曲単位では、全英43位まで上がったデビューシングル「She's So High」、セカンド以降に繋がる感じで完成度の高い「There's No Other Way」 (最高位8位)、3RDシングル「Bang」トレインスポッティングのサントラに収録された「Sing」等、当時のクラブシーンの影響をポップに昇華させた良い曲がいくつかある。どの曲もギンギンにサイケで、この露骨にドラッギーな感じもこの作品の特徴だ。
アルバムに先駆けてリリースされたディスコポップチューン「Girls & Boys」は、全英5位にランクインし、この時点でバンド最大のヒット曲となった。「End Of A Century 」はキンクスと、ストロベリーフィールズとペニー・レインの時期のビートルズが合体したようなブリットポップど真ん中のシンガロングソング。アルバムタイトル曲の「Parklife」は、モッズ映画「さらば青春の光」のフィル・ダニエルズをゲストに、中期スモール・フェイセズっぽいメロディと印象的なギターが楽しいバンドを代表する曲で全英10位のヒット。スモール・フェイセズっぽい「Far Out」がフェイドアウトし鳴り出すストリングスが最高な「To The End」はステレオラブのレティシア・サディエのフランス語をフィーチャーした映画っぽい曲で16位まで上がった。
ブリットポップ最盛期で、マスメディアはブラー対オアシスの構図作りに必死だった。このアルバムからの1stシングル「Country House」とOASISの「Roll With It」が95年の8月20日、同日にリリースされ、チャート1位を巡り対決はクライマックスを迎えた。結果はマーケティングに秀でたブラーの勝利。曲の出来も「Country House」の方が良かったと思うが、あまりにバカバカしいMVと、その後のオアシスの名曲ラッシュにブラーは後塵を拝するようになる。ブリットポップバブルも急激にしぼんでいった。
グランジをパロディにしたような「Song 2」は世界的に大ヒットしたブラーの代名詞的なオルタナ・パンク曲で、子供でも一発で入り込めるメロディと、グレアムのギター、アレックスの唸るベース、イントロからブチかますデイブのドラムが渾然一体となって襲いかかる感じが圧巻で全英2位。「On Your Own」は全英5位のヒップホップ+オルタナ的な曲で、デーモンは「ゴリラズの曲」と言っている。M.O.R.はデビッド・ボウイの「Fantastic Voyage」「Boys Keep Swinging」の実験に付き合ったポップなパンクナンバーで、ここでもグレアムのギターが光っている。「You're So Great」はグレアムが独りで作った弾き語り曲で、素朴な音がかっこよく、ライブでは非常に盛り上がった。
冒頭4曲が非常に素晴らしい。イントロからアルバムを象徴するファンクネスが炸裂する「Ambulance」、シンプルなメロディと奥行きのあるサウンドがかっこいい 「Out Of Time」 、ノーマン・クックらしいパーティチューン「Crazy Beat」、優しげなメロディとサウンドがある意味新境地でずっと聴き続けられる「 Good Song」、後半も、儚げなピアノの音が印象的「Sweet Song」、グレアムがギターで唯一存在感を示す美しい別れの曲「Battery In Your Leg」など佳曲揃いだ。
デッカから出た唯一のオリジナルアルバム。デビュー・シングル「What'Cha Gonna Do About It」、代表曲「Sha La La La Lee」を含み、最高位は全英3位。トップ10内に3ヶ月留まったロングセラーアルバムだ。 モッズっぽいR&B趣味を、10代のバンドらしくドタバタ感満載に鳴らす、けたたましいアルバムになっている。中心にあるのは爽やかな見た目とのギャップが半端ないマリオットの黒すぎるボーカルだ。つんのめったヘタウマ感満載のサウンドも、マリオットの声が乗るだけで相当な説得力を持ち、一級品に変わる。
アルバム1曲目はなぜかベースのロニー・レインがメインボーカルを務める「Shake」。この曲やシングルカットされた曲の完成度はそれなりだが、いくつかの曲は緩いプロダクトでまるでガレージバンドのようだ。この傾向は解散するまで変わらないが・・・。「You Need Loving」はレッド・ツェッペリンが真似たことで有名だが、ボーカルだけレッド・ツェッペリンに移籍していたら一体どんな音になっていたか、妄想してしまう。
エンジニアは、この後レッド・ツェッペリンで良い仕事をするグリン・ジョンズ。ビートルズの映画「ゲット・バック」ではモッズスーツに身を包んでクールに登場したのが印象的だった。一般的な評価は知らないが、個人的にはあまり良いエンジニアとは思わない。このアルバムでも、ビートルズ「LET IT BE」のグリンバージョンと同じように、音のクオリティの低さを感じてしまう。本来選ばれるべきではないテイクがアルバムに収録されてしまっているような・・・。
より自由な環境を求め、モッズとの繋がりも深いイミディエイト・レコードに移籍し67年に発表されたセカンド・アルバム(日本では「From the Beginning」がセカンドアルバム的な扱いとなっているが、これはボツ曲などを集めた編集版)。1STアルバムと同様バンド名がタイトルとなっているため、「the first immediate album」と呼ばれている。 デッカ時代はモッズアイドル的な側面が強調されR&Bカバーも多く収録されたが、この作品は全曲バンドのオリジナルで構成された。洒落者ロニー・レインのセンスも強く反映され、マリオットのハード路線と上手く絡み、またドラッグの影響もあり、R&Bバンドから脱却し、ブリットポップの元祖とも言える、トラディショナル、ポップ、ロック、R&B、ガレージ、パンクなど様々なエッセンスが散りばめられた独自の音作りに成功している。
アルバムは、デッカ在籍時代に書かれた「(Tell Me) Have You Ever Seen Me」から始まる。ドタバタした感じは1STに近いが、メリハリのついた歌の迫力は段違いだ。 「Something I Want To Tell You」は後のブリットポップにも繋がるいかにもUKないなたい曲で、ロニーの色が強い。この曲や「Feeling Lonely」、ご機嫌なインスト「Happy Boys Happy」あたりでは、イアン・マクレイガンのキーボードの存在感が大きい。ロッド・スチュワートも歌った「My Way Of Giving」、シンプルなギターリフがかっこいい「Talk To You」でのスティーヴのボーカルはまさに本領発揮でかっこいい。このあたりのハードな曲もポップに洒脱に仕上げるのがこのバンドの個性だ。そしてthe JAMでポール・ウェラーもカバーした「Get Yourself Together」は非常にブリットポップ的な曲で、ワクワクするイントロからのAメロの流れ、流れるようなブリッジのメロディー、ライブで盛り上がりそうな合いの手、イアンのキーボードのメロディ、後半盛り上がるマリオットのボーカル。まさに極上の一曲だ。このアルバムを象徴してはいないが、代表する曲であることは間違いない。JAMのバージョンもリスペクトしつつパンクの疾走感を加えた最高のカバーになっているので、未聴の方は是非。アルバム最後の「Eddie's Dreaming」もロニーの色が濃いナンバーで、金管楽器とパーカッションをうまく配置した面白い曲になっている。これもいかにもUKな名曲だ。
2ndアルバム的な扱いを受けている「From the Beginning」は、代表曲「All or Nothing」「My Minds Eye」が入っているため、代表作とされるケースさえある。
There Are But Four Small Faces
2nd「The First Immediate Album」をアメリカで出す際に編集した作品。地味渋な曲がカットされ、強力なシングル曲「Here Come the Nice」、「Itchycoo Park」、「Tin Soldier」が加えられ、非常に出来の良い「I'm Only Dreaming」も聴くことができる。秀逸なジャケットも最高で、アナログ盤を手元に置いておきたい作品だ。
The Autumn Stone
解散後に出された「The Autumn Stone」もイミディエイト時代のベスト盤的作品で、マリオットの才気溢れる名曲「The Autumn Stone」と「Wham Bam Thanks You Ma'am」を収録。現時点(2024)で配信サービスに無いのは寂しい限り。
2020年、コロナ騒動の最中にリリースされたソロ15枚目の作品。 「As Is Now」「Saturns Pattern」など、バランスが取れた傑作で組んだJan Stan Kybertがプロデュースを担当。 達観した爺を演じた前作「True Meanings」と比べ、ウェラーらしいメロディや幅広い音楽性が復活し、ウェラーの歌声も年齢相応の渋さと演歌にならないポップさの二面性を兼ね備えた、キャリア屈指の完成度を誇る優れた作品だ。 スタイル・カウンシル時代の相棒、ミック・タルボットがボ・ディドリーのビートを下敷きとした小粋な「Baptiste」など数曲でハモンドオルガンを弾いているのも話題になった。
静かに始まり捻くれていく「Mirror Ball」、ビートが心地良いご機嫌な「Baptiste」、ウェラー流フューチャーソウルの金字塔「Old Father Tyme」、落ち着いたトーンで達観したボーカルに静かな炎を感じるアルバムを代表する名曲「Village」、エレクトリックとR&Bの高い次元での融合「Rockets」など、キャラがたった良曲だらけだ。
前作のセッションで残った2曲「Woo Sé Mama」「One Tear」はジャン・スタン・カイバートの共作で、他のクレジットはウェラーのみ。更に久しぶりにセルフプロデュース。マルチプレイヤーのアンディ・クラフツ(the moons)、ドラムのベン・ゴルドリエらお馴染みのウェラーチームが中心になってプロダクト。
アルバムは、成熟したお洒落なソウルナンバー「Woo Sé Mama」で幕を開け、この時点で成功を確信できる。「Long Long Road」はウェラーの十八番のソウルバラードで、スタンリーロード期にタイムスリップしたようだが、歌声はバージョンアップされている。「She Moves With The Fayre」はロバート・ワイアットが歌とトランペットで参加し、これもサイケ風味がブレンダンの音作りを思い出させる。「One Tear」はボーイ・ジョージが参加。同窓会みたいな賑やかさがあるファンクナンバーだ。「The Cranes Are Back」は洗練されたゴスペル。かっこいい。
ベストアルバムを挟んだこの作品。変化があった。00年代に入ってから出番が多かったサイモン・ダインではなく、「As Is Now」で組んだJan "Stan" KybertとAmorphous Androgynousがウェラーと共にプロデュース。作曲のパートナーも、サイモン・ダインからJan "Stan" Kybertに替わった。
景気の良いウェラー流王道ロックナンバー「White Sky」で幕を開け、軽快なリズムと広がりのあるメロディーが素晴らしい「Saturns Pattern」、お得意の所信表明的な名曲「Going My Way」、浮遊感のあるメロディも良いが音像も素晴らしい「I’m Where I Should Be」・・・良い曲ばかり。