シューゴアーツ六本木の森村泰昌展を見る

 東京六本木のシューゴアーツ六本木で森村泰昌展「楽しい五重人格」が開かれている(6月1日まで)。

 森村が今回扮しているのは、甲斐庄楠音描く花魁、ダヴィッドのナポレオン像、ミロの抽象画を森村が顔を使って再現。カフカの肖像写真は成人の姿と5歳の時の姿を再現している。


 よくできていると思う。見事な扮装だ。しかし、これは何だろう。

 村上隆がアニメや漫画を美術に取り込んで「スーパーフラット」を作り出したというなら、森村はさしずめ「コスプレアート」を作り出したといえるだろう。夏と冬に東京ビッグサイトで行われるコミケのコスプレを高機能にしたものだ。高機能コスプレアートと言ってみたい。コミケのコスプレより本格的だしお金もかかっている。

 しかし、シンディ・シャーマンの二番煎じにしか見えないし、森村には批判性が欠けていると言わざるを得ない。総じてあまり評価できないというのが感想だ。

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森村泰昌展「楽しい五重人格」

2024年4月19日(金)―6月1日(土)

11:00-18:00(日曜・月曜・祝日休廊)

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シューゴアーツ六本木

東京都港区六本木6-5-24 コンプレックス665 2階

電話03-6447-2234

 

出久根達郎『[大増補] 古本綺譚』を読む

 出久根達郎『[大増補] 古本綺譚』(平凡社ライブラリー)を読む。出久根がまだ作家ではなく古本屋の店主だった頃、経営する芳雅堂の古書目録『書宴』の埋草として書いていたものが評判を呼び、新泉社から『古本綺譚』として出版された。それを「大増補」したものが本書である。

 その後出久根は直木賞を受賞するが、なるほど出久根のエッセイは最初のものから面白い。非凡な書き手であることがよく分かる。集団就職で入った古書店で古典を読むように訓練されたとあるが、店先での勉強が実を結んで優れた文章を書いている。

 本書は短いエッセイがほとんどだが、1点だけ「狂聖・芦原将軍探索行」という小説のような作品が入っている。これが120ページもある。

 今まで出久根は3冊読んだだけだが、一体に短い作品に佳品が多く、長いものはその構成が弱くあまり評価することができない印象だ。もっとも出久根には多くの小説作品があるのだから、私が読んだ3点だけにその瑕疵があるのかもしれない。少ないデータで断定的なことを主張するのは慎まなければならない。

 

 

 

ギャラリーKINGYOの内山翔二郎展を見る

 東京千駄木のギャラリーKINGYOで内山翔二郎展「path of life」が開かれている(5月5日まで)。内山翔二郎は1984年神奈川県生まれ、2008年に日大芸術学部彫刻コースを卒業、2010年同大学大学院芸術研究科博士前期課程彫刻分野修了。2010年にギャラリイKで初個展、以来プラザギャラリーやギャラリーKINGYOなどで個展を繰り返してきた。


 内山は鉄で大きな昆虫を作っている。テーマとした昆虫を極めて正確に再現しているが写実彫刻ではない。武骨な造形でありながら昆虫の特徴はきちんと押さえている。おそらく昆虫学者が見ても違和感は持たないだろう。見事な造形だ。

 ギャラリーは東京メトロ千代田線根津駅1番出口から徒歩7分、今月一杯は根津神社つつじ祭りもやっている。千代田線千駄木駅からも徒歩7分とのこと。

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内山翔二郎展「path of life」

2024年4月23日(火)―5月5日(日)

12:00-19:00(最終日17:00まで)4/29休廊

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ギャラリーKINGYO

東京都文京区千駄木2-49-10

電話050-7573-7890

http://www.gallerykingyo.com/

 

 

 

ギャラリーSAOH & TOMOSの上田佳奈展を見る

 東京神宮前のギャラリーSAOH & TOMOSで上田佳奈展が開かれている(4月27日まで)。上田佳奈は兵庫県出身、ロンドン芸術大学でファッションデザイン、大阪芸術大学附属大阪美術専門学校で版画を学んだ。

 今回の個展では「イリュージョン」シリーズと「sky」シリーズを出品している。

 このスカイシリーズが面白い。サイアノタイプ(青写真)とシルクスクローンを組み合わせている。1枚の写真の一部をサイアノタイプで刷り、それ以外をシルクスクリーンで刷っている。

 

 イルージョンシリーズは、人物や風景といった画像を構成する要素の輪郭をぼかし、さらに抽象化したものをシルクスクリーンで印刷している。網点をかけてプリントするとぼやけた像がドットに変換され、イメージはさらに曖昧になる、と上田が解説している。

 それを鏡の表面にプリントしたりしているので、イルージョンはさらに深まっている。撮影するのが難しかったけれど。

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上田佳奈展「ロスト・コネクション」

2024年4月16日(火)―4月27日(土)

11:00-18:00(最終日17:00まで)日曜日休み

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ギャラリーSAOH & TOMOS

東京都渋谷区神宮前3-5-10

電話03-6384-5107

http://www.saohtomos.com

 

 

ギャルリー東京ユマニテbisの木村太陽展を見る

 東京京橋のギャルリー東京ユマニテbisで木村太陽展が開かれている(4月27日まで)。木村太陽は1970年神奈川県生まれ、1995年に創形美術学校研究科を卒業している。以前はギャラリー山口で個展を繰り返し、「2000年以降はドイツ、ニューヨークを拠点にヨーロッパ、アメリカなど国内外で活躍。現在は神奈川を拠点に活動をして」いると、ギャラリーのホームページにある。

 また、同じくホームページには、次のように書かれている。

今回の新作展では、立体作品4点によるインスタレーションを地下会場にて展示いたします。カメラ・オブスキュラの仕組みを用いた家型のオブジェをのぞき込む訪問者は、その先に映る景色から木村が見る世界を垣間見るのかもしれません。ユーモラスでありながら不気味さも併せ持つ木村の作品をお見逃しなく、是非ご高覧ください。


 昔見た木村太陽のビデオでも、カレーで顔を洗っているのがあった。口いっぱいに音の出るイヤホンを含んで電話をかけている映像もあった。いつも何を見せてくれるのか見当もつかなくて見逃せないユニークな作家の一人だ。

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木村太陽展「Visitors」

2024年4月22日(月)―4月27日(土)

10:30-18:30

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ギャルリー東京ユマニテbis

東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル B1F

電話03-3562-1305

https://g-tokyohumanite.com