まるかビルの「獸(第2章 / BEAUTIFUL DAYDREAM)」を見る

 東京日本橋馬喰町のまるかビルで「獸(第2章 / BEAUTIFUL DAYDREAM)」が開かれている(5月6日まで)。本展について、

まるかビルでは2024年4月27日(土)- 5月6日(月)までビル1棟を会場とした展覧会を開催。本企画は、東京の都市とサブカルチャーについて制作をするアーティストGILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAEによる7年間のプロジェクト「 獸( JYU ) 」の第3回目であり、最大規模の開催。本展ではサブタイトルを「BEAUTIFUL DAYDREAM」と題し、同じように繰り返される高校生活のなかで天使を目撃する青年やその世界を学校机を用いた大規模なインスタレーションやGCD☆GCDによる新シリーズ平面作品、太郎による短編映像作品など様々な手法を用いて再構築する。

屋上の展示(以下同じ)

まるかビルの外観


 会場のまるかビルでは2階、3階、4階、屋上を使ってインスタレーションや映像作品を展示している。参加作家は岸裕真、山本和真、ARTKING、FUJII、八木幣二郎、太郎(映像)などとなっているが、詳しい説明がないのでよく分からない。

 屋上は雨が降っていたので数cmの水深で池になっていて、水面から手の彫刻が顔?を出していた。これはときわ画廊の個展のエピソードを思い出した。1970年の7月にときわ画廊で田島廉仁が画廊にビニールを張って、45cmの深さに水を貯める個展を企画した。日曜日から水道の水を流し始めたが、月曜日にビルの管理者から地下の機械室に流れ込む恐れがあると中止させられた。まるかビルは古いビルで画廊が入っているだけだから、万一漏水しても大事にはならないだろう。

 今回は入場料が1000円(学生は500円)となっている。

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獸(第2章 / BEAUTIFUL DAYDREAM)

2024年4月27日(土)―5月6に位置(月)

12:00-19:00

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まるかビル

東京都中央区日本橋馬喰町2-2-14 まるかビル

https://www.contokyo.com/

 

 

銀座K’sギャラリーの「K’s Annex展」を見る

 東京銀座の銀座K’sギャラリーで「K’s Annex展」が開かれている(5月3日まで)。銀座K’sギャラリーのオーナー増田さんのコレクションを展示販売している。主な作品は野見山暁治、上田泰江、上野憲男の3人か、そのほか若手作家などの抽象作品が並んでいる。増田さんの眼の良さを確認できる。

上田泰江

上田泰江

上田泰江

野見山暁治

野見山暁治

野見山暁治

野見山暁治

野見山暁治

上野憲男

上野憲男


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「K’s Annex展」

2024年4月29日(月)―5月3日(金)

12:00-19:00(金曜日20:00まで)

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銀座K’sギャラリー

東京都中央区銀座1-13-4 大和銀座一ビル6F

電話03-5159-0809

http://ks-g.main.jp/

※1Fが鈴木美術画廊

 

コバヤシ画廊の前本彰子展を見る

 東京銀座のコバヤシ画廊で前本彰子展「龍姫の水ノ珠」が開かれている(5月11日まで)。前本彰子は石川県に生まれる。1980年京都精華短期大学絵画専攻科卒業、1982年Bゼミスクール修了。1983年よりコバヤシ画廊をはじめ個展多数。

「龍姫の水ノ卵」

「私の子供は私が守る」


 画廊正面壁の大きな作品「瀧姫の水ノ珠」は新作で左右130cm、天地162cmという大きなもの。厚さも30cm近くはありそうなレリーフ状の力作。

 右の壁に設置された3点組の作品は「私の子供は私が守る」と題した1998年の作品。

 そのほか、社祠と呼びたくなるような小品が展示されている。

 前本の作品では地母神信仰が連想される。大いなる母であり、大地の女神である地母神を前本は繰り返し表現しているのではないか。そして土俗的な表現も前本の変わらぬ特徴のようだ。

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前本彰子展「龍姫の水ノ珠」

2024年4月29日(月)―5月11日(土)

11:30-19:00(最終日17:00まで)日曜休廊

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コバヤシ画廊

東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1F

電話03-3561-0515

http://www.gallerykobayashi.jp/

 

 

シューゴアーツ六本木の森村泰昌展を見る

 東京六本木のシューゴアーツ六本木で森村泰昌展「楽しい五重人格」が開かれている(6月1日まで)。

 森村が今回扮しているのは、甲斐庄楠音描く花魁、ダヴィッドのナポレオン像、ミロの抽象画を森村が顔を使って再現。カフカの肖像写真は成人の姿と5歳の時の姿を再現している。


 よくできていると思う。見事な扮装だ。しかし、これは何だろう。

 村上隆がアニメや漫画を美術に取り込んで「スーパーフラット」を作り出したというなら、森村はさしずめ「コスプレアート」を作り出したといえるだろう。夏と冬に東京ビッグサイトで行われるコミケのコスプレを高機能にしたものだ。高機能コスプレアートと言ってみたい。コミケのコスプレより本格的だしお金もかかっている。

 しかし、シンディ・シャーマンの二番煎じにしか見えないし、森村には批判性が欠けていると言わざるを得ない。総じてあまり評価できないというのが感想だ。

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森村泰昌展「楽しい五重人格」

2024年4月19日(金)―6月1日(土)

11:00-18:00(日曜・月曜・祝日休廊)

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シューゴアーツ六本木

東京都港区六本木6-5-24 コンプレックス665 2階

電話03-6447-2234

 

出久根達郎『[大増補] 古本綺譚』を読む

 出久根達郎『[大増補] 古本綺譚』(平凡社ライブラリー)を読む。出久根がまだ作家ではなく古本屋の店主だった頃、経営する芳雅堂の古書目録『書宴』の埋草として書いていたものが評判を呼び、新泉社から『古本綺譚』として出版された。それを「大増補」したものが本書である。

 その後出久根は直木賞を受賞するが、なるほど出久根のエッセイは最初のものから面白い。非凡な書き手であることがよく分かる。集団就職で入った古書店で古典を読むように訓練されたとあるが、店先での勉強が実を結んで優れた文章を書いている。

 本書は短いエッセイがほとんどだが、1点だけ「狂聖・芦原将軍探索行」という小説のような作品が入っている。これが120ページもある。

 今まで出久根は3冊読んだだけだが、一体に短い作品に佳品が多く、長いものはその構成が弱くあまり評価することができない印象だ。もっとも出久根には多くの小説作品があるのだから、私が読んだ3点だけにその瑕疵があるのかもしれない。少ないデータで断定的なことを主張するのは慎まなければならない。