試譯 三島由紀夫『英靈之聲』

■試譯 三島由紀夫『英靈之聲』2024


二二六事件紀念 試譯 三島由紀夫『英靈之聲』

 淺春某夕,筆者列席木村先生歸神會、所受感銘,終生難忘。其夜種種,憚於筆誌者甚多,然竊以為,盡吾所能,忠實傳其記錄者,是為筆者之責務。
 歸神法,亦名幽齋法。普通神殿宮社祝詞供饌以齋祭神祇者,是為「顯齋法」。與之相對,幽齋法乃以靈對靈之法,故得此名。又歸神之中,亦有幽顯。幽性歸神,於本人不察之際,遁入靈境,以其精神集中而得靈感。況於他人,無由察其有樣。所謂藝術家之靈感等,蓋屬之也。
 與玆相對,顯性歸神,普稱懸神。神所憑依,無論本人,周遭眾人亦可明瞭觀見。
 又,無論幽顯,皆各有自感法、他感法之別。前者為獨自感合神靈之疇。筆者所以列席之會,無須贅述,實屬顯性歸神之他感法也。
 抑抑他感法者,當有審神者、有神主為靈媒,更為正式者尚有琴師,奏六絃琴以乞神靈來格,而審神者伺立其傍。木村先生嚴父天快翁,省廢琴師,審神者自吹石笛,鳴而興法。


 石笛與鎮魂玉相同,本當奇蹟地自神界授予,但亦可尋得同等靈具代用。一般為拳頭、雞卵大小之天然石,揀天工開穴者用之。若沿用古代遺物者,其穴概已開通。先生所持石笛,傳自天快翁所秘藏,約合掌大小,有斜穴貫通,稍帶青色黝黑神光,珍奇逸品也。傳聞,作氣吹鳴,其音可聞八町之外,乃天快翁自神界授饋者也。
 神主遂循例,以川崎重男任之。此盲目青年,年歲廿三,應合木村先生之審神者,尤為從順,清心正性,可任其事。凡白川神道之流者,主張天神每憑婦人,地祇輒憑男子,茲蓋訛傳。
 或人以為,沙庭懸靈之際,運氣吶喊、舉止誇張。若懷此觀念者,可至木村先生之許,詳加觀摩。雖用石笛,無非依循幽齋本義,毫無喧囂,乃極度莊重森嚴之行事。
 其夜不似淺春三月初旬,南風暖暖,含雨氣而吹拂。雨戶雖閉,鳴動不止。雨屢屢降來,叩窗發響。
 所謂歸神會,絕非刻板印象徒然驚世駭俗之物。又,神靈憑坐之後,若有新靈,其神語亦非記紀神話之古語。其述現代語,自由流暢,時而甚有出人意表之近代用語,令人乍舌。
 此時,參會者雖懷畏怖之情,更心心念念以我之靈,真摯面對神靈。見神主以熟稔之言語,述說我等關心之時事,無寧雀躍不已。然而,其處自然充溢無以名狀之靈氣,保有不可侵犯之神格。
 其夜,我無由預知將發生何事。清潔身體、衣服,如常欣喜列席漂蕩清冽神氣之一座。如今回想,其非毫無預兆。非但烈風猛叩雨戶,其夜神主之面容,亦不由分說地窺得非常之氣。
 十八歲時,川崎君遭逢事故,不幸兩眼失明。自其以來,悟開靈眼。藉木村先生引導,種種靈象瞭然眼前,歷歷在目。可謂開啟第二目之人。
 川崎君堪稱美少年,其面容白皙,柳眉細長,鼻筋秀麗,櫻桃小嘴與婦人相類。然此一日,早在開始歸神以前,時常面色鐵青,寡默肅穆,與參會者不交一語。
 至於木村先生肇吹石笛之際,其顏彌失血氣,身披白衣之肩膀,更是微微顫慄,令人在意。
 石笛鳴音,乃是震盪心魂之莊嚴響徹。未嘗聞之者,蓋無由想像。聽似清澄,其底蘊又沉有玉石溫暖不透明之澱。既得貫通肺腑,同時又充斥著春風駘蕩之風情。猶如窺視古代湖底,其處透見魚族、藻草之姿。又猶向千丈井戶奥底輝煌之清水吶喊,聞得其回音之感觸。每聞此笛吹奏,筆者往往感到自身沉眠之魂魄,受其喚醒。
 況乎神主川崎君,石笛影響至鉅,自然不由分說。木村先生吹奏石笛,時有徒然綿延吹奏一小時餘之例。而在其夜,先生始吹
之當下,川崎君之面貌,既露顯著的變化。
 以往神憑之際,其面頰往往紅潮。其夜則在鐵青之額上,浮出珠玉汗粒。輝煌汗珠,透過衣襟,於其白皙胸上亦可窺見。
 在筆者的注意被拍打雨戶之風音吸引之間,川崎君之上體開始微微左右晃動,極度憔悴之臉頰,刻劃出若有似無的微笑。突然,拍起雙手,開始歌詠.....


 淺春の或る一夕、私は木村先生の歸神會に列席して、終生忘れる事の出來ない感銘を受けた。其夜に起きつた事には、筆にするのが憚られる點が多いが、能う限り忠實に其記錄を傳へる事が、私の務めであると思う。
 歸神法を、一名又幽齋法と云ふのは、普通の神殿宮社で、祝詞供饌有つて、神祇を齋祭る「顯齋法」に比して、靈を以て靈に對する法であるから、此名が有るのである。又、歸神の中にも幽顯が有り、幽の歸神と云ふのは、本人もお氣付かぬ內に靈境に入つて、其精神集中に以つて靈感を得る物で、況して他人には其有樣は讀め無いから、所謂藝術家のインスピレーション等も、茲に含まれると考えて良かろう。
 玆に對する顯の歸神は、普通に云ふ神懸の事で、神の憑坐した事は、本人は元より、周りの者にも明瞭に見て取れるのである。
 又、幽顯夫夫に、自感法、他感法の別があり。我獨神靈に感合するのが前者であるが、私が列席した會は、言ふ迄も無く、此顯の歸神の他感法に依る物であつた。
 抑抑他感法には、審神者(さには)が居り、靈媒たる神主が居り、更に正式には琴師が居て、六絃琴を奏でて神靈の來格を乞ひ、審神者が伺ひを立てるのであるが、木村先生の嚴父天快翁は琴師を廢され、審神者たる翁自ら、石笛を吹鳴らされる法を興された。



 石笛は鎮魂玉と同樣、神界から奇蹟的に授かるのが本來であるが、假(かり)に相當のものを尋ね出して用ひても良(よ)い。普通(ふつう)は拳大、雞卵大の自然石で、自然に穴の開いた物(もの)を用ゐるが、古代の遺物は概(おほむ)ね其穴が抜け通つてゐる。先生が天快翁から傳へられた秘藏の石笛は、二拳を合はせる位(ぐらゐ)の大きさに穴が斜めに抜け通つてをり、稍(やや)青みを帶びた黑色の神光奇(く)しき逸品であつた。本氣で吹けば八丁聞えると云はれ、天快翁は茲(これ)を神界から授けられた由である。
 さて、神主は例の通(とほ)り、川崎重男(しげを)君が勤められたが、此(この)二十三歲の盲目の青年は、木村先生の審神者(さには)に應じて、尤(もつと)も從順に、清らかに其(その)任を果す事(こと)のできる人であつた。白川神道の流れを汲む人は、天神(あまつかみ)は主として婦人に憑(かか)られ、地祇(くにつかみ)は主として男子に憑られる、と主張してゐるやうであるが、茲(これ)は訛傳(かでん)である。
 沙庭(さには)が靈を懸(か)ける時(とき)に、氣合や唱え言(ごと)をして、騷(さわが)しく振舞ふやうに思つてゐる人が有(あ)つたら、一度、木村先生の許(もと)へ來て見(み)られるがいい。石笛を用ゐこそすれ、飽(あ)くまで幽齋の本義に則つて、些(いささ)かの騷(さわが)しさも無(な)く、莊重森嚴を極めた物(もの)である。
 其夜は、淺春三月初旬に似合はぬ暖かい南風が、雨氣を含んで吹きめぐつてをり、閉切つた雨戶も鳴り、屢屢(しばしば)雨が來て窗を叩いた。
 歸神の會と云ふのは、俗見の如(ごと)く徒(いたず)らに仰仰しい、おどろおどろしい物(もの)では決してない。又、神靈が憑坐(よりま)した後(あと)も、もし其(それ)が新らしい靈であれば、決して記紀そのままの古語を以て神語られる譯(わけ)ではない。自由に現代の言葉も語られ、時には餘(あま)り不調和ではないかと思はれるやうな現代的言辭も用ゐられる事(こと)がある。
 參會者も此時(このとき)には、畏怖の念も然(さ)る事(こと)ながら、我(わ)が靈を以て親しく靈と對面する心持に入つてゐるのであるから、寧(むし)ろ神主の口から、我我(われわれ)の現在の關心事が、親しみのある言葉で以て語られるのを喜ぶのである。然(しか)し、勿論其處(もちろんそこ)には云ふに云はれぬ靈氣があつて、犯すべからざる神格が保たれてゐる。
 其夜、私は何事が起るとも知(し)らず、身體衣服を清潔にして、常の通(とほ)り、清清(すがすが)しい神氣の漂う一座に、列なる事(こと)を喜んだが、今から考へると、其處(そこ)に幾許(いくばく)の預感がないでは無かつた。雨戶を叩く烈風も然(さ)る事(こと)ながら、其夜の神主川崎君の面貌に、心無しか、只ならぬ物(もの)が窺はれたからである。
 川崎君は不幸にも、十八歲の時事故に以(よ)つて兩眼を失明したが、其以來靈眼を開(ひら)かれ、木村先生の御導(おみちび)きに以(よ)つて、眼前にありありと顯(あらは)れる靈象に開眼し、言(い)はば第二の目を開(ひら)いた人である。
 川崎君は美少年と云つてもいい白皙の面立(おもだち)に、細い眉、神經質な細い形の整つた鼻筋、婦人に見紛(みまが)ふ小さな優(やさ)しい唇の持主であるが、此日は歸神(かむがかり)の始(はじ)まるずつと前から、常にも增(ま)して色蒼ざめ、參會者とも一語も交はさ無かつた。
 愈愈(いよいよ)木村先生が石笛(いはぶえ)の最初の一聲を吹鳴(ふきな)らされた時(とき)から、其顏は益益(ますます)血の氣を失ひ、白衣の肩も微(かすか)に慄へてゐるのが氣遣(きづか)はれた。
 石笛の音(ね)は、聞(き)いた事(こと)の無(な)い人(ひと)には判(わか)るまいが、心魂を搖(ゆ)るがすやうな神神しい響きを持つてゐる。清澄そのものかと思ふと、その底に玉(ぎょく)のやうな溫かい不透明な澱みがある。肺腑を貫ぬくやうであつて、同時に、春風駘蕩たる風情に充ちてゐる。古代の湖底を覗(のぞ)いて、其處(そこ)に魚族(いろくず)や藻草(もぐさ)の姿(すがた)を透(す)かし見るやうな心地がする。又或(あるひ)は、千丈の井戶の奥底に煌(きらめ)く清水(しみづ)に向つて、聲を發して戻つて來(き)た谺(こだま)を聞(き)くやうな心地がする。此笛の吹奏が始(はじ)まると、私は何時(いつ)も、眠つてゐた自分の魂が呼覺(よびさま)されるやうに感じるのである。
 況(ま)して神主たる川崎君に及ぼす、石笛の影響は多大な物(もの)があらう。時として木村先生は、一時間の余(よ)も、虛(むな)しく笛の吹奏を續(つづ)けられる事(こと)があるが、其夜は先生が吹始(ふきはじ)められるが早いか、川崎君の面貌には顯著な變化が顯(あらは)れた。
 神が憑(かか)られる時(とき)には、彼の頰は紅潮する事(こと)が多いのに、青ざめた儘(まま)の額に玉なす汗が浮んできた。汗の煌(きらめ)きは襟の合せ目に覗(のぞ)く飽(あ)くまで白い胸にも見られた。
 雨戶を搏つ風音にふと私が氣を取(と)られた間(あひだ)に、川崎君の上體は微(かすか)に左右へ搖始(ゆれはじ)め、憔悴し盡(つく)したやうな其頰に有(あ)るか無(な)きかの微笑が刻まれ、突然、諸手(もろて)で手拍子を打つて、歌始(うたひはじ)めた......


敢死僭述懸尊諱,畏慎誠惶復誠恐,伏奏天皇顯人神。
如今放眼望天下,四海雖非波濤穩,然顧扶桑大日本……

掛幕(かけまく)も、竒(あや)に畏(かしこ)き、天皇(すめらみこと)に伏して奏(まを)さく。今、四海必ずしも波穏やかならねど、日の本のやまとの國は……

如今放眼望天下,四海雖非波濤穩,然顧扶桑大日本,鼓腹擊壤歌康哉。
皆披皇澤仁德下、和穩盈世舞昇平,人等臉上現泰平,緩頰微笑交相見。
利害錯綜不單純,漢賊兩立夙交好,異國金錢鬼推磨,趨炎附勢此世間。
人厭戰爭愛卑劣,唯有邪諍蔭蔓延。夫婦朋友不能信,虛偽人本為便糧。
偽善團欒覆六合,眾貶強力蔑肉體。青壯咽喉為緊勒,怠惰麻藥闘爭間。
又往無望小志道,洽猶羔羊齊步進。快樂愉悅失其實,信義誠譽喪其力,
直魂悉腐靈僉蝕,渾渾噩噩度此生。年老之人復何求,卑屈我執與自保。
假借道德虛名目,蔓延天下泛世中。真實為隱蔽不見,真情已病將就木。
天下往來道行人,不履希望莫雀躍。茫然並排若走肉,浸潤癡呆笑談中,
直魂已死行屍等,透其印堂顯可見。無論歡愉或悲哀,石火須臾逝去矣。
清純為賈淫蕩衰、人心唯有念金貨,人之所沽劣於金、時勢如此難以止。
為世所背者何如?屈身背者流派間,貪生小賢圖苟活,一心唯營安住宿。
世我與者復何如?自我滿足貪酣寢,膨其鼻孔不可教。衰敗之美今再興,
風靡天下不可擋。唯陋劣真謂為實。車馬繁殖蹈街中,愚昧速度致魂斷。
高樓大廈雖廣建,大義崩壞不復存。其築窗窗露螢燈,輝照欲求之不滿。
每日每朝昇日者,煙霧迷漫曇所蔽。感情鈍磨鋭角滅,義烈雄魂盡掃地。
血潮悉汚凝成穢,淹滯澱濁平和間。清迸血潮不復在,枯槁乾涸如死灰。
翔天之人已折翼,不朽榮光何處去,昔日彌榮今衰竭,白蟻噬兮嗤嘲笑。

如斯絕望末法日,何以天皇竟成俗!

「 ......今、四海必ずしも波穏やかならねど、日の本のやまとの國は鼓腹擊壤(こふくげきじやう)の世をば現じ、
御仁德の下、平和は世に滿滿(みちみ)ち、人等(ら)泰平の緩(ゆる)き微笑みに顏見交はし、
利害は錯綜し、敵味方も相結び、外國の金錢は人らを走らせ
最早(もはや)戰ひを欲せざる者は卑劣をも愛し、邪まなる戦のみ陰に蔓延(はびこ)り、
夫婦朋友も信ずる能はず、偽(いつは)りの人間主義を方便(たつき)の糧と為(な)し偽善の團欒は世を覆(おほ)ひ、
力は貶せられ、肉は蔑され、若人等は咽喉元を締付けられつつ、怠惰と麻藥と闘爭に、
且又(かつまた)望み無き小志の道へ、羊の如(ごと)く步みを揃へ、
快樂も其實を失ひ、信義も其力を喪ひ、魂は悉く腐蝕せられ、
年老いたる者は卑しき自己肯定と保全をば、道德の名の下に天下に擴(ひろ)げ、
真實は蔽隱(おほひかく)され、真情は病み、
道行(ゆ)く人の足は希望に躍る事(こと)嘗無(かつてな)く、 並(な)べてに癡呆の笑ひは浸潤し、
魂の死は行人の額に透かし見られ、歡(よろこ)びも悲しみも須臾(しゆゆ)にして去り清純は商はれ、淫蕩は衰(おとろ)へ、
唯(ただ)金よ金よと思ひ廻(めぐ)らせば、人の値打は金よりも卑しく成り行(ゆ)き、
世に背く者は背く者の流派に、生(なま)かし賢(こ)げの安住の宿りを營み、
世に時めく者は自己滿足の寢污(いぎたな)き鼻孔を膨(ふく)らませ、
再(ふたた)び衰へたる美は天下を風靡し、陋劣なる真實のみ真實と呼ばれ、
車は繁殖し、愚かしき速度は魂を寸斷し、大ビルは建てども大義は崩壞し、
其窗窗は欲求不滿の螢光燈に輝き渡り、朝な朝な昇る日はスモッグに曇り、
感情は鈍磨し、鋭角は磨滅し、烈しきもの、雄雄しき魂は地を払ふ。血潮は悉(ことごと)く汚れて平和に澱み、
迸(ほとばし)る清き血潮は涸れ果てぬ。
天翔ける物(もの)は翼を折られ、不朽の榮光をば白蟻どもは嘲笑(あざわら)ふ。

斯(か)かる日に、何(な)どて天皇(すめろぎ)は人間と成賜(なりたま)ひし!

 一旦送神,竊想人等或可休遐片刻,筆者遂回應N氏之眼神,鼓起勇氣,詢問先生:「方才降神之靈,蓋為何神?如斯切實述詠現代世相,推測蓋為輓近神之籌乎?」
 木村先生徐徐開口道:「否,未必如此。」
 據先生所言葉,雖仍不識孰神為是,但可知其數眾多,又其神齡雖稚,神格高上無疑。按先考神傳秘書、列舉
  一、必伺過去、現在、未來。
  二、不可不辨真神、偽神。
  三、不可不知神之上、中、下品。
  四、不可不知其神功業。
  五、不可不辨荒魂、和魂、幸魂、奇魂。
  六、不可不知神為公憑、私憑。
 等等。竊思,不難推測,此諸神等,自為真神,並屬上品,功業可謂偉大荒魂,今夜公憑此處,堪稱明瞭。此夜過後,筆者得知先生推測,皆悉肯綮中的,是以對先生之敬愛,更添又新。於此紀錄,亦可證公憑,欣慰鼓舞之處甚多。
 木村先生娓道再三,「縱語今世之事,未必即為新神。斥責今世汙穢者,乃真知灼見而已。吾人以為奇異者,每聞此合唱,頻頻可嗅潮香。放眼遼闊海原,眺望明月照耀者,蓋為何神,神集何處,心欲自此伺見。」
 筆者如是澄淨心耳,恭聞先生再拾石笛吹奏聲之玲瓏。
 川崎君猶如聽聞主人呼喚之白犬,仰起垂首,筆者見其容貌既變。迥異於川崎君平日稍嫌柔弱之光儀,顯露凛凛決然之表情。眉間甚迫,目眥盡裂,柔唇閉塞。於茲如實地顯現臨戰年輕兵士之面容。
 木村先生放下石笛,以堅毅的口吻問道:「汝為孰神?願以賜答。」
 川崎君回答之聲紋,猶如發自雄壯男子咽喉之壯士之聲。
 「吾等是為遭逢背叛者之靈矣。」其聲明瞭。我等聞之,不覺慄然。
 木村先生不動如山,復以平靜口調探問:「蓋遭何人背叛?」
 「於茲坦露,忌憚甚矣。待聞吾等物語,其答自明。」
 「如今神集何處?」
 「所名不可言之。於茲惟答,在月照海上。同志諸神,多集今宵海上。今日,拍打汝等屋頂、汝等門戶之春嵐,洽猶吾等之吐納,欲喚汝等,醒於睡夢。其嵐可謂吾等哀嘆之先驅矣。然而,此處海上,離陸甚遠,遍滿月光,海潮深暗,蜿蜒逡巡,不見浪華,可謂和凪。此處乃吾等安息之地。然而於今,心尚怨憤,難耐慨歎,撕心裂肺。何故如此?吾等乃遭背叛之靈也。」
 「汝等何遭背叛?」
 「其後將語,靜聞而可矣。君不見,自彼沖瀛,又有同志一人,揚帆乘風,越海前來。觀之可矣。帆色土埃,黃金之釦,為月光照耀,其肩之上,肩章放光。而見其軍服,胸部破敗,為血所濡。穿其胸者,非為銃彈之力,實乃無盡怨恚之功。今猶流血,淌淌不止...」


吾等逃離陸上之虛偽奧津城,舉眾聚集月夜海上,相語今世總總,復論往世總總,以之為習。所以酒宴,壽祝者何?狂拂騷捲之海風,便是我等之祝酒。
所以神集者,非僅吾等同志而已。時有幾千幾萬、數十萬之兵士。
其靈相覷,毀謗訕罵今世之污穢,和聲高歌,相唱戲鬧之曲。然而吾等知悉,此儔喧囂之聲,早已不入世俗眾人之耳。

在此周回日本之海上,尚有汩汩血潮,經巡不斷。過去,無數青年所淌之血,化作海潮之核。
汝等可曾見之?月夜海上,吾等歷歷在目。徒然碧血,一時之間將黑潮變作血色,赤潮呻吟、叫喚,猶如猛獸,圍繞此褊小島國,那徘徊彷徨,悲哀詰吼之姿!
觀覽此儔,便是吾等之神遊!束手旁觀,便是吾等之神遊!遙遙彼方,日本本土,縱令夜深,數多燈火無盡之集團,泛於海上,以熔鑛燈之光,舐照夜空。
於彼,有一億蒼生,吐納寢息。或沉溺淫樂,以吾等不識之冷淡厭倦之興,濡濕被褥。
汝可視哉?

吾等所欲顯現真姿之國體,既為糟蹋蹂躪,蕩然無存!失喪國體之日本,漂蕩彼處,洽猶浮標,渾渾噩噩,隨波逐流之狀!
汝可視哉?

是今闡明言我身。吾等即三十年前,興起義軍,反蒙叛亂汙名,含冤身死者也。卿等莫忘。

 一先ず神は神上り、人間の休息の暇が与えられたやうに思はれたので、私はN氏の目配せに應へて、勇を鼓して、今神下りましたのは如何なる神でせうか、と先生に問うた。如何にも如實に現代の世相を歌つておられたから、輓近神となられた方であらうかと推測されたのである。
 木村先生は徐に口を開かれ、「否、私は必ずしもさうは思ひません。」と言われた。
先生のお言葉に拠れば、如何なる神とも知れないが、其數が多である事、又、若い神神であるらしく思はれるが、高い神格は疑ひが無い事、先考の神傳秘書中にも、
 一、過去現在未來を伺うべし。
 二、真神なるや偽神なるや辨せずばあるべからず。
 三、神の上中下の品位を知らざるべからず。
 四、神の功業を知らざるべからず。
 五、荒魂、和魂、幸魂、奇魂を知らざるべからず。
 六、神に公憑私憑あるを知らざるべからず。
 等等とあるが、密かに思うに、此神神あ真神たるは勿論、上品に屬され、功業は大なる荒魂であり、しかも今夜は此處に公憑として憑られたのだと推測されると云ふ事、が明らかに成つた。此一夜が過ぎた後、私は先生の最初の推測が悉く肯綮に中(あた)つてゐたのを知つて、今更ながら先生に對する敬愛を新たにしたが、この紀錄も其が公憑であると判つて鼓舞された點が多い。
 木村先生が重ねて言はれるには、「今世の事を語られても、必ずしも新しい神神とは云はれない。今世を汚れたり謗り給ふのは、何もかもお見透しだからである。私が奇異に思ふのは、此合唱を聞く間、頻りに潮香が嗅がれ、一望遙かなる海上に、月の照るのが眺められたが、如何なる神神であり、如何なる場所に神集うておられるのか、これから伺つて見やうと思ふ。」
 私は、如是て、心耳を澄まして、再び石笛を取り上げられた先生の、玲瓏たる吹奏を聴いた。
 川崎君は、主人の呼び聲を耳にした白い犬の樣に、項垂れてゐた面を上げたが、既に其顏は顏變りがして、普段の川崎君の稍柔弱な面輪とは違った、凛凛しい決然とした表情を浮かべてゐるのに私は氣付ゐた。眉は迫り、眥を裂き、その優しい唇さへきりりと結ばれて、其處には戰いに臨んだ若い兵士の樣な面差しが如實に顯われてゐた。
 木村先生は石笛を口から離され、「如何なる神に坐しますか、答へ給へ」と確りした語調で言われた。
 これに答える川崎君の聲も、太い男らしい咽喉から出す益荒男の聲に成つてゐた。
 「我等は裏切られた者達の靈だ。」とその聲は明瞭に言つた。
 私どもは慄然とした。
 木村先生は少しも動ぜずに、同じ平靜な口調で、重ねて問はれた。
 「何者が裏切つたのでありますか?」
 「それは今言うは憚りがある。我等の物語を聞いて後、自ずから明らかに成らう。」
 「今何処に神集うて坐しますか?」
 「所の名は言えぬ。月の海上であるとだけ答へやう。志を同じくする者が、今宵は海の上に數多く集うてゐる。今、御身等(おんみら)の家の屋根を打ち、戶を打つてゐる春の嵐は、我等の息吹が御身等の眠りを覺まさうとして、早駈けてゐるのである。然し、此處の海上は陸から遠く離れ、月光は遍滿す、黑い畝(うね)りを帶びて巡る潮は、笹立つ浪頭も見せずに和いでゐる。此處は我等の安息の場所だ。然し今尚心は怨みと憤りと、耐へ難い慨きに引裂かれてゐる。何故なら我等は裏切られた靈だからだ。」
 「何故裏切られ給うたのでありますか?」
 「其は追追語る所を聞くが良い。そら、彼方の沖からも、同志の一人が、海上を風を孕んだ帆のやうに進んで來る。見るが良い。其帆はカーキ色であり、黃金の色の釦が月に光り、肩には肩章が光つてゐる。そして其軍服の胸は破れ、血に濡れてゐる。其胸は銃彈を以て破れたのでは無い。盡きせぬ怨みに以て破れ、今も猶血を流してゐるのである...」
 此時私は、今宵の歸神が容易ならぬ事態を招いたのを思った。
 木村先生は表は平靜さを變へられぬが、其額に滲む汗を見ても、靈の瞋恚の火明りを受けて、躊(たじ)らいで居られるのが察せられる。
 然し一旦招請された神靈を、如何に荒い御魂とは言へ、此方の勝手で神上りし賜ふやうに願ふ事は、後後の禍の元でもあり、御先代の神傳秘書の固く戒める所である。先生が既に決意を以て、此荒魂を迎へやうとされてゐる事は、私には良く判つてゐた。
 一方、川崎君の顏も徐徐に紅潮し、言葉は次次と、神神しい威嚴を以て其口から出て、最早止める術も無いやうに見えた。
 先生が、「海上の神遊びの御心をお聞かせ下さい。」と問はれると、
 「神遊びか。」と靈の言葉には、嘲けるやうな、又、聴き樣によっては自ら嘲けてゐる時も聞こえる響きが籠つてゐた。


「我等(われら)は陸(くが)の偽(いつは)りの奧津城を逃出(のがれいで)て、月夜には海上に集(つど)ふて、今の世の事、又過(す)ぎし世の事を語合ふのを習(ならは)しとしてゐるが、此酒祝(さかほが)ひには、吹騷(ふきさや)ぐ海風が我等(われら)の酒だ。
神集ふのは我等(われら)の同志のみでは無い。時には幾千幾萬、何十萬の兵(つはもの)の靈が相見(あひみ)え、今世の汚れを謗(そし)る戲れの歌に聲を合はせる。しかし其聲さへ、人人の耳に最早(もはや)届かぬ事を我等(われら)は知つてゐる。
此の日本を迴(めぐ)る海には、尚(なほ)血が經巡(へめぐ)つてゐる。嘗(かつ)て無數の若者の流した血が海潮の核心を成してゐる。其を見た事があるか。月夜の海上に、我等(われら)はありありと見る。徒(あだ)に流された血が其時黑潮を血色に變へ、赤い潮(うしほ)は唸り、喚び、猛獸の如く此小さい島國の周(まわ)りを彷徨し、悲しげに吼える姿を。其を見る事が我等(われら)の神遊びなのだ。手を束ねて唯(ただ)見守る事が我等(われら)の遊びなのだ。彼方(かなた)、日本本土は、夜も盡きぬ燈火の集團の幾(いく)つかを海上に泛ばせ、熔鑛燈の光は夜空を舐めてゐる。あそこには一億の民が寢息を立て、或(ある)ひは我等(われら)の知ら無かつた、冷たい飽き果てた快樂に褥を濡らしてゐる。あれが見えるか。我等(われら)がその真姿を顯現せうとした國體は既(すで)に踏躙(ふみにじ)られ、國體無き日本は、かしこに浮標のやうに心元無(もとな)げに浮んでゐる。あれが見えるか。今こそ我が本體を明かさう。我等(われら)は三十年前に義軍を起し、叛亂の汚名を蒙つて殺された者である。卿等( おんみら)は我等(われら)を忘れてはいまい。」

嗚呼惜哉復哀哉,悲嘆不已激憤甚!
嗚呼!嗚呼!
抑抑、所謂綸言如汗者,此其何處詞藻哉?
若為神者依勅死,若為神勅納皇軍。稜威御力何所以,實非天皇個人力,皇祖皇宗所致矣!
嗚呼!嗚呼!
若云往世皆架空,今世方為現實者。捨生殞命義烈者,其當何去復何從?
奉為赴死英靈等,何故陛下唯一人,不護辛苦彼架空,逕自惜身圖苟活!

萬歲陛下詔如茲,己寔凡人同世俗。宸旨晴天霹靂時,
爲神殞命英靈等,一世忠名遭褫奪,當祭祠社不復在。
今尚空虛胸懷中,碧血汩汩流不止。雖在神界莫安寧。

日本破敗無不可,農地改革情可原。
社會主義世所好,改革行之莫不可。
吾等祖國敗北者,一肩悉荷負其罪,縱雖鼎鑊甘如飴。
我輩國民良可耐,經歷試煉力尚存。雖嘗屈辱亦可也。
無理要求不可抗,潔身受容亦可之。
然而凡事孰可忍,唯一孰其不可忍。唯一孰其不可忍。
縱令身之不由己,如何強制受彈壓,縱令遭逢死脅迫,
陛下不當作此言,豈可云己人間也。
縱遭世誹受人侮,唯有陛下御一人,當保御身顯人神。
莫云其寔乃架空,莫宣其寔乃虛偽。(縱令御心深奧處,思其然也不當言。)

身著祭服裹玉體,夜晝夢現朦朧時,
宮中賢所奧深處,叩首皇宗御靈前,齋祭為神殞命者。
若得唯祈讚彼勳,何等尊貴幾美談。
何以天皇竟成俗!
何以天皇竟成俗!
何以天皇竟成俗!

嗚呼、嗚呼、嘆かはし、憤ろし!嗚呼!嗚呼!
抑抑、綸言(りんげん)汗の如し、とは、何處(いづこ)の言葉でありますか!
神なれば勅により死に、神なれば勅により軍(いくさ)を納める。其御力は天皇御個人の御力に非ず、皇祖皇宗の御力でありますぞ!
嗚呼!嗚呼!
もし過ぎし世が架空であり、今世が現実であるならば、死したる者の為、何故(なにゆゑ)陛下唯御一人は、辛く苦しき架空を護らせ玉はざりしか!
陛下がただ人間と仰せ出されしし時、神の爲に死したる靈は名を剝脫せられ、祭らるべき社も無く、今も尚虚ろなる胸より血潮を流し、神界に在りながら安らいは非ず。
日本の破れたるは良し。農地の改革せられたるは良し。社會主義的改革も行はれるが良し。我が祖國は敗れたれば、敗れたる負目を悉く肩に荷うは良し。
我が國民はよく負荷に耐へ、試煉を潛りて尚力あり。屈辱を嘗めしは良し。抗すべからざる要求を潔く受容れしは良し。
然れど、唯一つ、唯一つ、如何なる強制、如何なる彈壓、如何なる死の脅迫有りとても、陛下は人間也と仰せられるべからざりし。
世の誹り、人の侮りを受けつつ、ただ陛下御一人、神として御身を保たせ賜ひ、其を架空、其を偽りとは努宣はず。(縱令、御心の裏深く、然也と思すとも。)
祭服に玉體を包み,夜晝朧氣に、宮中賢所のなほ奥深く、皇祖皇宗の御靈の前に額衝き、
神の御為に死したる者等の靈を祭りて唯齋き,唯祈りてましまさば、何程か尊かりしならむ。

何(な)どで天皇(すめろぎ)は人間(ひと)と成り賜ひし!
何(な)どで天皇(すめろぎ)は人間(ひと)と成り賜ひし!
何(な)どで天皇(すめろぎ)は人間(ひと)と成り賜ひし!



 吾等以死,得悉通盤。此身既歿,復無外力,能禁吾語。我等朋輩,能論悉數,資格備矣。何以?吾等已抛頭顱、淌赤心之血也。憶及昔日,赴刑場之途上,一上尉雄詰怒吼之語,今日再度,甦於胸膛。『我眾若死,必得以染血之姿,赴天皇陛下御前矣。如是,縱然身死形滅,仍是奉為聖君,鞠躬盡瘁而已。天皇陛下萬歲!大日本帝國萬歲!』然而吾等雖然如斯殞命,魂魄可曾躬赴陛下之許哉?
 我等之所欲語者,恰為其事。洞悉一切之後,神語相論者,便是其事。然而首先,我等先議熱戀。相語其戀慕之激烈,其戀慕之至純!

 於大演習黃塵之彼方,天皇御旗飄揚之下,大元帥陛下騎乘白馬之姿,遙遠渺小。是乃吾等當為其死,顯人神之真影,永銘於心。其神彌遠,其姿細微,其形麗美,其狀清朗,光華明彩,照徹六合。我等蒙賜之軍帽,其星芒徽章,仍與昔日無異。

 我等(われら)には、死んで總(すべ)てが判(わか)つた。死んで今や、我等(われら)の言葉を禁(とど)める力は何一つ無(な)い。我等(われら)は總(すべ)てを言ふ資格が有る。何故なら我等(われら)は、真心(まごころ)の血を流したからだ。今再(ふたた)び、刑場へ赴く途中、一大尉が叫んだ言葉が胸に甦(よみがへ)る。『皆死んだら血の付(つ)いた儘(まま)、天皇陛下の所(ところ)に行くぞ。而(しかう)して死んでも大君の為に盡すんだぞ。天皇陛下萬歲。大日本帝國萬歲』そして死んだ我等(われら)は天皇陛下の所(ところ)へ行つたか?
 我等(われら)の語らうと思ふ事(こと)は其事(そのこと)だ。總(すべ)てを知つた今、神語りに語らうと思ふのは其事(そのこと)だ。然(しか)し先(ま)づ、我等(われら)は戀について語るだらう。あの戀の激(はげ)しさと、あの戀の至純について語るだらう。

 大演習の黃塵の彼方(かなた)、天皇旗の閃(ひらめ)く下に、白馬に跨られた大元帥陛下の御姿は、遠く小さく、我等(われら)が其(そ)の為(ため)に死すべき現人神の御形(おんすがた)として、我等(われら)が心に燒付(やきつ)けられた。神は遠く、小さく、美しく、清らかに光つて居(ゐ)た。我等(われら)が賜はつた軍帽の徽章の星を其(そ)の儘(まま)に。


 吾等之國體,是即心與血之聯繫,單戀莫得成就,實乃戀闕之劇烈喜悅也。然而映於吾等眼簾者,遙遙陛下,正遭醜陋怪獸所幽閉,龍體清廉而寂寞,苦為奸臣所囚。

 吾等遂憤然興起義軍。爾等思之。
 其大雪紛飛之日,潛藏歷史深處之維新之力,奉為聖君與蒼生、顯神與人民、高居十善御位之御方與忠勇之青年,備齊稀有對話之機會。
 爾等思之。
 其時,千五百秋玉穗瑞穗之國,化作荒蕪之地。蒼生泣於飢餓,女兒遭逢賣身,聖君所治之王土,為死亡所充滿。眾神計量神謀,汲取歷史深井中至潔之清水,將其澆注吾等頭上,代替伏身荒地之啜泣蒼生,暗自安排與現人神之對話。
 吾度其成就之時,神國倏然顯現,狹蠅厭魅、災厄禍亂之疇,盡皆祓除。我等國體,必如水晶澄明,國中當為至福之所滿溢。

 我等(われら)が國體とは心と血の繫(つなが)り、片戀の有(あ)り得(え)ぬ戀闕(れんけつ)の劇烈な悅(よろこ)びなのだ。然(さ)れば我等(われら)の目に、遙(はる)か陛下は、醜き怪獸共(ども)に幽閉されて御座(おは)します、清らにも淋しい囚はれの御身と映つた。

 我等(われら)は遂(つひ)に義兵を舉げた。思ひみよ。其(そ)の雪の日に、我(わ)が歷史の奧底に潛(ひそ)む維新の力は、大君と民草、神と人、十善の御位に坐(ましま)す御方(おんかた)と忠勇の若者との、稀なる對話を用意してゐた。
 思ひみよ。
 其時(そのとき)玉穗為(な)す瑞穗國(みづほのくに)は荒蕪の地と化し、民は餓ゑに泣き、女兒は賣られ、大君の治(しろしめ)す王土は死に充ちてゐた。神神は神謀りに謀賜(はかりたま)ひ、我(わ)が歷史の井戶の尤(もつと)も清らかな水を汲上(くみあ)げ、其(それ)を我等(われら)が頭(かうべ)に注いで、荒地に身を伏して泣く蒼氓に代らしめ、現人神との對話を竊(ひそか)に用意された。其時(そのとき)こそ神國は顯現し、狹蠅為(な)す禍津日共(まがつびども)は吹拂(ふきはら)はれ、我(わ)が國體は水晶の如(ごと)く澄渡(すみわた)り、國には至福が漲る筈だつた。

續後撰和歌集 卷第四 夏歌

■續後撰和歌集 卷第四 夏歌
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大日本史 卷之二百五十五 志十二 神祇十二 神社七

大日本史 卷之二百五十五 志十二 神祇十二 神社七
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