普遍を知らぬ者のこだわりは強要である

 
 GWに車で1975km走ったときのこと。
 興部(おこっぺ)辺りで空腹感を覚え、ちょうど良さげな店があったので入った。田舎の割にはお洒落な店外に出されているメニューには、丼物が書かれていた。
 ぼくは腹が減ると必ずカツ丼が食べたくなる。それはもう、無性に。
 店内はカントリー調で小洒落ており、「夫婦で訪れた北海道に憧れて、ついに店を始めました!」という匂いがプンプンする。初々しさもあり、地産地消を謳っているあたりも好ましい。
 当然カツ丼をオーダーするつもりだったが、メニューには「スジカツ丼」はあっても、普通の「カツ丼」がない。眼鏡を上げてまじまじと凝視していると、厨房から店主が小走りでやってきてこう言った。
「“スジ”と書いておりますが、スジの周りには旨味が凝縮されています。ですから敢えてスジ肉を使っております。当然スジは丁寧に取り除いております」
 ほう、ほほう。なんだねその前のめりな感じは。アバラ付近のスペアリブは確かに旨いけど、ほう、スジも旨いのかい。てゆーか普通のカツ丼はないのかね……ない? じゃあ仕方なく頼もうか。
 

 
 ほう、ほほう、衣がすぐに外れそして肉が硬いぞ……うむ、幼い頃に初めて食べたスルメのようだ。確かに噛んでいるうちに旨味が、いやスジのほうが明らかに多いぞコノヤロウ! の画。
 
 うん、煮込もうぜ!
 

お願いしますから〜

 
 深夜に風呂場の方で「カタン」と音が鳴れば、それは吸盤フックが落ちたことを示す。
 一年ほど前に新装された浴室の壁は、細かいエンボス加工が施されており、それを埋めて吸着力を高めるために吸盤へクリーム等を塗っても、時間が経てば落ちてしまうのだ。 
 売り場へ行っていくつか吸盤を試したが、結果は同じだった。
 商品は数種類あって、より強力に吸着させるために「シート付きの吸盤」が売られている。吸盤よりも一回り大きいシートを壁に貼り付けて、そこに吸盤を付けるという物だ。
 シートは両面テープによって貼り付けられるが、その粘着力や凄まじく、素手じゃまず剥がすことはできない。スクレイパー等を咬まして剥がし、残留した粘着物質は有機溶剤で取り除かなければならないほどだろう。
 吸盤の利点は、手軽に位置変更が可能なことだ。そして跡が残らない。
 だがこのシートタイプはどうだろうか――
 
 だったら吸盤いらねえだろ!
 
 この商品の企画を通して製造・販売した会社はとっとと潰れて下さい。

電子書籍の衝撃

 
 最近話題の佐々木俊尚さんの電子書籍の衝撃という名の電子書籍が(ややこしいわ)、ディスカヴァー(http://store.d21.co.jp/)で4/14までの期間限定でなんと110円でDLできるので買ってみた。
 プラグインやビューワーは当然無料なので興味のある人はお早めに。ちなみにデスクトップで読むのはかったるいが、Macbookだと結構読める。
 まだ触ったこともないがKindleiPadは欲しい、両方欲しい。前者は文芸や学術書用、後者は雑誌やweb用として。
 個人的に、電子書籍の最大の利点は「かさばらないこと」だ。漫画を読まなくなったのもそれが理由だし、文庫しか買わない主な理由もそれだ。
 雑誌も保存しておきたいページだけを抜き出せるとなると、いままでのようにオレンジページのレシピをファイリングしなくても済む(お前は主婦か)。
 なによりゴミが出ないし、価格も安くなる、そして売り切れない。これは凄い。絶対に普及する。
 とはいえ本屋に行くこと自体が大好きなので、紙の本も買うだろう。売り上げが落ちた本屋は、本以外も売ればいい。ウォーホールの画集の横にヴェルヴェッツのCDを置けばいいし、ジェームス三木の隣に三木道山でも……いやよそう。
電子書籍の衝撃」の中で興味深かったのは、本のニセ金化だった。これはもう末期だね。
 既得権が危うい人たちは焦っているだろうけど、消費者であるぼくはわくわくしている。保身のみに奔走するとロクなことにならないってことをいい加減学びなさいよ、馬鹿なノンワーキングリッチどもよ。
 電子ちゃん、早く来いッ☆