猿板

遊山黒子衆SARUの記録

初夏の奥物部の森遊山 落し文

                                                               

 広げた羊歯の若葉の間から
茎を伸ばし咲いた花は何だろう。
きっと共生している様にも感じる
初夏の命らの営みは美しいものだ。

◆空気のこと
 長い冬の眠りから目覚めた草木が
まるで深呼吸をしているような息が
森に満ち空気が変わったことを感じる。
この初夏の森が僕は好きなんだなぁ。。。

 「ルリの声が気持ちいいね」

 確かに前より元気になったな。

人はルリの縄張り誇示とも言うけれど
ルリも夏の訪れが嬉しいんだと思う。

                                             

◆結び繫ぐこと

 「これって
   どうやって結んだろう」

 何とも言い様もないけれども
何かあったことは間違いないよね。

 今年始めてのぶら下がり。

森で空中捕食は蝙蝠や夜鷹などの夜行性で
昼は糸でぶら下がり夜は木に上がり身を護る。

 「落し文もあったで」

                     

葉を巻いた巣に卵を産みつけ地上に落とし
卵を狙い木に登る肉食昆虫から卵を護る。
これら捕食関係を繋ぎ森を維持する基となる
生き残る術も利己でなく利他の様に感じる。

◆春紅葉のこと
 山道は鋭く切れ落ちた
尾根に近づき若葉が輝く
緑のトンネルを抜ける。

                                   

 「春紅葉の盛りやね」

 紅葉は樹々が落葉する前に
大切な葉緑素を幹に仕舞って
残った色素で葉が染まる現象。 

春は逆だが葉緑素が遅れる木々があり
本来葉が持っている赤や黄色の色素が
淡く森を染める「春紅葉」がある。

                                           

 「えい時に来たね」

 また明日からの雨で
葉緑素出すのが進むだろう。

 今日の一期一会やな。

◆森のこと

 「1700mはまだやね」

 北東にカヤハゲの頭が見えた。

その年の冬によって変わるものだが
今年は順調に新緑が上がってようだ。

                 

 「ブナも花を
   いっぱい着けちゅうで」

 森のお母さんはどうやろね。
ほんと今年も楽しみが多いなぁ。

                  隣る世へ道がありさう落し文  手塚美佐