野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

第150回だじゃれ音楽研究会

東京に移動。上野の森美術館でのVOCA展を見る。(熊本で知り合った)しまうちみかさんの作品など鑑賞。

 

東京藝術大学千住キャンパスで、音まち事務局と打ち合わせ。次年度の『だじゃれ音楽』について。2025年度に『千住の1010人』を開催する計画に向けて、来年度新たに連携をとれそうな足立区内での音楽団体、文化団体、相撲団体などと何かしてみようという方針。2014年に開催した『千住の1010人』では、金管やジェンベなど野外向きの大音量の楽器に対して、他の楽器にPAをできなかった。マイク数百本用意するのは無理。でも、ウクレレとか合唱とか音量が弱いものに対して、マイクで補強するやり方も、工夫できるのかもしれないなぁ。どっちにしても気休めかもしれないが、、、。たとえば、ウクレレ30人と金管一人とジェンベ一人をグループ1、ケンハモ30人と金管一人とジェンベ一人をグループ2、ギター30人とジェンベ一人とジェンベ一人をグループ3、、、、、以下同様、というようにグループ分けをする。などなど、音量バランスの不平等さをどう是正するかについては、要検討。でも、野外で音量的に厳しいと考えていた「声」に、今回は取り組みたい、と思っている。

 

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夜は、『第150回だじゃれ音楽研究会』。150回も続けていることが凄いが、来年度もさらに続いていきそうだ。Memet Chairul Slametが2020年に東京で初演するつもりで書いてくれた幻の作品《Rock Sing》を貝殻で12人で合奏。これを大人数で演奏するのも楽しそう。即興セッションをしたり、次年度に向けて話し合ったり。

 

昨年12月の大巻さんのメモリバの記録動画も公開されている。夜の部はピアノ弾いた。来年度も千住に足立区に、何度も足を運ぶことになりそうだ。

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豊永さんとのクリエーション

豊永亮さんとスタジオに入る。1990年、ぼくと豊永さんのデュオにヴァイオリンの澤民樹くん、パーカッションのBob Barrazaを加えてpou-fouを結成し、翌年にはホルンの小林薫さんを加えた。即興をしているうちに、共同作曲になっていった。

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豊永さんの場合は唯一無二なのは、彼がギターを手にした最初からフリースタイルだったことだ。ロックバンドのコピーをしたこともなく、コードを覚えることもなく、最初から無調であり、最初からノイズであり、最初から前衛なのだ。豊永さんがボサノバをやることも、ロックをやることも、既存曲を演奏することもなく、豊永さんはひたすら豊永亮の音楽をやっている。ぼくは21世紀になってから豊永さんとの共演はなかったが、豊永さんのギターはその後も進化を続けていた。

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昨年秋に豊永さんと再会し、二人で楽曲を作ろうと、時々スタジオに入っている。予定は未定だがライブもしたい。今日もスタジオに入った。前回の即興から豊永さんが切り出してきたモチーフをもとに、曲を練り上げていく。一つのリズムをやり続けることをルールとして、その中でどれだけ差異を出していくことができるか、とやり始めると、無限にできる。反復は反復ではない。色々試しているうちに、今日は方向性の違う2曲が生まれてきた。

 

Gareth Williams(1953-2001)は、豊永さんに紹介していただき、94~95年に何度も遊びに行き、いっぱい話をした。彼の作品もカセットで少しだけ持っているが、若干YouTubeでも聴ける。実験的ロック、フリーインプロのオルタナティブ・ミュージックの方々、Fred Frith(1949-)、Elliott Sharp(1951-)、Heiner Goebbels(1952-)、John Zorn(1953-)、Garethの同世代でいっぱいいて、70−80年代の空気感を想像する。Garethの音楽を聴き、彼と過ごした時間のことを思い出す。

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Tom Jobimの音楽/サヌカイトとピアノ

Peter Freeman著『The Music of Antonio Carlos Jobim』読了。ブラジルは行ったことがなく、ブラジル音楽にそれほど感化されたわけではないが、ブラジル音楽はあちこちに溢れているので、知らないうちに接することが多い。この本は、ボサノバの祖として知られる作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンに関するもの。ジョビンについて勉強したいとは思っていたけど、自分に合う本が見つからなかったが、2019年に出た時に、これならぼくが読んでも面白そうと買った。サンバ、ショーロなどのブラジル音楽の影響、ショパンドビュッシー、ヴィラ=ロボスなど西洋音楽からの影響を、和声、リズム、形式の観点で分析している。譜例も多く勉強になった。

 

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サヌカイトの音源編集をしていて、ここにピアノ重ねた方がサヌカイトの音が生きると思い試す。良い感じ。でも、天気が悪く雨の音がしすぎて、今日は録音できないなぁ。細かな編集作業を続ける。

ミュシャミュシャ・モシャモシャ・ミュージック/オハイエ音楽隊3回目

熊本市現代美術館での3月31日のワークショップ『ミュシャミュシャ・モシャモシャ・ミュージック』の打ち合わせを里村真理さんとする。

 

 現代美術館の以前カフェだったスペースを現在はアートラボマーケットと呼称している。この日のアートラボマーケットは、野村誠一日店長、一日駅長みたいな感じで、野村誠の部屋となる。営業時間は、13:00-17:00。初登場なので混み具合にもよるので読めないが、短時間滞在も長居もできるはず。同時開催の企画展「ミュシャ展」、さらには、この日が最終日の山内光枝さんの長編映像の上映もやっているし、タレルやアブラモビッチの作品が常設されている充実の図書コーナーもあるので、丸一日この美術館だけでも遊べるかも。
 
ぼくが考えるアートラボマーケットは、アートの実験室で(ラボ)、それは閉ざされた実験室ではなく、路地を歩くと露店(マーケット)に突然出会うようなストリート感覚の場。美術館と言えば、何年も前から周到に調査をし準備をして開催される展覧会のイメージが強いが、現代美術館の「現代」の側面に着眼すると、朝採りの野菜のような鮮度、今釣ったばかりの魚のような鮮度のアートと出会う場を作ること。それは、言ってみたら作品化される前の未完成のもの、不定形、、、。
 
だから、パッケージされたプログラムとか、やんないよ!今まだ実がなっていないのに、31日の朝に結実したようなことをシェアするのが理想(その上で、里村さんと打ち合わせして、周到に準備した!)。その日の朝に収穫した新しい着想も登場するかもしれない。そういう場を目指して臨むつもり。ミュシャ、模写、音楽、そして、その向こうへ。採れたてで臨むので、気軽にお訪ねください。5分の滞在でも数時間の滞在でも楽しんでいただける場になることを目論んでおりまーーーす。

 

現在、熊本市現代美術館でミュシャ展をしていることと、以前カフェだったスペースを現在はアート・ラボ・マーケットと呼称していて、そこは、アートの実験室であり(アートラボ)、しかも、それは閉ざされた実験室ではなく、路地を歩いていると露店(マーケット)に突然出会うようにアートと出会うストリート感覚の場なのだ。美術館の企画展と言えば、何年も前から周到に調査をし準備をして開催され、それはもちろん必要なことなのだが、しかし、現代美術の「現代」というところに着眼したら、朝採りの野菜のような鮮度の、今釣ったばかりの魚のような鮮度でアートと出会う、という思いから始まったであろうスペースが、アートラボマーケットであると、ぼくは理解した。

 

つまり、ここでやることは、そもそもパッケージ化されたプログラムなどであってはいけないのだ。少し前の自分が見つけたことを皆さんとシェアする場では決してない。今、アーティストが取り組んでいる課題から、今朝収穫したばかりの着想を持ち込むようなこと。だから、今日、結構、打ち合わせして、それで準備物とかも相談したけど、当然、その日の朝に収穫した新しい着想も登場するかもしれない。そういう場を目指して臨もうと思った。現時点でのアイディアは、ミュシャ、模写、音楽、ということを結ぶ方法で、これは、3月31日の13時に始まった段階から、どんどんアップデイトされて変化していくはず。そこもお楽しみに。

 

『オハイエくまもと』との3回目のワークショップ。今、ぼくがやっていることは、33人のオハイエ音楽隊メンバーと、15人のオハイエ指導者の顔と名前を、それぞれの個性や音楽的な資質とともに覚えていくことだ。50人もいると、なかなか一度や二度では覚えられない。でも、今日も何人も覚えた(以下、何人かニックネームを登場させるけど、もちろん、ここに書ききれない色んな個性がいる)。

 

今日は、トーンチャイムを準備してもらったので、トーンチャイムを一人一つ手にとって演奏してみるところから始めた。トーンチャイムは持続音なのにトーンクラスターになっても独特なハーモニーが美しく響く。これだけで相当よい。あらき先生が「(スティールパン風の)パンドラムがあるけど、これも入れてもいいですか?」と言うので、どうぞどうぞと加わる。こういうことをすると、変わって奏法を発見してしまう人が現れる。ドラムの達人そうた君の編み出したポコポコ奏法。すると、そこから木魚を連想するのか、いっこさんが「なーむ、なーむ、なーむ」と言う。この「なーむ、なーむ、なーむ」のリズムでトーンチャイムを鳴らすのも良い。

 

《なんでもすき》やろう、と声があがる。初回に生まれた曲だが、既に定番のレパートリーとして認知されている。トーンチャイムを片付け、各自が楽器を持つ。すると、いっこさんが木琴を叩いている姿があまりにも自由だったので、木琴パートだけで演奏する場面を作ってみた。いっこさんの自由なアドリブと、ななえさんの渋い演奏のデュオにぼくがピアノで伴奏する。なかなか良い。

 

(ノリノリでウクレレを弾く)ゆうほ君がウクレレをソロで弾く場面も作った。最初はおそるおそるだったが、何度も繰り返すうちに、ノリノリの動きが出てきて、こちらも自由さに溢れる演奏。たかし君は、鍵盤ハーモニカの名人。ソロでメロディーも吹いてもらった。ひろみちゃんはラップ担当。マイクを使ってラップをしてもらう。あすかちゃんらが提案した歌詞「みんなで盛り上がろう、へいへいわっしょいしょい」を、ひろみちゃんがラップしたら、歌のようなメロディーに変形した。

 

ラップの歌詞で、「オハイエ」を入れようとあった。「オハイエ」は、もともと「おはよう、いぇー」を略して生まれた言葉らしいが、

 

お:おんがく

は:ハーモニー

い:いつも

え:えがおで エンジョイ

 

となったので、みんなで言ったり、言いながら動きもつけてみる。

 

あらのお君、けいすけ君、ゆうちゃんなど複数から成るカホン隊の伸び伸びしたリズムセクション、そうた君の安定したドラム、くめちゃん、なかしまさん、などマラカス、タンバリンなどのパーカッションセクションも良い感じ。あすかちゃん、さやかちゃんらのキーボード隊も簡単なコードやフレーズを弾いてくれていて、これはキーボードの音色選びも含めて楽しい。

 

休憩時間には、あいちゃんの大正琴演奏を聞かせてもらったり、けいすけ君ジェンベとそうた君ボンゴの太鼓セッションも白熱している。

 

前回フラメンコ風の動きとリズムを考えたひろこさんが欠席で、その動きから「かごめかごめ」を連想し、「かごめかごめ」やりたい、と声があがる。すると「はないちもんめ」をやりたい、と声があがる。ウチガシマさんから「はないちもんめ」がいじめなどにつながるから教育現場でNGになっている遊びとのアドバイスも出るが、そのことも踏まえつつ、「はないちもんめ」の遊びの動きをやってみる。楽器の演奏に合わせて動きだけやってみても、なかなか面白い。じゃんけんした後に、歌舞伎の見栄を切るのをつないでみる。

 

2時間のワークショップの後、指導者の方々へのワークショップ&打ち合わせも90分。実際に音を出してみたり、アドリブしてもらったり、譜面をやってもらったりすることで、ワークショップの進め方やメンバーとの関わり方のことなども、意見交換の引き金にもなって良い時間。

 

 

タイの録音/オハイエくまもと

昨年12月のタイでのWonderfruit Festivalでのライブ音源がNick Luscombeから送られてくる。フェスティバルが音源を公開したいとのことで、確認とのことで聴いてみるがとても良い。木や葉っぱの環境音と鍵盤ハーモニカの音、フィールド録音の音とライブの音のミックスが面白く、公開OKの返事をする。

 

明日、「オハイエくまもと」のワークショップ3回目なので、前回の動画を見返して明日の準備をする。

 

明日、熊本県知事選でもあり、立候補者の政策などを比較したりして、投票に備える。住んで3年なので、まだ分からないことも多い。

 

 

 

 

 

 

香港の高校生とのワークショップ/サヌカイトの音

香港のCCCDの企画で、高校生たちとの6回のオンラインワークショップが始まった。今日は初回。学校からではなく、帰宅後に各自が自宅からつないで。CCCDのサンドラと9人の高校生と。

 

最初に、《鍵盤ハーモニカ・イントロダクション》を実演すると、チャットにcoolとか書き込んでくれる高校生たち。喜んでくれて嬉しい。その後、一人ずつの自己紹介してもらった。古箏をやっている生徒が複数いて(しかも10年くらいやってると言う)、柳琴をやっている生徒もいて、ヴァイオリン、ピアノをやっている生徒もいる。中国楽器と西洋楽器の見事なミックス。

 

マイクをチェックする上でもみんなで手拍子をしてみる。案の定、聞こえない子がいるので、オーディオ設定を音楽モードにしてもらう。聞こえるようになる。楽器を見せてほしいのだけど、自宅には楽器がないのか(香港の住宅事情だと狭くて楽器は難しいのかな)、誰も楽器は出してくれない。そこで、手拍子リズムから作曲することに。結構、面白いリズムになった。そのリズムからメロディーを作ってみた。そのメロディーに英語の歌詞を作ってみる。My brain go to park to play hide and seak.という不思議な歌詞になり、これを広東語にもしてもらい、日本語にもしてみた。

 

琵琶も見せると、サンドラが中国琵琶を見せてくれる。中国琵琶は指で弾くけど、日本の琵琶は撥で弾く。次回までに、各自宿題として楽器について調べてきて発表することになった。ぼくは、毎回、日本の音楽についてもミニレクチャーをすることになった。今日は良い出会いの場だったので、今後、毎回、ぼくもしっかり準備してみようと思った。そして、来年香港に行った時には、彼女たちに対面で会いたいなぁ、と思った。

 

サヌカイトの音源編集作業も少し進める。全員で一斉に鳴らすサウンドも良いし、一人ずつ順番に鳴らすのも良く、この二つを重ねて鳴らすと結構楽しい。確定申告のための帳簿作成作業がまだ終わっていないが、今日は主にホテルなどをネットで予約してネットで決済しているので、これらの情報を入力。

 

 

日本作曲年鑑2022/高松市美術館の開館・閉館の音楽

日本現代音楽協会『日本作曲年鑑2022』が届く。ざっと400人近い作曲家の1000曲ほどの新作初演のデータが載っている。ここには、初演の都市名も記載されているので、熊本でどれくらい初演されているのだろう、と思って見てみる。ほとんどが東京なのは当然として、それでも日本全国各地で新作初演があることに気づく。豊中での初演は結構多い。しかし、熊本は全然出てこない。なんと1作品のみだった。

 

出田敬三作曲《明日への扉ー祝い詩》(平成音楽大学創立50周年記念)

 

熊本は書店とか古本屋とか見る限り、かなり文化度高いなー、という印象があるのだが、こと現代音楽に関してはシーンが少ないのかなぁ。でも、今年度から作曲家の稲森安太己さんも熊本大学の先生になられたし、徐々に活発になっていきそうな気はしてるけど、、。

 

高松市美術館の開館・閉館の音楽を作曲すべく、サヌカイトの音源を聴いて、素材に切り分けていく編集作業中。とりあえず、1-2月生まれの人の自由演奏から11-12月生まれの人の自由演奏まで切り出した。そのままでも相当面白い。