*['60-'70 ロック] Art Garfunkel Jr. / Wie Du-Hommage an meinen Vater ( TELAMO / 2021 )
どんな音楽通でも、名前を見ない限り、このスキンヘッドおじさんを特定するのは困難だろう。本名ジェイムス・ガーファンクル、サイモン&ガーファンクルのアート・ガーファンクルの息子、アート・ガーファンクル・ジュニアである。父アートとデュエットした親友ジェイムス・テイラーと同じファーストネームを名付けてもらったということになる。アート・ガーファンクルは3本の指に入る大好きなミュージシャンだけれど、この盤は手に入れるのに時間がかかった割にちょっとキツ目の盤だった。発売からしばらく経ってやっと冷静に聴けました。
アートの90年代後半から00年代の公演には妻キムと共に帯同し、”The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)”では家族3人、ジェイムスは父と同じ衣装と髪型で天使の歌声を聴かせてくれたものだったが(渋谷のオーチャードあたりで何度か見ました)、時の経つのは早いもので。
ちなみに大きく成長してからもアートの公演では時折デュエットを披露。ボーカリストとしては、正直親の七光りが無ければ特徴もなく厳しいものがある中での今作、初のアルバムとなるわけだけれど、移住地のドイツ語で、S&Gおよびアートの代表曲をゲストを交えて歌うというところに落ち着いたようだ。アルバムタイトルは、『あなたのように―父へのオマージュ』といったところ。
割と面白いなと思ったのは、アートが子ども(ジェイムス)のために作った1997年のアルバム『Songs from a Parent to a Child』に収められているキャット・スティーブンスのカバー”Morning Has Broken”とか、1993年の『Up 'Til Now』(このジャケにも息子ジェイムスが映っている)から、キャロル・キング作でエヴァリー・ブラザーズが歌った”Crying In The Rain”が収録されていたこと。家族で一緒にツアーを回っていた頃、おそらく知らぬ間に覚えていた楽曲を収録したと思われる。なんだか心動くものがあった。何より、父アートが”Der Condor zieht (El Condor Pasa)”と”Raum des Schweigens (The Sound Of Silence)”、そしてCDにはクレジットがなかったけれど、”Geh mit mir durch den Regenbogen (Bridge Over Troubled Water)”の3曲で息子の一人立ちに華を添えている。アートのレコーディングは、2013年にジミー・ウェッブのセルフ・カバー・アルバムで歌った”Shattered”以来ではなかろうか。ゾクっとするアートの歌声は流石と思い知らされた。
さらに5曲追加の拡大盤も出ている。