なぜ中高年は本を買わないのか

帰りの電車の中で人物観察をしていると、たとえば7人掛けの席で各人はこんな感じの行動をしています。
寝ている人間が3〜4人
ケータイ・ゲームの画面を見ているのが2〜3人
本(雑誌・漫画を含む)を読んでいるのが1〜2人
で、「書籍」と言えるような本を読んでいるのはたいてい中高年で、たいてい図書館で借りた本。
なんで中高年とか初老とか団塊の世代の人間とかは、本屋で本を買わないのか、を考えてみたいと思います。
1・多分もう家に充分以上の本があるから。何しろ、活字文化世代の最後の世代なので、娯楽と言えば本を読み酒を飲んで友と激論することだった時代。家の中に、読まないけれども見栄で買った吉本隆明とかレヴィ・ストロースとかサルトルとか、いまどきどこで売ってるんだよそんな本、というのがありまくってて、新しい本なんて買っても読まないと思っているわけですね。「読む時間がない」というわけではないんです。「新しい本を、「新しいから」という理由で読むという必要を感じない」という理由でしょうか。また、「金がない」というわけでもないのですね。「買っても、その本をどこに置くのか。その本を置くために、俺の思い出の本を捨てなければならないのか」という場所の問題。
2・本を読むのに「待つ」ための時間があるから。しばらく待っていれば、図書館を通して読めるし、ブックオフにも流れていくわけで、そんなに一日を争うほどのこともない、という判断。赤信号になりかけてても、老人は決して走ったりしません。次の信号が再び青になるまで待つわけです。
以上のことを考えると、出版社の戦略として、中高年を読者ターゲットにした雑誌はともかく、書籍(本)のほうはかなり難しいんじゃないかと思ってしまいます。
置く場所に困らず、昔の本をロングテール的に提供できる、というと、ぼくは第一に図書館、第二にネット配信だろう、と思ったんですが、ケータイで本を読む習慣を中高年につけさせるには、1冊100円(ブックオフの店頭台価格)ぐらいの価格設定にしないと難しいのではないでしょうか。リアルブックオフの100円棚なら、暇つぶしに充分使える娯楽小説のまぁまぁなもの、おまけに読んだあとはそんなに躊躇しないでも捨てられるぐらいの値づけのものが並んでいたりするわけです。