著作隣接権
「歴史的録音」といわれているものは,大概安く販売されています。それは何故かというと,「著作隣接権」が切れたからなのです。
合法の根拠は著作権と著作隣接権が消滅しているとこにあります。
著作権は作曲家の死後50年です。
(戦勝国の作曲家の場合、戦時加算で保護期間が10年延長される)著作隣接権(演奏家、レコード会社の権利)が消滅するのは録音から50年経過した音源でした。
2003年に法律が改正されて最初に発売されてから50年になりました。
(なお2003年の時点で録音後50年経過した音源は、初めて発売される音源でも既に著作隣接権は消滅しています。)「歴史的録音」は慣れてくると,それはそれは素晴らしいもので,「さすが歴史的録音」と思わずにはいられないものも,多いのです。クラシック歴が長い方に「ベートーヴェンの第九のお勧めは?」と聞けば「まず,これは聞かないと」と言われるのが,俗に「バイロイトの第九」と言われる録音。もう「不滅の名盤」だのという表現を通り越し,もはや「神格化」されたような雰囲気もあるCDです。もちろんモノーラルです。
ベートーヴェン : 交響曲第9番ニ短調op.125 「合唱」
指揮: ウィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏: バイロイト祝祭劇場管弦楽団
録音年:1951余談ですが,このCD「指揮者の足音が入っているもの」と「入ってないもの」の2種類ありまして,入っている方が音がイイ,とされてます。
初心者にとっての難問その2〜同じ曲のCDが何十枚もある
「大体この「あたり」に,『悲愴』が入ったCDがありますので」
「あぁ,どうもありがとうございました。」
〜『ヒソウ』は『悲愴』って書くのね…店員さん,ありがとう。救世主のように見えました。
さぁ,買う気マンマンのあなた,CD棚を除いてみると…むむむ…
ベートーヴェン : 月光・悲愴・熱情・告別/ルービンシュタイン
ベートーヴェン:四大ピアノ・ソナタ集/バックハウス(pf)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番&第14番&第23番/アシュケナージ
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第5〜8番/ポリーニ
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番&第14番&第23番/ケンプ
ベートーヴェン:4大ピアノ・ソナタ/・・・・・
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な,なんで,同じ曲が何枚もあるの??
だから店員さんは,この「あたり」って言ったんだ。
ルービンシュタイン?バックハウス(pf)?pfってなんだ?多分ピアニストの名前なんだろうけれど…再び混乱してしまいました。
同じ作曲家で同じタイトル,ところが弾いている人が違う…ピアニスト毎にアレンジを加えているのでしょうか…もしそうだとしたら,あなたがラジオで聞いたあの演奏は,一体誰が演奏していたかも判らないと,CDが買えません。
おまけに,値段もいろいろあります。下は780円から上は3200円まで…安いCDはなんとなく「不安」があって(ヘタクソそう,音が悪そう)てにとれないものの,だからといって3200円は高いし,店員さんにきけば,高いヤツを勧められそうで聞くこともできません。
まいったなぁ,これだからクラシックはヤダよ…とちょっとヤケになってきたあなた。
こういうときはどうすればよいのでしょう…。
こういうときは…迷わずに「一番安いCDを買う」です。
ちなみにこのとき私はどうしたか…「高い」=「よい演奏」と思い,一番高いCDを買って失敗しました(誰の演奏,とはいいませんが)。録音もキンキンしているうえ,テンポも遅く,さっぱり面白くないもので,とても損した気分になりました。
安いCDにはイロイロとメリットがあります。
- 支出額を抑えられる。
- 仮に思ったような演奏でない場合,損失を最小限に抑えられる。
- 仮に思った以上に素晴らしい演奏の場合,演奏に感動するうえ「買い得感」もプラスされ,満足の度合いが高まる。
価格が安いから,といっても,一応CD会社のマークを付けて売り出すわけですから,そうそうヘタクソなピアニストが出てくることはありません。
安い理由はいろいろありますが,購入の際に知っておく必要があるものといえば,
録音が古い(今から50年以上前の録音)ものについては,モノーラルである,
ということです。普通はCDのパッケージ裏を見れば,「MONO」と書いてあるので判るのですが,たまに記載が無い場合があります。そのときは1956年以前か以降かを大方の目安にするとよいかと思います(ステレオLPレコードが初めて発売されたのが1956年のため)。ただし,あくまで「目安」にとどまります。1960年代に録音されたものでもモノーラルというケースは多いです。
さすがに,これだけステレオ装置が発達して,ステレオが当然の中で,初めて聴く曲がモノラルだったら,作品云々以前に,ちょっとしたショックを受けると思います。よく見て,買うようにしましょう。
初心者にとっての難問その1〜作曲者が判らないとCDが探せない
私が10年前ぐらいだったか,クラシックCDの購入のときの経験を,「私」から「あなた」に置き換えてみました。
♪ ♪ ♪
「あっ!この曲いいなぁ〜,どっかで聞いたことあるし…あぁ,小学校の頃の下校の放送の音楽だ…。」
ラジオで流れていた曲を聞きたくなったあなた,曲が終わって,この曲は「ヒソウ」というピアノの曲であることが,アナウンスによって判ったので,忘れないようきっちりメモしておきました。作曲者はよくわかりませんでした。
「『ヒソウ』かぁ…あんまり悲壮感無かったけどなぁ…。でも,近所のショッピングモールにあるCD屋に行けば判るだろう。今日は寝ようっと。」
翌日,近所のCD屋さんに行くと…ありません。クラシックコーナーがないのです。
店員さんに聞くと,「何年か前までは,クラシックコーナーを設けてたんだけどね…,あんまり売れないから…街の外資系のCDショップならクラシック・コーナーがありますよ」とのこと。どうしても「ヒソウ」を聞きたいあなたは,バスで街まで行き,街のCDショップに到着しました。 街のCDショップは1階がJ−POP,2階から上は洋楽・ジャズ・クラシックで,2階から上は今まで上がったこともない,いわば「未開の地」,あなたはドキドキしながらエスカレーターを上がります。エスカレータを上がるたび,エレキギターの不協和音と共に絶叫が聞こえたり,ストリングベースとトランペットが丁々発止の掛け合いを演じる様子が聞こえたりと,様々な音楽が聞こえてきます。「いろんな音楽があるんだなぁ。」すると,いきなり「ジャジャジャジャーン!」と聞き覚えのあるメロディが聞こえてきました。当たりを見回すと,他の階とは違って,CD棚が木目調になってます。おまけに商品を見ているお客さんも,何故かしかめっ面で黙々と商品棚とにらめっこしているようです。一面クラシックのCDだらけです。
「クラシックって,こんなにCDが売られてたんだ…知らなかった…」
早速,CDを探そうと棚に向かいましたが…わかりません。作曲者が判らないと,探しようのない商品の並び方になっているうえ,このCDショップでは輸入盤を多く扱っているため,日本語のCDよりも英語やアルファベットなのに,ちょっと英語ではないような言葉が書かれているCDが多く,全く判りません。困ったあなたは,店員さんに聞くことにしました。店員さんも,なんとなく1階の店員さんとは,雰囲気が違って,細身でちょっとあごひげを生やし,自らもピアノを弾きそうな雰囲気を漂わせている店員さんです。
「すみません,『ヒソウ』って曲のCDが欲しいんですが」
「『悲愴』ですか…チャイコフスキーのですか,ベートーヴェンのですか?」
「えっ?『ヒソウ』にも2種類有るんですか!」
〜『ヒソウ』に種類なんかあるとは全く知らなかったなぁ。大体「川の流れのように」といえば,「美空ひばり」と一対一でつながるもんだろう…と,あなたは弱ってしまいました。もう店員さん以外に頼る人はいません。
「実は,ラジオで聴いた曲がそういうタイトルだったので…」
「そうでしたか。え〜と,お客様がラジオで聴いた曲は,どんな『悲愴』でしたか??」
「どんなって…ピアノで…」
「あぁ,それなら恐らくお客様のお求めになりたいCDはベートーヴェンの『悲愴』ですね。どうぞ,こちらへ」
〜「ピアノ」といった瞬間に,ベートーヴェンとわかったってことは,チャイコフスキーの「ヒソウ」はピアノじゃないんだな…なんだろう…まぁ,何はともあれやっと買える…,と安堵したあなた。しかし,更なる試練が待ち受けていたのです。
エア・チェック万歳
いろいろと世の中を騒がせているNHKですが,クラシックと民謡,演歌,懐メロ,最新ではないけどちょい前くらい前のJ-POPに関しては,「お気楽 廉価」をモットーとする聴者(マイノリティか?)にとって,実に有り難い存在です。
今は,死語になってしまいましたが,「エア・チェック」という言葉をご存じでしょうか?
エア・チェック【air check】
電波を傍受することが元々の意味らしく,民法放送で広告主が自社CMが正しく流れているかをチェックするために放送を録音しチェックをすること,という話もありますが,普通は,AM・FM放送をカセットテープなどに録音することを言います。
私などは,お金が「全くない」小学生の頃から,「小遣いが少ない」今なお,エア・チェックをして,限られた予算の中,ミュージックライフ(これまた死語の類に属するでしょう)を満喫しています。
今から20年以上前は,FM番組全盛時代だったのか「FM番組表雑誌」が数誌でていまいしたが(「FMfan」(共同通信社),「週刊FM」(音楽之友社),「FMレコパル」(小学館),「FM STATION」(ダイヤモンド社)の4誌)次々に無くなり,FMfanが最後に(2001年)FM番組表雑誌が全て無くなりました。
ところがインターネットとは便利なもの,NHKでは,なんと1週間先の番組表を,ウェブサイトで提供しているのです。もちろん「演奏時間:○分○秒」まで公表しています。おかげで,昔と変わらず,エア・チェックが可能です。
そして,何よりNHKの良いところは,
「全曲丸ごと放送」
民放FMのように,イントロにアナウンスを入れたり,曲の途中でフェードアウトさせ,別な音をかぶせたりということは,まずしません。(平日夜9時からの番組だけは例外ですが…アノ番組も,変に「民放かぶれ」した番組構成はいい加減やめて欲しいところです。桑田佳祐や中島みゆきや大槻ケンヂがパーソナリティをしていた頃の,純粋な「音楽研究番組」に徹して欲しいところです。)
例えば,「あ〜,80年代の歌謡曲が聴きたいなぁ」と思い,番組表を見てみると…
後 01:00 歌謡スクランブル
逢地真理子「抱きしめてトゥナイト」 (田原 俊彦)
(4分14秒)
<ポニー・キャニオン PCCA−00320>「サムライ・ニッポン」 (シブがき隊)
(3分26秒)
<ソニー SRCL−4831>「愛の呪文」 (石川 秀美)
(4分04秒)
<BMGビクター BVCR−1511>「君だけに」 (少 年 隊)
(4分45秒)
<ソニー SRCL−4914〜5>「あなたを・もっと・知りたくて」 (薬師丸ひろ子)
(3分50秒)
<東芝EMI TOCT−24354>「早春物語」 (原田 知世)
(4分58秒)
<ソニー SRCL−4829>「ズ ー」 (エコーズ)
(6分12秒)
<ソニー AICT−1261>「神様ヘルプ!」 (チェッカーズ)
(4分01秒)
<ポニー・キャニオン PCCA−02002>「瞳はダイアモンド」 (松田 聖子)
(4分17秒)
<CBSソニー 00DH−311〜4>「リフレクシヴ・ラヴ」 (杉山 清貴)
(5分03秒)
<バップ VPCC−84114>「フレンズ」 (レベッカ)
(4分33秒)
<キューン・ソニー KSC2・71>「タンゴ・ノワール」 (中森 明菜)
(4分07秒)
<Wea WPC6−8057〜8>「好きさ」 (安全地帯)
(2分34秒)
<キティ H32K−20110>
と,ズラリ載っているわけです。この番組,はじめと最後に曲の紹介があるだけで,真ん中はとにかく上の曲を流しっぱなし。なのでこれをMini Diskなんかに録音し,はじめと最後の曲紹介を削るだけで…はい,「80年代歌謡セレクション」のできあがり。田原俊彦なんて,一体どこで何やってんだか,原田知世なんてちょっとCD屋ではちょっと恥ずかしくてクラシックCDよりも買いにくいです。っていうか買いません。ラジオで流れなければ恐らく未来永劫聞くことはないでしょう…。
さて,クラシックですが,NHK−FMでは,大きなウェイトを占めていて,平日でも1日7時間以上,日曜日は10時間以上がクラシック番組という,クラシックファンには,大変有り難い番組編成となっています。
内容は,CDやレコードを放送するものをはじめ,国内や海外の演奏会の録音もあり,素晴らしい演奏「名演」に出会う可能性もあります。そういうときの演奏を録音していると,それはもう宝物!特にCDにならない場合も多く,そうなると,なおその価値が増してきます。大事に大事に取っておきましょう。
最近では(確かあれは…小澤征爾がウィーン・フィルの定期演奏会に出た時からだったように記憶しますが)ウィーン・フィルの定期演奏会の「生放送」も行うようになりました。今度の日曜日の夜に放送されるウィーン・フィルの定期演奏会はこんな演目だそうです。
http://www.nhk.or.jp/hensei/fm/20050220/frame_18-24.html
後 07:00 ヨーロッパ・クラシック・ライブ
坪郷佳英子
【ゲスト】 佐々木典子
− ダニエーレ・ガッティ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 −「バレエ音楽“ロメオとジュリエット”抜粋」プロコフィエフ作曲
「楽劇“トリスタンとイゾルデ”から 前奏曲と愛の死」
ワーグナー作曲「“ルル”組曲」 ベルク作曲
(ソプラノ)クリスティーネ・シェーファー
(管弦楽)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)ダニエーレ・ガッティ
〜オーストリア・ウィーン楽友協会、
放送センターCR501スタジオからナマ放送〜
(オーストリア放送協会との同時放送)
ウィーンに行った気になって,聞くことができるのです。これはスゴイ。
ウィーン・フィルの定期演奏会は,「定期会員」にならないと,定期演奏会のチケットが手に入りません。もしくは定期会員がチケットを手放す,キャンセル待ちです。
http://www.wienerphilharmoniker.at/index.php?set_language=ja&cccpage=tickets_subscriptionconcerts
日本語のページにはなーんにも書いてないくせに,英語とドイツ語のページには,定期会員になる方法が書いてあるんですね…英語もドイツ語もわからないヤツは定期演奏会に来るなっつうことですかね…とひがんでみたり。おそらく,毎回定期演奏会に日本から来る人は,業界関係者ぐらいしかいないからでしょうね…と良い方に推測してみます。
ちなみに,定期会員になるまでには,どのくらい待たねばならないのかというと…,
http://www.wienerphilharmoniker.at/index.php?cccpage=tickets_subscriptionconcerts&set_language=en土曜日または日曜日会員は13年待ち,ソワレ(平日の夜の演奏会:年5回)会員は6年待ちです。
特集番組ともなると,平気で番組時間がウン時間になります。
先日は,お昼から夜10時まで,間にニュースを挟んで,約9時間ぶっ続けで,クラシックリクエスト番組を行っていました。年に数回あるようですが,こういう番組もNHK−FMならではのもの。
○特集クラシックリクエストhttp://www.nhk.or.jp/classic-r/pc/
NHK−FMでは,ほとんど音楽を流しっぱなしの状態なので,クラシックを聞きたいけれど…という場合,とりあえずNHK−FMを垂れ流しておいて,その中で「あ,この曲,いいな」と思ったものがあったら,NHKの番組表で確認しCDを買いに行く,というのも,良いと思います。
NHKでは,ラジオは受信料支払の対象外だとか(放送法第32条)…。ラジオ番組はテレビ受信料を流用して制作されていることになります。時代の潮流に反して?私はご丁寧なことに,NHKにテレビ受信料を払っていますが,その元をとるくらい,ラジオで楽しませてもらってますので,番組の内容については充分満足していますが,受信料の横領など,社員の不正には厳しく対応して欲しいものです。
クラシック・イン第1巻 490円
内 容(EMI原盤)
- モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K466
- モーツァルト/ピアノ協奏曲第26番 ニ長調 K537「戴冠式」
- ダニエル・バレンボイム(P&指揮)/イギリス室内管弦楽団
- モーツァルト/ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K331より 「トルコ行進曲」
- ダニエル・バレンボイム(P)
会社の近所に法人向けがおそらく主な生業と思われる小さな本屋があり,私の会社でも,ここの本屋に専門書などは注文をしています。そのため,ほとんど毎週営業のオヤジ(60歳くらいでしょうか。本屋というのに,何故か「耳にタバコ」「もう10年近く着ていると思われる緑色のブルゾン」がトレードマーク)が廻ってきます。私も音楽之友社レコード藝術の定期購読をこの本屋に頼んでいます。
この本屋,商売が上手で,その人が欲しそうな本を,勝手に売りつけるというとんでもないことをするのです。普通の本屋じゃ考えられませんが,その本の選び方たるや見事なもので,客の心理をきっちり把握しており「お客の好みに合うような本を選ぶため,まず返品されない」とのこと(オヤジ:談)です。
今回紹介する,「クラシック・イン」も私が,外から帰ってきたら,ぽつんと机の上に置いてあった一冊です。
ご丁寧に紙袋に入って机の上に置いてあった(いつもは,無造作に商品丸出しで机の上に置いてあるのです)ので,「むむ,またあのオヤジにヤラレタ」と思いましたが,見れば,バレンボイムのモーツァルト協奏曲,それもイギリス室内管弦楽団との共演ということから,おそらく以前から買ってみようかと思っていたバレンボイムのピアノ協奏曲全集(旧盤)に収録されている曲と一部同じかも,と思い,試聴で新品で解説付きで490円なら安いか…と変な妥協をしたうえに,解説書には新婚旅行で行ったザルツブルグの風景が沢山載っていて逆に気に入る事態に…そして,本屋の思惑どおり,やはり返品しませんでした。
通勤鞄の中に入れて持って帰ろうと思ったのですが,パッケージが立派すぎて,いろいろゴチャゴチャと入っている私の通勤鞄の中に入りません…そのため,CDと解説書のみを取り出し,外側のパッケージは職場で捨ててしまいました。
CDを手に入れると,早く聞きたくてウズウズしてしまうので,鞄の中には常にポータブルCDプレーヤーを入れてあります。また私は,ごく普通のサラリーマンで,六畳二間のアパートに,カミサンと小さい子供で,しがない暮らしをしているため,平日の音楽鑑賞の場は必然的に通勤のバスの中です。通勤時間は40分ほどで,狭く曲がりくねった坂道を多く通るため,立った姿勢ではいささか苦痛に感じるときもありますが,音楽のおかげで楽しい時間を過ごしています。
肝心のCDですが,モーツァルトのピアノ協奏曲第20番と戴冠式という,我々初心者にとっては渋い選曲(小学館では「はじめての方ももっと深く聞きたい方も」というキャッチコピーを使ってますが…)。はじめは第20番。いきなりモーツァルトのピアノ協奏曲というのに「短調」の曲を聴かせるという賭けを小学館&EMIがしたわけですが,これは結構「当たり」かも知れません。「モーツァルトは長調だけじゃ無いんだぞ!」という私達への「宣戦布告」とも受け取れます。いや,逆に「日本人は短調が好き」というところを突いた戦略なのかもしれません。どちらにせよ,この第20番,詳しい解説は,クラシック・インの解説にお任せするとして,全体の雰囲気は「美しく悲しい」。第2楽章は,殊に美しく,映画「アマデウス」にも使われています。
クラシックのマニア度が進めば進むほど,「モーツァルトの短調曲」に惹かれていくとか。その美しさ故,一度ハマったら抜けられないことをいうのか,モーツァルトの音楽を,こう形容する人もいました…「悪魔」。
第26番「戴冠式」は,一転して明るめ。某王様の戴冠式式典に合わせて作られたので,この名がついたようです。この曲にもウンチクがあるようで,左手パートがすっぽ抜けてる(つうか作られてない)箇所がたくさんあるとか何とか…そうした話に興味がある方は,こんな本をお薦めします。
「モーツァルトはどう弾いたか」丸善ブックス/久元 祐子
さて,バレンボイムの演奏ですが,実にノビノビ爽やかに2曲とも弾いていますが,いたずらにメロメロになったり,おちゃらけたりした風がなく,感情移入しやすい各々の第2楽章も,結構ドライに弾いてます。男性的演奏,といったらいいのでしょうか。録音状態も良いので,お勧めできるCDだと思います。
ますます,バレンボイムのピアノ協奏曲全集(旧盤)を手に入れてみたくなりました。ちょっと財布と相談しようかと思います。
協奏曲【きょうそうきょく】とは
Wikipediaから
「(concerto〔伊・英・仏〕、Konzert〔独〕)は、今日では主として一つまたは複数の独奏楽器(群)と管弦楽によって演奏される多楽章からなる楽曲を指す。」〜なんとなく判ったようなわかんないような…なので,十年ぶりくらいで絵を描いてみました。
↑こういうヤツです。協奏曲。
しっかし字と絵は下手なのはいけませんな…一応,どこかの名門楽団と有名指揮者とスーパーピアニストっつう設定でお願いします。
「主として一つまたは複数の独奏楽器」っていうのが,上図でいうところのピアノ&ピアノ弾きです。この絵ではピアノ1台だけですが,これがピアノだったり,バイオリンだったり,チェロだったりしまして,さらに1台とも限らず,バイオリンとチェロ,なんてのもあります。
んでもって「管弦楽によって」の管弦楽が,上図で「オーケストラ」です。指揮者も図には入れておきましたが,このクラシック・インの演奏は,「(P&指揮)」と書いてありますので,ピアノを弾きながら指揮します。
普通「弾き振り(ひきぶり)」と言っているようです。弾き振りするときは指揮棒は普通持たないそうです。そりゃそうか…ピアノが弾けなくなっちゃいますからね(バイオリンで弾き振りするときは,バイオリンの弓(ボウ)を指揮棒代わりにしちゃっているようです。2005年のニューイヤーコンサートで,指揮者のロリン・マゼール(LORIN MAAZEL)がちょこっとやってました)。なんで「弾き振り」なんてものがあるのでしょうか…
古典派の作曲家にとって協奏曲は主要な活動分野であった。作曲と演奏の両方をこなす音楽家が多かったこの時代に、特にピアノ協奏曲の初演は作曲者が独奏楽器を受け持って行われることが意図されたためでもある。(Wikipediaから)要は,モーツァルトやベートーヴェンの頃は「当然初演は自作自演でしょ」と考えて作られていたということになるようです。「自分も売って,曲も売って」ということなのでしょう。
バレンボイムも,どう思ったかどうだかわかりませんが,自作自演を意図して作られた曲ならば,その意図に従おう,ということなのでしょうか。
ただ,「指揮をしながら演奏する」というのはトンでもなく大変なことだと思います。何十人といるオーケストラをまとめ上げ,自分の考える演奏を指示し,おまけに自分も弾いて…お遊びレベルなら楽しいでしょうが,人様に聞かせるわけですからね。
それに,ピアニストやバイオリニストみんなに弾き振りされたら…
…指揮者の仕事が減ってしまいます…。
まず,何から聞くか…
クラシックを聞くきっかけ,というのは,ありそうでなかなかないものです。
最近では平原綾香のJupiterが爆発的に売れたので,原曲のホルスト組曲「惑星」でも聞いてみようか,と思われた方も少なくないと思います。
こうした,歌謡曲や,映画・テレビ番組の挿入曲がきっかけでクラシックを聞く場合は,そのアルバムやサウンドトラックを購入するなり,テレビ局に曲名を問い合わせて曲名と演奏者名(サービスの良いところだと使ったCDの商品番号まで教えてくれるケースも)を教えてもらうことで希望の曲にたどり着きます(私はこのタイプでした)が,
「クラシックを聞いてみたいが,何から聞いたらよいのかわからない」
こういうときクラシックを聴く人に聞くと,よくある回答としては,
- 具体的に曲を教えてくれた上に薀蓄(ウンチク)までくっつけてくれる。
- 「好きな曲から聞けばいいんだよ」という。
日頃孤独なクラシックリスナー(ことにリスニングオンリー者)にとっては,クラシックファンを獲得する絶好の機会,少なくともこうした質問は,大変嬉しいものなのですが,逆に,このチャンスを逃してしまうと,せっかくの可能性を失ってしまうことも予想されるので,回答に対しては慎重に慎重を重ねざるを得ません。
いかに,言葉少なに,簡潔に,作曲者と曲名に加え,何故この曲を選んだか,曲の雰囲気はどうか,質問者が「クラシック聞くと,ちょっと眠くなるのぉ」なんて言っている人ならば,「聞けばそのよさがわかる」なんて回答はとてもできないので,眠くならないために,その曲を聴くためのワンポイントを付け加えた上で,CMやJ-POPで使用されている例を挙げつつ,1分程度で説明しなければなりません。
通常,J-POPなどでは「最近イイ奴っている?」と聞けば,「今度出た○○ってバンド,すっげぇいいよ。マジ。なんかさ,今までにない感じ」という回答で,なんとなく想像できる上に,かなり興味が湧くわけです。それは質問する側,答える側に共通の「イイ」音楽観があるためで,そうした一言二言ですむのですが,クラシックにいままで興味が無かった人に興味を持ってもらうということは,共通した「イイ」音楽観がかなり異なっているケースが多く,そうした一言二言で回答が来るものだと思っている質問者に,的確に一言二言で説明をすることは,困難を極めます。だからといって,ただ「いいから黙って俺の勧める曲を聴け!」ともいえないのです。体外,クラシックリスナーが毛嫌いされる理由の一つが,その解説に1分以上かけてしまい,せっかくのワンポイントが「ウンチク」に変わってしまうところにあります。
そうすると,「あの曲がよい」と説明をはじめてしまうことは,かなりのリスクがあることから,具体的な曲名を挙げることは避け,相手の自由意志により嗜好にあう曲を探せ,ということになります。
「好きな曲から聞けばいいんだよ」
質問者はがっかりします。「こちらは好きな曲がわからないから聞いているのに!」
でも,先に書いたように,クラシックリスナーは,もう質問者からいやな顔をされたくありませんので,それしか応えようがないのです…。
私自身も,お勧めするとすれば,具体的な曲ではなく,Classical Everなど,クラシックの聞き所を集めたCDをお勧めします。あのCD1枚で,かなりの曲の良いところを聞くことが可能なうえ,曲数が多いことから,あなたの嗜好にあう曲がおそらくあることでしょう。運良く,そこで嗜好にあう曲を見つけることができたら,いよいよ,その曲について深く調べはじめれば,よいのではないでしょうか。
Classical Everでは,ちょっと出費が…という方は,さわりで覚えるクラシックの名曲50選もお勧めです。Classical Everに比べ,解説もついているうえに,ちゃんとした「ウンチク」がついて,1冊あたりClassical Everの半額で購入できるところも魅力です。
それでもまだ高い,とおっしゃる方には「ダイソー100円CD」をお勧めします。解説ナシ,モノによっては,演奏団体及び指揮者すら怪しいもので,そのポリシー無き製作姿勢には,ネットでは批判も見えますが,収録されている演奏のレベルはかなりのもので,我々初心者が聞くきっかけとしては,良いでしょう。