2月の終わり、3月の初め

2月3日 蔵前のギャラリー巡りの日。
① 溜まりつく光 | MJK Gallery 展示のサムネイル写真とタイトルに惹かれたこの2人展は双方の作風は全く異なるけれど不思議な調和があることが興味深かった。

②  Language of shape Vol.2形の言葉 Vol.2 | 足立涼子2024/2/1(thu)〜18(sun) – iwao gallery ここは毎回良い展示。今回も素晴らしかった。普段は作品を「ブック形式」で極少数で発表する作家がギャラリーという空間で「世界は届かぬ言葉の記録で充ちている」とのステートメントを携えて結晶*1をモチーフとしたモノクロームの世界観は静謐で、私が足立さんの作品の中にいるようだった。

挟まれ神社

にしても蔵前は来るたびに店が増えてるし行列も目立つ。


鳥越神社の樹木に長い年月の光が備わっていた。


節分の豆のような。

大通りを渡り緩やかに続く坂道を下る。

え!チャコペーパー?懐かしい!フォントが昭和!って帰宅後調べたら本社なのね。会社概要 of チャコペーパー 1953年、松井淑(まつい よし)が、洋裁・和裁で面倒な「糸印」を簡略化しようとして考案。それまで3時間もかかっていた印つけをたったの3分で正確にできるようにしたのがチャコペーパーのはじまりです。
・・・なるほど。

事件現場(じゃない)


浅草橋駅へ。神田川の橋を渡る。

Ylva Carlgren「Light Compositions」1/20-2/24 スウェーデンの抽象画家の日本初個展。サムネイルの作品に好き!と思って観る予定にしてたら、オペラシティの「ガラスの器と静物画」でも展示されてて驚いた。繊細に塗り重ねた水彩画のグラデーションが美しく、見入る。会場の光源により印象が変化し深まりそう。今後の作品も楽しみだー。今後大手ギャラリーが買い付けそうだね・・・

さらに進んで馬喰町。①のギャラリーオーナーは最初このあたりで探してたと言ってたな。でも今なら蔵前でいいと思うなー。

天野祐子 「セルビア 2018 2019」 (ツバメスタジオ) |Tokyo Art Beat セルビア旅行記録。写真と写真の隙間に鉛筆で書かれた文章も含めて、私もこの旅をしているような気持ちになる。日本にいるのとは異なる感覚・出会い。

いい気分になってたところで入ったお店でちょっといや〜な気分をいただいてしまいがっくし。三越前駅まで歩いて帰路に就く。



2月4日 「ノスタルジア リマスター4K」思うことが言葉にならないのでたぶん1ヶ月かけてここに書き留めていく気がする。きれいすぎて舞台を観てるみたい 頭の中のくぐもった世界がきれいになっていたから動揺してしまった。



2月5日 午後から雪 思った以上に雪 今は雪の中で雷が鳴っている 明日から怖い、仕事が。



2月6日 懸念はさほどの状況で、早退けして帰宅。



2月7日 会社帰りにシネコンへ、「ストップ・メイキング・センス 4kレストア」初IMAX初殿様シート。サイコーに楽しかった!
ジョナサン・デミ、ありがとう!
gaga.ne.jp



2月8日 矢田部英正さんが制作する椅子に座った。「瞑想」をテーマにした椅子は背筋がシャキッと伸びながらも腰から下が大地にスッと下りて馴染んでいくよう。
HELIX



2月9日 午後珍しく仕事で外出。早めに終えてちょうど近くに好きな喫茶店があるのでしばし本を読む。ああ、いい1日であった。
www.sogensha.co.jp
〈没後30年記念出版〉製版のデジタルリマスターにより、約30年ぶり待望の新訳復刊!
て!!訳者がこの本の作者なことにもなるほど。

コレ今度買おうと思ってるんだけど、という話をY氏にしたら既に買ってたし副読本も教えてくれた。ありがとう。



2月10日 Y氏と所用で外出しそのあとご飯食べて歩いて喫茶店行って歩いて帰宅。2人で歩くと気づくものも倍になる。



2月11日 恵比寿のギャラリーを巡る。
ひとつめは北国の真冬の森林を描く作家で深々と静かな作品なのに、タイトル横に寄せられた文章が自己啓発本的な言葉だし、鑑賞者に話しかけて長々説明してたからソッと出てきてしまった。
ふたつめ Koma galleyにて 藤林彩名「狸のいる風景」。信楽焼の狸の居る風景を求めて日本全国を旅した記録。この手のモノは「分類」に特化することが多いけれどあくまでも「狸のいる風景」が素敵。 ぽんぽこたぬき道(藤林彩名)/「日本道中信楽狸3」 | Koma gallery

みっつめ [Exhibition] 川内倫子 / いまここ — POST 川内さんの眼差しを通過した世界のやわらかな美しさは独りであり皆だ。 

よっつめ黒谷和紙作家 ハタノワタル展 「おかえり」
洗練さと穏やかさがある作品が大好きだ。今回はうつわ・照明・じゅうたん・スピーカー作家とコラボした作品もあり、ヒルサイドテラスという生活全般を包み込む場所にぴったりだった。

そして渋谷に向かい、ル・シネマにて「here」ベルギーのバス・ドゥヴォス監督最新作。素晴らしかった・・・!大好きだー。



2月12日 町田宗弘個展「MAINICHI RECORD - まいにちレコード展」 | nostos books ノストスブックス 『インディーロック・オルタナティブロック・エモ・パンク・シューゲイザー・インディーポップ・ギターポップなどの名盤や知られざる良盤レコードを毎日絵に描いていくプロジェクト」の展示。描き手は有名ミュージシャンのジャケも手掛けるデザイン事務所代表の町田宗弘さんで、10センチほどの大きさを毎日描くというコンセプト含めてさすがにうまい。描かれたジャケに78年生まれという世代感もあったなあ。ちょっと吸った空気と耳が違うというか。今調べたら、自身の事務所でカフェも経営しているそうで、そこにも世代感がある。 park / NSSG | straight design lab


2月13日 <BSフジサタデープレミアム>『輝き続けるBOØWY』|BSフジ  ゲスト人選が良くてトークがちゃんとボウイが好きな人の話になってた。実のところ当時ピンと来ていなかったので、あらためて聞くとそれぞれの音がバラバラだけどまとまってるのが面白い。音楽性よりも氷室の歌い方とかポージングが引き継がれて「こういう人50代後半の経営者によくいるよな」ってのも悲しいものですね・・・。



2月14日 ギターマガジン。
ギター・マガジン 2024年3月号|MAGAZINES|リットーミュージック

ブライアン・メイ、ドーン!!にビビるがヤマジさんのインタビューによる新譜大紹介が!!!12月のワンマンの機材紹介にエフェクターの魔法陣まで!!!!なんと全10ページ!!!!!・・・・・いやあ、こんな時代が来るなんて(動揺)ひさ子さんがdipを語ってるのも嬉しい。↓ このときの私の記録「ひさ子ちゃんのギターは当時繰り返し聴いて耳コピしたんだろうなってヤマジギターの継承っぷりに、胸が熱くなった。」ってマジホントにソレ!!! JUST FOR ONE DAY - 音甘映画館



2月15日 下北queでヤマジさんとひさ子さんのライブ。カバー曲中心のライブはいろんなひととやってるけど、ひさ子さんとのが一番好みの選曲になるから嬉しい。



2月16日 朝強風に震えるが今日は会社お休みにして、午前中に「夜明けのすべて」を観た。まとまりそうもないけど書き留めたいことたくさん。三宅監督ほんとすごいわ・・・。/ 午後はちょっと散歩してから国立近代美術館で「中平卓馬展」、写真展ではなく「時代と写真と写真論」の立体的で考え抜かれた展示。



2月17日 何年振りかで大学時代の先輩とランチ。音楽の話よりも自分の体調や実家の話ばかりになることに2人で苦笑。みんなつらいことあって、ひとりで抱え込まずに生きていくこと、直接役に立たなくても話すことでもいいから分け合うこと、大事だな。



2月18日 髪切り。美容師さんが「パーフェクトデイズ見ようかなと思ってるんですけど、『丁寧な暮らしっていいね』て感じで褒めてる人多くて、なんかモヤっとするんですよね」と言うので、アツく語ってしまった。「代理店仕事の上から目線を揶揄するのも、丁寧な暮らしを描いてると賛美するのも、薄い消費に過ぎなくて、単純にヴェンダースがつくる映像が美しかったです」/ だいぶあたたかな日だった。春に近づいている。



2月19日 ボーッとして頭が回転しなくて、同僚に確認依頼されたことが理解できなかったり諸々困った1日。座ってると気にならないけど、歩くとものすごく疲れていることに気づく。ムカムカ気持ち悪い。 / 夜父から電話で疲弊100倍。



2月20日 CODEINE"ATOMOSPHERE"/BEDHEAD"DISORDER" の7inchスプリット盤なんてアコギなNUMEROォォと思いながら買ってしまいました・・・
Codeine & Bedhead — Atmosphere b/w Disorder – Numero Group



2月21日 夢に母が出てきたのは命日だから「来てくれたんだ」と思ってY氏に話すと「脳内に何かしなくちゃ的な気負いがあるからじゃない?」と言われて、うむう。平安時代の呪詛もまあ、そんなところなのだろう。



2月22日  会社帰り、映画好きの店主の喫茶店へ行く。映画のことをネットで書くのとは違う楽しさがある。



2月23日 終日雨の日、朝10時に渋谷。エリセの「瞳をとじて」を観た。感想は別途。終わると13時だったけどお腹空かず。移動して喫茶店ハーブティーとキャロットケーキ。本屋など行って、もうすぐ終わりそうだし観ておきたくて渋谷に戻り「ゴースト・トロピック」を観た。期待してたけどちょっと違ったかな……。ル・シネマ9階から階段で降りて3階に着くところで傘忘れたことに気づき、戻った。



2月24日 久々の晴れ!駒込駅で山手線下車し南下。

田端銀座はおでん種や豆腐など古き個人商店が今なお賑わう商店街。

ずっと続く細い路地を進んで、谷中霊園脇に出来た古いアパートをリノベーションした施設へ。

店舗、ギャラリー、アトリエにシャアハウスと全部入り。

この界隈はそういう場所が増えてきたなあ。運営側のテナント選択に意志とセンスが重要よねえ、、と眺めながらそのまま進む。

ヒマラヤ杉を見上げ、弥生の教会では静かな光に包まれる。

坂を下って、白山のプラトーブックスへ。
『日本のまちで屋台が踊る』 | 屋台本 の出版記念で店内に屋台が!

「選択肢としての」屋台にナルホド。そして帰路に着く。街角の庭先、梅の向こうの青空は薄く春の色。歩くことは楽しいなあ。



2月25日 朝から寒すぎて雨も降ってきて体が動かないし判断力が無い。予定の方面へ行く気が失せて、このままウチに籠りそうだったけどダメ人間のまま明日になったら気持ち的に落ち込むので、とりあえず近所の店へ行ったもののすぐ帰宅。どんより気分のまま、今これを書いている。はあ・・・



2月26日 朝怠かったけど会社着くなりトンデモ事件に巻き込まれてテンション急上昇せざるを得ないまま対応し、午後も更に倍、ドンドン!でウチの会社あるある過ぎて笑うしかない・・・/帰りにケーキ買ってホクホク気分に。美味しいケーキは幸せにするねえ。


2月27日 (翌日書き)昨日書かなかったけど昨日のことなのにまるで思い出せない・・・



2月28日 「ジーザス・ジョーンズとEMF ダブル・ヘッドライン・ツアー」なんて行きた過ぎる・・・日本でもやるのでは・・・
www.jesusjones.com



2月29日 会社休んで国立新美術館マティス 自由なフォルム」展へ。かたちの美しさ。ここに行き着くまでの長い道のりを想像する。『ブルー・ヌードⅣ』を前にしたら涙が溢れそうになった。この作品もそうだけど、下書きの線がたくさんあって、ぐっとくるんだよねえ。
マティス 自由なフォルム│展覧会サイト



3月1日 親の若い頃の写真というのはとても衝撃的で不思議な気分になるのだけど、「不適切にもほどがある」を観ながらその感覚を思い出した。



3月2日 曇で寒い。 広がるコラージュ / 同時開催 IIDA 101 飯田善國 | 2024年 | 過去の展覧会 | 展覧会 | 目黒区美術館 に行くも、視点の広がりと発見に乏しく残念。目黒から引き返し、ウチの近場のカフェで休憩し早々に帰宅。映画の感想2本残ってて、宿題じゃないのに気になっちゃう。



3月3日 久々に晴れて寒過ぎずな日、近場の街に最近行ってなかったと回る。この頃週末は映画が多かったからだと気付く。ぐるーっと歩いた距離も久々ならでは。木漏れ日や庭先の花、家、店、道。出会うものすべてが楽しい。



3月4日 同時に世界中へ発信していることになるとはいえ、ネットの人里離れた僻地でひっそり暮らす身を勝手に晒さないで欲しい。長年使用しているけれど、親切心のつもりなのか。まったくSNSのRTよりもタチ悪い。反応を数で知りたいとかアクセス数を稼ぎたいとかたくさんの人に見て欲しいとか情報発信をしたいなどはまったく考えていなく、ただ書くことが楽しいからだし、長年お付き合いのある方々との回覧板のような感覚で続けているのだ、私は。




朝、向かいの木蓮が咲いていた。駅行く途中の木蓮は一房だけ花弁が弛み始めていた。帰りの夜道では沈丁花が薫った。

*1:「シャーレの中の溶液が結晶化する過程」と「頭の中の混沌とした思考が言葉になる過程」のイメージを重ねていることにどきどきした

夜明けのすべて

「夜明けのすべて」を観る前に思い出していたのは、三宅唱監督 2014年作「無言日記」だ。「playback」は"頭で撮ってる"印象を受けてピンと来なかったけど、「無言日記」はiPhoneで撮った日常の血肉が息づいていて、2015年の恵比寿映像祭で見た時めちゃくちゃ興奮したのを覚えている。
恵比寿映像祭 ~ 三宅唱《無言日記/201466》――どこの誰のものでもない映画 - 音甘映画館
この試みで"日々の機微を空気ごとすくいとって" 作品にする手法を会得した印象があり、これは高度な映画的知性と技術があることが前提で、若き日の監督に「映像日記」の制作を勧めたboid樋口さんの彗眼よ、、、。
こちらでトレイラー見ることできます。→ Watch 三宅唱監督『無言日記』2014〜2016 Online | Vimeo On Demand on Vimeo


その後の「きみの鳥はうたえる」はちょっとエモすぎるけど登場人物がその土地で"生きている"し、「ワイルドツアー」での子供目線や、合間の「アイドルのPV」もすべて、今作「夜明けのすべて」に繋がる要素になっている。




画像引用元:夜明けのすべて : フォトギャラリー 画像(4) - 映画.com

2月16日金曜日、会社を休んで朝イチの回で観た。
人気若手俳優を起用、人気作家の小説が原作、シネコンで上映の商業映画だなんて。しかし関係各所からの要望をキッチリこなしながら「自分の映画」を撮ることに自覚的で志を強く感じる。だからこそ素晴らしきスタッフに恵まれるのでしょう。企画制作はホリプロで主演2人の所属事務所ではないことにも驚いた。



上映時間は長めだけどダレるところがなく、でも刺激の強いシーンもなく、とにかく丁寧。電車が見える起伏ある街並みの行き来やカセットテープからの話し声(斉藤陽一郎!!)など、さりげなくも映画の素晴らしさが随所に光ってた。体感と知識に裏付けられた映画技術もさることながら、上司から中学生に至るまで人物の描き方に誠意と品性の良さがある。



先日観た「here」と同様に、どのような未来でありたいかを考え、それにはどのような物語を紡ぐべきかを2020年代の映画監督として意志を持って作っていると感じる。過酷な現実ではなく、こうあればと思い描く良き世界を「映画として体感し続けること」で私たちはそちらへと向かうことができるのではないか。台詞やまなざしは心を通って体内に染み、我がことになって表れる。豊かで美しいエンドロールはそのまま私たちの日常に続くのだ。


星は昼間は見えない。夜に見上げれば点在していて「⚫︎⚫︎座」と定義することで形がつくられる。それは人の繋がりと共通している。想像する。大きな声で煽動するのではなく、そっと伝えあう。
理論と感覚と身体と世界が一体化して、優しく繊細で大胆で強靭。ふと浮かぶ穿った捉え方をも包み込んでしまう、真摯な姿勢の作品が「商業映画」という場で広がることは辛い現実のなかに灯る明日への希望だ。



三宅監督作はずっと見てるけど前作だけ見てないのは去年とにかく映画見る気になれなかったからで、今作は見に行けて、感情を大幅にブレさせることもなくしっかりと対峙できてよかったなあ。



以下のインタビュー発言に泣く。

・主人公の物語以外に、別の人の時間も流れているのを見れると、映画って楽しいなあと思うんですよね。たとえばカーチェイスの映画で、主人公たちがカーチェイスをしている同じショット内で牛が呑気に草を食べていたりとだか、主人公が怒っている横で笑っている人がいることだとか。普段生きていると自分の視点も感情も一つに縛られるから、そういう広がりを同時に感じるのはなかなか難しいけれど、でも映画なら見られるんですよね。


・その一ヶ月後にまたきて、更に一ヶ月後にまたきて、という波のサイクル。それを踏まえて未来を考えるのか、それを想定せずに未来を考えるのでは、社会の設計が全く違うはずだよね、ということをようやく思い知りました。
監督インタビュー【音声ガイド制作者の視点から】映画『夜明けのすべて』 三宅唱監督へ|Palabra株式会社