続いて

DVDで『旅愁』(1950年/監督:ウィリアム・ディターレ)を観る。『哀愁』(原題はウォータールー橋)のヒットで似たような邦題のメロドラマが次々に公開されます。この作品もその一つ。

ローマからニューヨークへ向かう旅客機で、技師で経営者のデビッド(ジョゼフ・コットン)とピアニストのマニーナ(ジョーン・フォンテイン)は言葉を交わし親しくなります。旅客機はエンジンの不具合でナポリに着陸。修理に時間がかかるとデビッドは予想し、マニーナとナポリ見物に出かけ、互いに惹かれあいます。しかし、デビッドの予想に反し、旅客機はすでに出発。デビッドは家庭に不和を抱えており、次の便までマニーナとカプリ島でゆっくり過ごすことにします。2人が乗るはずだった旅客機は地中海で墜落。2人は死亡したものと判断されます。デビッドとマニーナの愛は深まっており、一切の過去を絶った2人はフィレンツェで新しい生活を開始しますが……

日がたつにつれ、デビッドは仕事や家庭が恋しくなり、マニーナはピアニストとして成功する夢が捨てきれません。結局、マニーナのピアノの先生(フランソワーズ・ロゼエ)に盗んだ幸福は長く保てぬと忠告され、マニーナは美しい想い出を胸に秘め、デビッドと別れるんです。

この作品の最大の狙いは、ローマをはじめ、ナポリポンペイカプリ島フィレンツェなどのイタリアの名所の美しい風景を背景にした、しっとりとした情緒ですな。主題歌として使われる「セプテンバー・ソング」は、1938年のミュージカル『ニッカ・ボッカ・ホリデイ』でウォルター・ヒューストンが歌ってヒットした曲。この作品の中でも、海を見下ろすレストランでレコードがかけられ、ヒューストンの歌が聴けま~す。

 

懐かしのメロドラマ

DVDで『哀愁』(1940年/監督:マーヴィン・ルロイ)を観る。メロドラマ・ベストテン映画には必ず名前があがる作品。

1917年、フランスへの出征を控えて休暇中のクローニン大尉(ロバート・テイラー)は、ウォータールー橋でバレーダンサーのマイラ(ヴィヴィアン・リー)と出会います。空襲警報を聞き、二人で一緒に避難所へ。互いに惹かれあい、クローニンは彼女が出演しているバレー公演を見に行きます。マイラはクローニンから夜食に誘われますが、厳格なバレー教師キーロワ女史(マリア・オースペンスカヤ)はそれを許しません。マイラは親友のキティ(ヴァージニア・フィールド)の助けでクローニンとデイト。クローニンはマイラに結婚を申し込み、次の日に式をあげる約束でしたが、クローニンに急な出陣命令。マイラは駅に駆けつけますが、クローニンは列車の中で、チラと見ただけで話すこともできず別れ。劇場に戻ったマイラは舞台に穴をあけたことでバレー団を解雇されます。キティもマイラを弁護し、キーロワ女史を非難したことで解雇。クローニンの母親(ルシル・ワトソン)と会うことになり、喫茶店で待っている間に見た新聞にクローニンの戦死記事。マイラは絶望して、やって来た母親にまともに応対できず、母親は気を悪くしてスコットランドに帰ります。そして2ヶ月間、病のため寝たっきりになり、この間キティが夜の女となって看護。親友の友情に泣いたマイラはキティと同じ夜の女になります。1年後、死んだと思われていたクローニンが凱旋して帰国。クローニンは駅で客を探して立っているマイラと思いがけなく出会い、再会を喜びますが……

日本で公開されたのは戦後の1949年春、日本に初お目見えしたヴィヴィアン・リー(『風と共に去りぬ』が日本公開されたのは1952年)の心情は、戦争の悲劇を知る日本人の胸をうって大ヒット。

物語は、イギリスがナチ・ドイツに対して宣戦を発した夜に、フランス戦線に向かうクローニン大佐が霧のウォータールー橋に佇み、脳裏に古い想い出が甦るところから始まります。古風ですが、立派な工芸品のようなキメが細かく、タッチの美しい作品です。主題歌ではないですが、「蛍の光」と「白鳥の湖」が印象的な場面に使われていま~す。

 

週に一度は西部劇

BSシネマで『地平線から来た男』(1971年/監督:バート・ケネディ)を再見。『夕陽に立つ保安官』の姉妹編ともいうべき西部劇コメディ。

大年増の酒場のマダム(マリー・ウィンザー)と結婚するはめになったラティゴ・スミス(ジェームズ・ガーナー)が、途中下車して逃げ出した町パガトリーは二人の鉱山主バートン(ハリー・モーガン)とエームズ(ジョン・デナー)が主脈を巡って対立。ラティゴはエームズに雇われた凄腕ガンマンに間違われます。バートンとエームズの姉(エレン・コービー)は恋仲で、彼女の情報でバートンはラティゴを凄腕ガンマンと誤解したんですな。バートンの娘ペイシェンス(スザンヌ・プレシェット)は、ニューヨークの大学へ行きたいと躍起。父親がエームズに負けると、ニューヨークに行けなくなるのでラティゴの命を狙います。そんなことは知らないラティゴはルーレットで所持金を全て失い、酒場のマダム・ジェニー(ジョーン・ブロンデル)を誘惑。ジェニーはラティゴに惚れこみますが、現金は渡しません。ラティゴはバートンから5千ドルの条件で誘われ、町で親しくなった呑んべえのジャグ・メイ(ジャック・イーラム)を凄腕ガンマンのスウィフティに仕立て上げ、ジャグとバートンをうまく利用。ラティゴはペイシェンスと親しくなり、両派の抗争をうまく利用していましたが、本物のスウィフティ(チャック・コナーズ)が現れたことから……

ジェームズ・ガーナーがとぼけた調子の良さを見せてグッド。ジョーン・ブロンデルに言い寄る言葉が、マリー・ウィンザーを口説いたのと同じ文句だったのには笑いましたよ。セリフや言葉での説明が多く、チャック・コナーズのスキンヘッドくらいしか映像で見せる笑いがなかったのは残念。セリフでなく、ヘンリー・モーガンとエレン・コービーが自転車に乗ってデイトするシーンがあったら笑えたんですけどね。

再見して気づいたのですが、気が短くてすぐに銃をふりまわすスザンヌ・プレシェットのコメディエンヌぶりがグッドで~す。

 

シリーズではないが

録画していた『忌怪島/きかいじま』(2023年/監督:清水崇)を観る。『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』など“恐怖の村”シリーズの清水崇のホラーサスペンス。

天才脳科学者・片岡友彦西畑大吾)は、現実世界と瓜二つの仮想世界を作るVR研究チームの井出(伊藤歩)に誘われて南の島を訪れます。しかし、井出は不可解な死を遂げており、システムエラーや赤いバグが発生。友彦は父親が井出と同じような不可解な死を遂げた園田環(山本美月)と出会い、異世界と現実世界が交わっていることに気づきます。村のシャーマン(吉田妙子)から“イマジョ”の怨念が解き放たれたことを知り……

ヴァーチャルと古典的ホラーを組み合わせた試みは面白いと思いますが、恐怖感は今イチ伝わってきません。村人から差別を受けている笹野高志と村の娘たちからイジメを受けている少女・當真アミの関係と心の闇が表面的なので、“イマジョ”の怨念との絡みがピンとこないのが難点。いろいろと詰め込みすぎて焦点がボケていま~す。

 

たまにはホラー

録画していた『ヴァチカンのエクソシスト』(2023年/監督:ジュリアス・エイヴァリー)を観る。実在のエクソシストによる回顧録を原作にしたオカルトホラー。

1987年、ヴァチカンのエクソシスト(悪魔祓い師)アモルト神父(ラッセル・クロウ)は、ローマ教皇フランコ・ネロ)直々の依頼でスペインの村の修道院へやって来ます。米国からやって来た修道院の所持者ジュリア(アレックス・エッソー)の息子ヘンリーに超常現象が発生。地元のトーマス神父(ダニエル・ソヴァット)にはなすすべがなく、アモルト神父が悪魔払いを開始。しかし、ヘンリーに憑りついた悪魔は強力で歯が立ちません。アモルト神父とトーマス神父は悪魔の正体を調査。修道院の地下の井戸の奥にある部屋で、中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判の記録を発見。そして、悪魔の正体がアスモデウスということがわかりますが……

初めて『エクソシスト』(1973年/監督:ウィリアム・フリードキン)を観た時のような驚きはありませんが、最新映像技術を駆使し、神秘的な悪魔払いを迫力たっぷりに描いています。ラッセル・クロウも好演。どこまでが史実なのかは疑問なんですけどね。

 

たまにはB級アクション

録画していた『ハイ・ヒート その女諜報員』(2022年/監督:ザック・ゴールデン)を観る。元KGBの凄腕諜報員が夫を守るためにマフィアと戦うアクション映画。

愛する夫レイ(ドン・ジョンソン)と念願のレストランを開店することになったアナ(オルガ・キュリレンコ)ですが、二人組のギャングが現れます。レイはマフィアのドム(ダイアモンド・ダラス・ペイジ)に借金があり、ドムは店を燃やして保険金で回収しようと計画。アナは元KGBの凄腕諜報員で、二人をあっさりKO。ドム次々に手下を送り込みますが、アナに撃退されます。最後はドムが雇った傭兵部隊との戦いになり……

厨房を中心としたレストラン内部でアクションが繰り広げられる低予算映画。オルガ・キュリレンコのアクションだけが見どころの作品で~す。

 

有名な物語なので

録画していた『新源氏物語』(1961年・大映/監督:森一生)を観る。紫式部の古典を翻案した川口松太郎の小説が原作。

帝(市川寿海)の寵愛を一身に受けた桐壺(寿美花代)は、男の子を産んで亡くなります。男の子は成人して光源氏市川雷蔵)と呼ばれ、宮中の女性の憧れのまと。光は左大臣の娘・葵の上(若尾文子)を娶りますが、意中にあるのは母に似ている帝の側室・藤壺寿美花代の二役)で、ある夜、藤壺の几帳に忍び入ります。藤壺もかねてより光を想っており、二人は結ばれますが……

光源氏は史上最高の色男で、藤壺や葵の上の他にも年上の愛人・六条御則所(中田康子)、右大臣の娘・朧月夜(中村玉緒)、行きずりに愛した末摘花(水谷良重)たちと絢爛の大ロマンを繰り広げます。“十二単衣がはらりと落ちて、玉なす黒髪は紫のねやに乱れる。九重の奥深くまことの恋を求めて、妖しく、美しく繰り展げる王朝絵巻”なので~す。藤村志保も出演していましたが、まだ端役時代で、雷蔵との絡みはありません。