leaf's blog

記録しておきたい文章を綴ります。

『ものいわぬ農民』大牟羅良

 

図書館で予約して。何で予約したか忘れてしまったので、ググったら、朝ドラ「ブギウギ」の主演趣里さんがインタビューに答え、夫役の水上恒司さんが待ち時間に読んでいたと発言し、この本が急に動き出したと。これに違いない。

筆者は日本のチベットと言われた岩手の農民を、行商しながら4年間訪ね歩き、その後農民の声を活字にした雑誌「岩手の保健」を編集。

「その行商4年の体験と、編集者生活7カ年によせられたいろり話しを元にしてできたもので、私の著書というより、むしろ村人との共著だといっていい」とまえがきに書いている。

農家では誰がお財布を握っているか、世間体をどれだけ気にしているか、稗メシでも空腹時にはおいしかったとか。

中央政府の調査報告がいかに粉飾されてもので「紙に書かれている農村と生きている農村」には大きな乖離がある。

講演会の開会の挨拶の美辞麗句は、全く正反対のことを、なんのわるびれるところもなくはなしているとおかしな話しだ。と指摘しつつ、筆者は笑うことができないと。腹にあることは言わずに頭にあることを言うのが常態だと思うからだと。

こういう内容の本を、出番待ちに読んでいる俳優水上恒司、ただ者ではない。

『実録 マリウポリの20日間』

2022年2月、ロシアがマリウポリに侵攻した。AP通信の記者が、その前日から現地に入り、カメラを回し続けた。20日間の貴重な記録が、長編ドキュメンタリーとして公開され、2024年3月のアカデミー賞も獲得した。

病院に担ぎ込まれる人、逃げ惑う人、命尽きる人、家族を見送る人、話しをすると涙が出てしまうので、話せないという人、鎮痛剤不足のため、治療の痛みに声を上げる人。

自宅を追われ、4時間歩き続け、まだ歩くしかないと語る老人。店が攻撃され、残った商品を奪おうとする人を追い払おうとする店側とウクライナ兵。「なんでこんなことするんだよ…」。

記者はロシアに捕まってしまうと、映像すべてが「フェイク」とされプロパガンダに利用されてしまう。それだけは避けたいと、最後の出国を試みる。

残ったのは、誰も望んでいなかった廃墟。

すべての人に観て欲しい映像。

BSドキュメンタリーとして前後編を視聴。2023年12月に放映され、4月にアンコール放送。監督のアンコールはこちらに。

www.nhk.or.jp

『スプートニクの恋人』(再読)村上春樹

 

『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』という筆者へのインタビュー集に、1999年島森路子さんが聞き手となって『スプートニクの恋人』について語っている箇所があり、自分の読みの浅さを実感し、再読。

出だしのワン・パラグラフを、あるとき、なんとなく書いちゃったんです。

「ぼく」と「すみれ」と「ミュウ」の三人だけを設定した。

全部隈なくネジを締めてみようと考えた。

最初は何も決まっていない。(インタビュー集より)

村上春樹の良さは、ストーリーの押しつけがないところだ。

登場人物が最後にどうなったのか、読者の想像に委ねるところがある。特に「すみれ」。後半はギリシャに舞台が飛び、それは筆者が10年ほど前に滞在した蓄積を寝かせてようやくここで出してきた。

そして最後に教え子の「にんじん」が出てくる。終わり(結末ではない)に向かって欠かせない役割を果たしている。

村上春樹の長編は、やはり幾度も読み返したくなる。

インタビュー集とその原作を行き来しているので、今後、ブログにアップできるペースは遅くなってしまう。

『ラオスにいったい何があると言うんですか?』村上春樹

 

1995年のボストンでのランニング生活から、2016年の熊本再訪までを1冊にした紀行文集。2018年に文庫本化。

アイスランドの温泉、ニューヨークのジャズクラブ、シベリウスカウリスマキを訪ねたフィンランド地震の前後に訪れた熊本。

くまモンの考察も、担当者へのインタビューも掲載されている。

吉本由美さんが熊本に移住したことを初めて知った。スタイリストとしての彼女の仕事が掲載されている雑誌を、よく眺めたものだ。

ほとんど事前準備をしないまま、行き当たった出来事を記録している。

世界中に読者がいることもよくわかる。

 

『恋しくて』村上春樹編訳

 

村上春樹を読む一環で、プックオフオンラインで入手。

筆者は、文章修業の一環として、翻訳を捉えている向きもあるのかもしれない。

エッジの効いた文章のジャブ、本文に則しているのか、人名表記が名字になったり、ファーストネームになったり。これには困惑したが。

9編の短編ラブ・ストーリーが取り上げられ、それぞれに「恋愛辛苦度」が★でついている。村上春樹の感想と共に。

そして、村上春樹の「恋するザムザ」。カフカの「変身」の後日譚のようなものらしい。ホントにせむしの少女に恋しちゃったのかな?

『破れ星、燃えた』倉本聰

 

昨日の午前中、図書館で予約してあった本書を借り受け、サクサクと読了。

サンケイスポーツ紙に2022年7月~23年2月にかけて連載された自叙伝。

会社を辞め、独立する場面から始まり、テレビや映画の脚本家として活躍。

多くの俳優や裏方、富良野に作り上げた富良野塾のことなど、ページをめくる手が止まらない。

石原裕次郎をはじめ、石原プロの話は、やくざを彷彿とさせる。特に番頭の小政さん。

北の国から」「やすらぎの郷高倉健さんのもてなし、大原麗子さんの最期。

キー局のゴールデンタイムの番組が、まったく観る気持ちがわかず、ドラマは録画したものを1.5倍速でCMをカットしてばかり。

倉本聰さんクラスの若手の脚本家が競い合うなんて、もうないものねだりなのか?

 

1カ所誤植を出版社に指摘したところ、返答をいただき、重版から修正するとのこと。

『アイヴスを聴いてごらんよ』三宅榛名

先輩のブログで高評価だったので、図書館で借りて拝読。

作曲家の筆者が、10年ほど現代作曲家にインタビューしたり、音楽系雑誌に掲載していた記事をまとめ、1977年に発行されたもの。

先輩のブログでは、「アイヴスを聴いてごらんよ」を取り上げていたが、この記事が書かれていたのが、生誕101年目。ということは、今年は生誕150年目。

「前衛」という言葉は、この記事が書かれていた1975年当時なら、中学校で社会主義の歌を合唱で歌わされていた自分にストンと落ちてきていたかもしれない。今のロシアは…。

それでも、アイヴスの「あっけらかんとした楽天ぶり」は、心を晴れやかにするものがある。Spotifyで聴く、"Variation on America" ”Old Home Days Suite"は楽しいぞ。

筆者は、ジュリアード音楽院作曲科を卒業し、帰国後作曲家として活躍されていたようだが、本書を拝読するまで、知らずにいた。

巻末のプロフィールに「作家・柴田翔と結婚」とあり、柴田翔の作品は、大学時代読んでいたので「まるで、庄司薫みたい」と思ってしまう。

ググっていると、「陽の当たらなかった女性作曲家たち」というサイトにいきついた。

エッセイ > 三宅榛名(陽の当たらなかった女性作曲家たちⅡ-7) 石本裕子 | ウィメンズアクションネットワーク Women's Action Network

その後も数冊、本を出されているようなので、それも読んでみよう。