my trivial daily life

観劇備忘録のようなもの

『貴婦人の訪問』観劇

At シアタークリエ
2015.8.16 ソワレ

  • 演出       山田和也
  • 翻訳・訳詞      竜 真知子
  • 音楽監督       八幡 茂

アンサンブルもプリンシパルも漏れなく、上手い! 曲もキャッチーで耳に残る。ソロ持ち一人一人が歌うまという贅沢さも素敵。舞台転換も自然だし、劇場一杯に使う緊迫感のある演出も良かったと思う。


なのに、何故?何故、面白かったと素直に書けないのか…。
オチが弱い。こう来るかと思わせて、斜めからとか後ろからとか来てほしかったのに、やっぱりこうなった、みたいな。デュレンマットの原作を読んでないので、何とも言い難いけど、ウィーンの舞台脚本どうなっているのかなぁ。
集団心理とかジワジワ追い詰められていくアルフレッドの恐怖とか、クレアがそこまでアルフレッドを憎む理由とか、解き明かされる謎はあるのに、起承転結の転がないというか、全てが想定の範囲内、設定だけ斬新みたいなサスペンス。オマケに緊迫感がいまいちだったし、盛り上がりに欠けたのは、本当に残念。
サスペンスってハラハラドキドキしたり、人間の本性や業を垣間見てぞわっとしたり、キャストの演技に鳥肌たてたりしたいのですが、追い詰められる筈の主人公が何故だか、大きな身体で内股で動くもんだから、可愛いというか、コミカルになってしまって。どこまで冗談?笑うとこなの?緊張するとこなの?と観客が迷う気持ちに。
迫力とオーラの必要な役なら右に出る人はそうそういないのですが、ビビりなダメ男を演じるのは向いてないのでは…。
春野さんの夫を愛する優しい妻から、それが愛憎に変わっていく様や、禅さんの自身のヒューマニズムが拝金主義や集団心理に崩れてしまいそうになる苦悩の演技は素晴らしくて、とても見応えがあったけれど、それらが何故だかもったいない感じに。

これ、本当にウィーンで流行ってるのか?と疑問に思っていたら、上演期間4ヶ月という衝撃の事実を知りました。ウィーンの1シーズンは9月から5月の9カ月。半分で打ちきりということは、コケたということでは…。
作品に自信がないから、ピア&ウーヴェの歌唱力で逃げ切ろうとした訳じゃないよね?

版権、いくらだったのか知りませんが、お買い物は手堅く賢くしたいものです。そして賢い観客でありたいものです。

サンセット大通り観劇その3

『サンセット大通り』東京千秋楽

 

2015年7月20日。安蘭ノーマ&平方ジョーでの見納め。もともとこの日は抑えてあったのですが、昨日娘を連れて行ったため、とうとう連休中3日間ぶっ続けで赤坂に通うことに。ま、良い舞台だったので観ても良いかと。感想は過去2日に書いたので、こぼれたメモを。

 

  • 楽らしいハプニングと言えば、チンパンジーが椅子から落ちる名(迷?)演技。平方ジョー、思い切りが良くビックリしていて弾んだため。昨日よりコミカルな感じが増してて良かった。
  • 楽らしいハプニング、その2。安蘭ノーマのラスト、階段から下りる時に、うまくヴェールがかかっていない気がして、外れるか冷や冷や。
  • 楽らしいハプニング、その3。戸井さん、噎せたときにいつものように美しく粉が舞わず(笑)、あー、くやしいだろうなと推察。
  • 綜馬さんマックスは本当に歌も演技も安定していた。あの絶妙なタイミングで発せられる「ライト! キャメラ! アクション!」がなかったら、鳥肌のラストはない。
  • 浜畑さんみたいな舞台に重さを与える人がどうしても必要だと思う。素敵でした。
  • 3回見て気づいたけれど、売れない脚本家と占い師を演じていたのは福麻むつ美さん、かな? 素晴らしくお上手でしたー。もっと活躍して欲しい!

楽での挨拶。

安蘭さん、Wキャストなので体力的には楽なのだけれど、間が空くとノーマという役は気持ちを持っていくのが難しい・・・みんなもやってみればわかると思う!やってみて!とかいうようなことを話しておられました。いや、できませんから(笑)お茶目な、そうして堂々たる女優っぷりでした。

一昨日濱田さんは、演じ終わってまだノーマが抜けない、と、ノーマという役を理解するのが大変であったと涙ながらに話しておられました。濱田さんって、私欲のためとか愛憎ドロドロとかじゃなく、誰かの為に一人荒野を行くような孤高の気高い役が似合うからな。あんなに歌がうまくても、何でも出来るわけじゃないんだなーともらい泣きしそうになりました。

 

最後に、タイプの違う二人のノーマ&ジョーを両方アリにした演出家、鈴木裕美さんの度量に拍手!素敵な舞台でした。

『サンセット大通り』Aチームを観にいく 

  • at 赤坂ACTシアター
  • 2015年7月19日 マチネ
  • キャスト
    • ノーマ・デスモンド        安蘭けい
    • ジョー・ギリス          平方元基
    • マックス・フォン・マイヤーリング 鈴木綜馬
    • ベティ・シェーファー       夢咲ねね
    • アーティ・グリーン        水田航生
    • シェルドレイク          戸井勝海
    • セシル・B・デミル        浜畑賢吉
  • 作曲    アンドリュー・ロイド=ウェバー
  • 作詞・脚本 ドン・ブラック、クリストファー・ハンプトン
  • 演出    鈴木裕美

東京前楽。
昨日の観劇の感想を娘に話していたら、突如「私も観に行く!」との発言。そういうことなら、学生割が合ったはず、当日券もあったはずと教えて2日連続での観劇となりました。今回は2階席からの観劇となりましたが、休日なのに、前楽なのに、2階席がら空き・・・。もったいない!

せっかくなので2階からジョーがどこに潜んでいるかを観察していました。あー、なるほど、そこにいたのね!とリピーターならではの愉しみもあり。
出はけがとても自然なので、よくよく注意しないと気付かない。あと、演者さんがみな細かい演技をしてくれているので、すごく色々見どころがあり。


本日は初演に引き続き、安蘭ノーマ。さすがの安定感。漂う貫禄。
ノーマという大女優を体現できるのは、元宝塚男役トップとか、人生で一度はちやほやされたことのある女優とかなのかもしれない。シンプルなセットの中、階段に立てばそこはノーマの豪邸に見える、そういう気迫みたいなものが必要なんだと思うわけです。曲の中にもある「私を見て!」というオーラ。
パラマウントに行くときの安蘭ノーマは、人から注視されて、「あれ?なんでわたしは恐れているの?」となりながら、「おかしいじゃない、ここは私の場所なのに」とかぶりを振って通常運行へ。ここ、濱田ノーマは人の視線を恐れているようで、見ていて痛々しかったんです。必死で自分を奮い立たせていて。「見えているのに見えていない」という女の野太さを感じさせる安蘭ノーマに、ああ、これが原作に忠実なAパターンなのね!と納得。
対する平方ジョーはふわりとしている。圧のあるノーマにたじたじしつつ、振り回される様子がコミカルで笑える。水田アーティ、夢咲ベティーと友達としてすんなり馴染むジョー。そして人のよさそうな、それでいて鈍そうな水田アーティから平方ジョーにベティーが惹かれる気持ちは自然に分かる。お似合いの二人。
柿澤ジョーにあったのが、計算とノーマに対する憐憫とよくしてくれたことへの恩義だったとしたら、平方ジョーはノーマをハリウッドで成功した女優として第一に尊敬している、そういう類の愛情なんだと感じました。
そして、愛されることを当たり前のように受け止められる安蘭ノーマは、お茶目で可愛らしくもある。可愛くて、甘えん坊で、どこか滑稽で笑わせてくれる。


サスペンスって、この笑うという行為を挟むことがすごく大事なんだと思う。いったん身構えていたものを弛緩させて、思いもかけず緊張させる、この配分が良いほど、上質のサスペンスになりうるんだと思う。
ラストは、メイクはむしろ薄い感じで、階段から降り、マックスから「宮殿のセットです」と言われて「そうだったわね」とにたりとほほ笑む。端正な狂気だった。

これぞサンセット大通り。バランスが良いなと感じた舞台でした。

『サンセット大通り』Bチームを観にいく 

  • at 赤坂ACTシアター
  • 2015年7月18日 ソワレ
  • キャスト
    • ノーマ・デスモンド        濱田めぐみ
    • ジョー・ギリス          柿澤勇人
    • マックス・フォン・マイヤーリング 鈴木綜馬
    • ベティ・シェーファー       夢咲ねね
    • アーティ・グリーン        水田航生
    • シェルドレイク          戸井勝海
    • セシル・B・デミル        浜畑賢吉
  • 作曲    アンドリュー・ロイド=ウェバー
  • 作詞・脚本 ドン・ブラック、クリストファー・ハンプトン
  • 演出    鈴木裕美

濱田・柿澤組の東京千秋楽。
2年前の初演(安蘭けい・田代万里生主演)を観逃していて、再演は絶対に行こうと決めていた。
今回はノーマとジョーがWキャストで、安蘭・平方組と濱田・柿澤組になったため、どちらも観なきゃわからないでしょうとどちらも千秋楽を抑えて、連休他にすることないのか?!的な感じに。
主演二人のWキャストだとシャッフルされるとパターンが4つになってしまうのだが、今回はコンビ固定なので2パターンのみ。リピーターを増やしたいなら、いろんなパターンを作ったほうが儲かるのではないかと思うけれど(某帝劇方面とかのように)、あえて組を固定しているのは、きちんと完成されたものを客前に出すための鈴木裕美さんらしい配慮だと思う。そういう細やかさ、お客に良心的である姿勢、大好きです。

で、濱田・柿澤組の最大の魅力は歌唱力。この二人ならALWの美しい曲を堪能できるに違いないと期待して観劇。


舞台が始まってすぐに引き込まれた。
夜。ノーマ・デズモンド邸の前。懐中電灯を手に警察がバタバタと館に入る。客席の前列が青い光を浴びて揺らめき、誰かが「プールだ!」と声を上げる。
ああ、舞台だけでなく客席まで空間を使い、プールに見立てているんだ。美しいな、と思う。警官が客席を照らしたり、一人はモップを持ち出して水をかく。

突如スポットライトを浴び、プールからすっくと立ち上がる男の背中。その背中を見て、とっさに「ああ、ジョーがいる!」と思ってしまった。なんて美しいオープニングなんだろう。なんて計算されているんだろう。
世界にいきなり引き込まれていく。
観客がその世界に馴染むのに時間がかかるってことを、最初が肝心ってことを、よくわかっていらっしゃる。


ジョーは舞台に上がり、皮肉に笑いながら半年前の話を歌いだす。
無一文で仕事にあぶれた売れない脚本家。借金取りに追われ、差し押さえられそうな愛車をこっそり古びた豪邸のガレージに止める。その屋敷の主は、かつて無声映画時代の大スター、ノーマ・デズモンドだった。



と、ここから先は、ビリー・ワイルダー監督の映画「サンセット大通り」を観た方なら、よくご存知のお話ですが。
学生時代に名画座に通っていて、何気なしに観たこの映画。「サスペンスものかー、面白そう」くらいの気持ちで見始めて、もう、ラストには、「なんなの、この映画・・・」ってくらいグロリア・スワンソンの表情に持っていかれてました。
超怖いんです、衝撃だったんです。でもね、怖いのと哀れなのと同時に魅力的だったんです。
昔の栄光を今も引き摺り、自分が20年経った今も未だ美しいと思っている女なんて、醜悪だ、笑い種だと思うでしょう?
でも、女の業が深ければ深いほど、ノーマは魅力を放つ。狂気に落ちて、その美しさは凄みを持つ。
闇が深ければ深いほど輝く美しさ。そういうものがあるんだと思い知った若かりし私。

原作も面白いですし、音楽もいいとなれば、期待できる。あとはオケと役者と演出と舞台と!
オケ、オーバーチュアが聴き応えがありました。
手前と奥で同時進行する舞台の使い方もスリリングで見応え十分。
脇の一人ひとりまで細かく指導されたであろう生き生きした演技。出はけの自然さは細かに計算していないとこうならないだろう、と唸りました。


濱田めぐみさんのノーマは期待通りの歌うま。
柿澤ジョーも歌うまでストーリーテラーとしても、聞きやすい。
二人とも大ナンバーをものにして歌いこなして、耳が幸福。
数日たってサンセットを思い出すとき、再生されるのは濱田ノーマ・柿澤ジョーの歌声。
ただ、これ、映画のサンセットとだいぶ感じが異なる。
後に安蘭ノーマを見て思ったのは、あくまでAバージョンあってのBバージョンなんだなと。


濱田ノーマは、気づいている。自分がもう世界から忘れ去られていることも、自分が若くないことも。
だからずっと人の視線にも世界にも怯えている。ジョーの愛を当然と受け取るというよりは縋り付いている。


私が思うノーマ・デズモンドはたとえそこに自分に都合の悪い事実があったとしても、「見えていない」女だ。
老いも衰退も「見えているのに見えない」女。
だが、濱田ノーマは「見えてしまっている」んだと感じた。必死で目を逸らしているだけ。
美しい歌声と壊れかけているか細いノーマ。
そして、張り詰めた糸がぷつりと切れてしまったようなラスト。


対して、柿澤ジョーはギラギラしたオスむき出しのジョーであった。野心家で打算的で、その表情は邪悪。
柿澤君は好きなので、好意的に観ようと何度もオペラグラスで確認しては、悪すぎるジョーに閉口。こ、これ、売れない脚本家っていうよりゴシップライターとかギャングのほうが似合うんじゃ・・・。
いや、なんか、こんな顔してたらベティー惚れないよ?一緒に深夜まで脚本書こうとか誘ったり出来ないよ?とか心配になる。
ベティーにもがっつく。心なしかベティーが辛そうに見える(すみません)。ベティーとうまくいくと、るんるん♪で帰宅する。
ただ、ラストで柿澤ジョーは本当はいいやつだったんじゃない、と思わせる。ベティーに全てを打ち明ける歌唱は圧巻。


柿澤ジョーはノーマを利用したけれど、最後の最後まで悪いやつにはなれなかった。
そして濱田ノーマはずっと眼を背けていた現実を突きつけられ、退路がなくなり壊れてしまう。
はみ出した真っ赤な口紅、壊れた旋律、階段から降りてくるノーマに最後まで夢を見させようとするマックス。
ノーマか?と言われたらなんだか違う気もするけれど、これはこれで味のある繊細な舞台でした。

近況

娘が大学生になりました。
毎日バイトで忙しそうです。
お母さんは突然暇になったので、最近ふらふらと観劇ばかりしております。
何故ならば、ここ数年こんな感じでした。

映画のレミゼで親子で号泣→オペラ座の怪人に娘がはまる→25周年記念DVD見まくる→劇団四季観劇連れていってあげる→(ここまで娘主体)
海外版DVD漁る→ウィーン版エリザベートエリザベート繋がりで宝塚ちょっとかじる→東宝モーツァルト!とかレミゼとか主に帝国劇場←今ここ

と言うわけで、観劇記録のためにまたボチボチ更新しようかと思います。
って、放置しすぎてもう誰も気づかない気もするけれど…( ; ̄ω ̄)ゞ

ほのあかり 差し込む暗い森
どちらへいこう
右か 左か
きらきら瞳を輝かせ


冒険の旅は まだまだ続くよ


ビスケットにチョコレート 
大好きなお菓子つめこんだ
お気に入りの星空の模様のリュック背負って
ドキドキする胸をおさえて


転んだら 泣いてもいいよ
怖かったら 逃げてもいいよ


迷っても 引き返しても
ぐるぐる回っても


だいじょうぶ
必ず 道はあるの


どんな風に歩いても 
必ず つながるの


だってね
その道はあなたの道
誰のものでもない
あなただけの道だから