出ました。

トイレで、大輔やっとう○ちが。ああ、本当に、何と長い道程だったことか。

おしっこは自分でズボンを脱ぎ、パンツを脱ぎ、補助便座をセットして用を足し、後始末をしてパンツを穿き、ズボンを穿いて、「ママ〜大ちゃん一人で出来た〜〜。」と報告しに来る完璧さなのに、う○こはパンツの中で済ませていた大輔。

タイミングを見計らって座らせたり、カレンダーをトイレの壁に貼って「出来たらここにシール貼ろうね。」作戦を取ってみたり、トイレトレーニング用の幼児ビデオやら、絵本やらを見せてみたり、考え付く限りの方法を試してみたのだが、全部ダメ。挙句の果てにはトイレに入るのを嫌がる有様。

思い余って3歳児検診で相談すると「成長の段階は、一人一人違うのだから、無理強いせず、気長に根気良く付き合ってください。」
それもそうかと、気長に見守ってきたのだが、入園式までもう1ヶ月を切り、さすがに焦ってきた。何しろ我が家から、幼稚園も小学校も中学校もみんあ歩いて5分の距離にある。幼稚園の同級生は、小学校も中学校も下手をすれば高校まで一緒の可能性が高い。

もし、このままトイレでう○こができず、教室でパンツにう○こすることにでもなった日には、一生う○こたれの汚名を背負って生きていくことになるのではないか。勉強が出来ても、スポーツ万能でも、(突然変異でも起こって)イケメンになったとしても、「でもさ、あいつ幼稚園の時、教室でう○こもらしたんだぜ。」と言われて笑われたら、親としてこんな辛いことはない。

なだめたり、すかしたり、怒ったり、「幼稚園でパンツにう○こなんかしたら、誰も遊んでくれなくなるよ。」と脅してみたり<駄目な対応、最近では、う○こたれ、う○こたれとはやしたてる悪餓鬼どもに囲まれて、わんわん泣いてる大輔の姿を夢に見るほど切羽詰っていたその矢先。

出ました。
それはもう、あっけなく、すんなりと。
・・・・(感涙)。

速攻で実家と、義母と、夫の携帯に(メール)連絡したことは言うまでもない。
良かった。本当に、良かった。本当に本当に、良かった。

これでもう、あの悪餓鬼どもが夢にでることもないとほっとする一方で、時期が来れば、子供は自然にの成長するもの、それを信じて辛抱強く見守るのが親の務めなのだなと、しみじみ思う私だった。

ライフ イズ ミュージカル。

大輔は歌いながら踊るのが大好きだ。


両手を上げ、お尻を振りながら大好きなミッキーマウスのテーマや、YAMAHA音楽教室で習っている歌を大声で歌う。微妙なひねりを加えつつ、丸々としたお尻をふる様は、さながらブリキのアンティーク人形(50年代頃のアメリカ製か)。本人は真剣そのもの、とにかく一生懸命なのだが、ぷりぷりしたお尻の感じといい、あっているようであっていない、微妙にずれて味のあるダンスといい、見ていると、つい笑ってしまう。


そんな大輔だが、最近になって、自分で作詞作曲して歌うようになった。


もちろん、ちゃんとしたメロディにはなってないし、思いついたことや、目にしたことを、そのままお経のように節をつけて喋っているだけなのだから、歌というよりむしろ詩吟に近いのだが、本人はすこぶるご満悦。朝目覚めて、夜眠るまで、思いつくまま歌い続けている。御飯が美味しい歌、シロが可愛い歌、お風呂に入りたくない歌、歌、歌、歌。全部振り付き。最近の大輔の日常は、さながらミュージカルである。


大輔を連れて近所のデパートで買い物をしていた時のこと。


かなり安くなった冬物の子供服を物色していて、つい時間がかかり、大輔が退屈して駄々をこね出した。適当に相手をしてなだめつつ、めぼしい服を漁っていたのだが、ふと気が付くと、なにやら妙な歌が聞こえてきた。


ママはお買い物〜ママはお買い物〜ずっとお買い物〜でも大ちゃんは〜もう帰りたい〜♪
パパは41歳〜大ちゃんは3歳〜ママは25歳〜でもそれは〜嘘〜♪ほんとは37歳〜ってパパが言った〜♪


手にしていた服を放り出し、謎の歌を歌い続ける大輔を小脇に抱えて、脱兎の如く逃げかえったのは言うまでもない。

フォーエバー、婆様。

思えば私の大事な予定がある時に限って体調を崩し、予定変更を余儀なくさせるのが得意技だった婆様。


友達の結婚式の時も、友達の父君の葬式の時も、久しぶりに夫と二人きりで出かける筈だったクリスマスも、本当に久しぶりに会う友達との約束も、婆様の年寄り離れした好み(<焼き肉が大好き)と食い意地のせいでおこした腹痛の為に、泣く泣く諦める羽目になったものだった。


泣く泣く諦める羽目にはなったものの、腹痛をおこすほど肉が食べられるのだから、婆様はまだまだ元気で長生きできると、心のどこかで思っていたのも事実だった。


ボケたフリして家族をからかっては喜んでいた婆様。6歳の曾孫と本気で喧嘩して、すぐに仲直りしていた婆様。お洒落で、編物が得意で、ブラックジョークの達人だった婆様。


婆様。


秋に脳梗塞で倒れ、自発呼吸も出来なくなって、言葉も話せなくなって、それでも気に入らない看護士さんには、そっぽを向いて抗議する気力のあった婆様。流動食しか食べれなくても、艶々した顔色とふっくらした体型を保ち続けていた婆様。見舞いに行くとにっこり笑って手を伸ばしてくれた婆様。
昔の婆様には戻れなくても、まだまだ元気で、新しい年を迎えられると信じていたのに。大好きな焼肉は食べられなくても、大好きだった爺様の昔話は出来ると思っていたのに。


婆様。


こんなに突然、逝ってしまうなんて、それもクリスマスイブの日に、逝ってしまうなんて、ブラックジョークにも程がありますよ。


それとも人一倍賑やかなことの好きだった婆様のことだから、どうせ旅立つものならば、世界中が浮かれるこの日を選んで天に召されたのですか。それとも大好きな爺様と二人、ひさしぶりのクリスマスを一緒に過ごそうと思ったのですか。


婆様。


いつかその答えを聞かせてもらえるその日まで、私は、こちらで、がんばっていきます。だから婆様も、爺様と二人で見守っていてくださいね。そしてたまには、夢の中で、その冴えたブラックジョークを聞かせてください。


婆様。長い間、ありがとうございました。




追伸ー食べる間も無く捨てる羽目になったクリスマスケーキと、もう出してしまって回収のきかない来年の年賀状と、今更出すわけにもいかない喪中葉書のことは、その折りに、しっかり文句を言わせてもらいますから、覚悟しておいてくださいね。

大輔と23日とクリスマス。

どういうわけか大輔は人がたくさんいる屋内が嫌いだ。


子供が好きそうな乗り物がたくさん置いてあるゲームセンターも嫌いだし、水族館や図書館もダメ。本屋も苦手だし、子供心だけでなく大人心もそそりそうなgoogle:さぬき子供の国の科学館(面白そうなアトラクションがいっぱいある)では、もう帰るを連発して大号泣された。多分泣くだろうなと思いつつ、一縷の望みを託して行ったアンパンマンショーは、会場の10m手前で大泣き。スーパーやデパートの食品売り場は、後でおいしいものをもらえるからか、とりあえず我慢してくれるが、衣料品や化粧品売り場に行こうとすると、体を張って阻止する。(この辺の気持ちはわからないでもない。)


そういうわけだから、来年入園予定の幼稚園から、クリスマス会のお誘いが来た時、たぶん、無理だろうなと思った私。いくら子供は風の子とはいえ、小雪のちらつく今頃の季節、ガーデンパーティなんてありえないから、クリスマス会の会場は園内(当たり前)。幼稚園だから、子供が好きそうな可愛い飾り付けがいろんなと所にしてあって、雰囲気は悪くないのだが、秋のバザーに行った時、入り口付近で手作りのアクセサリーを売っていた年長さんの、気合の入りまくった呼び込みにびびり、脱兎の如く逃げ出した大輔を追いかけ、園内を走り回る羽目になったのだ。ほんの2,3ヶ月前のことだし、大輔のことだから、しっかり覚えているに違いない。


とはいえ、来年は幼稚園に入るんだし、少しでも園の雰囲気に慣らしておいた方が大輔の為だと思い直し、とりあえず、聞くだけ聞いてみることにした。


「大ちゃん、大ちゃんに幼稚園からお手紙来てたよ。」
「お手紙なんて書いてあるの?」
「クリスマス会を23日にやるから、来てくださいって。」
「クリスマス会?」
「みんなでお歌を歌ったり、ゲームしたりして遊ぶの。」
「行かない。」
「大きなクリスマスツリー飾ってあるよ。いろんなおもちゃも置いてあって。」
「行きたくない。」
「サンタさんも来るんだって。大きいお兄ちゃんやお姉ちゃんも来て、遊んでくれるらしいよ。」
「嫌だ。」
「プレゼントもらえるみたいだねぇ。お菓子ももらえるかな。」
「行く。」
「行くの?」
「行く。ママ、お出かけズボンとジャケット出して。」
「いや、だから今日じゃなくて23日。まだ先の話だよ。」
「今日何日?」
「今日は13日。クリスマス会があるのは23日。23日が来たら、行こうね。」
「23日来たらクリスマス会。」
「そう、23日が来たらね。」
「もう23日来た?」
「まだだよ。」
「23日来た?」
「まだって。」
「じゃあ、23日迎えに行こう。ママ、お出かけズボンとジャケット出して!!」
日本語がわかるようになったとはいえ、一つの単語にいろんな意味があって「くる」といっても23日がサンタの格好して「ホー!ホー!ホー!」とか言いながらうちにやってくるわけでは無いことまでは理解できていない大輔、その後、寝るまで23日を迎えに行くと言い張って母を心底困らせましたとさ。ああ、やれやれ。

シンデレラの秘密。

「・・・あの。」
「何?」
「・・・あのさ。」
「だから何?」
「奥さんにお願いがあるんだけど。」
「何?」
「12月24日のお昼ね、お昼なんだけど、会社で忘年会兼ねたクリスマスパーティがあるんだ。」
「(なるほどそれで昼を強調してたわけね)それで?」
「なんかさ、ホテルのレストランでやるらしくて、結構豪華な感じなのよ。あ、会費は大丈夫、俺出せると思うから。」
「ふーん。で?」
「俺さぁ、そういう場所に来ていけそうな服持ってないんだよね。仕事は作業着だし、休みはレンタルビデオ屋とか、草野球とか、ラフな格好で行けるとこしか行ってないっしょ?かといって、ブラックスーツはちょっと改まりすぎだし。」
「そうだねぇ。」
「別にスーツとかじゃないくていいからさ、買ってくれない?ホテルのレストランでも浮かないような服。」
「・・・・まあねぇ。シンデレラじゃあるまいし、まさか服がないから行けませんなんて、言えないしねぇ、41歳の大人が。」
「じゃ、いいね?買ってもいいね?怒らないね?よかったぁ、だってさ、節約するからって、奥さんこの頃全然服買ってないじゃん。俺だけ買ってもらうのなんだか悪くてさ。」
「あははは。」
夫、君には話してないことなんだけど、母のお下がりだといってあるウールの小紋や、正絹の色無地道行紬の名古屋帯縮緬の長羽織縮緬鼻緒の桐の下駄、実は全部君のお給料で買ったものなんだよ。

ぜんぶりサイクルだから値段的にはユニクロで服を買うのと同じなんだけど、だから家計的にはそれほど響いてないんだけど、君よりは全然不自由してないから。

少なくともホテルに食事に行くのに、服がなくて困るようなことはないから。

見た目はそうかもしれないけど、実は衣装持ちのシンデレラだから。
「じゃさ、今度一緒に買いに行こうよ、ね?」
無邪気に笑う夫の顔を見ながら、久しぶりにずきずきと痛む良心を隠しつつ、頷く私だった。ごめん、夫。

謎の言葉。

1年ぶり以上の更新。とりあえず、近況を書いてみる。

3歳5ヶ月になった大輔、もはや自由自在に日本語を操れるようになった。一人前に天候の挨拶から世間話を始めるあたり、大したものだと感心する私。とはいえ、内容は往々にして意味不明。
例えば今朝1発目の世間話はこんな感じだった。


「ママ、今日は寒いからね、うきうきにしないとだめなんだよ、ママ。」
「そ、そう。じゃ、うきうきにしてみようか、大ちゃん。」
「ほら、シロ(注:ゴールデンレトリバーのぬいぐるみ)、シロもうきうきじゃないと。うきうきじゃないとだめだからね。」


うきうきは、最近の大輔お気に入りの単語。意味するところは不明だが、何か言うとこの単語が出てくる。例えばこんな感じだ。


「ママ。ママはうきうきだねぇ。」
「きらきら(注:日光のこと)はうきうきだよ。」
「もう1時すぎたからね、うきうきなんだよ。」
「ママ、うきうきだからもう寝なくちゃ。うきうきなっちゃうよ。」


このうきうき。用法から推察して形容詞らしいのだが、いい意味に使っているのか、悪い意味につかっているのか、さっぱりわからない。更に気になるのはママとセットになっているらしいこと。ママには頻繁に使うのに、パパには全く使わないあたり、ママ=うきうきの公式が成り立っているらしいのだ。(ちなみにパパに使うのは「男前」。誰に教わったのかは謎。)

謎の単語「うきうき」。どういう意味なのか本人に聞いてみたのだが、案の定というか、やっぱりというか、まったく要領を得ない答えが返ってきただけだった。まぁ、そうだろうな。


昼食の後片付けをしていた時のこと。キッチンの隣の和室で、犬のぬいぐるみ相手に大輔が何やら喋っていた。


「シロ。あんたは本当に可愛いねェ。」
「シロ、シロはお利口さん。大好きだよ。」


そうしてしばらくシロを抱きしめた後、しみじみとこう言った。


「シロ、あんたは本当にぬいぐるみだねぇ。」
確かにそのとうりなのだが、妙におかしくて、思わず吹きだした私だった。子供って、おかしい。

ある進化。

我が家にはよく間違い電話がかかってくる。
番号が悪いのか、運が悪いのか、それとも日頃の行いが良くないのか、とにかくかかってくる時には、心底うんざりするほどかかってくる。

「すみません、△△(某超人気ゲームソフト名)の新作予約はいつからですか?」
「あ、ユミコ?俺だけど」
「たかし、たかし!あんた今まで何してたの!お母さん心配で心配で」
「いつもお世話になっております、○○(<某有名企業名)の営業の××ですが。」
「ピー(ファックス送信音)」

ちなみに我が家の電話はFAX対応になっていないので、特に最後のヤツには、ほとほと参った記憶がある。機械だけに融通が利かないというか、根性があるというか。
最近はめっきり減ってきたものの、年に数回はこの手の電話がかかってくる。慣れとはおそろしいもので、最近では電話のコール音で、本当に我が家にかかってきたものか、そうでないかがわかるようになってきた。

同じNTTの回線を使って(ひょっとしたらKDDかもしれないし、IP電話かもしれないけれども)間違い電話だからコール音が違うということはないはずだ。無論、我が家の電話機が気を利かせて鳴り方を変えてくれているわけでもない。そもそも科学的に考えれば、コール音で違いがわかるというのはナンセンスである。ナンセンスなのだが、わかる。ほぼ9割の確率でわかる。

頭の中にアンテナがあって、それが反応しているみたい。

あんまり夫が不思議がるので、ある時こう説明したら、間髪いれずにこう切り返された。
「・・・進化?」
まぁ、考えてみれば、進化は必然から起こるものだし。

その電話は、コール音からして胡散臭かった。件のアンテナも間違いだとアドバイスしている。
普段なら、忠告に従って無視するその電話に、思わず出てしまったのは、単に魔が差したからとしかいいようがない。

「失礼ですが、○山××さん(夫の名前)のお宅でしょうか。」
「そうですが、あなたは?」
「あなたは××さんの・・・奥様でいらっしゃいますか?」
「そうですけれど。」

妙に冷静な、けれどもどこかうわついた感じのする、若くもなければ老いてもいない男の声を聞いた途端、頭の中で、見えないアンテナがさらに強烈に反応するのがわかった。

この電話、間違い電話だ。

「実は本日午前9時28分頃、ご主人が人身事故を起こされまして、で」
「失礼、確認取ってからでもよろしいかしら?」
「・・・・ええ、もちろん。」

切ってすぐ確認した相手の電話番号は無論非通知。念の為、夫に確認を取ったが「何の話?」

そこで思い出したが、数ヶ月前の昼休み、駐車中の車に追突事故を起こした夫は、保険屋よりも警察よりも会社の上司よりも先に、我が家に連絡してきたのだった。電話がかかってきたのは10時半過ぎ。本当に事故なら、何より本人から泡食って連絡してくる筈だった。ガッデム、そうとわかっていればもっと気の利いた答えをしたものを。(オレオレ詐欺のニュースを初めて聞いた時から、いつか我が家にかかってきた時の為に、いろんなシチュエーションで答えを考えていた。)

間違いの意味は若干違ったが、正しく反応したアンテナに感謝しつつ、人間、いざとなると大した事は言えないものだと、しみじみ悟った私だった。