FLY Vol1 (WANI MAGAZINE COMICS)

ニンジャスレイヤー (5) ?ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ? (カドカワコミックス・エース)

ニンジャスレイヤー (5) ?ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ? (カドカワコミックス・エース)

悪魔のリドル (3) (カドカワコミックス・エース)

悪魔のリドル (3) (カドカワコミックス・エース)

実用

羊毛フェルトで作る絵本の主人公 (MOE BOOKS)

羊毛フェルトで作る絵本の主人公 (MOE BOOKS)

パリノルール(2006年改訂版)

パリノルール(2006年改訂版)

「ゆるかわ文字」練習帖

「ゆるかわ文字」練習帖

いたずらの天才 (文春文庫)

いたずらの天才 (文春文庫)

学術書を書く

学術書を書く

人文学と著作権問題ー研究・教育のためのコンプライアンス

人文学と著作権問題ー研究・教育のためのコンプライアンス

知っておきたい伝説の秘境・魔境・古代文明 (なるほどBOOK!)

知っておきたい伝説の秘境・魔境・古代文明 (なるほどBOOK!)

購入全誌感想

第22回文学フリマにて,以下の39冊をお分けいただきました.しめて¥15,900.

  • ア02 二松学舎大学文藝愛好会,二松維新「都市」,¥200.
  • ア06 水天宮前,水天*, vol. 3,¥300.
  • ア19 京都ジャンクション,京都ジャンクション 第九作品集,¥300.
  • イ10 マゾヒスティック・リリィ・ワークス,ラフレシア・アルノルディ——ダメ百合短編集,¥400.
  • イ13 朝顔日誌,HOLE,¥100.
  • イ25 トリアトリエ,オッチャリ,¥400.
  • ウ30 薄禍企画,mint,vol. 01,¥500.
  • エ23 カモガワSFシリーズKコレクション,稀刊 奇想マガジン 創刊号——奇想コレクション綜解説,¥400.
  • エ31 あの日熱めの熱燗で,多重要素, 3.5号,¥100.
  • エ34 グローバルエリート,SFアンソロジー WORKセリエント(GE1),¥1500.
  • エ37 Wajima Project,星間のナルシズム,¥200.
  • オ01 文学フリマガイドブック編集委員会対話の効果と赦しのプロセス,¥500.
  • カ14 Totentanz_Rosenkranz,このクラスにコンテクストはありますか,¥100.
  • カ14 Totentanz_Rosenkranz,暗喩の箱庭、アニミスト,¥100.
  • キ37 雨宿り2日目。,君と同じ薬が飲みたい,¥100.
  • ク30 海外文学好き好きボーイズ,W/M,01号,¥100.
  • コ10,梟流,Liminality.Float,¥300.
  • コ17,まるさん,三日月古書道,¥300.
  • コ43,ひだり,あの日はいつか今度こそ,¥400.
  • サ20,スペクターズ!,Dying Bleed/雪原の人魚,¥200.
  • シ43,こんぺき出版,夜が濃くなる,¥900.
  • ス17,あまりもの,漫画の手帖,No. 13,¥150.
  • ス25,エフーディーの会,エフーディ,vol. 2,¥750.
  • セ36,無響サイレン,ユートピアだより,¥400.
  • ソ17,早稲女同盟,いばら道,vol. 2,¥500.
  • ソ32,喫茶モンスター,Cafe Monster,vol. 7,¥500.
  • ソ32,喫茶モンスター,☆突発突貫☆別冊カフェモンスターを読んで行ったお店探訪記,¥100.
  • タ14,アラザルアラザル9,¥500.
  • タ35,パナトリエ,花粉SF,¥200.
  • タ39,埼大哲学研究会,,¥100.
  • タ41,早稲田大学現代文学会と戸山フロイト研究会,Mare,vol. 2,¥500.
  • チ06,有限王朝,有限王朝マガジン,vol. 2,¥700.
  • チ09,風狂殺人倶楽部,風狂通信,vol. 3,¥400.
  • チ11,ワセダミステリ・クラブPhoenix,vol. 136,¥700.
  • チ13,推理小説反省会,反省文,vol. 2,¥600.
  • チ24,シノハラユウキ,フィクションは重なり合う——分析美学からアニメ評論へ,¥700.
  • ツ31,建築趣味,建築趣味 No. 3 May. 2015——特集 建築スーベニア,¥500.
  • ツ32,都市とスーヴェニール,スーヴェニールのなかの都市 2,¥700.
  • ツ40,とうもろこしの会,一行怪談 二,¥500.

お分けいただいたすべての本について,感想を書いていこうと思います.

C68 アーカイブ騎士団,ユートピア小説集(自ブース頒布)

第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で24日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する

C68 アーカイブ騎士団,ユートピア小説集(自ブース頒布)

アーカイブ騎士団 [第二十一回文学フリマ東京・小説|SF] - 文学フリマWebカタログ+エントリー
「007ユートピア小説集」アーカイブ騎士団@第二十一回文学フリマ東京 - 文学フリマWebカタログ+エントリー

 第21回東京文学フリマではこちらの同人に参加させていただきました.お手にとってくださった皆様ありがとうございます! 本のほか,当日の無料配布ペーパにもショートショートを5つ書いています.
 参加した小説“月のアンティーク”は,骨董品屋SFミステリーと銘打ち,SFミステリーの1つの極北に挑戦しました.当日お越しになれなかったかたは,ぜひ下記から電子書籍版をお求めください.

ユートピア小説集

ユートピア小説集

拙作,月のアンティーク(pp. 3-34)

 今回の短編の発想のもとになったのは,SFミステリーにおいてよく指摘される難点でした.SFミステリー,とくに未来や特殊な設定を用いたものの場合に問題となるのが,我々のいる現実の世界の知識や常識がどの程度通用するのか,という点です.物理法則を破った改変世界では,すべての密室はマクロレヴェルのトンネル効果でじゅうぶんに解決できてしまうかもしれません.どのていど・正確なところどんなふうに物理法則が改変されているか,その世界のなかで実験を行えない読者にはわからないわけで,どうしても,読者の入手できない情報を使った,アンフェアな推理になってしまうわけです.
 しかし,この難点をケアする方法はあると思います.たとえば,物理法則を破っていない世界を描いていても,たんに未来世界における常識が現在の我々の常識とはちがう,ということだけで,ある種のミスリードが行えるのではないか,思い込みを裏切ることができるのではないか.そこから,今回のトリックの1つを考えました.このトリックはある意味で,ワトソン役の知能が読者と同程度ではない——じつは読者より高い,というのならよくあるが,この場合,じつは読者より低い——ということになるので,ノックスの十戒をいままでにない形で裏切ることにもなっていると思います.
 もともとのプロットでは,ラストで明かされる叙述トリックだけが組みこんであり,作中で探偵役が事件を解き明かすことはなかったのですが,今回のようなタイプの叙述トリックは,“それ,読者に意地悪してるだけじゃん!”という不満がどうしてもぬぐえず自分できらいなので,頭をひねりました.その結果,作者が読者に対して仕掛ける叙述トリックが,探偵役のなぞときによって先に明かされ,しかるのちに語り手が仕掛けるトリックが明かされる,という,変わった二段構えになっています.
 冒頭の部分は,新居昭乃,“Aquarium on the Moon”,in: キミヘ ムカウ ヒカリ(2006)を聴いていて走り書きしたメモからとったもので,最後まで読んだかたにはおわかりのとおりここにもトリックが仕掛けてあります.語り手が「ゲリュゴン9999」と目指す月面のステーションが水槽のようなのも,この曲をイメージしています.
 ほかのイメージソースとしては,バレバレだと思いますが月に囚われた男(2010)で,月面風景はほぼこの作品の映像を思い浮かべていました.
 あんまりユートピアものっぽくならなかったのが残念ですが,人間,いまいるところを出てよそにうつりたいと思うのは,よそがユートピアに見えたときだけなんじゃないかと思うんですよね.

美堂谷摂子,都市計画者の夜(pp. 34-37)

 初稿を読んだとき,ナイスの森(2006)のワンシーンを思い浮かべました(西門えりかが「踊り見せろ」って浜辺で言うところ).PDCAサイクルが,Plan, Dance,Check,Actionになっているところがおもしろい.

森川真,巨大学園の留年生(pp. 39-67)

 私は森川作品だとゾンビ小説集 アーカイブ騎士団所収の“歴史的ゾンビ少女”がいちばん好きなんですが,それで描かれた“観測者の思惑を越える非観測者”という構図はほかの森川作品でもかいま見ることができ,今作はその順当な進歩だなあ,という気がします.体育教師がおおぜいなだれこんでくるところが好きです(わたくし押しによわい人間なので).

摘ん・デ・レ男爵,ランニング都市(pp. 69-83)

 気が滅入ったときは体を動かすといいっていうのはよく言いますが,この作品ではみんながラットランで体を動かし健康に生活しているのに気が滅入るオチが待っており,めずらしいディストピアSFだと思います.もっとグロテスクな系譜としてカード,“肥育園”(1980=2001)みたいなのがあるかも.

高田敦史,形而上学MCバトル(pp. 95-104)

 反実在論vs. 実在論のラップバトルをめぐる「池袋」のもようを,新参者の語り手を通して描くオフビートなSFです.これについてはおもしろいから早く読んでくれとしか言いようがないが,フックを1つだけ書いておきますと,この語り手が秘密クラブみたいなところに入って才能を見いだされるあたりは,最近の少年マンガ的な成長譚を感じさせておもしろいですよ.いや,少年マンガだと,先輩たちにあだ名がついてるかな……全員「ガクシャ」だったらギャグになってしまうが…….

カ11 Charlotte,よねざわほの部 部誌 読書会記録 よねどく(¥1000)

第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で23日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する

カ11 Charlotte,よねざわほの部 部誌 読書会記録 よねどく(¥1000)

Charlotte [第二十一回文学フリマ東京・評論|ミステリー] - 文学フリマWebカタログ+エントリー

 米澤穂信のミステリー小説から3作品,儚い羊たちの祝宴(2008),さよなら妖精(2004),ボトルネック(2006)を選んで,20人以上の大人数でチャット談義をやった記録を書き起こし掲載しています.

 唐突ですがここで白状しますと,私は2014年ぐらいまで,米澤穂信のことを米田淳一とごっちゃにしており,「へーあの警察もの(2000)書いてたひとが大転身だなあ」と思っておりました.ちゃんと読みはじめてからも,おもしろい話を細かい手つきで作るすぐれた作家なんだけど,オチのブラックさが肌に合わないようなそんなブラックさだなあ,ということで,道尾秀介に接するときのような距離をおいていたところがあります.小説で叙述をいじるといくらでも読者にいじわるできちゃうんで,その後味の悪さっていうのは,物語のなかでどうしようもない運命に巻き込まれてしまって登場人物といっしょに味わうものとは違うんですよね.
 米澤作品は叙述がちょっと不親切で(文章や構成がへたなのではなく情報のコントロールがうまい),結末も明白には示されないことが多く,また伏線が最後まで読むとすっきり回収されるというものでもないため,読み終わったあと独力では味わいきった感じがしないんですね.だからあとを引くというか,考察をはじめた結果として熱烈なファンになるひとがいるのはよくわかる.あとキャラクタのひねくれかたもほかにはない魅力的なものだし.で,この読書会では,そういうすっきりしないところをおおぜい集まって考えてみましょう,ということをやっています.
 ただ,せっかくこれだけのひとが集まったのだから,ちょっと書評を検索すれば見つかるていどの,つまり能力のある個人でもできるような筋の確認は最低限にして(たとえば“山荘秘聞”で「屋島」が持ち出したものはなんなのか,ボトルネックの章タイトル「昏い光」は作中の事物としてなにを指しているのか),細かい描写を人海戦術でしらみつぶしに見てくれたほうがおもしろくなったんじゃないかと思う.その点で,「椅子の専門誌」を読むというのがリラックスした家庭環境の示唆になっている,という指摘はすごくよかった.

オ08 マゾヒスティック・リリィ・ワークス,ダメ女子的映画読本(¥550)

第21回文学フリマ感想 Advent Calendar 2015 - Adventar,はじめました.この記事で22日め.
私が第21回文学フリマ東京で買った本のリストはこちらです: 購入全誌感想(23評/23冊) - kugyoを埋葬する

オ08 マゾヒスティック・リリィ・ワークス,ダメ女子的映画読本(¥550)

マゾヒスティック・リリィ・ワークス [第二十一回文学フリマ東京・ノンフィクション|エッセイ・随筆] - 文学フリマWebカタログ+エントリー
「ダメ女子的映画読本」マゾヒスティック・リリィ・ワークス@第二十一回文学フリマ東京 - 文学フリマWebカタログ+エントリー

 50'sから00'sまで年代別に,日の当たらない側面を持ってしまっているようなそんなヒロインの登場する映画を15本以上紹介した本.「一気に読むと胃もたれするわよ!」ということですが,一気に読んでしまいました.
https://d3n98kyr7trnfl.cloudfront.net/paperclip/products/pictures/8e8c2935e03d3b32326dd0468710824654adf2f5_large.jpg
 前回のダメ女子的映画のススメ。もよかった([私の感想)ので期待していたが,今回もとてもおもしろい.フェミニズム的映画評論でよく取り上げられる作品もきっちり押さえたうえで独自の視点を持ち,でも教養くささをまったく感じさせない親しみやすい評が特徴だ.フェミニストがよく取り上げる作品といえばホラーで,たとえば『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)評(山南,pp. 26-27)がそれにあたるし,教養ということではヌーヴェルバーグの意外な現代性を教えてくれる『彼女について私が知っている2、3の事柄』(1966)評(赤木杏,pp. 6-10)がそうだ.
 いちばん好きなのは,『サスペリア』(1977)を論じた“ごめんなさい、私,"サスペリア"の悪役に共感せずにいられません!”(pp. 21-25)で,寄宿舎を舞台にした映画のあらすじ紹介が,ページをめくると評者の女子寮生活との照応になっていてびっくりするし,さらにその次のページではセットの狭さや古さゆえに現代の観客がおぼえてしまうコミカルさの強調がなされ,そして映画のラストに触れると同時に評も終わる,という流れが技巧的でいい.
 次号が気になるという点では前回につづき大収穫! また楽しみにしています.