楽天とTBSが統合?!いま放送業界で何が起こっているか?

楽天のTBSへの提案の中に、「放送業界の現状と将来」というパラグラフがあり、その中で「インターネット利用時間の増加やCMを飛ばして録画・再生できる機器の普及が、放送局の収益に影響」という項目がある。これは一体何を意味しているか?
2004年の日本国内のテレビ広告費は約2兆円。言うまでもなくこの広告費がテレビ局の収益の大部分を占めている。一方、最近、急速に普及しているハードディスク・レコーダー(HDR)。2005年の世帯普及率は15.2%と予想されている。問題はこのHDRユーザーの過半数が80%以上のテレビコマーシャルをスキップするというのだ。このCMスキップにより、テレビ広告費約2兆円の2.6%にあたる約560億円が失われるというから驚きだ。HDRの世帯普及率は今後も順調に伸び続け、2009年には44.3%となり、そうなれば、テレビ広告費全体の約10%にあたる約1,940億円が失われるというから穏やかではない。今でこそ、TBSを初めとしたテレビ局現在のパワーは圧倒的だが、HDR問題以外にもブロードバンドの急速な普及、インターネット利用時間の増加などを考えると、インターネットとの融合を避けては通れない。増してや、相手がインターネット界の実力者である楽天となれば、敵対的買収だから心外だ、というような感情論では済まされない。
要はTBSが本当に自力で新しいメディアに生まれ変わることができるのか?それとも楽天の力を借りた方が価値を高めることができるのか?にかかっていると思うが、個人的にはTBSが自分自身を自力で改革できる可能性は極めて低いと思う。業界、企業規模を問わず、自分で築き上げてきたものを自分で壊すことほど難しいことはない。

小泉総理は優れたマーケッターだ!

小泉自民党が岡田民主党に対して圧倒的な勝利をおさめた。今回の選挙戦はPR会社の戦いという一面を持っているが、PR戦略の最終的な意思決定者はあくまでも小泉総理その人である。
優れたマーケッターは、ターゲット(誰に伝えるか?)、表現コンセプト(その商品の何を伝えるか?)、アピールポイント(その商品が持っているどのメリットを確信させるか?)、キャッチフレーズ(そのメリットを強調するキーワード)など、PR戦略を明快かつシンプルに整理することができる。
今回のターゲットは大半は事情に精通していない国民、すなわち、一般消費者である。商品は小泉自民党。表現コンセプトとアピールポイントは、①自民党は公約通り改革を進める。②郵政民営化は改革の第一歩。(郵政民営化ができなくて何ができる?)③郵政民営化=小さな政府→脱役人天国(役人の既得権を許すな!)となり、自民党=改革=郵政民営化という図式ができた。ターゲットである国民にとってのメリットは、①郵貯簡保340兆円が民間に流入する。②税収がアップする。③郵便局ネットワークは維持される。であり、メリットはあってもデメリットはないように思える。キャッチフレーズはもちろん「郵政民営化」であり「郵政解散」。
「商品」というものは、商品の提供者にとっては、「言いたいこと」が山ほどあるというのが世の常である。優秀なマーケッターはその山ほどある「言いたいこと」を幹と枝に分けて、涙をのんで大胆に削ぎ落とす。これができるかできないかが勝負の分かれ目であり、小泉総理はこれを見事にやってのけた。全てを伝えきれないリスクより、欲張りすぎて何も伝わらないというリスクの方が圧倒的に大きいのだ。一方の岡田民主党は最初から最後まで、小泉自民党を批判したいということ以外に表現コンセプトが伝わってこなかったし、挙句の果てには表現コンセプトを伝えることをあきらめ、「マニフェストに全て書いてある。マニフェストを読んでくれ!」と吼えた。これをビジネスに翻訳すると、「俺のセールストークがわからないなら、カタログを読んでくれ!」となる。そんな不親切なコミュニケーションが通ると思っているのか?こんな調子では小泉自民党を倒すどころか、国民に見放されても無理はない。
今回の選挙戦は、PR戦略も含めて、小泉自民党が圧勝した。後は約束したことをどこまで形にできるかが大切である。実行できなければ信頼を失う。そして一度失った信頼を回復するのはとても難しい。これは政治もビジネスも一緒である。と言いたいところだが、ライバルの民主党がこんな調子では小泉自民党は今後も楽勝なのではないか、どんな業界でも競合がひしめくビジネスの方がよっぽどシビアだ、と思うのは私だけだろうか。前原氏率いる新民主党に奮起を促したい。

楽天が米リンクシェアを460億円で買収

リンクシェアはアフィリエイト広告の大手。アフィリエイト広告とは、ホームページやブログに商品の広告を掲載し、そこからECサイトに顧客を誘導する。ECサイトは商品が売れたり、問い合わせがあったり、一定の成果を得られた場合に限り、ホームページやブログのオーナーに広告費を支払うというモデルだ。最近は、主婦やサラリーマンの小遣い稼ぎとして注目を浴びている。なかには1ヶ月に数千万円を稼ぎ出すスーパーアフィリエイターもいるそうだ。
かつては、大手ポータルサイトアフィリエイト広告を買収するというのは考えにくかった。しかし、ポータルが入り口として幅広く集客し、アフィリエイトが最終目的地として莫大な商品情報を網羅するというのは戦略的に意味を成す。実際に2005年2月にはヤフー・ジャパンが同じくアフィリエイト大手のバリューコマースに出資している(出資金額110億円)。
リンクシェア・ジャパンは米リンクシェアと三井物産合弁会社であった(50:50)。楽天三井物産が共同戦線をはるのか、決別するのか、現時点ではわからない。楽天の既存のサービスである、楽天アフィリエイトとどのように融合するのかも見えてこない。あくまでもリンクシェアを米国市場開拓の武器として活用することも考えられなくはない。投資金額から考えるとそんな中途半端なことはしないとも思えるが。
また、ヤフー、楽天をライバル視する、選挙に忙しいライブドアはどうでるか?日本には他にも、独立系のA8、楽天50%出資のトラフィックゲートなどのアフィリエイトプロバイダーが存在する。追随するか、独自路線を歩むか、今後の動向が注目される。

産学連携ブーム到来!知的財産は誰のものか?

日本における大学と企業の共同研究は経済産業省の旗振りもあって、2004年には10,000件に到達する勢いだった。しかし、最近、千葉大学京都大学など日本の大学が相次いで知的財産を巡って企業ともめているという気になる記事が日経新聞朝刊に出ていた。
大学は「企業は大学の力をもっと正当に評価すべきだ」と主張し、企業は「大学はもっと役に立つ研究をすべきだ」とやり返す。そしていざ何かが形になると、企業は「大学と共同研究を進める前から既に完成していた」というケースも多いそうだが、実際に大学がどこまで貢献したかというのを計るのは難しいだろう。
長年にわたって、企業は研究コストを圧縮するために、大学を一種の下請機関として使ってきた嫌いがある。見方を変えれば、マーケットから離れた基礎研究はビジネス的な評価を受けにくかったということかもしれないし、大学経営も余裕があったのかもしれない。
しかし企業と大学を取り巻く環境は変化した。企業は大学が保有する最先端技術をいち早く取り込んで事業化し、新しい市場を取り込んでいかないと継続的に成長することが難しくなった。一方、大学も少子化による全入時代を控え、特許などで研究力を誇示して、大学間の熾烈な競争を勝ち抜いていかなければならない。
最近は、産学連携において20年も先を行っている米国の企業が、米国の有力大学より取り組みやすい日本の大学にアプローチするケースが増えているのだそうだ。先日、マイクロソフトが日本の6大学(東京大学東京工業大学大阪大学京都大学早稲田大学慶應義塾大学)と研究機関を設立するという報道もあった。
知的財産は成果が出る前提で共同研究を始める前に議論されるべきだ。知的財産は成果が出てから考えよう、なんて悠長なことを言っていると、日本の有力大学の貴重な研究開発能力が海外に流出し、ひいては日本の競争力の低下を招きかねない。大学は企業にとって下請けではない。大切なパートナーであるはずだ。

ブルー・オーシャン(未開拓の市場)の創造

業界標準を打破するための4つの問い
1.業界常識である製品やサービスの要素のうち、取り除くべきものは何か
2.業界標準と比べて減らすべき要素は何か
3.業界標準と比べて増やすべき要素は何か
4.業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か
優れたブルー・オーシャン戦略
1.メリハリ(全ての競争要因に対応する必要はない)
2.高い独自性
3.訴求力のあるキャッチフレーズ
ブルー・オーシャン戦略策定の原則
1.市場の境界を引き直す
2.大局的見地で戦略策定プロセスを組み立てる
3.顧客以外の層に目を向けて、市場を最大化
4.十分な利益を得られるように確かなビジネスモデルを構築

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どうやって市場の境界を引き直すか?例えば、機能志向と感性志向の切り替え。感性志向のものから機能向上に要素を削れば、低コスト、低価格のビジネスモデルが実現する。逆に機能志向のものに感性に訴えかける要素を添えれば、新しい需要を呼び起こせる。身の回りにこういったものはないか?
参考

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ベンチャー企業

要点:米国では、品質、価格、サービスが大切。サプライヤーベンチャーか大企業かはあまり問題ではない。日本では、企業の購買担当者のリスク回避、貧しい選別眼、既得権益の重視という姿勢が目立つ。日本と米国、英国、ドイツ、韓国を比較すると、大学進学率は日本5%、他国36〜50%、起業家に占める大学院卒業者の割合は日本3%、他国22〜41%と差が大きい。日本の大学院卒業者の多くは大企業のサラリーマンとして終わる。起業家の親が企業経営者である確率は日本40%、他国22〜34%と日本の同族企業の多さを物語る。また起業家の経験職種は営業・マーケティングが日本50%、米国26%、英国23%、経営管理が日本7%、米国44%、英国30%となっている。
参考

ベンチャー企業 (日経文庫―経営学入門シリーズ)

ベンチャー企業 (日経文庫―経営学入門シリーズ)

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