ロベール・ドアノー

図書館で写真集を借りてきた。

ドアノー写真集 パリ遊歩―1932-1982

ドアノー写真集 パリ遊歩―1932-1982

ロベール・ドアノーという写真家を私は知らなかったのだけれど(そもそも写真家なんてアラーキーくらいしか知らない)、とても良かったのでここに記す。知らないと思っていたけれど、「パリ市庁舎前のキス」は恵比寿の写真美術館の外壁にでかでかと掲げてあるのをみたことがあり、気に入って写真を撮っていたのを思い出した。おそらく去年の冬ごろ。

写真は時折サガンジャコメッティなどの有名人を写したものが混ざるが、ほとんどがパリの街中や市井の人々のスナップであり、戦中・戦後のパリの空気が垣間見れておもしろい。前述の「パリ市庁舎前のキス」は演出であるらしいのだけれど、瞬間を切り取ったような自然体な写真が多い。
気に入ったので手元に置いておこうかと思ったが、既に絶版らしく中古で7000円以上するようなので断念。またみたくなったら借りよう。

5月の読書

先月読んだ本たち。集中力が落ちていたので薄い本中心に選んで読んだ。

柴田元幸編・訳のアンソロジースチュアート・ダイベック『ペーパーランタン』が好みだった。

3年前に同じ著者の『オブ・ザ・ベースボール』を読んで訳わからなかったのだけれど、めげずに手に取ってみた。相変わらず訳わからなかったけど、難解さの中にふと心引かれる部分が随所にあったのでどちらも数年後に読み返してみたい。

上記の円城氏つながりで手に取る。久しぶりにこういった文体に触れたので少し戸惑う。小説内で描かれている感覚は非常によくわかるのだけれど、やっぱり私はSFが少し苦手なのかもしれない。P・K・ディック賞の特別賞を受賞したことを読み終わったあとに知る。

何とも捉えがたい、不思議な感覚が残った。若くしてこんな文章を書く人がいるのだな。すごい。

図書館でその場で読む。『眠り』の改訂版(豪華な挿絵付き)らしいのだが、改訂前の短編は昔に読んだきりなのでほとんど覚えておらず。記憶にあるのはラストのみで、あの終わり方は好きだったのを思い出す。

短い物が読みたかったので借りた、超短編集。こんな簡潔な文章のなかにも伝わってくるものはあるのだからヘミングウェイの偉大さよ。一章一章が短いのもあって繰り返し読みたくなる。

ナボコフだったからなのか、解説にあった仕掛けがあまりわからず。しかし小説としては十分面白かった。これも数年後に再読したい。

アメリカでベストセラーになった自伝的小説らしいのだけれど、これが自伝だとしたらアメリカはとんでもないところだなと思う(今更って気もするが)。精神科医一家の凄まじさときたら。青春小説。簡単に読めて面白かった。


以上。

一見グロいグレープフルーツのような物

少し前のことになるのだけれど、HMVからToro y Moiのマグネットが届いた。かわいいが不思議な形。どうやらキャンペーンの抽選に当たったらしい。とりあえず冷蔵庫に貼った。購入してから3ヶ月ほどが既に経っているのだけれど今更軽くアルバムUnderneath The Pineの感想を。

先行曲のStill Soundが良すぎて、また間に震災が起きて音楽に対する情熱をしばし失い、初めてアルバム通しで聴いたときはあまりピンとこなかったのだけれど何度か聴いていたら、ある時とても心地良く感じられてそれからはずっと好きでリピート。
特に3-5曲目(Go With You - Divina - Before I'm Done)の流れは、まどろむ、という言葉が相応しい気がする美しく浮遊感のあるメロディの応酬で、とても甘く切なくてファンキーで寝る前にベッドの中で聴いていると泣きそうになることも。9-10曲目(Still Sound - Good Hold)の流れも同様。これから夏になるにしたがってさらに良い感じになる予感がする。

Toro Y Moi - Still Sound

Toro y Moi - Before I'm Done

Underneath the Pine

Underneath the Pine

気温差がつらい

ナイーヴすぎるだろ、これ。唾のとことかぞわっとしてもーた。
James Blake - Lindisfarne

Oneohtrix Point Never - Laser to Laser

ASTW Presents | Sounds of the South @ MusicNOW ft. Megafaun, Fight The Big Bull, Justin Vernon & Sharon Van Etten

13.8

昨晩ふと窓の外を見たら、目の前にまん丸い月が浮かんでいた。新聞でチェックしたところ月齢13.8らしい。
月光に透ける雲が美しかったので撮影してみた。三脚と望遠レンズがあればなお良かったのに。台で角度をつけて固定させる。
天体写真は難しい。

It was perfect...

ナタリー・ポートマン主演、ダーレン・アロノフスキー監督の『ブラック・スワン』を公開初日に観てきた。思ったよりもホラー要素、痛いシーン満載で、鑑賞中何度かビクッとしてしまった。

劇中の「君の道を塞ぐのは君自身である」という台詞にこの映画の大半が集約しているのではないかと思った。
冒頭のナタリー演じるアンの夢のシーンから大音量で白鳥の湖が鳴り響いて、その時点で心つかまれた。予告編等観る限りでは、健全なダンサーが精神的崩壊していく話かと思いこんでいたため、不安定な状態から始まったのでちょっと面食らったり。鳥足への変態シーンなどはちょっとやりすぎでどうなのかとか思ったけれども、緊張感続く圧倒的な映画だった。

なんといっても終盤の公演シーンが素晴らしかった。白鳥から黒鳥に変わってからのダンスシーンは本当にゾクゾクした。あのメイクと赤い目は恐ろしい。舞台袖に引いてからの白鳥と黒鳥の対比もすごかったなぁ。一番好きなシーンは、黒鳥から白鳥に変わるときの楽屋のシーン。あのときの泣きながら化粧をする、すべてから解放され、またすべてを受け入れたようなナタリーの表情は素晴らしく美しかった。最終幕での、クライマックスへの高揚は久しぶりの感覚で、大音量で鳴る音楽、観客の盛り上がり、"perfect"というナタリーの台詞と表情、歓声と拍手が鳴り響く中でのホワイトアウトは、エンドロールが流れるあいだ圧倒的カタルシスに浸るしかなかった。

映画はアンの視点で描かれているのでミラ・クニス演じるリリーはとても不気味な存在なのだけれど、アンの幻覚部分を除けば非常にいい人だなぁと。他のダンサーがアンに対して皮肉ったのを制止している場面があったし、妬むことなく素直に賞賛の言葉をアンに送っているし、とてもサバサバしている。アンのお母さんも実際はあんなに怖くはないはずだ、と思いたい。リリー自体も妄想の産物だという説を見かけてなるほどと思った。
ウィノナ・ライダーがエンドロールでDying Swanとクレジットされていたように斜陽ダンサーを演じていたのが、実際の彼女と重ねてしまって少し切なくなった。

観賞後打ちのめされた勢いのままタワレコに寄り、Clint Mansellによるサウンドトラックを購入した。

BLACK SWAN

BLACK SWAN