あやちゃんの本には(サイトにもだが)、たくさんの薬の名前が並んでいる。かくいうわたしも、薬の名前を現在飲んでいる分だけ、並べていたりする。更新を止めてだいぶ経過しているので、次にサイトを更新したら、ガラリと変わっているだろう。
頭痛の原因であるマイスリーは問答無用でゴミ箱行きが決定し、かわりにデパスを飲んでいる。1日に3つ(3ミリ)以上飲まないように、と主治医に念を押されているが、正直いって飲まないでいいならそれがいい。ラボナだけは飲まなかったというあやちゃんに、生きていたい気持ちと死にたい気持ちがせめぎあって苦しくてたまらなかったのではないか、と、ほんの少し訊いてみたくなった。
ラボナが手許にあった時期、わたしは死のうと思えばそれを3つ飲めばよかった。そんな薬を半年以上も飲んでいて、平気でサイトに「ラボナ100ミリその他」と書いていたことがある。ミスで200に吊り上げられたとき、正直に飲んで「だって院長先生に眠れないといったら、200にされたんだもん」と、患者らしくおとなしく飲めばすべてが終わりだった。だけど、外見がとてもよく似ている薬を間違えて200飲みそうになり、口の中の感触が違うのに気づいたわたしは、咄嗟にラボナを吐き出した。ああー、さんぜんえーんー……!!

死がどれほどにあっけないか、わたしは昔過ごした小児病棟の風景で知っていた。隣のベッドの子が少し前まで元気だったのに、やがて遊べなくなって、知らないあいだに居なくなっている。会うことは、それきり、なかった。退院する子は、みんな数日前から包帯を巻いていても楽しそうで、身の回りの荷物が減ってゆき、スリッパのかわりに靴が添えられた。
ウイルスが伝染するからいけないと、何日も個室に隔離されていたわたしは、回復しはじめると外界への興味や「外へ出たい」欲求を抑えられず、ウイルスが完全に消えるまでにドアの向こうに出るとどうなるのか知らなくて、少しだけドアを開けて廊下を見つめた。そのとき、わたしが叱られたか苦笑いされたかは、おぼえていない。死ぬか生きるかの瀬戸際で、からだの一部を代償にウイルスに勝ったわたしの神経は、この時期の記憶を残してはおけなかった。負担がかかりすぎて。

卒業式まで死にません》そのものを持っていくと、知っている人がつられて切ったりしそうで時期的にもヤバめなので、診察に持っていった今回の本はこれ。
この本もじゅうぶんイヤガラセになっているかもしれない、と気づいたのは、クリニックに到着してから。買った時期は1999年なので、ちょうど精神的にすさんでいた頃かと思われる。なぜか不登校リストカッター娘さんのところにしおりが挟んであり、そこしか読んだ記憶がないのが、また哀しい。
本書では成熟できない人間にふれており、4項目の成熟目安がある。1が半分あるかないか、1をまぁもう少し時間をかければ乗り越えて2に行きそうなのかな? なんて考えて、自分が未熟であることをあらためてつきつけられた。また、いくつかの凶悪事件への言及もあり、わたしは一瞬、町澤氏が医師であることをいい意味で忘れかけた。
本出すだけでそれなり食べていけるんではないか…しかし、これだけ書くのって相当の臨床経験に基づいてないと駄目なんだろうな…じゃあ、やっぱり氏は本だけの人になっちゃいけないし、患者だっているんだし。犯罪を取り扱っているせいか、犯罪心理学といえばこの人なくして何とする、な、福島章の名前が出てくる。じゃあ、リストカッターさんだったら小田晋とか香山リカ(あやちゃんの本に寄稿している)が出てくるんだろうか? と少し考えて、それはありえないので、と、名前がその場で消えていく。
後者おふたりにはコネが多少あるのでお会いできるが、香山氏はちょっと読む人の気持ちを考えていない感じがする、とだけしか言えない。小田氏には、犯罪心理学をやるのか病理心理学に専念するのか白黒つけてと言いたい。でも、そんなことを相談しにわたしはクリニックへ来たのではない(笑)
ヒルナミンとか貰えませんか?
という質問をしたかったのだが、ド忘れしてしまい、ヒルナミンの件そのものなかったことに…何より、町澤氏の本を裏返して置いたのを見つかったときに、少し主治医の表情が変わったのが気になってしまい、そこまで頭が回らない。
結局、しばらくハルシオンドラールセロクエル。耐性ついて中途覚醒すらしてきたのに(涙)。しかもハルシオンにつきものの健忘すらなくなってきて、ただただ静かに真夜中、現実と夢の境目すらわからないほどの意識で本を読んでいる自分がいる。
しまいには夢に本の内容が反映されるようになり、欠けた頭蓋骨を封印している夢をみた。こんなことは久しぶりで、そんなん寝る前に読むなよー!! と言われたリチャード・プレストン著《ホット・ゾーン》以来だ。素手で暴れる頭蓋骨を封じ込める夢を見て、愉快な人はいないだろうが、なぜかわたしはあの夢を楽しかったと思った。
医大ではホンモノさわってますから…
わたしが医大でホンモノの頭蓋骨をさわっている(耳の治療のため、立体的な把握がむずかしいときにどなたかの頭蓋骨を使わせていただいてます)ということと、町澤氏がコミケを訪れた経験があるのと、どっちに対して読んでくださっている方々は驚くのだろうか…