アメコミ映画なので

録画していた『ザ・フラッシュ』(2023年/監督:アンディ・ムスキエティ)を観る。DCコミックの史上最速ヒーロー・フラッシュの活躍を描いたCG特撮アクション。

ルフレッド(ジェレミー・アイアンズ)の要請で、ゴッサムシティにウイルスを捲こうとしている悪党をバットマンベン・アフレック)やワンダーウーマンガル・ガドット)と捕まえたフラッシュ(エズラ・ミラー)は、妻殺しの冤罪で入獄している父(ロン・リビングストン)を救うために過去に遡り、母の死を回避することに成功。しかし、過去を変えたことで現在に歪みが生じ、かつてスーパーマンによって倒されたはずの敵ゾッド将軍(マイケル・シャノン)が大軍を率いて襲来。フラッシュが戻った現在は別の世界で、スーパーマンはおらず、スーパーガール(サッシャ・カジェ)や引退していた別のバットマンマイケル・キートン)と一緒にゾッドと戦うことになりますが……

ジャスティスリーグの面々が賑々しく顔を見せるアトラクション映画。視覚特殊効果は少し雑なところがあって、リアル感がありません。DCコミックのヒーローを主人公にした海外ドラマ『スーパーガール』『アロー』『レジェンド・オブ・トゥモロー』『バットガール』のエピソードをクロスオーバーさせた『フッラシュ』の方が面白かったで~す。

 

アカデミー受賞作ということで

録画していた『エブリシング・エブリウェア・オール・アト・ワンス』(2022年/監督:ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナイト)を観る。第95回アカデミー賞で作品・監督・脚本ほか全7部門で受賞したコミカルSFアクション。

コインランドリーを経営するエブリン(ミシェル・ヨー)は、意見の食い違う夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)、介護が必要な父親ゴンゴン(ジェームズ・ホン)、反抗期の娘ジョイ(ステファニー・スー)との関係などに悩んでいます。税金の支払いについて厳しい税務署員ディアドラ(ジェイミー・リー・カーティス)との面談中、別の宇宙へ移動。夫の身体に乗り移った別の宇宙の夫から、全宇宙を守れるのは君だけだと言われます。わけが分からないままエブリンは、カンフーの達人である別の宇宙の自分からスーパー・パワーを取得。襲ってくる敵と命がけの戦いを開始しますが……

マルチバースを舞台に、全宇宙を救うべく戦う主婦を描いていますが、結局は家族愛の物語。マルチバースというのは私にとって意味のわからない世界観で、映像表現上、都合のよい世界といった感じしかしません。フィーリングで楽しむ作品ですな。私の好みじゃありませんけどね。

 

東京が舞台で

DVDで『東京暗黒街・竹の家』(1955年/監督:サミュエル・フラー)を観る。日本で43日間にわたってロケをしたハリウッド映画。

富士山麓で列車強盗が起こり、兵士が殺されアメリカ軍の兵器が奪われます。警視庁のキタ警部(早川雪洲)とアメリ憲兵隊ハンスン大尉(ブラッド・デクスター)が捜査を開始。数日後、東京の工場が襲われ、逃げ遅れたウェッバーが仲間に撃たれて死にます。ウェッバーを撃った拳銃と兵士が殺された拳銃が同じワルサーP38だったことから、ハンスン大尉はウェッバーの所持品を徹底調査。ウェッバーの軍隊仲間で刑務所から出獄したスパニア(ロバート・スタック)という男が日本にやってきます。ウェッバーが密かに結婚していたマリコ(シャーリー・ヤマグチ=山口淑子)からウェッバーがパチンコ屋で働いていたことを聞き出し、パチンコ屋を脅迫。パチンコ屋はサンディ(ロバート・ライアン)率いるギャング団の隠れ蓑で、サンディはスパニアの素性を調べ、仲間にしますが……

ロバート・スタックは、アメリ憲兵隊の潜入捜査官で山口淑子と愛しあうようになるという役どころ。スタックはそれほど活躍せず、ロバート・ライアンが思い違いをして自滅していくという内容で、サスペンスアクションとしては褒められたものではありません。東京に鎌倉の大仏が出てきたり、芸妓が着物を脱ぐとレビューガールになって踊るといった珍品ぶりを愉しめばいいのです。ロバート・ライアンの手下に、キャメロン・ミッチェル、デフォレスト・ケリー、ハリー・ケリー・ジュニアなどがいて、傍役陣は豪華で~す。

 

本日は

DVDで『終着駅』(1953年/監督:ヴィットリオ・デ・シーカ)を観る。メロドラマにはイタリアの風景が似合うらしく、これはローマ駅が舞台。

夕闇せまる竣工したばかりのローマ駅にマリー(ジェニファー・ジョーンズ)がやってきます。意を決したようにミラノ行きの切符を購入。アメリカに夫と娘を残したままローマにいる姉のところへ来たのですが、イタリア青年ジョヴァンニ(モンゴメリー・クリフト)と深い仲になったんです。ミラノ経由パリで帰国する予定でしたが、ジョヴァンニが駆けつけてきます。ジョヴァンニが話し合いたいというので、マリーはパリ直行便に列車を変更。ジョヴァンニは出発しないように懇願しますが果たさず、彼女をぶって立ち去ります。悲しみのマリーは、荷物を渡しに駅に来た甥(子役時代のリチャード・ベイマー)になぐさめられ、甥と待合室へ。マリーとの別れを決意したジョヴァンニは、別れの言葉を言うためにホームへ。発車まぎわのホームにマリーを見つけます。二人が待避線の車内で最後の別れを告げている時、鉄道公安官に連行され……

ドラマの進行時間と映写時間がほぼ一致するような演出で、デ・シーカはキメ細かい恋愛描写をしています。ジェニファー・ジョーンズモンゴメリー・クリフトの演技が見事。ほとんど2人だけの芝居ですが、駅内にうごめくさまざまな人生も点描しており、人生の縮図がくりひろげられます。

アメリカで公開されたバージョンでは、アレッサンドロ・チコニーニのメロディに歌詞(ローマの秋)がつけられ、ペギー・リーが歌ってヒットしていま~す。

 

続いて

DVDで『旅愁』(1950年/監督:ウィリアム・ディターレ)を観る。『哀愁』(原題はウォータールー橋)のヒットで似たような邦題のメロドラマが次々に公開されます。この作品もその一つ。

ローマからニューヨークへ向かう旅客機で、技師で経営者のデビッド(ジョゼフ・コットン)とピアニストのマニーナ(ジョーン・フォンテイン)は言葉を交わし親しくなります。旅客機はエンジンの不具合でナポリに着陸。修理に時間がかかるとデビッドは予想し、マニーナとナポリ見物に出かけ、互いに惹かれあいます。しかし、デビッドの予想に反し、旅客機はすでに出発。デビッドは家庭に不和を抱えており、次の便までマニーナとカプリ島でゆっくり過ごすことにします。2人が乗るはずだった旅客機は地中海で墜落。2人は死亡したものと判断されます。デビッドとマニーナの愛は深まっており、一切の過去を絶った2人はフィレンツェで新しい生活を開始しますが……

日がたつにつれ、デビッドは仕事や家庭が恋しくなり、マニーナはピアニストとして成功する夢が捨てきれません。結局、マニーナのピアノの先生(フランソワーズ・ロゼエ)に盗んだ幸福は長く保てぬと忠告され、マニーナは美しい想い出を胸に秘め、デビッドと別れるんです。

この作品の最大の狙いは、ローマをはじめ、ナポリポンペイカプリ島フィレンツェなどのイタリアの名所の美しい風景を背景にした、しっとりとした情緒ですな。主題歌として使われる「セプテンバー・ソング」は、1938年のミュージカル『ニッカ・ボッカ・ホリデイ』でウォルター・ヒューストンが歌ってヒットした曲。この作品の中でも、海を見下ろすレストランでレコードがかけられ、ヒューストンの歌が聴けま~す。

 

懐かしのメロドラマ

DVDで『哀愁』(1940年/監督:マーヴィン・ルロイ)を観る。メロドラマ・ベストテン映画には必ず名前があがる作品。

1917年、フランスへの出征を控えて休暇中のクローニン大尉(ロバート・テイラー)は、ウォータールー橋でバレーダンサーのマイラ(ヴィヴィアン・リー)と出会います。空襲警報を聞き、二人で一緒に避難所へ。互いに惹かれあい、クローニンは彼女が出演しているバレー公演を見に行きます。マイラはクローニンから夜食に誘われますが、厳格なバレー教師キーロワ女史(マリア・オースペンスカヤ)はそれを許しません。マイラは親友のキティ(ヴァージニア・フィールド)の助けでクローニンとデイト。クローニンはマイラに結婚を申し込み、次の日に式をあげる約束でしたが、クローニンに急な出陣命令。マイラは駅に駆けつけますが、クローニンは列車の中で、チラと見ただけで話すこともできず別れ。劇場に戻ったマイラは舞台に穴をあけたことでバレー団を解雇されます。キティもマイラを弁護し、キーロワ女史を非難したことで解雇。クローニンの母親(ルシル・ワトソン)と会うことになり、喫茶店で待っている間に見た新聞にクローニンの戦死記事。マイラは絶望して、やって来た母親にまともに応対できず、母親は気を悪くしてスコットランドに帰ります。そして2ヶ月間、病のため寝たっきりになり、この間キティが夜の女となって看護。親友の友情に泣いたマイラはキティと同じ夜の女になります。1年後、死んだと思われていたクローニンが凱旋して帰国。クローニンは駅で客を探して立っているマイラと思いがけなく出会い、再会を喜びますが……

日本で公開されたのは戦後の1949年春、日本に初お目見えしたヴィヴィアン・リー(『風と共に去りぬ』が日本公開されたのは1952年)の心情は、戦争の悲劇を知る日本人の胸をうって大ヒット。

物語は、イギリスがナチ・ドイツに対して宣戦を発した夜に、フランス戦線に向かうクローニン大佐が霧のウォータールー橋に佇み、脳裏に古い想い出が甦るところから始まります。古風ですが、立派な工芸品のようなキメが細かく、タッチの美しい作品です。主題歌ではないですが、「蛍の光」と「白鳥の湖」が印象的な場面に使われていま~す。

 

週に一度は西部劇

BSシネマで『地平線から来た男』(1971年/監督:バート・ケネディ)を再見。『夕陽に立つ保安官』の姉妹編ともいうべき西部劇コメディ。

大年増の酒場のマダム(マリー・ウィンザー)と結婚するはめになったラティゴ・スミス(ジェームズ・ガーナー)が、途中下車して逃げ出した町パガトリーは二人の鉱山主バートン(ハリー・モーガン)とエームズ(ジョン・デナー)が主脈を巡って対立。ラティゴはエームズに雇われた凄腕ガンマンに間違われます。バートンとエームズの姉(エレン・コービー)は恋仲で、彼女の情報でバートンはラティゴを凄腕ガンマンと誤解したんですな。バートンの娘ペイシェンス(スザンヌ・プレシェット)は、ニューヨークの大学へ行きたいと躍起。父親がエームズに負けると、ニューヨークに行けなくなるのでラティゴの命を狙います。そんなことは知らないラティゴはルーレットで所持金を全て失い、酒場のマダム・ジェニー(ジョーン・ブロンデル)を誘惑。ジェニーはラティゴに惚れこみますが、現金は渡しません。ラティゴはバートンから5千ドルの条件で誘われ、町で親しくなった呑んべえのジャグ・メイ(ジャック・イーラム)を凄腕ガンマンのスウィフティに仕立て上げ、ジャグとバートンをうまく利用。ラティゴはペイシェンスと親しくなり、両派の抗争をうまく利用していましたが、本物のスウィフティ(チャック・コナーズ)が現れたことから……

ジェームズ・ガーナーがとぼけた調子の良さを見せてグッド。ジョーン・ブロンデルに言い寄る言葉が、マリー・ウィンザーを口説いたのと同じ文句だったのには笑いましたよ。セリフや言葉での説明が多く、チャック・コナーズのスキンヘッドくらいしか映像で見せる笑いがなかったのは残念。セリフでなく、ヘンリー・モーガンとエレン・コービーが自転車に乗ってデイトするシーンがあったら笑えたんですけどね。

再見して気づいたのですが、気が短くてすぐに銃をふりまわすスザンヌ・プレシェットのコメディエンヌぶりがグッドで~す。