有名な物語なので

録画していた『新源氏物語』(1961年・大映/監督:森一生)を観る。紫式部の古典を翻案した川口松太郎の小説が原作。

帝(市川寿海)の寵愛を一身に受けた桐壺(寿美花代)は、男の子を産んで亡くなります。男の子は成人して光源氏市川雷蔵)と呼ばれ、宮中の女性の憧れのまと。光は左大臣の娘・葵の上(若尾文子)を娶りますが、意中にあるのは母に似ている帝の側室・藤壺寿美花代の二役)で、ある夜、藤壺の几帳に忍び入ります。藤壺もかねてより光を想っており、二人は結ばれますが……

光源氏は史上最高の色男で、藤壺や葵の上の他にも年上の愛人・六条御則所(中田康子)、右大臣の娘・朧月夜(中村玉緒)、行きずりに愛した末摘花(水谷良重)たちと絢爛の大ロマンを繰り広げます。“十二単衣がはらりと落ちて、玉なす黒髪は紫のねやに乱れる。九重の奥深くまことの恋を求めて、妖しく、美しく繰り展げる王朝絵巻”なので~す。藤村志保も出演していましたが、まだ端役時代で、雷蔵との絡みはありません。

 

アニメの次は実写

録画していた『キンギダム運命の炎』(2023年/監督:佐藤信介)を観る。シリーズ3作目で、政の趙国脱出と馬陽の戦いの前半を描いています。

趙軍が秦国に侵攻し、昌平君(玉木宏)は大将軍・王騎(大沢たかお)を招聘。王騎の問いに秦王・政(吉沢亮)は、闇商人・紫夏(杏)の助けで趙国を脱出した時のことを語ります。王騎は猛武(平山祐介)を副将に馬陽で迎撃。両軍は乾原で開戦。信(山崎健斗)は王騎に飛信隊と名付けられた特殊百人部隊を率いて、干央(高橋光臣)の部隊が苦戦している趙右軍の将・慿忌(片岡愛之助)に向かって側面から突撃。羌瘣(清野菜奈)の援護もあって信は慿忌を討ちとります。趙軍は後方の山間部へ退却しますが……

李牧(小栗旬)や龐煖(吉川晃司)は顔を見せる程度で、本番は次作の『大将軍の帰還』になるのでしょう。信の成長はあるものの、次作への前提物語にすぎませ~ん。

 

アニメだが

録画していたNHKで放送の『キングダム(第5シリーズ)』を観了。

中国の春秋戦国時代を舞台にした原泰久の人気マンガのアニメ化です。後に始皇帝となる政と大将軍になることを夢見ている信を主人公に、若者の夢と冒険を描き、強敵を倒していくことで成長するという少年マンガの王道。

第5シリーズ(全13話)は、黒羊丘を巡る趙と秦との激闘。五千人将になった信の飛信隊は、中華統一のため桓騎軍と趙の領地・黒羊丘に進軍。黒羊丘は趙の西部、秦との国境付近に広がる密林地帯で、勝利のカギは中央の丘の制圧。桓騎軍5万8千の秦軍を迎え撃つのは、李牧の副将・慶舎軍4万と離眼城主・紀彗3万の趙軍。河了貂の策略により河越えに成功した飛信隊は前線を押し上げますが、桓騎は動こうとしません。斥候として動いていた飛信隊の副将・羌瘣は、紀彗軍に囲まれて負傷。黒羊丘に住む老婆に救われます。動かない秦軍に痺れを切らした慶舎は、飛信隊を攻撃。これを待っていたかのように桓騎は、ゼノウ軍を慶舎攻撃に向けて出陣させます。慶舎は飛信隊とゼノウ軍に挟撃される形になりますが、紀彗が援軍に駆けつけ慶舎は脱出に成功。飛信隊は慶舎を追撃し、傷の癒えた羌瘣も駆けつけ、信は一騎打ちで慶舎を討ちとります。

桓騎は黒羊丘の住民を虐殺し、紀彗に離眼城での虐殺を予告して脅迫。人徳者の紀彗は離眼城を守るために撤退し、その隙に黒羊丘を占拠。信は桓騎のやり方に憤りを覚え、桓騎以上の将軍になることを決意。

最終話は、蔡沢の手引きにより斉王・王建が秦に来朝。秦王・政は、中華統一後は“法”によって国を治めると語り、それに感嘆した斉王は、中立の立場でそれを見守ると約束します。原作の46巻まで終了で~す。

 

週に一度は西部劇

BSシネマで『許されざる者』(1960年/監督:ジョン・ヒューストン)を再見。オードリー・ヘプバーンが出演した唯一の西部劇。それもインディアン娘(カイオワ族の酋長の妹)です。

ザカリー家の養女レイチェル(オードリー・ヘプバーン)は、母(リリアン・ギッシュ)、長男ベン(バート・ランカスター)・次男キャッシュ(オーディ・マーフィ)・三男アンディ(ダグ・マクルーア)の兄弟と牧場で平和に暮らしています。彼女はインディアンとは知らず、兄弟たちも知りません。なにせオードリーなんですから。

ところが、一家を怨むケルシー(ジョゼフ・ワイズマン)が現われ、そのことをばらすんですな。ワイズマンは狂的な役をやらせると巧いなァ。そして、レイチェルが酋長の妹だと知ったカイオワ族が妹を取り返すために襲撃してきます。隣家の牧場主ゼブ(チャールズ・ビッグフォード)の長男(アルバート・サルミ)がカイオワ族に殺されたことから、インディアンに偏見を持っている近所の連中は一家と絶交。オードリーを密かに愛していた長男のランカスターが、孤立無援となっても彼女を守って戦う決意をするんですよ。

ジョン・ヒューストンは、インディアンに対する白人の人種的偏見をテーマに、ミステリータッチの異色の西部劇に仕上げています。一方で、ハリウッドの赤狩り批判にもなっていますね。インディアンとわかってオードリーに向ける目は、共産主義者と判明した者に向けられた目と同じと云われています。苦闘に満ちた一家の運命を描いた作品で、ポスターの惹句“テキサスの荒野に愛と純潔をかけて戦う美しき乙女の物語!”にあるような、ハーレクイン的ドラマではありません。

オードリーがインディアンとわかって一度は家を出たマーフィが戻ってきて戦ったり、オードリーが実の兄よりランカスターをとるラストは、古き良き西部劇といえます。再見して気づいたのは、物語に直接絡まない若き日のジョン・サクソンの野性的魅力で~す。

 

インディアン迫害史

海外ドラマ『わが魂を聖地に埋めよ』(2007年/監督:イヴ・シモノー)を観る。1860年代から90年のウーンデッド・ニーに至るまでのインディアンと白人の戦いをインディアンの側から書いたディー・ブラウンの西部史を基にドラマ化。

リトルビッグホーンの戦いで第七騎兵隊が全滅した後、アメリカ政府はスー族インディアンを徹底的に彼らの土地から追い出し続けます。そんな中、ヘンリー・ドーズ議員(エイダン・クイン)はインディアンを保護する法案を提出。土地を所持して農夫となる暮らしは、スー族には受け入れられません。サウスダコタのインディアン居留地では、学校教師のエレイン(アンナ・パキン)と、スー族出身で白人の教育を受けたチャールズ・イーストマン医師(アダム・ビーチ)が部族の生活向上のために努力しています。薬剤が不足していて伝染病が蔓延しますが政府は非協力。アメリカ政府に反抗してカナダに逃れていたシッティング・ブル酋長(アウグスト・シェレンベルク)も居留地に移り住みます。やがて、インディアンたちは絶望感から預言者(ウェス・スチュディ)が唱えたゴーストダンスに打ち興じ、ウーンデッド・ニーの惨劇へと続いていきます。

インディアンへの迫害が表面的に語られるだけで、原作の持つインディアンたちの高貴な精神と自然崇拝の美徳が映像化できていません。だけど、おのれに都合の悪い歴史を、ちゃんとドラマ化したことには価値がありま~す。

 

続きで

新作テレビ西部劇『法執行官:バス・リーブス(全8話)』の5~8話を観る。

連邦保安官バス・リーブス(デビッド・オイェロウォ)は休む間もなく、パーカー判事(ドナルド・サザーランド)からテキサスで白人を殺した黒人の移送を命じられます。家族よりも仕事を重視する夫に妻のジェニー(ローレン・E・バンクス)は不満。バスが黒人を引き渡したテキサスレンジャーは、第1話で恩人の息子を殺した元南軍兵士のピアス(バリー・ペッパー)。バスはピアスを逮捕したくてもできません。その頃、黒人を拉致するサンダウンの噂が流れます。ピアスに引き渡した黒人が行方不明になっていることを知ったバスは、サンダウンはピアスと確信。彼が保安官になるきっかけとなった連邦副保安官シェリル・リン(デニス・クエイド)と助手のビリー・クロウ(フォレスト・グッドウッド)を連れてテキサスへ。ピアスの農場では黒人が奴隷のように働かされており……

バスの連保保安官としての活動を描くとともに、バスの家族を通して南北戦争後の黒人の社会への係わり方も描いています。爽快感はないものの、銃撃戦もたっぷりあり、西部劇として満足できる作品で~す。

 

新作テレビ西部劇

『法執行官:バス・リーブス(全8話)』の1~4話を観る。

第1話は、リーブス家の奴隷バス(デビッド・オイェロウォ)が主人(シェイ・ウィガム)と南北戦争に従軍。しかし、主人が上官と諍いしテキサスの屋敷に帰郷。妻ジェニー(ローレン・E・バンクス)と再会しますが、主人のやり方に怒り、主人を殴り飛ばして逃亡。セミノール族のサラ(マーゴット・ビンガム)に助けられます。サラの家で暮らすうちに戦争は終結し、ジェニーのもとへ帰ります。

第2話は、バスの農場は飢饉で生活が苦しく、バスは連邦副保安官シェリル・リン(デニス・クエイド)の助手となって無法者を追跡。バスは、犯人逮捕に手段を選ばないシェリルに反発し、シェリルを殴り飛ばします。シェリルの報告を聞いたパーカー判事(ドナルド・サザーランド)はバスを連邦副保安官に任命。

第3話は、バスの最初の任務。駅馬車強盗アンダーウッド・ギャングの手先・ビリー・クロウ(フォレスト・グッドウッド)を逮捕します。そして、ビリー・クロウを殺しに襲撃してきたアンダーウッド・ギャングを返り討ち。

第4話は、ビリー・クロウを助手にして、バスは次々に無法者を逮捕。連邦副保安官としての名前をあげていきます。

主人公は、奴隷から連邦保安官になり、オクラホマで3千人の犯罪者を逮捕したという実在の人物。黒人が主人公ですが、人種差別とか偏見といったものは前面に出さず、正義をつらぬく行動を描いています。デニス・クエイドドナルド・サザーランドは老けすぎの感がありますが、西部劇の似合う役者が少なくなったということなんでしょうな。