中南米の最新情報

NPOチャレンジブラジルが、ブラジルを中心に中南米のニュースをお届けします。

リオグランデ・ド・スル州(ブラジル)の暴風雨での死者55人に増加

 リオグランデ・ド・スル州の暴風雨被害は5日までに死者55人に達し、2023年の人的被害(54人が死亡)を超えました。ブラジルのメディアによると、民間防衛局は他に7人の死亡者の可能性を指摘し、さらに74人が行方不明になっているとしています。

 昨年、リオグランデ・ド・スル州は、6 月、9 月、11 月と3回も暴風雨に見舞われ、合計75 人が死亡しました。今回の嵐は4回目で、前3回を上回る人的被害が出ています。

 同州のレイテ知事は「州最大の気候災害だ」と述べ、被災者は82,500人に上っています。被災者の13,300人は避難所に避難、69,200人は家を無くし、家族や友人の家に身を寄せています。

ブラジル大統領、岸田首相にブラジル産肉は安くてうまいと強調

 ルーラ大統領は3日、ブラジルを公式訪問中の岸田文雄首相とブラジリアの大統領府で会談、大統領はブラジル産肉の輸入を開始できるよう要請しました。大統領は「ブラジルと日本の間の貿易額は年間約180億米ドルから110億米ドルに減少しており、この数字は両国の潜在力を下回っている」と強調、「ブラジルの肉は品質が良く、しかも日本が現在購入しているものよりも安い」と指摘しました。

 大統領府によると、日本は現在、牛肉の70%を輸入し、その80%を米国とオーストラリアから輸入しています。ブラジル政府は日本の牛肉市場への参入が大きな関心事です。ブラジルは牛肉のみならず、日本への豚肉輸出も拡大したいとの考えもあります。大統領府は、豚肉の輸出は現在サンタカタリーナ州のみに認可されているとしています。

 ルーラ大統領は同席したアルキミン副大統領に「昨日の夕食に何を食べたのか知りませんが、もしあなたがサンパウロにいるのなら、岸田首相をサンパウロ最高のレストランのバーベキューに連れて行ってください。そうすれば翌週には、ブラジル産肉の輸入が開始されることでしょう」と冗談を言ったと言います。

 また、カルロス・ファバロ農業大臣にも、「もし岸田首相が食べたら日本に帰りたくなくなるほどのバーベキューを準備してください」とも付け加えたそうです。このほか会談で大統領は、エネルギー転換と持続可能な生産への投資を勧め、「南米は、投資、エネルギー転換についての議論、そして私たちが生産したいクリーンエネルギーの生産にとって、黄金の場所であると自負しています」とも述べました。

 大統領によると、会談の冒頭岸田首相は、30人以上が死亡したリオグランデ・ド・スル州の暴風雨について、州民の人たちと連帯するという言葉を述べ、哀悼の意を表明しました。

コロンビア大統領がイスラエルとの国交断絶を発表

 コロンビアの国交断絶はブラジルのメディアが報じたもので、ペトロ大統領が1日、反イスラエルのデモの中で、「イスラエルは大量虐殺政府だ。私たちの目の前で民族大虐殺の時代が起きるとは信じられない。パレスチナが死ねば人類は死ぬ。私たちはパレスチナを死なせるつもりはない」と演説したと記しています。

 このペトロ大統領の発表にイスラエルのカッツ外相は「グスタボ・ペトロは反ユダヤ主義者」と呼び、「歴史は、人類に知られている最も卑劣な怪物と同盟を結ぶことを決意したことを記憶するだろう。イスラエルとコロンビアの関係は常に温かいものであり、憎しみに満ちた反ユダヤ主義の大統領でも、この関係を変えることはできない」と反論しています。

 2023年10月7日以来、イスラエルではハマスの攻撃により約1,200人が死亡し、ハマスが支配するガザ政府では、3万4000人以上のパレスチナ人が死亡しました。これまでペトロ大統領は、ネタニヤフ首相のガザ地区での行動を批判していました。コロンビアは、戦争開始後にイスラエルと断交したボリビアベリーズに次ぐ中南米で3番目の国になります。チリやニカラグアなども反イスラエル色を強めていますが、国交断絶にまでは至っていません。
  
 コロンビアとイスラエルは2020年に自由貿易協定に署名していますが、コロンビアは2月からイスラエルからの武器購入を停止しています。コロンビアは麻薬カルテルや反政府勢力と戦うためにイスラエル製の戦闘機や機関銃を使用しています。

コロンビアの軍事基地から「100万個以上」の武器と弾薬が消失

 ブラジルのメディアによると、コロンビアのペトロ大統領が30日、2つの軍事基地から「100万個以上」の武器と弾薬が消失したと発表、それら軍事物資はハイチに運ばれた可能性があると指摘しました。大統領は、武器と弾薬消失にはコロンビアの不法グループと外国人の密売ネットワークが関与していると推測しています。

 大統領は、「密売ネットワークは大規模な武器取引に特化した軍人や民間人で構成されている」と述べ、半世紀にわたる武力紛争を経験しているコロンビア(60年間で誘拐、行方不明、避難、殺害など950万人の犠牲者)では、治安部隊が頻繁な汚職スキャンダルや麻薬密売人やゲリラとの共謀に関与してきたと説明します。そして軍事基地から「弾薬、爆発物、手榴弾、ミサイルなどの武器を含む100万個以上の弾薬が失われた」と語りました。

 大統領が、武器はハイチに運ばれたと推測する理由は、ハイチでは紛争が続いており、スピードボートで7時間という短い距離にあると強調します。アメリカ大陸で最も貧しいと考えられているハイチは、モイーズ大統領が私邸で射殺されて以降、深刻な社会混乱状態にあり、国の大部分と首都ポルトープランスを支配するギャング団による暴力沙汰が頻発しています。

 コロンビアのベラスケス国防大臣は「我々は武器消失の調査を完了次第、取るべきすべての手段をとるつもりだ」と述べ、事件に関与した人物を糾弾すると強調しました。

ブラジルの選挙裁判所がルーラ大統領陣営に罰金25万レアル

 ブラジルのメディア29日付によると、ブラジルの高等選挙裁判所は全会一致で、2022年の選挙でインターネット上でネガティブな選挙プロパガンダを推進したとして、ルーラ大統領とその陣営に25万レアルの罰金を科しました。

 同裁判では、ルーラ氏の陣営が行ったボルソナロ前大統領に対しインターネット上で行ったネガティブなキャンペーンを審議、「反対者に対する否定的なコンテンツの宣伝を禁止」する条項に反するとして罰金を科したものです。

 裁判所は、候補者とその団体の宣伝や利益を目的としてのみ、ネットでの選挙プロパガンダ戦略を認めています。ボルソナロ陣営は、ボルソナロ氏を無能で嘘つきで非人道的だと批判するする動画に疑問を呈し、訴訟を起こしていました。

世界の大学トップ100にラ米から3大学ランクイン

 2024年度「世界の大学トップ100」にラテンアメリカから3大学が入りました。ブラジルのメディアが27日報じたもので、作成したのは分析会社のクアクアレリ・シモンズです。このランキングは世界で最も権威のあるものの 1 つで、1,700万件以上の学術論文と24万人以上の教師や専門家の意見を分析し作成されています。

 世界のトップ3はマサチューセッツ工科大学(米国)、ケンブリッジ大学(イギリス)、オックスフォード大学(イギリス)の3校で、トップ10には米国の大学が4校、イギリスの大学が4校、スイスが1校、シンガポールが1校ランク入りしています。

 ラテンアメリカからランクインしたのはサンパウロ大学 (85位)、メキシコ国立自治大学(93位)、ブエノスアイレス大学(95位)の3大学です。

 サンパウロ大学は65,700人以上の学生が学ぶブラジル最大で最も権威のある大学で、企業グループや国家予算の一部に加え、主にサンパウロ州から資金提供を受けている無料の公立大学です。同大学では公立学校の生徒のために定員の半分を確保するクオータ制が10年以上続いており、ブラジル教育制度の変化における画期的な出来事とされています。

 メキシコ国立自治大学は近年ランクを上げている大学で、多くの外国人が学ぶ世界最大の大学です。卒業生に3人のノーベル賞受賞者がいます。

 ブエノスアイレス大学 は、昨年の67位から95位に落ちましたが、ラテンアメリカで最高の大学の1つであることに変わりありません。5人のノーベル賞受賞者を排出している無料の公立大学で、117,000人以上の学生のうち29,500人が外国人学生で占められています。

ブラジルでジャガー捕獲に子ヤギを使い動物虐待と批判

 ゴイアス州ジャガー捕獲に餌として子ヤギを使用し批判されています。ブラジルのメディアによると、この捕獲方法を認可したブラジル環境・再生可能天然資源研究所(Ibama)にも批判の矛先が向けられています。

 同州ゴイアニアにある高級マンション界隈にはジャガー出没するとの疑いで危険警報が出ていました。このためマンションの住民たちがIbamaに捕獲要請を出し、Ibamaは19日、生きた動物を使った罠の使用を許可しました。住民は生きた子ヤギを捕獲器の中に入れ、午後から翌日まで子ヤギには水も食事も与えず、子ヤギは捕獲器の中で横たわることも出来ず、ず、一晩中動くことも出来なかったと言います。

 Ibamaはジャガーをおびき寄せるために封じ込めループを設置したり、新鮮な肉(イワシや鶏肉など)を使用し、他の方法を何カ月間も試したが、成功しなかったと述べ、「生きた動物を使う捕獲方法は科学的に裏付けられており、今回のような特殊な場合には許される」と説明しています。

 この捕獲方法を目撃した住民は「マンションの人たちは生きたヤギを狭い部屋に入れ、ヤギは微動だにせず立ったまま、これでは虐待だ」と何事にも限界があると憤慨します。動物虐待との批判が上がり、一部の住民は、この事件を捜査するために団結して警察に被害届を提出するとも話しています。

 この高級マンションにはカントリー歌手のレオナルド、息子のゼ フェリペ、インフルエンサーヴィルジニアなど、ゴイアス州出身の有名人が住んでいます。そして同マンションの売り物の一つは、多くの野生動物が生息する広大な緑地としています。

アルゼンチンで大規模な反政府デモ

 アルゼンチンでハビエル・ミレイ氏が大統領になって初めて大規模なデモが行なわれました。デモは23日、公立大学の予算削減に反対して行なわれたもので、学生を中心に労働組合の代表者ら15万人が参加しました。デモ隊は大統領官邸に向け行進、50万人の市民が集まりましたが、大きな混乱は起きませんでした。

 ブラジルのメディアによると、ミレイ政権が推進する公立大学の予算削減に抗議して行なわれたデモ行進では、「アルゼンチンの公立大学を守る」「公立大学を守れ」「勉強は権利だ」「ミレイの計画を無視して予算を増額せよ」などと書かれた横断幕が掲げられていました。抗議活動にはセルジオ・マッサ元経済大臣、ブエノスアイレス州のアクセル・キシロフ知事も参加しました。

 1980年のノーベル平和賞受賞者アドルフォ・ペレス・エスキベル氏は「教育とは自由な男女を生み出すことだ」と述べ、デモを擁護しました。名門ブエノスアイレス大学で学んだ82歳の建築家、ペドロ・パーム氏も「私は公立大学を守る」と語り、「予算が削減されると閉鎖せざるを得ないかもしれない」と警告しています。無料の学部教育を提供するブエノスアイレス大学など公立大学は、運営のために政府の資金に依存しています。

 ミレイ大統領は経済危機を乗り切ろうと公共部門の予算削減を実行しており、大統領は22日の国営テレビで「3か月連続の財政黒字を記録した」と予算削減の効果を強調しました。しかし、各分野で行政との緊張が高まっています。公立大学についてマヌエル・アドルニ大統領報道官は記者会見で「教育はわれわれのイデオロギーの基本的な柱の一つだ。大学を閉鎖する気はない」と政府の立場を説明しました。

ベネズエラ野党連合は大統領候補に外交官を決定

 ベネズエラ野党連合の統一民主綱領は、マドゥロ大統領反対派、エドムンド・ゴンサレス氏を大統領選挙候補者に「全会一致」で承認しました。ブラジルのメディアが20日に報じたもので、ゴンサレス氏は10月の野党予備選で勝利したにもかかわらず登録を阻止されたマリア・コリーナ氏の後任として指名されました。

 統一民主綱領事務局では「ゴンサレスは全国選挙評議会に登録されており、勝利の選挙戦となるだろう」と宣言しています。マリア・コリーナ氏がゴンサレス氏の立候補に同意するかとの記者団の質問に同事務局は「マリア氏は討論会に参加しており、適切と判断したタイミングで声明を発表するだろう」と答えました。

 マリア氏の所属政党であるヴェンテ・ベネズエラも、この決定を祝うメッセージをソーシャルメディアに投稿し、マリア氏もソーシャルネットワークに「ベネズエラ人の皆さん、私たちは前進します」と投稿しています。

 野党候補として指名されたゴンサレス氏は74歳で、1991年から1993年までアルジェリア大使を務め、ウゴ・チャベス政権初期にはアルゼンチン大使を務めた外交官です。彼は数冊の本を出版し、2013年から2015年まで野党の一員として民主統一円卓会議の国際代表を務めていました。

コロンビア・ブラジル首脳会談でベネズエラの国民投票実施で合意

 ブラジルのメディアによると、コロンビア訪問中のルーラ・ブラジル大統領は17日、首脳会談後の共同声明で「ベネズエラの大統領選挙前に国民投票を開催するというコロンビアのペトロ大統領の提案に同意」しました。ベネズエラの大統領選挙問題では両国首脳会談で重要議題として話し合われ、両首脳が一致したものです。

 先週、ペトロ大統領はベネズエラの首都カラカスを訪問し、「国民投票の結果は政府か野党かを問わず、選挙に勝った者が敗北した反対派を迫害しないことを保証する」ことを、再選候補のニコラス・マドゥロ大統領と野党候補のマヌエル・ロサレス氏に提示していました。

 共同声明では「ブラジルとコロンビアが、政府と反政府勢力に対し、世論調査で支持できる民主的保障について合意に達する可能性を検討するよう促した」としています。ペトロ大統領は記者会見で、この提案をルーラ大統領に提示したが、ルーラ大統領はこの件についてはコメントしなかったそうです。

 ブラジル外務省は「期待と懸念」を持ってベネズエラの選挙経過を見守っているとのメモを発表し、マドゥロ政権はクリーンな選挙を約束したバルバドス合意に「適合しない」行動をしていると説明しています。一方、ペトロ大統領も野党候補の立候補資格を剥奪するといったベネズエラ政府の行動を批判しています。

 また共同声明では、「ベネズエラ国民の苦しみを増大させるだけのいかなる制裁も拒否する」と指摘し、17日、対ベネズエラ制裁の復活を発表した米国を牽制しています。ブラジルの意見は、国連安全保障理事会 で承認された制裁のみが有効というものです。