晩秋の雑念
▼神楽坂・eitoeikoへ岡本光博個展「UFO」へ。
▼岡本光博氏は「コピーの時代展」(2004)で見た永谷園のお茶漬けのパッケージのデザインを引用(コピー)した作品で名前を知った(当日記にも書いた)のですが、その後は沖縄米軍問題を扱った「落米の恐れあり」やルイ・ヴィトンを使った「バッタもん」など、どちらかというと「表現の自由」方面で名前を目にするようになりました。
▼今回の展示の目玉は、巨大な日清焼そば「UFO」のパッケージが(鏡文字にはなっていますが)回転するというものです。そこまで広くはない会場のほとんどを占める巨大UFO。おおデカい!そして回転している!
…とはいえいつまでも見ていられるものではないですね。他にも日清食品からの抗議を引用した作品を含め、UFO関連の展示はいくつかありますが、10分ほどで辞去しました。
正直出オチ感はありましたが、面白かったです。
▼その後は石神井公園ふるさと文化館へ「鳥瞰図展」へ。
▼大正・昭和の日本各地の観光絵図として作成された鳥瞰図を展示したものです。「大正広重」吉田初三郎を中心に、そのライバルであった金子常光など初三郎以外の展示も多数。個人的には東京の各私鉄の沿線案内図が好みでした。
▼ただ、この手の展示の常として、絵の情報量が半端なく、一つ一つ見ようとすると非常に時間がかかる。全部(そこまで大きな展示ではないのですが)見ようとすると時間がかかるうえに絵図自体はコンパクトなので非常に疲れてしまう。図録も買いましたが、ひとつひとつの字は判別できない。よい展示だったのですが、楽しみきれなかった悔いが残ります。
咳気の雑念
▼池上、所沢と続けて立川談春の落語を聴く。
▼池上での演目は「禁酒番屋」「除夜の雪」、所沢での演目は「禁酒番屋」「鼠穴」。「禁酒番屋」を続けて聴くことになったが、特に、酒屋の番頭の扱いが変わっていたように思えた。意識的に変えたのか、流れの上で変わったのかわからない。
▼「除夜の雪」「鼠穴」とも初めて聴く演目で、非常に楽しめた。「鼠穴」、最後の「夢は土蔵の疲れだ」というサゲは常識のように思っていたのに、そこに至るまでの流れをすっかり失念していた。そのせいか竹次郎の行く末に必要以上に手に汗握ることに。
▼「禁酒番屋」のマクラで談春、柳亭市馬、柳家花緑、柳家三三のいずれも下戸(だった)というのが面白かった。今の落語ブームの(比較的)ストイックな部分を背負う(?)人たちが揃って下戸というのが面白い。それでいて酒に酔った時の演技はみんなうまいよなあ。
▼「下戸の芸能史」っいうのがあるのだろうか。古今亭志ん生、桂春団治といった泥酔者とは別の流れ。たしか明石家さんま、関根勤も下戸だったはず。
▼しかし聴いたことがない演目だと嬉しくて、何度か聴いた演目だとちょっと残念、というのはよくないなあ、とは思う。同じ話でも何度でも笑えるのが落語、というお題目になっているのだから。でも実際はそんなことなくて「また紺屋高尾か」と思ってしまうし、聴いたことがない演目、珍しい噺だとつい嬉しくなってしまうのが現実。
▼これが「いろいろな演目をできるだけ聴く」という方向になると何だかスタンプラリーのようになってしまう(「小言幸兵衛」まだ聴いたことないので、ネタ出ししてるから聴きにいくか)。それはちょっと違う気がするのだが、ある意味それも楽しいなあ、とかそういう蒐集欲が今の(沈静化しつつある)ブームを支えているのかもな、とかいろいろ考えたりもする。
▼いっそ、今までに見た演目の一覧(聴いた落語家を含めて)を公開できるサイトがあったら面白いかもしれないなあ、とも思う。粋な人は野暮だと言うのだろうなぁ。