猿板

遊山黒子衆SARUの記録

啓蟄の奥物部の森遊山 冬川

                                                       

 林道の南北に聳える山が迫る
古の峠にはいる終点に近づいて
ザックからストックを一本出した。

◆渓へ下る

 「これで三点支持やね」

 それは渓へ下るための用心で
なぜ一本なのかはカメラの固定は
三脚であることを考えれば解ること。

 「陽が射した!」

 杣人も道とした渓筋は
風雪もとおり道になるので
厳しいこともある地形だが
今日は護ってくれた様だ。

                                     

 日向ぼっこして行くか。

     「えい感じやね」

 雪山に日溜まりは
有り難いものだよなぁ。。。

◆渓を渡る

 「えい雪乗っちゅうで」

 渓原で一休みしたのち
杣人が架けてくれた橋を渡り
白髪山からカヤハゲに登り返す。

                 

 tochiko 風景もえいやいか。。。

この橋から下流の百間滝に落ちる
渓水が足下を流れる風景が好きだ。

     「ほんと水墨画やね」

◆登り返す
 僕らが通う40年間でも
幾度も土石流が下った渓は深く
カヤハゲへ登り返す山道も
年々ざれて足下が悪くなった。

                                                 

 「三嶺は百回以上登ったね」

稜線や山頂の風景は変わりないが
山懐の風景が変わった事に気が付いた。

   回数なんか数えてないよ。。。

 人が作った山道を天気が良くて
お金と時間があれば立てる百名山など
それはそれで有意義なんだろうが
僕らの山力にはならないと感じた。

◆まほらへ
 山道はヌル谷に入りなだらかになり
その先に僕らが40年間かよい続けた
多くの思い出が詰まった森がある。

                 

 ここは山中の破断により
堰き止められたヌル谷が
永い年月かけて流し込んだ
土石が堆積した森の平坦地。

 「何人連れてきたろうね」

    そんなこと数えられないなぁ。。。

 ただいま帰りました。

                    冬川や木の葉は黒き岩の間  惟然